ひとりで生きたいわけじゃない

秋野小窓

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クリスマス番外

3:貴矢side

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 ひと月前、予約開始と同時に押さえたクリスマスディナー。
 裏路地にある隠れ家風のレストランで、フランスで修行したというシェフの腕は一流だ。駅から多少歩く場所にあっても、すぐに予約いっぱいになってしまう知る人ぞ知る名店である。小ぢんまりとした店だが、それもオーナーシェフの目が行き届く席数に限定することでサービスの質を担保するためだそうだ。

 今日の料理も絶品だ。接客も申し分ない。
 なのに、なぜだろう。

「潤?口に合わなかったかな?」
「……え?あ、すみません」

 前菜の盛り合わせを半分ほど食べたところで手が止まってしまっていた。ペースを合わせるために俺もちまちま食べ進めていたが、それでもさすがに皿が空になりそうだ。

「おいしくて、その、もったいなくて……」
「ははっ、これからまだまだおいしいのが出てくるよ」

 はにかむように控えめに笑って、潤が食事を再開した。

 潤と会えたのは3週間ぶりくらいだろうか。その間海外出張があったのと、年末の慌ただしさで、なかなかデートの時間が取れなかった。
 その間、目の回るような忙しさだったが、今日を楽しみになんとか乗り切った。潤に会ったら、疲れなんて吹き飛んでしまった。

 だが、潤は潤で忙しい毎日だったんだろう。笑顔で取り繕ってはいるが、いつもの元気がないようだ。
 普段なら目を輝かせてペロリと平らげてしまうようなメインディッシュのステーキも、2切れ食べてまた手が止まってしまった。

「具合よくない?」

 心配になって声をかけるが、

「大丈夫です」

と、また作り笑い。潤の笑顔は好きだが、俺には気を使わないでほしい。

「入らなかったら無理しないで。おいしく食べられるのが一番だからね」

 そういえば、今日は会ったときからあまり元気がなさそうだった。イルミネーションも喜ぶかと寄ってみたが、思ったより反応がなかったのは体調がよくなかったのかもしれない。余計に疲れさせてしまっただろうか。
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