乙女ゲームの主人公に転生した私は、BADENDを避ける為に悪役令嬢と仲良くしようと思います

ヨッシー

文字の大きさ
3 / 14
第一章 魔法学校入学前

02.父親

しおりを挟む
 母は鍋の火を止め、トレーに二人前の食事を乗せ、食卓に運ぶ。
 私達はテーブルの前に向かい合う様に腰を下ろす。

「では頂きましょうか?」
「はい、ママ」

 お互いに手を合わせ........

「頂きます!」
「頂きます!」

 食材に感謝を告げる。
 私はスープを口に運ぶ。

 ...............薄い。
 
 具材は入っておらず、緩いお湯。
 塩すら入っていない。
 まあこの時代塩は貴重だから仕方ないが。
 次にパンに手を伸ばし、口に運ぶ。

 .................硬い。

 一瞬石かと思った。
 とてもじゃないがスープに浸してふやかせてからじゃないと食えない。
『乾パンなどの保存食みたいな感じ』と言えば分かり易いだろうか。

 これを見れば、前世の私がいかに恵まれていたか分かります。
 
 娯楽の類いとは違う。
 エネルギーを胃に収める...........今日生きる為だけの食事。
 分かっていたけど、この時代.............中世ヨーロッパの平民と貴族の生活水準の差は酷い。
 前世でも貧困層と富裕層の差はある...............でもここまで露骨では無い。
 身分制度に奴隷制度...........人権制度はどこ行ったのか?
『奴隷に法律は適用されない』など、イかれてるにも程がある。
 同じ人間を物扱いするなど、正気の沙汰とは思えない。
 そこで私はスープを口に運びながら、視線だけを母に向ける。
 
 平民も例外では無いと。

 貴族の法律は貴族の為にある。
 平民にはあってないようなもの。
 奴隷より僅かに扱いが向上する程度。
 現に私の母は都市ヴィ・ロストこ     この領地主『ブブ・ロースト』に孕まされ、私を産んだ。
 産んだ後はゴミの様に捨てられた。
 そう言う設定。
 平民である以上、貴族には逆らえない。
 私達は貴族の領地に住まわせてもらっている立場だ。
 税として、収穫した物質の八割を納めて。
 もし逆らえば、嫌がらせの様に税を増やされる。
 村全体が被害を被る。
 だから母は村の為にその身を捧げた。
 前世であれば、行為の強要は『強姦罪』に当たるが、中世ヨーロッパではそうでは無い。
 職権乱用など当たり前。
 領地内のルールは全て、領地主の力量に定められている。
 身分至上主義である、この貴族社会では。

「ご馳走様でした!」

 私は子供らしく手を合わせてそう言った。

「ふふ、お粗末様」

 嬉しそうな母を見てると心が痛む。
 貴族に無理矢理生まされた子だ。
 愛する者とも間に出来た子では無い。
 本来なら憎まれてもおかしくは無い筈だ。
 
 なのに何故ここまで私は可愛がられている?
 恨みがない訳じゃ無いだろうに?

 私は疑問に思い、尋ねてみる事にした。
 勿論『ラブラブパニック』で得た情報は伏せた上で。

「.........どうして私をここまで可愛がってくれるんですか?」
 
『6歳のラヴィ』の知識の中から言葉を選び、子供の好奇心を装う。
 すると母は何が可笑しかったのか、満面の笑みを浮かべる。

「そんなの貴方が可愛いからに決まってるからじゃ無いですか?」

 その表情に嘘偽りはない。
 本心から私の事を大切に思ってくれている。
 それを見て私は誓った。
 
 母を命を懸けてでも守ろう。
 何を犠牲にしてでも守ろう。

 前世で母親がいなかった影響か、どんどん想いは強くなる。

「じゃあ私外で遊んでくるね!」

 私は恥ずかしさを隠す様に、扉を勢いよく開け、外に飛び出した。
 背中に声がかかるが振り返る事は無い。
 振り返れば、頬が赤い事がバレてしまうだろうから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

子ドラゴンとゆく、異世界スキル獲得記! ~転生幼女、最強スキルでバッドエンドを破壊する~

九條葉月
ファンタジー
第6回HJ小説大賞におきまして、こちらの作品が受賞・書籍化決定しました! ありがとうございます! 七歳の少女リーナは突如として前世の記憶を思い出した。 しかし、戸惑う暇もなく『銀髪が不気味』という理由で別邸に軟禁されてしまう。 食事の量も減らされたリーナは生き延びるために別邸を探索し――地下室で、ドラゴンの卵を発見したのだった。 孵化したドラゴンと共に地下ダンジョンに潜るリーナ。すべては、軟禁下でも生き延びるために……。 これは、前を向き続けた少女が聖女となり、邪竜を倒し、いずれは魔王となって平和に暮らす物語……。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~

巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!? //////////////////////////////////////////////////// 悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。 しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。 琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇! ※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……? ※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。 ※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。 隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。

悪役令嬢に転生したけど、破滅エンドは王子たちに押し付けました

タマ マコト
ファンタジー
27歳の社畜OL・藤咲真帆は、仕事でも恋でも“都合のいい人”として生きてきた。 ある夜、交通事故に遭った瞬間、心の底から叫んだーー「もう我慢なんてしたくない!」 目を覚ますと、乙女ゲームの“悪役令嬢レティシア”に転生していた。 破滅が約束された物語の中で、彼女は決意する。 今度こそ、泣くのは私じゃない。 破滅は“彼ら”に押し付けて、私の人生を取り戻してみせる。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

婚約破棄は良いのですが、貴方が自慢げに見せているそれは国家機密ですわよ?

はぐれメタボ
ファンタジー
突然始まった婚約破棄。 その当事者である私は呆れて物も言えなかった。 それだけならまだしも、数日後に誰の耳目げ有るかも分からない場所で元婚約者が取り出したのは国家機密。 あーあ、それは不味いですよ殿下。

処理中です...