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時計の針が『7時30分』を回った頃……
「すまないな君達……待たせてしまって……」
前日と〝別人になった〟教師が姿を現す。
声には覇気がなく、顔色も悪い……様子から見ても明らかに体調を崩している。
教師は教卓の前まで足を運ぶと、再び口を開く。
「君達に言わなければならないことがある」
その瞬間、辺りが静寂に包まれる。
教師の様子を見て、誰も茶化そうとする者はいない。
皆が皆、教師が次の言葉を口にするのを、ただジッと待っている。
教師は辺りが静まり返ったのを確認すると、覚悟を決めたように口を開いた。
「昨日……姫川早苗さんが……事故で亡くなりました」
教師の衝撃の報告に、誰もが口を紡ぐ。
当の俺は突然のことで脳の処理が追いつかず、現状を理解できない。
しかし数秒後には、正常な脳が『姫川が死んだ』のは現実だと判断する。
そして糸が切れたように、静まり返った教室が一斉にザワつき始めた。
各地で不快な声が俺の耳に届く。
正直イラつくが感情に任せて殴るワケにもいかない。
現に殴った時点で俺は停学……最悪退学になるだろう。
当然殴った見返りに、姫川が生き返ることもないし、事実が変わることもない。
自分が損をするだけで未来は何も変わらないのだ。
今後の人生を考えるなら、一時の感情でバカな行動は取るべきじゃない。
現に学費を出してる親にも迷惑がかかるし、当然相手の親にも迷惑がかかる。
俺だけの問題で済まない以上、勝手な行動は控えるべきだろう。
それにあくまで第三者の意見は自由。如何に不謹慎だろうと、俺に彼女を咎める理由や権利はないのだ。
その後クラスは解散となる。
クラスでは姫川に同情の言葉が多く投げかけられた。
しかし全てが上辺だけの言葉……本心で言ってる人など存在しない。
自分をよく見せる為、偽善者を演じているに過ぎないのだ。
現に本当に憐れむ気持ちがあるなら、ワザワザ声に出す必要はないだろう。
心の奥底にしまい、自分の中だけで留めておけばそれで済む話だ。
それが出来ないということは、所詮人が自己顕示欲の塊だから。
募金をしたのを公言するのと同じ、被害者を理由にして自分の欲求を埋めている。
要するに姫川の死は、自分をよく見せる道具に過ぎないのだ。
だがこれが本来の人の性……人は誰だって赤の他人に感情移入出来ない。
現にニュースで他人の死が報道されても、人が死んだと言うことを『認識』するだけで、心の底から悲しんでる人などいないだろう。
所詮人は皆、自分が大切な人の死にしか感情は動かされないのだから。
昨日挨拶しただけの他人に、感情を動かせと言う方が無理な話だ。
夜の九時。
俺は一人暗い部屋の中、小学校の頃に姫川と撮った写真を、ただジッと見つめていた。
確かに過去に固執するのは弱い奴のすることだ。
所詮過去は過去、逃避したところで現状は変わらない。
それに過去に固執すれば、勉強、運動、友人関係、あらゆる面で周りに遅れをとることになる。
今後の人生を考えるなら、過去は過去と割り切るのが適切な判断であり、そうするべきなのだ。
……でも思ってしまう。
俺があの時、何か言葉を掛けて行動を遅らせていれば……俺があの時、姫川の後ろを追いかけていれば……姫川は死なずに済んだのではないかと?
当然それは結果論……仮にその通りに行動したからと言って、姫川が死ななかった保証はないし、結果どちらの選択を取っても姫川は死んだかもしれない。
要するに答えは誰にも分からないのだ。
俺の考えは全て憶測で、試すことすら許されないのだから。
幾ら考えたところで、結局水掛け論にしかならない。
俺はそこで考えを断ち切ると、写真をしまう為に机の引き出しを開ける。
しかし途中まで開けたところで〝何か〟に引っかかった。
恐らく写真を出して、引き出しを閉めた際に、何かの拍子で引っかかったのだろう。
俺は特に深く考えもせず、元凶を引っ張り出す。
『臓器提供意思表示カード』
その瞬間、十数年前の記憶が蘇る。
「すまないな君達……待たせてしまって……」
前日と〝別人になった〟教師が姿を現す。
声には覇気がなく、顔色も悪い……様子から見ても明らかに体調を崩している。
教師は教卓の前まで足を運ぶと、再び口を開く。
「君達に言わなければならないことがある」
その瞬間、辺りが静寂に包まれる。
教師の様子を見て、誰も茶化そうとする者はいない。
皆が皆、教師が次の言葉を口にするのを、ただジッと待っている。
教師は辺りが静まり返ったのを確認すると、覚悟を決めたように口を開いた。
「昨日……姫川早苗さんが……事故で亡くなりました」
教師の衝撃の報告に、誰もが口を紡ぐ。
当の俺は突然のことで脳の処理が追いつかず、現状を理解できない。
しかし数秒後には、正常な脳が『姫川が死んだ』のは現実だと判断する。
そして糸が切れたように、静まり返った教室が一斉にザワつき始めた。
各地で不快な声が俺の耳に届く。
正直イラつくが感情に任せて殴るワケにもいかない。
現に殴った時点で俺は停学……最悪退学になるだろう。
当然殴った見返りに、姫川が生き返ることもないし、事実が変わることもない。
自分が損をするだけで未来は何も変わらないのだ。
今後の人生を考えるなら、一時の感情でバカな行動は取るべきじゃない。
現に学費を出してる親にも迷惑がかかるし、当然相手の親にも迷惑がかかる。
俺だけの問題で済まない以上、勝手な行動は控えるべきだろう。
それにあくまで第三者の意見は自由。如何に不謹慎だろうと、俺に彼女を咎める理由や権利はないのだ。
その後クラスは解散となる。
クラスでは姫川に同情の言葉が多く投げかけられた。
しかし全てが上辺だけの言葉……本心で言ってる人など存在しない。
自分をよく見せる為、偽善者を演じているに過ぎないのだ。
現に本当に憐れむ気持ちがあるなら、ワザワザ声に出す必要はないだろう。
心の奥底にしまい、自分の中だけで留めておけばそれで済む話だ。
それが出来ないということは、所詮人が自己顕示欲の塊だから。
募金をしたのを公言するのと同じ、被害者を理由にして自分の欲求を埋めている。
要するに姫川の死は、自分をよく見せる道具に過ぎないのだ。
だがこれが本来の人の性……人は誰だって赤の他人に感情移入出来ない。
現にニュースで他人の死が報道されても、人が死んだと言うことを『認識』するだけで、心の底から悲しんでる人などいないだろう。
所詮人は皆、自分が大切な人の死にしか感情は動かされないのだから。
昨日挨拶しただけの他人に、感情を動かせと言う方が無理な話だ。
夜の九時。
俺は一人暗い部屋の中、小学校の頃に姫川と撮った写真を、ただジッと見つめていた。
確かに過去に固執するのは弱い奴のすることだ。
所詮過去は過去、逃避したところで現状は変わらない。
それに過去に固執すれば、勉強、運動、友人関係、あらゆる面で周りに遅れをとることになる。
今後の人生を考えるなら、過去は過去と割り切るのが適切な判断であり、そうするべきなのだ。
……でも思ってしまう。
俺があの時、何か言葉を掛けて行動を遅らせていれば……俺があの時、姫川の後ろを追いかけていれば……姫川は死なずに済んだのではないかと?
当然それは結果論……仮にその通りに行動したからと言って、姫川が死ななかった保証はないし、結果どちらの選択を取っても姫川は死んだかもしれない。
要するに答えは誰にも分からないのだ。
俺の考えは全て憶測で、試すことすら許されないのだから。
幾ら考えたところで、結局水掛け論にしかならない。
俺はそこで考えを断ち切ると、写真をしまう為に机の引き出しを開ける。
しかし途中まで開けたところで〝何か〟に引っかかった。
恐らく写真を出して、引き出しを閉めた際に、何かの拍子で引っかかったのだろう。
俺は特に深く考えもせず、元凶を引っ張り出す。
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その瞬間、十数年前の記憶が蘇る。
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