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第八十四話 海を持つ国(5)
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今回すっげぇハードでした。
内容もハードです。
自分にこんな文章が書けるとは思いませんでした。
あえて、言い訳なしで、いっちゃいます。
ゲルマニア皇帝の執務室は豪華である。
この点、王国の国王とは趣味が正反対だ。
皇帝の執務室は、広く、学校の教室ほどもある。
天井にはフレスコ画。
壁には、王家の紋章、立ち上がる獅子の図柄がずらりと並ぶ。
えんじ色の壁紙に、金で描かれているのだ。
まあ、これも慣れと言う物なのだろう、皇帝はその中で地味に書類を片付けている。
これが、ほぼ毎日続く。
いいかげん、うんざりしそうな気がするが、実際にはこれが責任と言うものだ。
そんな中、侍従がそっと近づいてきた。
皇帝の執務中に近づけるのは、この侍従だけである。
「陛下、魔法師団の副師団長様がお越しでございます。」
「ふむ、通せ。」
わずかな逡巡の間に、皇帝は一枚の書類にサインをしてから、侍従に告げた。
「は。」
侍従もわかっているから、仕事が早い。
ほどなく、侍従に案内されて、帝国魔法師団の副師団長がその細い顔を見せた。
「陛下、お忙しい中、お時間をいただき恐悦の極み。」
慇懃にその黒いローブをひるがえして膝まづく。
「まあよい、そこに座れ。」
「は、失礼します。」
副団長ミヒャエル=フォン=シューマハーは、かしこまって三人がけソファに座った。
その動作には、軍人らしくよどみがない。
「それで?なにか目新しいことでもあったか?」
「は、朗報でございます。」
「ほう、王国を蹂躙する手立てでもできたか?」
「いえ、恐ろしいものを発見しました。」
「てみじかに申せ、時間がもったいない。」
「は、かしこまりました。発見したのは三つ首でございます。」
シューマハーは、ソファの前の小さなテーブルに、地図を広げた。
「三つ首?ケルベロスか?」
「いえ、伝説のアレでございます。」
「まさか、そんなものが本当に存在するのか?」
「は、私の手の者が、ロマーニャ国境付近で発見しました。」
地図のとある一点を指で示して言う。
「しかし、そんなものをどうせよと言うのだ?人の手におえるようなものか?」
「わかり申さず。しかし、その付近には古代の遺跡も同時に発見され、制御に関する術式が散見されております。」
さらに、若干右に指をずらした。
「ううむ、もし制御がかのうものなら恐ろしいことになるぞ、かの青竜に匹敵するではないか。」
「御意!」
「よし、運用に関しては即刻会議にかけよう。お前は、制御術式について徹底して調査するのだ。」
「は、かしこまりました。」
伝説の三つ首竜が発見されたはいいんだが、ゲルマニアは本気でそれを運用するつもりだろうか?
古代の帝国で、破壊の限りを尽くし、このイシュタール大陸のすべてが焼き尽くされるところだった。
この時は、マートモンスからやってきた赤竜が、苦難の末に封印したと言う。
青竜メルミリアスのように、話が通じるあいてとは思えないのだが?
しかし、そんなトンデモ怪物に頼るのかは、別にして、ゲルマニアの兵士たちは着々と実戦に向けて訓練が進んでいった。
そう、それこそが本来の、覇権へのアプローチである。
ゲルマニアは、徹底した歩兵による蹂躙を得意とする。
その後ろから、重装騎士により歩兵の粉砕を行う。
二重の構えである。
俗に言う『武田の騎馬隊』のような運用である。
常備兵の攻撃に使える部隊は、二万人ほどである。
さて、鉄腕ミューラーに代わる指揮官は、だれがよいか…
「ミューラーめ、すっかりレジオ男爵に骨抜きにされおって、なにが『漢(おとこ)は漢(おとこ)を知る』だ、くだらん。」
鉄腕ミューラーは、どうもカズマに感化されて、卑怯な戦法には断固反対なようだ。
おかげで、先鋒に使うことができない。
帝国にしてみれば、余計なファクターは暗殺してでも減らしたいのが本音だ。
こんなきれいごとで、国の維持ができるものではない。
だから、苦慮しているというのに、お気楽なことを言いおって!
人選に苦慮している皇帝であった。
イシュタール王国では信長式に、馬防柵を張り巡らせて、魔法による遠隔攻撃が有効と思われるが、果たしてそんな運用を考えられているのか…
なぜなら王国では、そんなことよりもさらに深刻な問題がはびこっていたのだ。
『わあああ!伯爵を殺せー!』
『貴族のくそやろー!』
『パンをよこせー!』
口々にわめきながら、貴族の館を取り囲む民衆。
その数は、三千人とも五千人とも言われている。
データがないので、正確にはわからないが、バイヨンヌ伯爵領には八万人ほどの人口があり、領都には三万人住んでいる。
その九十八%が平民である。
きっかけは、ささいな行き違いだった。
ちゃんと説明すればトラブルには至らなかったろう。
しかし、起こるべくして起こった。
王都北西部のバイヨンヌ伯爵領では、大規模な飢饉を受けて、領地内の食糧が不足していた。
エスパーニャ国境にほど近いこの領地は普段は作物の実りも良い、しかし、地域的な干ばつや飢饉は、容赦がない。
王都で政変がおこったころ、こちらでは領民が飢えていた。
ないものは、逆さに振っても鼻血も出ない。
赤子に飲ませるミルクもない。
子供に食べさせる芋もない。
あるものは、山に木の実を取りに行って、魔物に襲われた。
別のものは、イノシシと戦い敗れ去った。
もはや、倉庫に麦粒一つ残っていなかった。
過酷な徴税は、王都からの要請で、さらに厳しくなり、収量の減少がそれに拍車をかける。
実は、この飢饉の報告は、王都にもたらされていた。
しかし、折悪しく政変と前後したため、報告が遅れているのである。
情報は錯綜し、正確な通信も阻害された。
そのうえ、今回の増税措置である。
ガストンの覇権への動きは、こんな末端まで苦しめていた。
こうなればもはや、明日の命すら危うくなってしまった民衆たち。
貴族の館は、十重二十重に囲まれた。
「どうなっているのだ!なぜ民衆が!」
「伯爵さま、オシリス教の聖職者が先導しております!」
「なんと、あの温厚な者たちがか?」
「いえ、一部の過激派が蜂起した模様で。」
一部の聖職者は、聖堂騎士団と結託し、武力を持とうとしたのだ。
いや、すでに『持とう』ではない、『持った』である。
「ぐうう~くそ坊主どもが、王都からの支援はまだか!」
「いまだ、着き申さず!」
「門の前に土嚢を積むのだ!」
伯爵、積むものが違っているよ!
「お屋形さま!間に合いませず!」
「「「うわああああああ!!!!」」」
がこおおおおお!
どこから持ってきたのか、巨大な丸太は、数百人の民衆に担がれて、城門にぶつかる。
怒涛のように城門は破られ、民衆がなだれ込むのだ。
バイヨンヌ伯爵とその一党は、暴徒にかこまれ杭で打たれ、鍬で打たれた。
一族は、串刺しにされた首だけとなった。
館には火が放たれ、夜空を黒く焦がして行った。
蔵に納められた、わずかな穀物は民衆にすべて持ち去られた。
あとには、瓦礫のみが残っていた…
「一揆だと?」
オルレアンの長男、ジャン=ポール=マルクス=ド=オルレアンは、そんな報告を受けた。
「は、北西部の農村地帯では、オシリス教徒が集結して、貴族に対して暴動を起こしてございます。」
いやな知らせは早く着くものである。
オルレアン国王の領地では、すでに一揆が盛り上がっていた。
「ううむ、いかがいたしたものか…」
「陸軍騎馬部隊を鎮圧に派遣いたしております。」
「そうか、間に合うと良いが…」
「あやつらは、死ねばオシリス女神の元で、天国に至ると…」
なんとまあ安直な教義ではないか…
『ご注進!』
王都には、若干遅れて鳩が届いた。
これは、地理的な位置の問題であろうが、半日と違ってはいない。
だいたい、このような知らせは、鳩が二十羽は放たれるものである。
「いかがいたした!」
『バイヨンヌ伯爵さま、民衆により斬殺されましてございます!』
「なんと!おそかったか!」
侍従はほぞをかんだ。
「狂信者どもめ~!」
その知らせを受けてガストン国王は、目を血走らせて奥歯を噛みしめた。
王国各地で、飢えに苦しむ人々が蜂起しはじめたのだ。
ガストン=ド=オルレアンの領地で起こった一揆は、オシリス女神の神官に率いられた農民が、手に手にクワやカマを持って立ち上がった。
それに乗るかたちで、国人衆も自分の領地を広げようと、一揆に参加している。
国人衆など勝手なものだ。
オルレアンにしてみれば、晴天の霹靂である。
領地は、長男に任せたのだが、一部の国人衆には軽く見られているようだ。
バロアの娘を婚約者に迎え、いよいよその地盤を磐石にと思った矢先の変事であった。
もちろん、オルレアンに味方する国人衆も居て、一触即発!
きな臭い様相を呈している。
いかにも、国教であるオシリス教が、ゆがんで来たと言わんばかりの出来事に、オルレアン公爵家は脂汗をかいている。
まだ、バイヨンヌのように、オルレアンの領主館まで押し寄せてはいないが、油断は出来ぬ。
街のあちこちの教会や広場では、くそ坊主が説教を始めたと報告が入った。
「急ぎ、くそ坊主をつかまえるのだ!」
オルレアンの長男、ジャン=ポール=マルクス=ド=オルレアンは、近侍に命令する。
「はは!」
いまや、緊張はピークである。
屋敷には、国人衆や地侍が集まり、警戒に当たっている。
この場合、忠義の国人衆もまた、たくさんいるのだ。
「お屋形さま、いかがなさいます?」
「まずは、屋敷の城門を固く閉ざし…いや、そうではないな。蔵にしまってある小麦を一割ほど、城門前に積み上げるのだ。」
「はあ?」
「急げ!家臣一同で運び出せ!そして、城門前に積み上げるのだ!」
「は!ははー!」
マルクスもばかではない、民衆が食い物を求めるのなら、それをエサに怒りを鎮めればよい。
みな、麦を見れば、おとなしくそれを持って帰るだろう。
その間に、国軍を招き、暴徒鎮圧を行うのだ。
オルレアン領の納めた税収は、蔵十個でも足りないほどの量がある。
蔵一個は、中学校の体育館ぐらい大きい。
極秘に作った隠し蔵が十棟。
売却分を抜いても、まだそれほどの量を確保しているのだ。
九十七万石は伊達ではない。
(伊達家・仙台藩は六十二万石であった。)
「まだ、間に合う!」
マルクスは、必死である。
なにしろ、家督を継いだと思ったとたんに、この騒動である。
自分の存在意義を賭けて、ことに対処しなくてはならない。
うるさい親父がいなくなったのだ、自分のえがいた内政を進めたかった。
それも、領地が安定していてこそである。
慌てふためく家臣をしかりつけ、家老を蹴飛ばす。
「財務卿!ザギトワ財務卿を呼べ!」
「はは!」
「財務卿ザギトワ・ここに!」
「おう、いま動かせる表の麦はいかほどか!」
「されば、現状三十八万石は確保しております。その他は売却により手元にはございません!」
流石は財務卿ザギトワ男爵、書付けも見ずにすらすらと答える。
「そうか…それほどの備蓄があれば、暴動が起こってもなんとかなりそうだな。」
「はは!若さまの判断は、ベストでございましょう。城門前の庇の下に、一気に麦を積み上げるのが最良でございます。」
「そうか…お主に認めてもらえて安心した。」
「私は、オルレアン家の財務卿でございます。」
「すまぬ、ザギトワ卿、エリシアのいる奥には、特に兵士を厚くな。」
「かしこまってございます。それは、侍従殿にお伝えいたします。」
「そうであったな、畑違いか。」
「御意!」
屋敷の奥の院には、ジャン=ポールの母や、妹が住んでいる。
ザギトワの娘も、侍女として妹のそばにいる。
つい、命じてしまったが、それは財務卿の分に過ぎるのだ。
忠義に厚く、侍従とは友誼に厚い。
男ザギトワ、算盤は持ってはいても、武士にござる。
ガストン国王も必死になってきた、なにしろ近衛の兵士がごっそりいなくなったのだ。
城を守る兵士は、急いで陸軍から補充したが、その分陸軍からは兵士が減っている。
もちろん、募集はかけたが果たして、どのくらいの補充ができるのか…
前述、軍国主義にと言っていたが、まるで主義主張をあざ笑うかのごとく、軍の弱体化が起こってしまった。
何しろ近衛隊では、みな正式な書式での退職願である、受理しないわけにはいかない。
故郷ガーとか、親ガーとか言われたら、さすがに引きとめられない。
しかし、千八百人近い退職者である。
将軍、シモン=ジョルジュの責任は測り知れない。
しかし、その責任を取るという形で、ジョルジュ将軍も進退を伺っている。
身は謹慎と称して、館にこもってしまった。
近衛隊の収拾にも時間がかかりそうである。
国中に『お触れ』を出して、兵士を募集しているが、すぐにはやってこないのである。
国教会を破壊したのはカズマであるが、坊主どもを根切りにしたのはオルレアンたち革命軍である。
その出来事に、教国は、王国の破門を検討に入った。
次の派遣枢機卿を決める、コンクラーベでは、王国への行き手がないのが実情である。
まさに根競べ。
こういう場合は、得てして若手に押し付けるのが常道である。
今回も、一番若い枢機卿が、貧乏くじを引いたようだ。
若干二十六歳のマルチェロ=マストロヤンニ枢機卿がそうである。
かわいそうに。
彼は、これからイシュタール王国について深く学び、国教会の大僧正として派遣されるのだ。
まあ、ていのいい左遷人事とも言うな。
このあと、かなり経ってから、カズマは王都のノートルダム大聖堂を復旧することになるのだ。
この際は、国軍などと贅沢は言っておられない。
ガストン国王は、国の予算を絞り出させ、一人でも多くの兵士を揃えなければならない。
まさに、暗雲立ち込めるイシュタール王国である。
この時、軍直属の暗部は、多数の素っ破を送り出し、王都周辺の領地を探らせた。
なにしろ、どこに火種があるかわからない。
俗に『火消し』と呼ばれるエキスパートが送られ、火種になりそうなくそ坊主を始末していたのだ。
ただし、『火消し』は少ない。
どこまで対処できるかは未知数である。
少しでも、王都の周辺で暴動が起こることは避けねばならない。
暴動によって政変を起こした男が、暴動におびえると言うのは、滑稽ではある。
しかし、先の暴動は、仕組まれたものでもあり、その火消しはすぐに効果を表す。
まあ、ほとんどがオルレアンのまいた『サクラ』であるし。
部下たちが世論誘導したものである。
つまりは、自作自演。
しかし、周辺領地で起こったものは、それとは違って、自然発生している。
一部の聖職者があおったのは、きっかけに過ぎない。
さあ、風雲急だぞ、ガストン=ド=イシュタール!
君の明日はどっちだ!
銀河の歴史がまた一ページ
ロワール伯爵領から離れること、すでに千キロを越え、峡谷からもすでに一二〇kmを数えると地形は山に入る。
こちらは、最高峰でも一二〇〇メートルくらいしかなく、山のはざまから川が流れ出ている。
その川に沿って、山の間を縫うように狭隘な谷間が延びている。
「山越えルートしかないねんなー。」
カズマは、山のふもとに取り付いて、上を見上げた。
「お屋形さま、どうされますか?」
アリスが、横に来て山を見る。
「そうやな、まずはこのあたりにベースキャンプを作るわ。ちょうど川もあるし。」
山から流れ出た川は、幅三〇メートルほどで、きれいな水を流している。
「すごいな、浄化も必要ない。」
それでも煮沸は必要ですけどね。
そんなマメはいらないって?サーセン
精霊に働きかけて、五〇メートル四方の空き地を作り、そこを高さ三メートルの塀で囲う。
外側には、塀を建てるために土を使うので、その分が掘り割りになる。
軽い扇状地なので、山に向かって少しずつ傾斜しているのが、なんともいい感じな土地だ。
「畑にしたら、いいところだよな。」
「カズマさんは、そんなんばっかしだね。」
勇気はあきれたようにつぶやく。
「そりゃそうだ、俺はもともとノーミンだぜ。」
「なにその緑色のカバみたいなのは。」
「あはは、田んぼたがやして、暮らしていたんだからな。」
「だから、農地?」
「まあな、この国はいいよ、こういう場所がそこらじゅうに余ってる。誰のものでもない。」
「そりゃまあ、もとは樹海ですからね。」
「だからだよ、俺は前から知っていたけど、イシュタールの国民は、海なんか見たこともないんだぞ。」
「そうなん?」
「そうだよ、だって海までの道なんか、この国にはなかったんだから。塩だって、岩塩掘ってたんだからな。」
「へえ、海がない国でも塩があるから、輸入かと思ってた。」
「まあいい、塩の作り方もあとで教えてやるよ、知ってると便利だぞ。」
「ぜひ。」
勇気もずいぶんサバイバル化されてきたようだ。
なにが必要な知識で、なにが有効かを考えるようになってきた。
広場には、そこここに木を残して、さわやかな木陰ができている。
「みんな、家を建てるぞ。」
「「「は~い!」」」
子供たちも心得たもので、連携して家を建てる方法を編み出した。
つまり、一人の力(魔力)だけでは立ち上がらない壁でも、二人の複合魔力でだったら立ち上がることに気がついたのだ。
そこで、魔力の安定しないもの同士で組んで、一面を立ち上げる。
そうすれば子供たちだけでも、小屋の四面が立ち上げられるのだ。
「お師匠さま~、屋根つけて~。」
プルミエも、子供たちに頼まれて、屋根を生成して浮かべている。
「おお!できてるなあ!」
「お屋形さまー!」
「よしよし、じゃあ俺も作るぞ!」
カズマも、その近くに二階建ての大きな館を立ち上げる。
このところ、同じ建物ばかり作っているので、魔力消費がずいぶん減った。
当初立てたころに比べれば、魔力量が半分だ。
みょみょみょ…と、いつもの音がして、家が立ち上がる様は大昔のサリーちゃん時代から変わらない。
まあ、魔法が万能でないことは、最近になって確立してきた思考であるが、それでも魔法使いのイメージ力で、その成り立ちが変わる。
カズマのイメージ力は、ほかに類を見ないほど広大で精細だ。
だからこそ、王国の人民にはできないことができる。
現代教育も、満更でない。
ミニマムなところでは、分子レベルで融合が可能なのは、その組成を知識として取り入れているからだ。
だから、ほかではできない強固な結びつきが作れる。
木材と石材の融合など、地球の一般常識ではありえないが、ここにはできる。
カズマはアリスティアといっしょになって、木材をレーザーで刻む。
簡単に板材などが供給される。
「ラルにーちゃん、かまど作って。」
「わかった。」
細工の得意なラルは、部屋の中の小物などを作っている。
瞬く間に出来上がっていく、小さな村。
住民の中にも、土魔法の使えるものがいて、小さな住居が増えていく。
都合一二〇~一三〇人が余裕で暮らせる村となった。
「塀が低いかなあ?」
カズマがぼやいていると、ゴルテスがウサギをもってやってきた。
「低ぅござるか?」
「どう思う?」
「そうそうラプトルドラゴンなどは出ませんぞ。」
「そりゃまあそうだけど。」
「では、もう一段だけ上げればよろしかろう?」
「そうするか。」
「お屋形さま、僕も手伝いますよ。」
ウォルフが手伝いにやってきた。
カズマは、ウォルフと壁の強化に行ってしまった。
ゴルテスは、ウサギを持ち上げると集落に向かって歩き出す。
「しかし、急に人が増えて、食料が気になるところじゃのう。」
確かに、ウサギ一匹では一回の食事で十人もいればなくなってしまう。
「まあ、この辺は小動物にはことかかんがのう。」
ゴルテスが顔を上げると、わあっと城門のほうから声が上がった。
ゴルテスが振り向くと、そこにはオルクス=マルメなどの屈強な男たちがいた。
その手には、ジャイアント=ディアーなどの大型の獲物があり、住民は歓声を上げている。
「ふむ、あれだけあればかなり助かるのう。」
ゴルテスは、ほっと息をついた。
「どうした?」
「マリウスか、いや、最近人数が増えて、食の確保が気になっての。」
「ふむ、まあ気にするまいよ、人の踏み入っていない森じゃ、獲物に事欠きはせんよ。」
マリウスも、手にはウサギが二羽握られている。
普通のウサギではなく、ホーン=ラビットなので、耳を含めて一.二メートルはある。
「それなら良いがのう。」
ゴルテスは、心配そうに眉を寄せる。
「まあ、みんなでがんばれば良いのじゃ、だれか一人に寄りかかることでなくのう。」
ロフノールは快活に笑う。
「そこよ、自分の意思で旅をしていると言うことを、自覚させねばのう。」
心配性のゴルテスは、沸き立つ城門に目を向けると、ため息をついた。
「それはそうじゃ。」
「なかなか、領民と言うものには主体性というものがないからの。」
「それでもじゃ、今回の旅は自らレジオを捨ててきたのだからな。」
「わしらはの、じゃがほかの民は、喰うにこまればお屋形さまに扇動されたと言うかもしれん。」
ゴルテスは忠義の気持ちが強いため、カズマを気遣うのだ。
「それは言うてはならんことじゃろう。」
ロフノールは、少し考え込むように、ゴルテスにつっこんだ。
民主的に考えればそうかもしれないが、ここは封建主義の身分制度がきびしい世界だ。
ゴルテスは、カズマの思考に引っ張られているのかもしれない。
「そこまでやさしい世界ではないぞ。」
ユリウス=ロフノールは、外の森に眼を向けた。
森の上には小さな鳥が群れになって飛んでいる。
それをさらに大きな鳥が上空から襲い、山へ向けて飛んでいく。
「あそこに、鳥の巣があるのかもしれんな。」
子供たちに気をつけるように言おうと、ゴルテスはウサギを持ち上げて歩き出した。
ホーンラビットは、とんがった角を額の真中に生やしていて、それで攻撃してくる。
肉食ウサギとは、また違った危険性を持っているのだ。
ちなみに、肉食ウサギは、ふつうにウサギと呼ばれる。
「は~、お屋形さまたちはすごいねえ、こうしてすぐに町ができちまう。」
ベスおばさんは、館を見上げてため息をついた。
「そんなもの気にしたら、こんな旅できやしないよ。」
マリアおばさんも、その横で水のオケを降ろした。
ここでは、子供たちががんばって井戸まで掘ってしまったのだ。
カズマとプルミエの指導で、めきめきとその力を増している子供たちは、もうじき独り立ちできるほど上達している。
もっとも、土魔法に特化しているので、攻撃のバリエーションに制限がかかっているが。
マリアの持ってきたバケツには、その井戸からくみ上げた水が入っている。
掘ったばかりなので、若干濁りが見えるが、まあ気にするレベルではない。
ひどいときは、泥水ですらすすらなければ、生きていけない時がある。
文明圏ではないのだ。
早々に、街の様相を整えて来た景色を見ながら、ベスとマリアは水を布で濾す作業を始めた。
「濁ったままじゃ、パンにした時泥臭いじゃないか。」
…まあそうですが。
「ベスおばさん?」
「はい。」
声をかけて来たのはティリスである。
「奥さま、どうかなさったんですか?」
「いえ、今日は魔法を使っていないので、お手伝いしますよ。」
「ああ、はい。」
「さっそく、水を浄化しますね。」
ティリスは、簡単にバケツの水から泥を除去した。
「あらま、これはお手数で。」
「はい、発酵の促進もやりますから、中に入りましょう。」
「はい、よろしくお願いしますね。」
ベスとマリアは、かわるがわるアンジェラを抱き上げながら、館に入って行った。
一日で、ほぼ街の形ができあがって、キャラバンの皆はほっと落ち着いた。
兵士の一部は、塀の出入り口にテントを張って、見張りをし始めた。
それぞれが、それぞれの仕事をわきまえているところが、プロっぽい印象を与える。
まあね、あんまりダラダラやってて、魔物に襲われたらたまったもんじゃないものね。
「歩哨の順番を決めるぞ。」
「ああ?昨日の続きからでいいんじゃねえ?」
「いいのか?お前ゆうべも遅かったぞ。」
「でぇじょうぶだよ、昼寝してっから。」
「よけりゃいいけどよ。」
ゲオルグ=ベルンはそんな兵士たちを見回って、休ませた方がいいものは、抜き出して宿舎に放り込んでいた。
夜になって、館の一室でカズマを中心に、プルミエ、ウォルフ、ゴルテス、ゲオルグなどが集まっていた。
「ここから五〇kmくらいで、山塊は抜ける。そこからは扇状地になっていて、山から平野にむけて一気に開けるんだ。」
「そうすると?」
「そこが、俺たちの目指す、ロワール海岸だよ。」
座は一気に明るくなった。
「おほ!じゃあ、この旅もあと少しですね。」
「そう言うことだ、俺とプルミエは、明日山を回りながら道のルートを確認してくる、お前たちはここの警備を厳重にしていてくれ。」
「なにかあるんでござるか?」
ゴルテスが、言葉尻を捕まえた。
「うん、今日上空で偵察したところでは、ドードー鳥が二〇羽ほど近くにいる。」
「ドードー!」
ゲオルグは、大きな目を丸くして立ち上がった。
「まあな、ここのメンバーで囲んで、タコ殴りにすれば一羽くらいは、すぐにやっつけられると思うが、数がまとまるとヤバいな。」
「そうですな、奥方のマジックアローとホーミングレーザーが頼みですな。」
「そう、遠距離からの攻撃がベストだ、だからできるかぎり柵の入り口の強化を頼む。」
「なるほど、丸太をふやすのですな。」
「そうそう、その辺から木を切ってきて、入り口をふさいでくれ。」
「けっこうですな、子供たちの土魔法で、その上に土をかぶせましょう。」
「ああ、それでいい。今のところ、脅威になりそうなのはそのくらいだが、ホーンラビットがけっこういるし、子供たちが外に出ないようにしてくれ。」
「かしこまってござる。」
子供好きなゴルテスに任せておけば、安全は確保されるだろう。
「では、今夜はこれまでだ、解散。」
がたがたといすを揺らして、みんなが外に出て行った。
「どうした?ラル。」
「お屋形さま、ランドランサーを教えてよ。」
「ああ、あれか?」
「うん、あれならドードーにもきくだろう?」
「そうだな、じゃあちょっとやるか。」
カズマは、ラルを連れて外に出た。
「やりかたは普段と大した変りはないぞ、問題はどこまで固くできるかにかかってるんだ。」
そう言いながら、カズマの前には二メートルほどの土の槍が出来上がっている。
土の色そのままだが、固く固められているので、ぴかぴかと光っている。
「こうかな?」
ラルの前に、徐々に槍が形作られて行く。
「ああ!」
槍は作るそばから、ぼろぼろと崩れて行く。
「まだまだ、固め方が足りんぞ、もっと固く固くするんだ。」
「はい!」
ラルは、額に汗を浮かべて、何度も何度も槍を作り続けた。
内容もハードです。
自分にこんな文章が書けるとは思いませんでした。
あえて、言い訳なしで、いっちゃいます。
ゲルマニア皇帝の執務室は豪華である。
この点、王国の国王とは趣味が正反対だ。
皇帝の執務室は、広く、学校の教室ほどもある。
天井にはフレスコ画。
壁には、王家の紋章、立ち上がる獅子の図柄がずらりと並ぶ。
えんじ色の壁紙に、金で描かれているのだ。
まあ、これも慣れと言う物なのだろう、皇帝はその中で地味に書類を片付けている。
これが、ほぼ毎日続く。
いいかげん、うんざりしそうな気がするが、実際にはこれが責任と言うものだ。
そんな中、侍従がそっと近づいてきた。
皇帝の執務中に近づけるのは、この侍従だけである。
「陛下、魔法師団の副師団長様がお越しでございます。」
「ふむ、通せ。」
わずかな逡巡の間に、皇帝は一枚の書類にサインをしてから、侍従に告げた。
「は。」
侍従もわかっているから、仕事が早い。
ほどなく、侍従に案内されて、帝国魔法師団の副師団長がその細い顔を見せた。
「陛下、お忙しい中、お時間をいただき恐悦の極み。」
慇懃にその黒いローブをひるがえして膝まづく。
「まあよい、そこに座れ。」
「は、失礼します。」
副団長ミヒャエル=フォン=シューマハーは、かしこまって三人がけソファに座った。
その動作には、軍人らしくよどみがない。
「それで?なにか目新しいことでもあったか?」
「は、朗報でございます。」
「ほう、王国を蹂躙する手立てでもできたか?」
「いえ、恐ろしいものを発見しました。」
「てみじかに申せ、時間がもったいない。」
「は、かしこまりました。発見したのは三つ首でございます。」
シューマハーは、ソファの前の小さなテーブルに、地図を広げた。
「三つ首?ケルベロスか?」
「いえ、伝説のアレでございます。」
「まさか、そんなものが本当に存在するのか?」
「は、私の手の者が、ロマーニャ国境付近で発見しました。」
地図のとある一点を指で示して言う。
「しかし、そんなものをどうせよと言うのだ?人の手におえるようなものか?」
「わかり申さず。しかし、その付近には古代の遺跡も同時に発見され、制御に関する術式が散見されております。」
さらに、若干右に指をずらした。
「ううむ、もし制御がかのうものなら恐ろしいことになるぞ、かの青竜に匹敵するではないか。」
「御意!」
「よし、運用に関しては即刻会議にかけよう。お前は、制御術式について徹底して調査するのだ。」
「は、かしこまりました。」
伝説の三つ首竜が発見されたはいいんだが、ゲルマニアは本気でそれを運用するつもりだろうか?
古代の帝国で、破壊の限りを尽くし、このイシュタール大陸のすべてが焼き尽くされるところだった。
この時は、マートモンスからやってきた赤竜が、苦難の末に封印したと言う。
青竜メルミリアスのように、話が通じるあいてとは思えないのだが?
しかし、そんなトンデモ怪物に頼るのかは、別にして、ゲルマニアの兵士たちは着々と実戦に向けて訓練が進んでいった。
そう、それこそが本来の、覇権へのアプローチである。
ゲルマニアは、徹底した歩兵による蹂躙を得意とする。
その後ろから、重装騎士により歩兵の粉砕を行う。
二重の構えである。
俗に言う『武田の騎馬隊』のような運用である。
常備兵の攻撃に使える部隊は、二万人ほどである。
さて、鉄腕ミューラーに代わる指揮官は、だれがよいか…
「ミューラーめ、すっかりレジオ男爵に骨抜きにされおって、なにが『漢(おとこ)は漢(おとこ)を知る』だ、くだらん。」
鉄腕ミューラーは、どうもカズマに感化されて、卑怯な戦法には断固反対なようだ。
おかげで、先鋒に使うことができない。
帝国にしてみれば、余計なファクターは暗殺してでも減らしたいのが本音だ。
こんなきれいごとで、国の維持ができるものではない。
だから、苦慮しているというのに、お気楽なことを言いおって!
人選に苦慮している皇帝であった。
イシュタール王国では信長式に、馬防柵を張り巡らせて、魔法による遠隔攻撃が有効と思われるが、果たしてそんな運用を考えられているのか…
なぜなら王国では、そんなことよりもさらに深刻な問題がはびこっていたのだ。
『わあああ!伯爵を殺せー!』
『貴族のくそやろー!』
『パンをよこせー!』
口々にわめきながら、貴族の館を取り囲む民衆。
その数は、三千人とも五千人とも言われている。
データがないので、正確にはわからないが、バイヨンヌ伯爵領には八万人ほどの人口があり、領都には三万人住んでいる。
その九十八%が平民である。
きっかけは、ささいな行き違いだった。
ちゃんと説明すればトラブルには至らなかったろう。
しかし、起こるべくして起こった。
王都北西部のバイヨンヌ伯爵領では、大規模な飢饉を受けて、領地内の食糧が不足していた。
エスパーニャ国境にほど近いこの領地は普段は作物の実りも良い、しかし、地域的な干ばつや飢饉は、容赦がない。
王都で政変がおこったころ、こちらでは領民が飢えていた。
ないものは、逆さに振っても鼻血も出ない。
赤子に飲ませるミルクもない。
子供に食べさせる芋もない。
あるものは、山に木の実を取りに行って、魔物に襲われた。
別のものは、イノシシと戦い敗れ去った。
もはや、倉庫に麦粒一つ残っていなかった。
過酷な徴税は、王都からの要請で、さらに厳しくなり、収量の減少がそれに拍車をかける。
実は、この飢饉の報告は、王都にもたらされていた。
しかし、折悪しく政変と前後したため、報告が遅れているのである。
情報は錯綜し、正確な通信も阻害された。
そのうえ、今回の増税措置である。
ガストンの覇権への動きは、こんな末端まで苦しめていた。
こうなればもはや、明日の命すら危うくなってしまった民衆たち。
貴族の館は、十重二十重に囲まれた。
「どうなっているのだ!なぜ民衆が!」
「伯爵さま、オシリス教の聖職者が先導しております!」
「なんと、あの温厚な者たちがか?」
「いえ、一部の過激派が蜂起した模様で。」
一部の聖職者は、聖堂騎士団と結託し、武力を持とうとしたのだ。
いや、すでに『持とう』ではない、『持った』である。
「ぐうう~くそ坊主どもが、王都からの支援はまだか!」
「いまだ、着き申さず!」
「門の前に土嚢を積むのだ!」
伯爵、積むものが違っているよ!
「お屋形さま!間に合いませず!」
「「「うわああああああ!!!!」」」
がこおおおおお!
どこから持ってきたのか、巨大な丸太は、数百人の民衆に担がれて、城門にぶつかる。
怒涛のように城門は破られ、民衆がなだれ込むのだ。
バイヨンヌ伯爵とその一党は、暴徒にかこまれ杭で打たれ、鍬で打たれた。
一族は、串刺しにされた首だけとなった。
館には火が放たれ、夜空を黒く焦がして行った。
蔵に納められた、わずかな穀物は民衆にすべて持ち去られた。
あとには、瓦礫のみが残っていた…
「一揆だと?」
オルレアンの長男、ジャン=ポール=マルクス=ド=オルレアンは、そんな報告を受けた。
「は、北西部の農村地帯では、オシリス教徒が集結して、貴族に対して暴動を起こしてございます。」
いやな知らせは早く着くものである。
オルレアン国王の領地では、すでに一揆が盛り上がっていた。
「ううむ、いかがいたしたものか…」
「陸軍騎馬部隊を鎮圧に派遣いたしております。」
「そうか、間に合うと良いが…」
「あやつらは、死ねばオシリス女神の元で、天国に至ると…」
なんとまあ安直な教義ではないか…
『ご注進!』
王都には、若干遅れて鳩が届いた。
これは、地理的な位置の問題であろうが、半日と違ってはいない。
だいたい、このような知らせは、鳩が二十羽は放たれるものである。
「いかがいたした!」
『バイヨンヌ伯爵さま、民衆により斬殺されましてございます!』
「なんと!おそかったか!」
侍従はほぞをかんだ。
「狂信者どもめ~!」
その知らせを受けてガストン国王は、目を血走らせて奥歯を噛みしめた。
王国各地で、飢えに苦しむ人々が蜂起しはじめたのだ。
ガストン=ド=オルレアンの領地で起こった一揆は、オシリス女神の神官に率いられた農民が、手に手にクワやカマを持って立ち上がった。
それに乗るかたちで、国人衆も自分の領地を広げようと、一揆に参加している。
国人衆など勝手なものだ。
オルレアンにしてみれば、晴天の霹靂である。
領地は、長男に任せたのだが、一部の国人衆には軽く見られているようだ。
バロアの娘を婚約者に迎え、いよいよその地盤を磐石にと思った矢先の変事であった。
もちろん、オルレアンに味方する国人衆も居て、一触即発!
きな臭い様相を呈している。
いかにも、国教であるオシリス教が、ゆがんで来たと言わんばかりの出来事に、オルレアン公爵家は脂汗をかいている。
まだ、バイヨンヌのように、オルレアンの領主館まで押し寄せてはいないが、油断は出来ぬ。
街のあちこちの教会や広場では、くそ坊主が説教を始めたと報告が入った。
「急ぎ、くそ坊主をつかまえるのだ!」
オルレアンの長男、ジャン=ポール=マルクス=ド=オルレアンは、近侍に命令する。
「はは!」
いまや、緊張はピークである。
屋敷には、国人衆や地侍が集まり、警戒に当たっている。
この場合、忠義の国人衆もまた、たくさんいるのだ。
「お屋形さま、いかがなさいます?」
「まずは、屋敷の城門を固く閉ざし…いや、そうではないな。蔵にしまってある小麦を一割ほど、城門前に積み上げるのだ。」
「はあ?」
「急げ!家臣一同で運び出せ!そして、城門前に積み上げるのだ!」
「は!ははー!」
マルクスもばかではない、民衆が食い物を求めるのなら、それをエサに怒りを鎮めればよい。
みな、麦を見れば、おとなしくそれを持って帰るだろう。
その間に、国軍を招き、暴徒鎮圧を行うのだ。
オルレアン領の納めた税収は、蔵十個でも足りないほどの量がある。
蔵一個は、中学校の体育館ぐらい大きい。
極秘に作った隠し蔵が十棟。
売却分を抜いても、まだそれほどの量を確保しているのだ。
九十七万石は伊達ではない。
(伊達家・仙台藩は六十二万石であった。)
「まだ、間に合う!」
マルクスは、必死である。
なにしろ、家督を継いだと思ったとたんに、この騒動である。
自分の存在意義を賭けて、ことに対処しなくてはならない。
うるさい親父がいなくなったのだ、自分のえがいた内政を進めたかった。
それも、領地が安定していてこそである。
慌てふためく家臣をしかりつけ、家老を蹴飛ばす。
「財務卿!ザギトワ財務卿を呼べ!」
「はは!」
「財務卿ザギトワ・ここに!」
「おう、いま動かせる表の麦はいかほどか!」
「されば、現状三十八万石は確保しております。その他は売却により手元にはございません!」
流石は財務卿ザギトワ男爵、書付けも見ずにすらすらと答える。
「そうか…それほどの備蓄があれば、暴動が起こってもなんとかなりそうだな。」
「はは!若さまの判断は、ベストでございましょう。城門前の庇の下に、一気に麦を積み上げるのが最良でございます。」
「そうか…お主に認めてもらえて安心した。」
「私は、オルレアン家の財務卿でございます。」
「すまぬ、ザギトワ卿、エリシアのいる奥には、特に兵士を厚くな。」
「かしこまってございます。それは、侍従殿にお伝えいたします。」
「そうであったな、畑違いか。」
「御意!」
屋敷の奥の院には、ジャン=ポールの母や、妹が住んでいる。
ザギトワの娘も、侍女として妹のそばにいる。
つい、命じてしまったが、それは財務卿の分に過ぎるのだ。
忠義に厚く、侍従とは友誼に厚い。
男ザギトワ、算盤は持ってはいても、武士にござる。
ガストン国王も必死になってきた、なにしろ近衛の兵士がごっそりいなくなったのだ。
城を守る兵士は、急いで陸軍から補充したが、その分陸軍からは兵士が減っている。
もちろん、募集はかけたが果たして、どのくらいの補充ができるのか…
前述、軍国主義にと言っていたが、まるで主義主張をあざ笑うかのごとく、軍の弱体化が起こってしまった。
何しろ近衛隊では、みな正式な書式での退職願である、受理しないわけにはいかない。
故郷ガーとか、親ガーとか言われたら、さすがに引きとめられない。
しかし、千八百人近い退職者である。
将軍、シモン=ジョルジュの責任は測り知れない。
しかし、その責任を取るという形で、ジョルジュ将軍も進退を伺っている。
身は謹慎と称して、館にこもってしまった。
近衛隊の収拾にも時間がかかりそうである。
国中に『お触れ』を出して、兵士を募集しているが、すぐにはやってこないのである。
国教会を破壊したのはカズマであるが、坊主どもを根切りにしたのはオルレアンたち革命軍である。
その出来事に、教国は、王国の破門を検討に入った。
次の派遣枢機卿を決める、コンクラーベでは、王国への行き手がないのが実情である。
まさに根競べ。
こういう場合は、得てして若手に押し付けるのが常道である。
今回も、一番若い枢機卿が、貧乏くじを引いたようだ。
若干二十六歳のマルチェロ=マストロヤンニ枢機卿がそうである。
かわいそうに。
彼は、これからイシュタール王国について深く学び、国教会の大僧正として派遣されるのだ。
まあ、ていのいい左遷人事とも言うな。
このあと、かなり経ってから、カズマは王都のノートルダム大聖堂を復旧することになるのだ。
この際は、国軍などと贅沢は言っておられない。
ガストン国王は、国の予算を絞り出させ、一人でも多くの兵士を揃えなければならない。
まさに、暗雲立ち込めるイシュタール王国である。
この時、軍直属の暗部は、多数の素っ破を送り出し、王都周辺の領地を探らせた。
なにしろ、どこに火種があるかわからない。
俗に『火消し』と呼ばれるエキスパートが送られ、火種になりそうなくそ坊主を始末していたのだ。
ただし、『火消し』は少ない。
どこまで対処できるかは未知数である。
少しでも、王都の周辺で暴動が起こることは避けねばならない。
暴動によって政変を起こした男が、暴動におびえると言うのは、滑稽ではある。
しかし、先の暴動は、仕組まれたものでもあり、その火消しはすぐに効果を表す。
まあ、ほとんどがオルレアンのまいた『サクラ』であるし。
部下たちが世論誘導したものである。
つまりは、自作自演。
しかし、周辺領地で起こったものは、それとは違って、自然発生している。
一部の聖職者があおったのは、きっかけに過ぎない。
さあ、風雲急だぞ、ガストン=ド=イシュタール!
君の明日はどっちだ!
銀河の歴史がまた一ページ
ロワール伯爵領から離れること、すでに千キロを越え、峡谷からもすでに一二〇kmを数えると地形は山に入る。
こちらは、最高峰でも一二〇〇メートルくらいしかなく、山のはざまから川が流れ出ている。
その川に沿って、山の間を縫うように狭隘な谷間が延びている。
「山越えルートしかないねんなー。」
カズマは、山のふもとに取り付いて、上を見上げた。
「お屋形さま、どうされますか?」
アリスが、横に来て山を見る。
「そうやな、まずはこのあたりにベースキャンプを作るわ。ちょうど川もあるし。」
山から流れ出た川は、幅三〇メートルほどで、きれいな水を流している。
「すごいな、浄化も必要ない。」
それでも煮沸は必要ですけどね。
そんなマメはいらないって?サーセン
精霊に働きかけて、五〇メートル四方の空き地を作り、そこを高さ三メートルの塀で囲う。
外側には、塀を建てるために土を使うので、その分が掘り割りになる。
軽い扇状地なので、山に向かって少しずつ傾斜しているのが、なんともいい感じな土地だ。
「畑にしたら、いいところだよな。」
「カズマさんは、そんなんばっかしだね。」
勇気はあきれたようにつぶやく。
「そりゃそうだ、俺はもともとノーミンだぜ。」
「なにその緑色のカバみたいなのは。」
「あはは、田んぼたがやして、暮らしていたんだからな。」
「だから、農地?」
「まあな、この国はいいよ、こういう場所がそこらじゅうに余ってる。誰のものでもない。」
「そりゃまあ、もとは樹海ですからね。」
「だからだよ、俺は前から知っていたけど、イシュタールの国民は、海なんか見たこともないんだぞ。」
「そうなん?」
「そうだよ、だって海までの道なんか、この国にはなかったんだから。塩だって、岩塩掘ってたんだからな。」
「へえ、海がない国でも塩があるから、輸入かと思ってた。」
「まあいい、塩の作り方もあとで教えてやるよ、知ってると便利だぞ。」
「ぜひ。」
勇気もずいぶんサバイバル化されてきたようだ。
なにが必要な知識で、なにが有効かを考えるようになってきた。
広場には、そこここに木を残して、さわやかな木陰ができている。
「みんな、家を建てるぞ。」
「「「は~い!」」」
子供たちも心得たもので、連携して家を建てる方法を編み出した。
つまり、一人の力(魔力)だけでは立ち上がらない壁でも、二人の複合魔力でだったら立ち上がることに気がついたのだ。
そこで、魔力の安定しないもの同士で組んで、一面を立ち上げる。
そうすれば子供たちだけでも、小屋の四面が立ち上げられるのだ。
「お師匠さま~、屋根つけて~。」
プルミエも、子供たちに頼まれて、屋根を生成して浮かべている。
「おお!できてるなあ!」
「お屋形さまー!」
「よしよし、じゃあ俺も作るぞ!」
カズマも、その近くに二階建ての大きな館を立ち上げる。
このところ、同じ建物ばかり作っているので、魔力消費がずいぶん減った。
当初立てたころに比べれば、魔力量が半分だ。
みょみょみょ…と、いつもの音がして、家が立ち上がる様は大昔のサリーちゃん時代から変わらない。
まあ、魔法が万能でないことは、最近になって確立してきた思考であるが、それでも魔法使いのイメージ力で、その成り立ちが変わる。
カズマのイメージ力は、ほかに類を見ないほど広大で精細だ。
だからこそ、王国の人民にはできないことができる。
現代教育も、満更でない。
ミニマムなところでは、分子レベルで融合が可能なのは、その組成を知識として取り入れているからだ。
だから、ほかではできない強固な結びつきが作れる。
木材と石材の融合など、地球の一般常識ではありえないが、ここにはできる。
カズマはアリスティアといっしょになって、木材をレーザーで刻む。
簡単に板材などが供給される。
「ラルにーちゃん、かまど作って。」
「わかった。」
細工の得意なラルは、部屋の中の小物などを作っている。
瞬く間に出来上がっていく、小さな村。
住民の中にも、土魔法の使えるものがいて、小さな住居が増えていく。
都合一二〇~一三〇人が余裕で暮らせる村となった。
「塀が低いかなあ?」
カズマがぼやいていると、ゴルテスがウサギをもってやってきた。
「低ぅござるか?」
「どう思う?」
「そうそうラプトルドラゴンなどは出ませんぞ。」
「そりゃまあそうだけど。」
「では、もう一段だけ上げればよろしかろう?」
「そうするか。」
「お屋形さま、僕も手伝いますよ。」
ウォルフが手伝いにやってきた。
カズマは、ウォルフと壁の強化に行ってしまった。
ゴルテスは、ウサギを持ち上げると集落に向かって歩き出す。
「しかし、急に人が増えて、食料が気になるところじゃのう。」
確かに、ウサギ一匹では一回の食事で十人もいればなくなってしまう。
「まあ、この辺は小動物にはことかかんがのう。」
ゴルテスが顔を上げると、わあっと城門のほうから声が上がった。
ゴルテスが振り向くと、そこにはオルクス=マルメなどの屈強な男たちがいた。
その手には、ジャイアント=ディアーなどの大型の獲物があり、住民は歓声を上げている。
「ふむ、あれだけあればかなり助かるのう。」
ゴルテスは、ほっと息をついた。
「どうした?」
「マリウスか、いや、最近人数が増えて、食の確保が気になっての。」
「ふむ、まあ気にするまいよ、人の踏み入っていない森じゃ、獲物に事欠きはせんよ。」
マリウスも、手にはウサギが二羽握られている。
普通のウサギではなく、ホーン=ラビットなので、耳を含めて一.二メートルはある。
「それなら良いがのう。」
ゴルテスは、心配そうに眉を寄せる。
「まあ、みんなでがんばれば良いのじゃ、だれか一人に寄りかかることでなくのう。」
ロフノールは快活に笑う。
「そこよ、自分の意思で旅をしていると言うことを、自覚させねばのう。」
心配性のゴルテスは、沸き立つ城門に目を向けると、ため息をついた。
「それはそうじゃ。」
「なかなか、領民と言うものには主体性というものがないからの。」
「それでもじゃ、今回の旅は自らレジオを捨ててきたのだからな。」
「わしらはの、じゃがほかの民は、喰うにこまればお屋形さまに扇動されたと言うかもしれん。」
ゴルテスは忠義の気持ちが強いため、カズマを気遣うのだ。
「それは言うてはならんことじゃろう。」
ロフノールは、少し考え込むように、ゴルテスにつっこんだ。
民主的に考えればそうかもしれないが、ここは封建主義の身分制度がきびしい世界だ。
ゴルテスは、カズマの思考に引っ張られているのかもしれない。
「そこまでやさしい世界ではないぞ。」
ユリウス=ロフノールは、外の森に眼を向けた。
森の上には小さな鳥が群れになって飛んでいる。
それをさらに大きな鳥が上空から襲い、山へ向けて飛んでいく。
「あそこに、鳥の巣があるのかもしれんな。」
子供たちに気をつけるように言おうと、ゴルテスはウサギを持ち上げて歩き出した。
ホーンラビットは、とんがった角を額の真中に生やしていて、それで攻撃してくる。
肉食ウサギとは、また違った危険性を持っているのだ。
ちなみに、肉食ウサギは、ふつうにウサギと呼ばれる。
「は~、お屋形さまたちはすごいねえ、こうしてすぐに町ができちまう。」
ベスおばさんは、館を見上げてため息をついた。
「そんなもの気にしたら、こんな旅できやしないよ。」
マリアおばさんも、その横で水のオケを降ろした。
ここでは、子供たちががんばって井戸まで掘ってしまったのだ。
カズマとプルミエの指導で、めきめきとその力を増している子供たちは、もうじき独り立ちできるほど上達している。
もっとも、土魔法に特化しているので、攻撃のバリエーションに制限がかかっているが。
マリアの持ってきたバケツには、その井戸からくみ上げた水が入っている。
掘ったばかりなので、若干濁りが見えるが、まあ気にするレベルではない。
ひどいときは、泥水ですらすすらなければ、生きていけない時がある。
文明圏ではないのだ。
早々に、街の様相を整えて来た景色を見ながら、ベスとマリアは水を布で濾す作業を始めた。
「濁ったままじゃ、パンにした時泥臭いじゃないか。」
…まあそうですが。
「ベスおばさん?」
「はい。」
声をかけて来たのはティリスである。
「奥さま、どうかなさったんですか?」
「いえ、今日は魔法を使っていないので、お手伝いしますよ。」
「ああ、はい。」
「さっそく、水を浄化しますね。」
ティリスは、簡単にバケツの水から泥を除去した。
「あらま、これはお手数で。」
「はい、発酵の促進もやりますから、中に入りましょう。」
「はい、よろしくお願いしますね。」
ベスとマリアは、かわるがわるアンジェラを抱き上げながら、館に入って行った。
一日で、ほぼ街の形ができあがって、キャラバンの皆はほっと落ち着いた。
兵士の一部は、塀の出入り口にテントを張って、見張りをし始めた。
それぞれが、それぞれの仕事をわきまえているところが、プロっぽい印象を与える。
まあね、あんまりダラダラやってて、魔物に襲われたらたまったもんじゃないものね。
「歩哨の順番を決めるぞ。」
「ああ?昨日の続きからでいいんじゃねえ?」
「いいのか?お前ゆうべも遅かったぞ。」
「でぇじょうぶだよ、昼寝してっから。」
「よけりゃいいけどよ。」
ゲオルグ=ベルンはそんな兵士たちを見回って、休ませた方がいいものは、抜き出して宿舎に放り込んでいた。
夜になって、館の一室でカズマを中心に、プルミエ、ウォルフ、ゴルテス、ゲオルグなどが集まっていた。
「ここから五〇kmくらいで、山塊は抜ける。そこからは扇状地になっていて、山から平野にむけて一気に開けるんだ。」
「そうすると?」
「そこが、俺たちの目指す、ロワール海岸だよ。」
座は一気に明るくなった。
「おほ!じゃあ、この旅もあと少しですね。」
「そう言うことだ、俺とプルミエは、明日山を回りながら道のルートを確認してくる、お前たちはここの警備を厳重にしていてくれ。」
「なにかあるんでござるか?」
ゴルテスが、言葉尻を捕まえた。
「うん、今日上空で偵察したところでは、ドードー鳥が二〇羽ほど近くにいる。」
「ドードー!」
ゲオルグは、大きな目を丸くして立ち上がった。
「まあな、ここのメンバーで囲んで、タコ殴りにすれば一羽くらいは、すぐにやっつけられると思うが、数がまとまるとヤバいな。」
「そうですな、奥方のマジックアローとホーミングレーザーが頼みですな。」
「そう、遠距離からの攻撃がベストだ、だからできるかぎり柵の入り口の強化を頼む。」
「なるほど、丸太をふやすのですな。」
「そうそう、その辺から木を切ってきて、入り口をふさいでくれ。」
「けっこうですな、子供たちの土魔法で、その上に土をかぶせましょう。」
「ああ、それでいい。今のところ、脅威になりそうなのはそのくらいだが、ホーンラビットがけっこういるし、子供たちが外に出ないようにしてくれ。」
「かしこまってござる。」
子供好きなゴルテスに任せておけば、安全は確保されるだろう。
「では、今夜はこれまでだ、解散。」
がたがたといすを揺らして、みんなが外に出て行った。
「どうした?ラル。」
「お屋形さま、ランドランサーを教えてよ。」
「ああ、あれか?」
「うん、あれならドードーにもきくだろう?」
「そうだな、じゃあちょっとやるか。」
カズマは、ラルを連れて外に出た。
「やりかたは普段と大した変りはないぞ、問題はどこまで固くできるかにかかってるんだ。」
そう言いながら、カズマの前には二メートルほどの土の槍が出来上がっている。
土の色そのままだが、固く固められているので、ぴかぴかと光っている。
「こうかな?」
ラルの前に、徐々に槍が形作られて行く。
「ああ!」
槍は作るそばから、ぼろぼろと崩れて行く。
「まだまだ、固め方が足りんぞ、もっと固く固くするんだ。」
「はい!」
ラルは、額に汗を浮かべて、何度も何度も槍を作り続けた。
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