ひとりで生きたいわけじゃない

秋野小窓

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【7】温泉旅館

7-4:直居side

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 あれこれと考えているうちに、随分と長風呂になってしまった。浴衣に着替えて部屋に戻ると、貴矢さんはうたた寝しているようだった。
 やっぱり疲れてるよね。ドライヤーしたかったけど、起こしてしまいそうだからやめておこう。

 わしゃわしゃとタオルドライしながら貴矢さんの寝顔を観察する。いつものお風呂上がりと同じ、セットしていない長めの前髪が端正な顔にかかっている。僕と同じ浴衣なのに、貴矢さんが着ていると特別な衣装のように似合ってしまう。

 時計を見ると、食事の時間まであと10分くらいだ。どうしよう、食事の場所を聞いていなかった。お部屋にいていいのか?どこか夕食会場に行く必要があるんだろうか。

 ギリギリまで寝かせてあげたいけど、移動するならそろそろ……。

 いや、5分前までは大丈夫かな?

 起こそうか、どうしようか、貴矢さんの隣まで来たが声をかけられずに見つめていたら、突然ぱち、と目が開いた。

「おわっ!」
「あ、すみません、起こしちゃって……」
「なおっ、潤君、びっくりしたよ」
「すみません!食事の時間、そろそろなので、声かけようか迷ってたら……」
「ああ、そうか、ごめんごめん」

 そうだよね。起きたら僕の顔が目の前にあるなんてホラーだ。珍しく取り乱している貴矢さんに申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「お食事はどこかに移動しますか?お部屋ですか?」
「部屋だよ。……潤君、髪濡れてる。まだ大丈夫だから、乾かしてきたら?」
「分かりました」

 せっかく気持ちよく眠ってたのに、寝起きドッキリみたいになっちゃって、かえって疲れさせてしまったかもしれない。
 貴矢さんのために何かできないかと思っているのに、僕が疲れさせてどうするんだ。申し訳なさのあまり、そそくさと洗面所に引っ込む。
 ーー僕の馬鹿!僕の馬鹿!
 ガシガシと乱暴にドライヤーをかけた。
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