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第九十一話 海を持つ国(十二)
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あ~やっぱり、まったり回があったわ~(笑)
次に、ハード回が入るので、待ってる人は、お楽しみにしてください。
「お屋形さまが出かけてすぐ、産気づいてございます。」
アリスティアは、淡々と説明する。
「で?」
「で?」
「だから、男か?女か?」
「はい、りっぱな男の子でございます。」
「でかした!恵理子!よくがんばったな、ありがとう。」
恵理子は、疲れた顔に笑みを浮かべた。
出産から三日もすると、少しは回復するものである。
また、周りには回復魔法の使い手が何人もいる。
出産の疲れも、苦痛もいまは取り除かれている。
「ティリスさまやアリス様が、これでもかとヒールをかけてくださって、回復してございますよ。」
恵理子は、くすくすと笑いながら、カズマを見上げた。
カズマは、ベッドの端に腰掛けて、恵理子の手を取った。
「苦しかったか?苦労をかけるな。」
ちなみに、ティリスとアリスに回復魔法をがんがんかけられた結果、恵理子の近視も治ってしまったという、おまけまでついた。
ティリスは、ため息をついてそれを眺めてから、アリスを見た。
アリスは、肩をすくめる。
「これだから殿は、困るのよね。」
「なんだ?」
「い~え、お屋形さまはおやさしいと申しておりますの。」
「?」
「まあ、恵理子さまは回復もお早くて、いつでも歩くことが可能です。」
「そうか?」
「ですが、馬車でのお旅は、まだまだ…」
「いや、此度はゲートを開く。」
「まあ!ゲートをでございますか?」
「さようじゃ、準備をいたせ。」
ティリスとアリスティアは、メイドたちに指示を出し、恵理子の荷物をまとめた。
もともと旅の途中であり、荷物自体もそれほど広げてはいない。
身の回りのものを、少々出した程度である。
カズマの空間魔法は、ひところより強力になっており、魔法の皮袋の性能も上がっている。
家屋敷ですら、ゆうゆう引越しできるほどの能力を持つ。
部屋の隅にゲートを開き、ティリスとアンジェラを先頭に、次々と新レジオに送り出されていった。
カズマは、キャンプに残り、歩いて山を越える者たちに同行した。
一日をかけて、山の峠まで上がり、そこで一泊。
下りで二泊。
住民たちにも、疲労の色は見られず、三日目にして城門を見たとき、住民たちは歓声を上げた。
「「「やたー!」」」
「すごい、レジオだ!」
「ここからでも見えるなんて!」
いまだ、六〇キロの距離を隔ててはいるが、住民たちの喜びはひとしおであった。
長い旅も、もうじき終り、新しい都での生活が始まる。
その一点において、レジオの住民には抗いがたい喜びを覚えるのであった。
カズマは、そのぶんプレッシャーを感じてはいるのだが、よくよく考えてほしい。
都市と言うコミュニティは、けして一人の力で循環しうるものではないと言うことを。
カズマ一人におんぶにだっこで、村社会が成り立つはずもない。
住民一人一人の覚悟と、努力が結集して平穏な社会が立ち上がるのである。
「お屋形さま!あれはなんですか?」
カリーナが指差して聞いた。
「あれが海だ、あれ全部が水なんだぞ。」
「うわ~すごい、あれ全部?」
「そうだ、着いたら見に行こう。」
「はい!」
はしゃぐ子供たちを横目に、ゆっくりと馬の頭を眼下の街道に向ける。
扇状地の要に立って、皆が海に目を向けた。
晴れ渡った海は、光を反射して美しい。
「さあ、行こう。」
カズマの声に、一同足を踏み出した。
やっと、新しい生活が始まるのだ。
長いたびも、あと少しで終わりを告げる。
少々の魔物の出現など、物の数ではなかった。
次に、ハード回が入るので、待ってる人は、お楽しみにしてください。
「お屋形さまが出かけてすぐ、産気づいてございます。」
アリスティアは、淡々と説明する。
「で?」
「で?」
「だから、男か?女か?」
「はい、りっぱな男の子でございます。」
「でかした!恵理子!よくがんばったな、ありがとう。」
恵理子は、疲れた顔に笑みを浮かべた。
出産から三日もすると、少しは回復するものである。
また、周りには回復魔法の使い手が何人もいる。
出産の疲れも、苦痛もいまは取り除かれている。
「ティリスさまやアリス様が、これでもかとヒールをかけてくださって、回復してございますよ。」
恵理子は、くすくすと笑いながら、カズマを見上げた。
カズマは、ベッドの端に腰掛けて、恵理子の手を取った。
「苦しかったか?苦労をかけるな。」
ちなみに、ティリスとアリスに回復魔法をがんがんかけられた結果、恵理子の近視も治ってしまったという、おまけまでついた。
ティリスは、ため息をついてそれを眺めてから、アリスを見た。
アリスは、肩をすくめる。
「これだから殿は、困るのよね。」
「なんだ?」
「い~え、お屋形さまはおやさしいと申しておりますの。」
「?」
「まあ、恵理子さまは回復もお早くて、いつでも歩くことが可能です。」
「そうか?」
「ですが、馬車でのお旅は、まだまだ…」
「いや、此度はゲートを開く。」
「まあ!ゲートをでございますか?」
「さようじゃ、準備をいたせ。」
ティリスとアリスティアは、メイドたちに指示を出し、恵理子の荷物をまとめた。
もともと旅の途中であり、荷物自体もそれほど広げてはいない。
身の回りのものを、少々出した程度である。
カズマの空間魔法は、ひところより強力になっており、魔法の皮袋の性能も上がっている。
家屋敷ですら、ゆうゆう引越しできるほどの能力を持つ。
部屋の隅にゲートを開き、ティリスとアンジェラを先頭に、次々と新レジオに送り出されていった。
カズマは、キャンプに残り、歩いて山を越える者たちに同行した。
一日をかけて、山の峠まで上がり、そこで一泊。
下りで二泊。
住民たちにも、疲労の色は見られず、三日目にして城門を見たとき、住民たちは歓声を上げた。
「「「やたー!」」」
「すごい、レジオだ!」
「ここからでも見えるなんて!」
いまだ、六〇キロの距離を隔ててはいるが、住民たちの喜びはひとしおであった。
長い旅も、もうじき終り、新しい都での生活が始まる。
その一点において、レジオの住民には抗いがたい喜びを覚えるのであった。
カズマは、そのぶんプレッシャーを感じてはいるのだが、よくよく考えてほしい。
都市と言うコミュニティは、けして一人の力で循環しうるものではないと言うことを。
カズマ一人におんぶにだっこで、村社会が成り立つはずもない。
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「お屋形さま!あれはなんですか?」
カリーナが指差して聞いた。
「あれが海だ、あれ全部が水なんだぞ。」
「うわ~すごい、あれ全部?」
「そうだ、着いたら見に行こう。」
「はい!」
はしゃぐ子供たちを横目に、ゆっくりと馬の頭を眼下の街道に向ける。
扇状地の要に立って、皆が海に目を向けた。
晴れ渡った海は、光を反射して美しい。
「さあ、行こう。」
カズマの声に、一同足を踏み出した。
やっと、新しい生活が始まるのだ。
長いたびも、あと少しで終わりを告げる。
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