365日の死亡フラグ。幼馴染に〝恋愛フラグ〟は立たないが〝死亡フラグ〟が立っている?

ヨッシー

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 次の日。
 スマホの画面には『4月1日』と表示されていた。
 俺は安堵のため息をつく。
 どうやら『4月1日』がリスポーン地になっているらしい。
 だがこれはあくまで現時点での話。
 回数制限や一定の条件の元で『タイムリープ』が発動する可能性は十分にある。
 正確な条件が判明してない以上、むやみに色々試すことは出来ない。
 ここはもしもの為に、回数制限や一定の条件があると仮定して、慎重に事を進めるべきだろう。

 入学式が終わり放課後、俺は前回の事例をなぞりつつ、姫川とゲーセンまで足を運ぶ。
 前回と同じく姫川は『クマのキーホルダー』の筐体の前で足を止める。
 僅かに言葉の違えはあれど、前回と殆ど変わらない。
 俺は姫川に百円玉十枚を差し出し、行く末を見守る。
 一回、二回、三回、当然のように取れる気配はない……そして九回目が終わる。
 前回は俺がここで手を貸し『クマのキーホルダー』を取った。
 ならその行動を〝無かったこと〟にすればいい。
 俺は姫川に手を差し伸べぬまま、十回目が終わった。

「帰るぞ姫川」

「……う、うん……でも帰りに、ちょっと寄りたいところがあるんだけど?」

「いい加減にしろよ? クレープも奢ってゲーセン代まで出してるんだぞ?」

「……次はお金はかからないわ」

 分かっている……姫川が公園に行きたいことも……そしてその理由が……ただの遊びじゃないことも……
 だが『クマのキーホルダー』という原因が無いとはいえ、姫川が公園の入り口付近の道路で死んだことには変わらない。
 可能性が限りなくゼロになったとしても、危険な場所は避けるべきだろう。

 だから許してくれ姫川……

「帰るぞ姫川」

「……分かったわ」

 姫川は納得してない様子だったが、渋々と言った感じで了承した。
 ゲーセンを出て、俺は姫川と肩を並べて歩く。
 姫川は一瞬驚いた表情をするが、黙ってそれを受け入れる。
 俺は別に下心があって、姫川と肩を並べて歩いてるワケじゃない。
 前回の失敗を生かしてのことだ。
 前回は俺が目を離した瞬間に事故が起きている。
『クマのキーホルダー』と言う原因があったにしろ、その場に俺がいれば結果は変わったかもしれない。
 なら可能な限り事故が起きる可能性は減らした方がいい。
 この距離なら姫川が急に走り出しても、男の俺の足なら止められる。
 
 道中お互いに会話はなく、足だけが家に向かっていく。
 曲がり角を曲がり、真っ直ぐの道に出る。
 あとはこの道を真っ直ぐ行けば姫川の家に着くだろう。
 俺は安堵のタメ息を着く……『これで終わる』そう確信したからだ。
 現にこの先、横断歩道などの道路に面した場所に出ることはない。
 歩道側を歩いている俺達に車がぶつかる確率など、限りなくゼロに近いだろう。
 運転手が意図的に当たりに来ない限り、間違いなく事故は起きない。
 それに道路側と歩道側は、四角の縁石ブロックで区切られている。
 万に一つ考えても、事故が起こることなどありえない。
 だが、ありえないことが起こっているのが、今の俺の現実だ。
 トラックが前方から迫ってくる。
 本来なら別に気にすることはない……ただトラックが道路を走っている……日常的に当たり前の光景……
 この時点で事故を予測するなど、普通の人ならまずありえない。
 しかし俺は普通ではない……二度のタイムリープを経験し、今現在ここにいる。
 理由は不明だが、俺は姫川を『死』という呪縛から解放する為に、『神』に与えられた試練だと勝手に解釈している。
 だが俺は二度のチャンスを生かしきれなかった。
 二度も姫川を『交通事故』で死なせてしまった。
 なら今回こそは姫川を事故から救い、本来の時系列に戻さなければならない。
 目の前にトラックが現れる。
 このまま何事もなく通り過ぎてくれれば、俺の心配は杞憂に終わるだろう。
 現状から見ても、トラックに不審な点はなく、道路側を真っ直ぐ進んでいるだけ。
 道路交通法を守ってる以上、酔っ払いの可能性もない。
 それに道は一方通行で、急カーブや障害物など、事故の妨げになるようなものは存在しない。
 逆に事故を起こす方が難しい環境だ。
 なら心配は不要……このままトラックは何事もなく通り過ぎる……俺はそう思っていた。
 いや、誰が見てもそう思うだろう。
 でも結果は違った。
 トラックは俺達の横を通り過ぎる寸前、急にハンドルを右に回し、鈍い音と共に縁石ブロックを突っ切り、そして姫川に激突した。
 ほんの一瞬の出来事……不意を突かれた俺は反応すら出来なかった。

 いや現実的に見てありえないだろ? 

 何もない一方通行の道路で、トラックが急ハンドル……事故にしては明らかに不自然すぎる……まるで姫川を狙ったかような……
 だが仮にそうだとして、トラック側にメリットがあるとは思えない。
 勿論トラックの運転手が『姫川に個人的な恨み』を持っていれば話は別だが、去年まで中学生の姫川と、今現在、高校生、若しくは社会人である、成人男性との間に『接点があった』とは考えずらい。
 それに前者が『あり得る』と仮定しても、接触してくるタイミングが、幾ら何でも都合が良すぎる。
 当然予め準備をしてれば話は別だが、『足が付くような殺し方』をしている点から見て、計画性があったとは考えづらい。
 なら現状『神に操られている』と考えるのが最も自然だろう。
 確かに普通に考えてありえないが、『タイムリープ』が起こってる前例がある以上、可能性としては不可能な話じゃない。
 それにそう考えれば全ての辻褄が合ってしまう。
 二回の不幸な事故も、そして今回の不自然な事故も、偶然ではなく〝必然的〟に起こっているとすれば、『原因を取り除いても事故が起こった』ことに一応説明が付く。
 恐らく『神』は『味方』ではなく……『敵』だったのだ。
 俺は姫川の体を隅々まで観察する……至って冷静に。
 別に二回目だからといって、決して慣れたワケじゃない。
 しかし今は個人の感情よりも、今後の対策を考えなければならないのだ。
 俺には次があり、姫川を救うことが出来るのだから。
 ただ今のままでは、姫川を救うことは出来ない。
 事故の原因を取り除いても、また今回のように別の事故が起こってしまう。
 道を変えても、姫川が死ぬことは避けられないだろう。
 姫川自身を救うには、『因果』そのものを変えるしかない。
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