蒙古を倒したのに恩賞がない!?故に1人の女と出会い、帝王が支配する異世界へと赴く。

オオカミ

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37 アルブの森

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「深いな」

 次の日。
 メタルタートルの胴丸鎧と太刀を身につけ、人犬のキルトどのに案内を頼んで、アルブの森へと向かっていた。
 町を抜けると草原があり、そして森の中へと入った。

「ルナどの、こちらの方が『死の森』ではないか?」

「イーミーの森は人がたくさん行き来してるから迷子も出て、死の森と呼ばれてます。ですが人狼の森は人なんてほとんど入らないから、何にも言われないんです」

 イーミーの森はとてつもなく広いがグレートロードを歩けばホリー国にはつける。
 しかしこの人狼の森は道などはなく、我々を隠すかのような巨大な木々から古い臭いを感じた。

「足下、気をつけてください。滑りやすいので」

「キルトどの。あれは橋か?」

「その代わりです」

 川があった。
 その上に一本の大木が倒れていて、キルトどのがその上を歩いた。
 続いて我らも大木の上を歩いて川を渡り、道なき道を突き進んだ。

「しずかに!」

 突然キルトどのが足を止め、あたりを異様に警戒した。

「グゥオオオ!」

 どこか遠くで獣の吠える声がした。
 その咆哮が風と共にこちらに飛んできた。

 痛みと共に足が震えた。

「もしかして、人狼か?」

「いえ、あの声は聖獣アルブティガーです」

「アルブティガー?」

「アルブティガーはかなり気性の激しい聖獣です。気をつけて!」

 キルトどのが耳を動かし警戒しながら教えてくれた。
 姿は見えないが声からしてかなり強うそうな獣に違いない。

「この森は別名『太古の世界』とも呼ばれています」

 ルナどのが小声で語り出した。

「太古の世界?」

「はい。この太古から生きている存在として竜類とハサルトが有名ですが、アルブティガーも含め、この森のモンスター達は他の森では大昔に絶滅したモンスター達が生き残っているんです」

 なるほど。それでこの森から古い臭いがしているのか。

「ごくまれに人間がアルブティガーの毛皮や牙を求めてこの森に入ることがあるんですよ」

「イーミーやハサルトと同じか?」

「そうです!その捕り方は若くて経験の浅いアルブティガーに毒が入った獲物を食べさせたりして殺すんです。その卑怯な捕り方のせいで人狼は人を嫌うんですよ」

 キルトどのが人狼が人間を嫌う理由を教えてくれた。

 人間の知恵を嫌うのか。

 蒙古は鏃に毒を塗っていた。対して武士は奴らの船に牛馬の死体を投げ込んだりした。
 それはある意味では人間の知恵と思っている。

 だがまぁ、好きにはなれなかったのは事実だ。

「虎吉さま、【疾風迅雷(ラピッドサンダーストーム)】をかけます」

 ルナどのが、呪文を唱え【疾風迅雷(ラピッドサンダーストーム)】をかけた。

「前方から人間がやってきます」

 前方から、服がぼろぼろになった数名の人間が全速力で走ってきた。

「虎吉さん、あの人たちもしかして」

「あぁあのときの連中だ」

 走ってきたのは町で出会った柄の悪い冒険者どもらだ。

「お主らアルブティガーにやられたのか?」

「ちげぇよ、人狼どもらだよ。支援魔術なんて役に立たねぇぞ!」

「うるさいね。あんたの腕が未熟すぎるんでしょう!」

 情けない顔で必死に逃げてきて、無様に仲間同士でけんかしている。

「このことは帝国に報告する。俺達にこんなことをしてただで済むと思うな!」

 負け犬の遠吠えのようなことを言って、無様な連中は姿を消した。

「来ました!」

 キルトどのの耳の動きが止まった。
 前方から影が1人、2人と現れ、人犬と同じ頭に獣の耳をはやした5人の男が現れた。

 確かに人犬とは違う。
 膝にゆとりがあり、腰が定まっている。
 肩にも無駄な力など無い。

 好戦的な目つきでこちらを見ている。

「リーダーのダガーさん、こんにちは」

 キルトどのが先頭にいる人狼の頭に挨拶をした。

「キルト、人間連れて何しに来た?」

 頭が某とルナどのを見た。
 人間嫌いがはっきりと分かる怒りの目つきだ。

「ダガーさん、こちらの方々が是非ともマカミさんに会いたいと申しておりまして・・・是非とも」

「人間ごときが、『我らの王』に会うだと!?」

 頭の怒りが最高潮に達した。

「はっはい・・・」

「俺に殺されたくなければ、今すぐ帰れ!」

 頭は有無も言わさず我らを追い払う気だ。
 キルトどのは困っている。

 ガチャ・・・。

 某はメタルタートルの甲冑を脱ぎ、太刀をルナどのに預けた。

「と、虎吉さま!?」

 ルナどのが止めようとしたが、某は人狼の頭の前に立った。

「伝説の人狼ってのはどれくらいの強さだ?」

「黙って帰れ」

 頭のダガーが某に近づいてきた。

「お主はどれくらい強い」

「言葉がわからないのか?」

 見えないが分かる。
 身体の中から鍛え上げたそうとうな闘気を感じる。

「ならばどうする?」

 ばっ!

 強烈な肘鉄がきた。

 ギリギリ躱したが、ダガーがすかさず前蹴りを出した。
 後ろに躱すとダガーが間合いを詰め、身をかがめ某の腰をつかんだ。
 地面に倒され、さらにダガーから肘鉄を食らった。

 脳が揺れた。
  このままだと失神させられる中、とっさにダガーの首を両足ではさみ、絞めていった。

「があああ!」

 ダガーは某の身体を持ち上げると地面にたたきつけた。
 某は絶対に絡みつけた足を離さなかった。

 ダガーはゆっくりと崩れ落ちた。

「武士をなめるな。貴様らと戦をしたって構わんのだぞ」

 某は立ち上がると、ダガーの後ろにいた仲間が動こうとした。

「手出しするな!」

 ダガーが仲間を止め、悔しそうに立ち上がった。

「『我らの王』に会いたいのか?ここをまっすぐ行け」

 ダガーはうつむきながら指さした。

「あの虎吉さん、わたくしはここまでしか案内できません」

 キルトどのはここまでが限界のようだった。

「かたじけない、ルナどのここからは我らだけで参ろう」

「はい、キルトさんありがとうございます!」

「い、いえ。お気をつけて」

 我らは伝説の人狼へ会いにさらに森の奥へと入っていった。森はさらに険しくなっていった。
 空を見ると太陽が傾き、ルナどのも疲れている。【疾風迅雷(ラピッドサンダーストーム)】の効果も切れている。

「ルナどの今日は休もう」

「はい」

 あたりにちょうど良い木が転がっている。
 寝床に最適な場所をさがした。

「と、虎吉さま・・・」

 ルナどのが震えながら指さしている。その指さす方を見ると、一匹の魔物が横たわっていた。
 近づいて見るとそれは大きな鳥のように見えるが、巨大な爪を持って腕に翼が生えていた。
 腹がえぐれているので何者かに襲われたのか。

「これはドラゴンバードという竜でして、これを襲うモンスターはアルブティガー以外にいません」

「竜?・・・ところでなぜ素石にならずに肉が喰えるのだ?」

 ずっと疑問だった。
 この世界では生きているものは死んだとき肉体が素石となる。だが某は今まで生き物の肉を食らった。

「それはモンスターに備わる特殊技能によって、素石になるのを防いでいるんです。人間の場合は素石防止の魔法を武器にかけて狩りをします。そうすれば肉体はこうやって・・・」

 ザ・・・。

 息が詰まった。
 突然森の奥から黒に白の縞模様が入ったクマの3倍はあろうかという巨体に長くて鋭い牙を持った巨大な魔物が現れた。

「ルナどのもしかして・・・」

「あ、アルブティガー・・・です」

 伝説の人狼と会う前に聖獣とあってしまった。向こうは何が気に入らないのかうなり声を上げながら、こちらを見ている。
 
 某は太刀を握った。
 様子をうかがっていたアルブティガーが動きを止め、口を大きく開けると動き出した。

 ガッ!

 突然1人の白髪の人狼が飛び出した。

 全身に鳥肌が立った。
 咄嗟に某はルナどのを守るように抱きしめた。

 白髪の人狼がアルブティガーの鼻っ面に一撃を入れた。

 轟音と共に人狼から赤い覇気が某とルナどのの所にも飛んできた。
  内臓から魂へと震えるような深い衝撃が身体の内部で起こった。

「ルナどの大丈夫か!?」

「は・・・はい・・・」

 ルナどのが某の腕を必死に握って震えていた。

「おまえ、まだ痛い目見たいのか?・・・消えろや!」

 アルブティガーは後ずさりして、森の中へと消えた。
 人狼がこちらを振り向いた。
 某よりは少し年上の若い顔つきだ。

「武士か・・・俺にでも会いに来たのか?」

「いかにも・・・貴方はもしかして」

「マカミだ」
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