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 カラオケが終わり自宅。
 結局あの後カラオケで、花宮に一万円も奢らされてしまった。
 
 ホントあいつ一切遠慮しないからな。
 ……でもあいつの笑顔を見てると、自然と奢りたくなっちゃうんだよな……まあ入学祝いと考えれば安いか……
 
 俺はプラス思考に捉えつつ、財布の中身をチェックする。
 すると財布の中には、数えるぐらいしか千円札が入っていなかった。
 
 最悪バイトも視野に入れるベキか……
 
 俺は今後の軍資金を心配しつつ、今日一日を振り返る。
 高校初日から遅刻、幼馴染との再会、消失した一万円……今後のことを考えると鬱になりそうだ……今日はもう寝よう。
 俺は考えるのを放棄してベッドに倒れこむ。
 倒れた瞬間、溜まっていた疲労が一気に体に押し寄せる。
 
 流石にニート生活明けの労働は体に染みるな……
 今日はこのまま寝て、明日の朝にでも風呂に入るか……
 
 俺は襲ってくる睡魔に抗わず、そのまま眠りに落ちた。

 4月2日。

 俺が教室に入ると、教室は何故か賑わっていた。
 お互いに話し合う者、グループで話し合う者。皆が皆、それぞれの人達と会話に花を咲かせている。
 
 嘘だろ……まだ学校始まって二日目だぞ?
 
 どうやら昨日の今日で、交友関係は完全に出来上がってしまったらしい。         
 
 完全に浮いてるな俺……
 
 俺は高校生の適応力に驚きつつ、周りをしっかり観察する。
 流石に全員が全員、仲良く群れているとは考えづらい。中にはボッチも存在する筈だ。
 だがそんな幻想は直ぐにブチ壊される。
 中学の経験を得てか、ボッチはボッチで集結し、一つのグループを結成していた。
 
 マジかよ……このクラスで浮いてんの……俺と花宮と……まだ来てない姫川だけじゃん。

 それから時間は刻々と過ぎ、時計の針は七時を回る。
 当然本来ならホームルームが始まっている時間だろう。
 しかし時間を過ぎても一向に教師は現れない。
 俺は当然そこに違和感を覚える。
 
 あの時間にルーズな人が……遅刻なんてするか?
 
 昨日遅刻した俺を叱った手前、自分が遅刻すれば生徒に示しがつかないことぐらい、本人も理解している筈……
 俺はそこで不意に隣を見る。
 
 そういえば姫川もまだ来てなかったな?
 
 姫川は七時を回ってるのにも関わらず、まだ教室に姿を現していなかった。
 姫川の性格上、遅刻とは考えづらい……そうなると消去法で休みしかない。
 
 まあ、環境の変化で体調を崩すなんて話もよく聞くしな……
 
 俺は特に深く考えもせず、教師の到着を待った。
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