365日の死亡フラグ。幼馴染に〝恋愛フラグ〟は立たないが〝死亡フラグ〟が立っている?

ヨッシー

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 4月1日

 過去の三回を振り返る。
 一回目は姫川が死んだ事実のみを知り、二回目は姫川が死んだことをこの目で確認し、三回目は姫川を自分の目の前で死なせた。
 回数が増えたところで何も進歩していない。
 結局は姫川を死なせ、肝心な解決策は何も得ていない。

 入学式が終わり教室に戻ると、先生の長ったらしい話が始まる。
 これが終わると午前中で解散となり、俺の運命の一日が始まるのだ。
 だがここでイレギュラーが起る。

『ピーンポーンパーンポーン』

 突然の校内放送。当然今までの三回にはない事態。
 俺は突然のイレギュラーに困惑しつつ、放送の続きを待つ。

『一年一組、早見隼人君、一年一組、早見隼人君、至急生徒会室まで来て下さい』
 
 まさかの俺だった……しかも生徒会長直々のお呼び出し。
 流石に無視するワケにもいかないので、俺は一度先生に声を掛け教室を後にする。
 
 俺は移動しながら考えていた。

『何故こんなイレギュラーが起こったのか?』ということ。
 
 俺は出来るだけ前回の事例をなぞるように行動してきた。
 言葉や時間に多少のズレはあれど、こんなイレギュラーが起こる程、行動を改変したつもりはない。
 色々考えを巡らせている間に、足は生徒会室の前まで着いていた。
 現時点で色々混乱はあるが、今はそれを考えても仕方ないだろう。
 今重要なのは『どうして一年の俺を生徒会室に呼んだか?』だ。
 生徒会長とは面識はなく、彼女を知ったのですら今日が初めて。
 ならどうして初対面の俺を生徒会に呼び出した?
 中学の成績が別に良いワケでもなく、入学早々何かやらかしたワケでもない。
 だが幾ら考えたところで明確な答えが出る筈もないだろう。
 今起こってることは、過去に事例がない全くのイレギュラーなのだから。
 俺は扉の前で一度息を飲むと、覚悟を決め扉をノックする。

 コンコン。

「どうぞ~」
 
 穏やかな声が扉の中から聴こえてくる。

「失礼します」
 
 一言声を掛け、扉を開く。
 生徒会室は手前にテーブル一つ置かれていて、奥には生徒会長専用のテーブル(その上にパソコン)が置かれている。
 会長は当然一番後ろの席に座っていた。
 俺は会長の側まで行き、再び口を開く。

「あの、ご用件というのは何でしょうか?」
 
 今までに感じたことのない緊張が俺を襲う。
 何故なら次の会長の言葉によって、現状の変化の謎が紐解かれると思っていたからだ。
 しかし会長の口から発せられた言葉は、俺の予想とは全く異なるものだった。

「あなたに興味がありまして」

「……はい?」
 
 普段なら赤面の一つでもしていた場面かもしれない。
 だが今は嬉しさよりも恐怖が優っていた。

「だから貴方に興味があると」

「……俺のどこに興味があるんですか? そもそも生徒会長と俺は『今日』初めて会ったんですよ?」

「四回目ですよ」

「……え?」
 
 会長の返答に思わず面食らってしまう。
 そんな俺の様子を見て、会長は微かに微笑む。

「どうやら当たりのようですね」

『どうやら』か……だとしたら会長は俺にカマを掛けたのか?

「……で、会長は何者なんですか?」

「私は貴方の先輩ですよ?」
 
 ここでの先輩という意味は、学年のことではなく、『タイムリープ』のことを指しているのだろう。

「つまり同じ経験をしたことがあると?」

「はい。私は過去に貴方と同じ境遇にありました……要するに貴方と同じ『観測者』です」

 別にあり得ない話じゃない。現に俺がタイムリープしている以上、過去に俺と同じ人がいる可能性は十分にある。

「で、『観測者』というのは?」

「ある一定の条件でタイムリープを発動させ、記憶を保持し続けることが出来る人を指します」

「なるほど……因みに名前の由来は誰が?」

「私ですけど?」
 
 あんたなのかよ。

「へー……」

「無理しなくていいですよ? どうせ心の中では、『中二病乙』って思ってるでしょうから?」

「思ってますよ?」

「そこは否定してくれませんか?」
 
 だんだん会長の性格が分かってきたような気がする。

「会長……一つ聞いて良いですか?」

「何ですか?」

「何で会長は俺が『観測者』だと分かったんですか?」

「簡単なことですよ。『観測者』なら無条件に記憶は残ります。貴方が『タイムリープ』で戻っても記憶が消えないのと一緒で、私の記憶も消えないんです」
 
 つまり俺が過去に戻る度に、会長は同じ日を何度も繰り返していたというワケか……

「……でもそれだけじゃ、俺という個人の特定は出来ませんよね?」

「確かに貴方の言う通りです。本来なら個人の特定など、一個人の私では到底出来ることではありません……」
 
 会長は一度そこで言葉を切ると、僅かに声のトーンを落とし……再び口を開く。

「……ですが学校内なら話は別です。会長という立場を使えば、ある程度学校の内部事情を把握することが出来ます。最初の姫川さんの死も勿論……なので二回目の時には必然的に貴方が『観測者』だと分かりました」

 確かに俺自身、一回目は遅刻したが、二回目は遅刻していない。周りがNPC同然の中、これだけのズレを起こせば、俺を『観測者』だと決めつけるには十分だろう。

「俺の遅刻のこと耳に入ってたんですか?」

「はい」
 
 生徒個人の遅刻まで把握してるとか、ラノベの生徒会長並みの情報網だな。

「で、このタイミングで接触して来たことは、何か意味があるんですか?」

「……というと?」

「会長は二回目で俺を『観測者』だと特定したんですよね? なら何故二回目ではなく、わざわざ四回目に接触して来たんですか?」

「特に意味はありませんよ。本来なら私は、貴方が役目を終えるまで見守るつもりでしたから」

「ならどうして?」

「入学式の挨拶が面倒くさかったからです」
 
 本当に特に意味もない理由かよ。

「それぐらい我慢出来なかったですか?」

「無理ですよ。何で毎日毎日、新入生の前で挨拶しないといけないんですか?」

「でも、午前中に帰れるから特じゃないですか?」

「テスト以外はいつも生徒会室にいるので、早く帰れようがどっちでもいいんです」
 
 どんな権力者だよ。

「でも暇じゃないですか?」

「パソコンでアニメ見たりゲームしたりするので特に暇じゃないですよ?」
 
 その為に置いてあるパソコンじゃないから。

「俺はてっきり、いつ終わるか分からない繰り返される日々に嫌気が差したのかと……」

「そんなことないですよ? 時間は無限に増えますし、記憶だって消えないんです。仮に勉学に励むなら、学年一位、全国一位、それに生徒会長にだってなれます」
 
 確かに発想としては悪くない……タイムリープする状況を逆に利用する。
 ポジティブに捉えれば、時間を無限に使えることに繋がるのだ。
 第三者ならエンジョイするには持って来いの状況だろう。
 仮に被害者が『姫川早苗』でなかったら、俺も会長と同じ考えに辿り着いていたかもしれない。

「で、話を戻しますが、何をすれば姫川を助けられるんですか? 会長が俺に接触してきたってことは、その答えを会長は持ってるんですよね?」

「流石ですね……」
 
 何故か凄い感心された。
 
 あれ? 俺もしかして猿並みの知能だと思われてる?

「一つの『事故』を防いでも、別の『事故』が起こってしまうんですよね?」

「はい」

「恐らくそれは、姫川さんが『事故』に会う『運命』だからです。これは貴方自身も三回の『タイムリープ』で気づいてますよね?」

「ええ……」

「現状『死の鎖』を断ち切るには、姫川さん自身の人生を大きく変える必要があります」

「……人生を変える?」

「はい……通常『死』というのは、どうやっても回避出来ないものです……ですが結果を知ってれば対抗できます」

「……それが人生を変えることと関係あると?」

「はい……人生を変えることは『未来』を変えることに繋がります。姫川さんの人生を大きく変えるキッカケを起こせば、必然的に『未来』は変わっていくのです」

「じゃあ『未来』を変えるキッカケを起こせば、姫川を救えるんですか?」

「そんな甘いものではありませんよ? 未来を変えても『死の鎖』を断ち切ることは出来ません。僅かに『死』の時間をズラすだけでしょう」

「……じゃあどうすれば?」

「変え続けるんですよ……いくら『死の鎖』が強力でも、変え続ければ『死の抵抗力』は弱まり、いずれ『死の鎖』を断ち切ることが出来ます……因みにソースは私ですよ?」

 良かった……経験者(会長)が居てホント良かった。
 実体験に基づいた話程、説得力のあるものはない。

「で、『死の鎖』を断ち切るには、どれぐらいかかるんですか?」

「一年……365日です」

 俺は緩んでいた顔を引き締める。

「……セーブポイントは?」

「4月1日固定です……当然中間ポイントもありませんよ?」
 
 せめて中間ポイントぐらいは置いといてくれよ。
 要するに三月に失敗したら、俺は一年以上、時をやり直さなきゃならないのか。

「……回数制限とかはないんですよね?」

「……ないですよ」
 
 僅かに遅れて言った会長に、この時の俺は特に違和感を持つことはなかった
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