7 / 22
クリームソーダと夕立
1:育海side
しおりを挟む
鮮やかな緑。背の高いグラスに、こんもりと丸く載ったアイスクリーム。白い山のてっぺんには、真っ赤なチェリー。
「育、それ好きだね」
「うん。ビジュアルから既にヤバい」
カシャ。スマホで切り取った画面。グラスの向こうに正くんの手が写り込む。
スッと角度を変える。グラスを正面から撮るフリをして、ピントは正くんの顔。
「どこまで入ってる?」
カシャ。
「見せて」
「やだ」
「撮ったろ」
「早く食べないとアイス融けるから」
スマホを取られないようにソファの座面に置く。濃い赤のソファ。レトロな店内は昔から変わらない。
大人に連れてきてもらうしかなかった喫茶店。薄暗い店内は、外からはよく見えなくて、前を通るたびにドキドキした。もう一人でも入れるはずだが、俺にとっては憧れの場所。
ストローを吸う。甘いメロンソーダが口内でシュワシュワと弾ける。
目線を上げると、向かいの席には憧れの人。
まるで、あの頃夢見ていたデートみたいだ。
「育」
「ん?」
カシャ。名前を呼ばれて顔を上げた瞬間を撮られた。
「お返し」
「絶対変な顔してる。撮るならちゃんと撮ってよ」
「じゃあもう1回撮る?」
スマホを構える正くん。アイスをスプーンですくって、カメラに向かって差し出した。小首を傾げてスマイル。
「何これ」
「デート風」
いいから撮れよ、ともう一度スマイル。シャッター音。
スプーンの先からアイスが垂れそうになる。あ、と思ったら、正くんの口の中。
「食ったな?」
「食べていいんじゃないの?」
「いいけどさ」
それは別にいいんだけど。本当にデートしているみたいで、胸の中がざわつく。
無言でクリームソーダを飲み干した。
「育、それ好きだね」
「うん。ビジュアルから既にヤバい」
カシャ。スマホで切り取った画面。グラスの向こうに正くんの手が写り込む。
スッと角度を変える。グラスを正面から撮るフリをして、ピントは正くんの顔。
「どこまで入ってる?」
カシャ。
「見せて」
「やだ」
「撮ったろ」
「早く食べないとアイス融けるから」
スマホを取られないようにソファの座面に置く。濃い赤のソファ。レトロな店内は昔から変わらない。
大人に連れてきてもらうしかなかった喫茶店。薄暗い店内は、外からはよく見えなくて、前を通るたびにドキドキした。もう一人でも入れるはずだが、俺にとっては憧れの場所。
ストローを吸う。甘いメロンソーダが口内でシュワシュワと弾ける。
目線を上げると、向かいの席には憧れの人。
まるで、あの頃夢見ていたデートみたいだ。
「育」
「ん?」
カシャ。名前を呼ばれて顔を上げた瞬間を撮られた。
「お返し」
「絶対変な顔してる。撮るならちゃんと撮ってよ」
「じゃあもう1回撮る?」
スマホを構える正くん。アイスをスプーンですくって、カメラに向かって差し出した。小首を傾げてスマイル。
「何これ」
「デート風」
いいから撮れよ、ともう一度スマイル。シャッター音。
スプーンの先からアイスが垂れそうになる。あ、と思ったら、正くんの口の中。
「食ったな?」
「食べていいんじゃないの?」
「いいけどさ」
それは別にいいんだけど。本当にデートしているみたいで、胸の中がざわつく。
無言でクリームソーダを飲み干した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
14
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる