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22 自由の風
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「昨夜、とある冒険者達がスカルーマーダーを倒した」
虎吉がスカルーマーダーを倒した次の日、アカツキ帝国にもその一報は届けられた。
「この件は確か、ホリー国が帝国の上級召喚師が操っていると言っていて外交問題になった奴だ。それであなたが4代目の許可を得て『調査部隊』をホリー国に送り込んでいたはずだが?」
フォレス外務卿がベルガ宰相に尋ねた。
「調査によれば、それは帝国出身の召喚師というだけだ。その者がホリー国で大勢の市民、政治家までも暗殺していた。それをホリー国が帝国に難癖を付けてきただけだ。だが・・・スカルマーダーを倒した冒険者達の中に1人の武士がいたそうだ」
「その武士がどうした?」
「上級召喚師が召喚したスカルーマーダーを倒したのであればその武士はかなりの強者だ。もしかしてその武士は初代帝王以来の『黄金の武士』の再来かもしれない」
ベルガの『黄金の武士』なる言葉に重鎮達は笑い出した。
「それはあり得ないだろう。あれは初代帝王のみの特別な出来事でもうあのような事は2度と起こることはないだろう」
1人の貴族が反論した。それに続けて他の重鎮も「その通り」と頷いた。
「いや、あり得る。諸君らはこの前、100ネンに一度の『黄金の日輪』を見たであろう」
この世界にも日食はあり、月が太陽を隠しその時は世界が暗くなる。
だが、この世界では100ネンに一度月の光と太陽の光が合わさって黄金に輝く時がある。
それが『黄金の日輪』だった。
「100ネン前の『黄金の日輪』の時、異世界から初代帝王が現れた。そして此度の『黄金の日輪』の時、ノム国に1人の武士がやって来た」
ベルガの言葉に貴族達は再び顔色を変えた。
* * *
「では」
「達者でな」
武蔵が報酬とスカルーマーダーの素石を足して350万エルーを山分けして武蔵はホリー国の北の方にあるコロック国へと向かった。
そこに数十名の冒険者達が独自で作った集まりがあり、その集まりに参加するのだという。
「さて、どうするルナどの?」
ギルドハウスのラウンジで今日一日どうするか考えている。
昨夜スカルーマーダーを倒しこの国から報酬はもらったので、今日はのんびりしても構わん。
「そうですね・・・」
しかし朝からルナどのは落ち込んでいた。
「サハリどのに会いたいのか?」
「・・・はい」
スカルマーダーを倒し、この国の代表者なる者から感謝の言葉と共に報酬をもらった。そのとき、その者はホリー国直々の依頼を言ってきたが我らは断った。
なぜならルナどのの願いが叶わず、サハリに関する情報はこの者達から得られなかった。
「この国のポリティシャン達とサハリさまは関係ないのかしら・・・」
「そのポリティシャンとは何だ?」
「はい、この国を動かす人達です」
「御家人か?」
「ごけにん?えっと、この国が他の国と違うところは、民衆が・・・」
「貴方たちがスカルーマーダーを倒した冒険者ですか?是非、貴方たちにあって欲しい方がいるのです」
突然1人の男がやってきた。
周りを気にするかのように小さな声で何か怪しかった。
「うかつに、ついて行くわけにはゆかぬな」
「その男は怪しくは無い。俺が保証する。一応、話だけでも聞いてくれないか?」
「お!」
男の後ろからロベルトが現れた。
「ルナどの、どうする?」
「・・・聞きにいきましょう」
ルナどのが承諾したので我らはその会いたい者に会いにギルドハウスを出ると、大通りをまっすぐ街の真ん中にある大きな塔のような建物へ向かった。
「ここはホリー国の政治を行う議事堂です。1階は誰でも自由に入ることができます」
男がそう言って中へと入った。そして入り口のレセプションとかいう所にいた女に話しかけた。
「資料室を見たいのですが」
男は、女にそう言ってパーセを見せた。
女はレセプションのわきにある通路を指し示した。
第一資料室、第二資料室・・・。
いくつもの扉があり、一番奥の第5資料室の扉までたどり着くと男は扉を開けた。
この国に関することや他国の事に関する書物を通り越し男は、部屋の奥にあるもう一つの扉を2回軽く叩いた。
扉が開き、部屋に入るとアイネどのと周りに数名の男と女が座っていた。
「お座り下さい」
男に言われて座った。
真ん中の男が口を開いた。
「私は、ジャック・ハラル。政党団体『自由の風』の長(リーダー)だ」
初見で感じたのは頭は良さそうだ。
それゆえの警戒を感じる。
向こうも某を油断なく見ているようだ。
そして身分も高いな。
この世界の良い着物を着ている。
その透明な丸いものの奥にある眼で某の何を見ている。
「虎吉と申す」
「単刀直入に聞く。君は何を望んでいる?」
「領地がほしい」
「それならば我々に力を貸してくれないか。あのスカルマーダーには仲間が何人もやられた。あのスカルマーダーを倒した君が我々のメンバーに入ってくれるのならば・・・君の望みを与えよう」
突然やってきた。
念願だった自分の領地が目の前にある。
「本当に領地が手に入るのか?」
「もちろんだ!我がハラル家はこの国の資本家として最大だ。政治家に働きかければ、この国の適当な土地を君に与えることが出来る」
「お主の望みは?」
「我らは冒険者を含めた同士を集めて大きな事をなそうとしている。それは、新しい我々で新しい世界を作ることだ!」
ジャックが、立ち上がると後ろの棚にあった一番ぶ厚い本を、取り出した。
その本の表紙を、目を細めて見た。
そしてテーブルに置いた。
その本の表紙には『皇』と書かれていた。
「帝国だと?」
100年前1人の武士が作ったこの世界の巨大な存在を倒して領地を手に入れろというのか。
「私からもお願いします。アカツキ帝国は力を失いつつあります。今の帝王はそれが許せなく、世界を危険にさらそうとしています」
アイネどのが口を開いた。
「かつて初代帝王に多くの国々は逆らうこと無く従いました。初代帝王にはそれほどの人徳を備えた大きな器がありました。この国際法は、それで出来ています」
アイネが『皇』と書かれた本の最初をめくった。
そこには、この法の理念が書かれていた。
「ですが、その器は代が分かるごとに小さくなっていき、今の帝王は無理矢理、他の国々を従わせようとしております。それによって反発する国々と、帝国の恩恵を強く受けている国々でいがみ合う事態までおきております」
「アイネどの・・・あなたは何者だ?」
アイネどのは初見から、どこぞの位の高い女性のような気がした。
いまこの場で聞いてみた。
「虎吉、それは・・・」
ロベルトが口を挟もうとした。
だが、アイネどのがそれを無視して答えた。
「私は3代目帝王の娘、カリン姫です!」
冷や汗が出た。
まさか帝国の姫だったとは。
「わたしは国の治め方の知識を持っております。しかしわたしが学んだのは帝国のやり方でした。そんなわたしにとってこのホリー国の選挙というのは衝撃的でした」
「せんきょ?」
「私が説明しよう。この国は4年に一度、民の選挙で統治者を選び、選ばれた者は王として、ポリティシャンと共に4年間憲法を守り、この国を治める」
ジャックがアイネどのに代わって説明した。
この者は何を申しているのだ。
むかし鎌倉が合議制で次の鎌倉殿を誰にするか話し合ったとき、宿老たちの争いが起きた。
この国はそんな危ないことを民全員で4年ごとに行うのか。
「我々とてできるなら平和に世界を変えたい。しかし今の帝王は我々の声を聞かない。だから、我々は帝国と戦う同士を集め・・・」
「わたし、貴方たちに力を貸す気はありません!」
ジャックが説明している途中でルナどのが話を遮った。
様子からしてこの部屋から早く出たいようだ。
「と言うわけだ。我らはこれで失礼する」
某とルナどのは立ち上がり、扉を開けて部屋を出ようとした。
「武士は何のために戦っている!名誉か忠誠心か、それとも領地か?」
部屋を出ようとしたときジャックどのが聞いてきた。
「武士を買いかぶりすぎだ!」
そう言ってルナどのと一緒に部屋を出て外に出た。
「アイネさまってすごいですね・・・」
「うむ・・・」
アイネどの、いやアイネ御前は帝国の姫という身分を捨てて世界のために帝国と戦おうとしている。
その勇気は初代帝王から武士の血を引いているのかもしれん。
「虎吉さま、あの人の依頼を受けたかったですか?」
「え?」
「ジャックさんが報酬に領地を言ったとき、虎吉さまの目の色が変わったので。わたしはジャックさんの依頼を受けられないですけど。でも虎吉さまが領地を欲しくて、ジャックさんの所へいっても、わたしは大丈夫です!」
しまった。
ルナどのにこんな事を言わせてしまうほど顔に出てしまったか。
「・・・約束したからな」
「え?」
「ルナどのの国を守ると約束したであろう。領地はそれで手に入れる」
約束は守らねばならぬ。
「よかった!正直初めて会ったときに虎吉さまを無理矢連れてきてしまったので、ずっと心配だったのです。もしかして迷惑だったんじゃないかと・・・本当にありがとうございます」
沈んでいたルナどのの顔が明るくなった。
深々とお辞儀をした。
「ルナどの。そんなことは無い!頭をあげてくれ!」
虎吉がスカルーマーダーを倒した次の日、アカツキ帝国にもその一報は届けられた。
「この件は確か、ホリー国が帝国の上級召喚師が操っていると言っていて外交問題になった奴だ。それであなたが4代目の許可を得て『調査部隊』をホリー国に送り込んでいたはずだが?」
フォレス外務卿がベルガ宰相に尋ねた。
「調査によれば、それは帝国出身の召喚師というだけだ。その者がホリー国で大勢の市民、政治家までも暗殺していた。それをホリー国が帝国に難癖を付けてきただけだ。だが・・・スカルマーダーを倒した冒険者達の中に1人の武士がいたそうだ」
「その武士がどうした?」
「上級召喚師が召喚したスカルーマーダーを倒したのであればその武士はかなりの強者だ。もしかしてその武士は初代帝王以来の『黄金の武士』の再来かもしれない」
ベルガの『黄金の武士』なる言葉に重鎮達は笑い出した。
「それはあり得ないだろう。あれは初代帝王のみの特別な出来事でもうあのような事は2度と起こることはないだろう」
1人の貴族が反論した。それに続けて他の重鎮も「その通り」と頷いた。
「いや、あり得る。諸君らはこの前、100ネンに一度の『黄金の日輪』を見たであろう」
この世界にも日食はあり、月が太陽を隠しその時は世界が暗くなる。
だが、この世界では100ネンに一度月の光と太陽の光が合わさって黄金に輝く時がある。
それが『黄金の日輪』だった。
「100ネン前の『黄金の日輪』の時、異世界から初代帝王が現れた。そして此度の『黄金の日輪』の時、ノム国に1人の武士がやって来た」
ベルガの言葉に貴族達は再び顔色を変えた。
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「では」
「達者でな」
武蔵が報酬とスカルーマーダーの素石を足して350万エルーを山分けして武蔵はホリー国の北の方にあるコロック国へと向かった。
そこに数十名の冒険者達が独自で作った集まりがあり、その集まりに参加するのだという。
「さて、どうするルナどの?」
ギルドハウスのラウンジで今日一日どうするか考えている。
昨夜スカルーマーダーを倒しこの国から報酬はもらったので、今日はのんびりしても構わん。
「そうですね・・・」
しかし朝からルナどのは落ち込んでいた。
「サハリどのに会いたいのか?」
「・・・はい」
スカルマーダーを倒し、この国の代表者なる者から感謝の言葉と共に報酬をもらった。そのとき、その者はホリー国直々の依頼を言ってきたが我らは断った。
なぜならルナどのの願いが叶わず、サハリに関する情報はこの者達から得られなかった。
「この国のポリティシャン達とサハリさまは関係ないのかしら・・・」
「そのポリティシャンとは何だ?」
「はい、この国を動かす人達です」
「御家人か?」
「ごけにん?えっと、この国が他の国と違うところは、民衆が・・・」
「貴方たちがスカルーマーダーを倒した冒険者ですか?是非、貴方たちにあって欲しい方がいるのです」
突然1人の男がやってきた。
周りを気にするかのように小さな声で何か怪しかった。
「うかつに、ついて行くわけにはゆかぬな」
「その男は怪しくは無い。俺が保証する。一応、話だけでも聞いてくれないか?」
「お!」
男の後ろからロベルトが現れた。
「ルナどの、どうする?」
「・・・聞きにいきましょう」
ルナどのが承諾したので我らはその会いたい者に会いにギルドハウスを出ると、大通りをまっすぐ街の真ん中にある大きな塔のような建物へ向かった。
「ここはホリー国の政治を行う議事堂です。1階は誰でも自由に入ることができます」
男がそう言って中へと入った。そして入り口のレセプションとかいう所にいた女に話しかけた。
「資料室を見たいのですが」
男は、女にそう言ってパーセを見せた。
女はレセプションのわきにある通路を指し示した。
第一資料室、第二資料室・・・。
いくつもの扉があり、一番奥の第5資料室の扉までたどり着くと男は扉を開けた。
この国に関することや他国の事に関する書物を通り越し男は、部屋の奥にあるもう一つの扉を2回軽く叩いた。
扉が開き、部屋に入るとアイネどのと周りに数名の男と女が座っていた。
「お座り下さい」
男に言われて座った。
真ん中の男が口を開いた。
「私は、ジャック・ハラル。政党団体『自由の風』の長(リーダー)だ」
初見で感じたのは頭は良さそうだ。
それゆえの警戒を感じる。
向こうも某を油断なく見ているようだ。
そして身分も高いな。
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その透明な丸いものの奥にある眼で某の何を見ている。
「虎吉と申す」
「単刀直入に聞く。君は何を望んでいる?」
「領地がほしい」
「それならば我々に力を貸してくれないか。あのスカルマーダーには仲間が何人もやられた。あのスカルマーダーを倒した君が我々のメンバーに入ってくれるのならば・・・君の望みを与えよう」
突然やってきた。
念願だった自分の領地が目の前にある。
「本当に領地が手に入るのか?」
「もちろんだ!我がハラル家はこの国の資本家として最大だ。政治家に働きかければ、この国の適当な土地を君に与えることが出来る」
「お主の望みは?」
「我らは冒険者を含めた同士を集めて大きな事をなそうとしている。それは、新しい我々で新しい世界を作ることだ!」
ジャックが、立ち上がると後ろの棚にあった一番ぶ厚い本を、取り出した。
その本の表紙を、目を細めて見た。
そしてテーブルに置いた。
その本の表紙には『皇』と書かれていた。
「帝国だと?」
100年前1人の武士が作ったこの世界の巨大な存在を倒して領地を手に入れろというのか。
「私からもお願いします。アカツキ帝国は力を失いつつあります。今の帝王はそれが許せなく、世界を危険にさらそうとしています」
アイネどのが口を開いた。
「かつて初代帝王に多くの国々は逆らうこと無く従いました。初代帝王にはそれほどの人徳を備えた大きな器がありました。この国際法は、それで出来ています」
アイネが『皇』と書かれた本の最初をめくった。
そこには、この法の理念が書かれていた。
「ですが、その器は代が分かるごとに小さくなっていき、今の帝王は無理矢理、他の国々を従わせようとしております。それによって反発する国々と、帝国の恩恵を強く受けている国々でいがみ合う事態までおきております」
「アイネどの・・・あなたは何者だ?」
アイネどのは初見から、どこぞの位の高い女性のような気がした。
いまこの場で聞いてみた。
「虎吉、それは・・・」
ロベルトが口を挟もうとした。
だが、アイネどのがそれを無視して答えた。
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冷や汗が出た。
まさか帝国の姫だったとは。
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「せんきょ?」
「私が説明しよう。この国は4年に一度、民の選挙で統治者を選び、選ばれた者は王として、ポリティシャンと共に4年間憲法を守り、この国を治める」
ジャックがアイネどのに代わって説明した。
この者は何を申しているのだ。
むかし鎌倉が合議制で次の鎌倉殿を誰にするか話し合ったとき、宿老たちの争いが起きた。
この国はそんな危ないことを民全員で4年ごとに行うのか。
「我々とてできるなら平和に世界を変えたい。しかし今の帝王は我々の声を聞かない。だから、我々は帝国と戦う同士を集め・・・」
「わたし、貴方たちに力を貸す気はありません!」
ジャックが説明している途中でルナどのが話を遮った。
様子からしてこの部屋から早く出たいようだ。
「と言うわけだ。我らはこれで失礼する」
某とルナどのは立ち上がり、扉を開けて部屋を出ようとした。
「武士は何のために戦っている!名誉か忠誠心か、それとも領地か?」
部屋を出ようとしたときジャックどのが聞いてきた。
「武士を買いかぶりすぎだ!」
そう言ってルナどのと一緒に部屋を出て外に出た。
「アイネさまってすごいですね・・・」
「うむ・・・」
アイネどの、いやアイネ御前は帝国の姫という身分を捨てて世界のために帝国と戦おうとしている。
その勇気は初代帝王から武士の血を引いているのかもしれん。
「虎吉さま、あの人の依頼を受けたかったですか?」
「え?」
「ジャックさんが報酬に領地を言ったとき、虎吉さまの目の色が変わったので。わたしはジャックさんの依頼を受けられないですけど。でも虎吉さまが領地を欲しくて、ジャックさんの所へいっても、わたしは大丈夫です!」
しまった。
ルナどのにこんな事を言わせてしまうほど顔に出てしまったか。
「・・・約束したからな」
「え?」
「ルナどのの国を守ると約束したであろう。領地はそれで手に入れる」
約束は守らねばならぬ。
「よかった!正直初めて会ったときに虎吉さまを無理矢連れてきてしまったので、ずっと心配だったのです。もしかして迷惑だったんじゃないかと・・・本当にありがとうございます」
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