幸せだったかも、なんてね

真憂

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幸せだったかも、なんてね~彼女の視点~

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幼い頃から何不自由なく暮らしてきた。少し過保護だけど優しい両親。明るいタイプだったから友達にも不自由しなかった。でもある時言われたのだ。

「目が笑ってない」と。

私自身自分の内面がよく分かってなかった。両親の事も友達の事も好きだ。でもある時自覚してしまったのだ。

「私は自分の事が好きじゃない」

何故好きじゃないのか全く理由が分からなかった。愛されて育ってきたし、友達にハブられたりしたことさえもない。自己嫌悪の出所が分からない。そのまま大学生まで生きてきて、彼と出会った。

彼は本当にいい恋人で、私の事を本当に大切にしてくれた。でも大切にされればされる程、胸の中で気持ち悪い何かが疼くのだ。

「私は幸せになっちゃいけない」

そんな思いが膨れ上がっていた時、そろそろ社会人だし、と彼に結婚を申し込まれた。何の不満もなかった。でも私は言っていた。

「ごめん、ちょっと考えさせてくれる?」

その翌日。私は彼に電話をした。

「もう別れよう」

「何で!?」

「死ぬためには別れないとでしょ、私これから死ぬから」

「死ぬってどういう事だよ!?悩みや話があるんだったら聞くよ、だから今まで通り…」

「ごめん、自分勝手な事をしてると思う。でももう押さえきれないの。この欲求が」

「言ってることがよく分からないよ、死ぬ理由はあるの?」

「ない」そこで電話を切った。

そう私は理由もなく死にたいのだ。何故かは分からない。でも生まれた時から興味がある分野が決まっているように、私は死に興味を持つことが必然だった気がした。

ビルの手すりを乗り越える。これまでの人生を思い出す。はじめて両親が誕生日を祝ってくれた時の記憶。いや、私の記憶のない時から祝ってくれていたのだろう。友達と遊んだ記憶。私の「目が笑ってない」と本質を見抜いたあの娘なら、私の何かを変えてくれただろうか。ちなみにその発言の周りの反応は「何言ってんの?こんなに明るいじゃん」というものだった。いっそ分かりやすく陰キャで暗くて友達もいなければ、もっと分かりやすい闇だったかもしれない。でも私の闇はもっと出所がない、理由もない対処のしようもないものだった。

「幸せだったかも、なんてね」

それが私の最期の言葉になった。彼女はビルから迷いもなく飛び降りた。
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