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41 新しい太刀
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「アルブティガーに勝った」
必死に呼吸をしながら震える手でアルブティガーの素石を手にした。
そして溢れる涙のようにきた勝利の喜びをかみしめた。
「やるじゃねぇか。俺以外でこの大きさのアルブティガーを倒せたのはお前だけだ」
「・・・太刀が折れてしまいました」
「まあ、太刀のことは後で考えて・・・戻ろうや」
マカミさまと一緒に小屋に戻った。
「虎吉さま!」
小屋の前でルナどのが立っていた。
ルナどのを見たとき、ようやく自分が生きている実感がわいた。
「ひどい怪我!すぐに直します」
ルナどのが回復(ヒール)をかけてくれた。
傷がみるみる癒やされていった。
「戻ってきてくれて嬉しいです・・・」
ルナどのの笑顔の中にある瞳がすこし潤っている。
「ルナどのとの約束があるので・・・必死に戻ってきた・・・新しい太刀を手に入れねばならん」
鞘の中に無残にも折れてしまったメタルタートルの太刀が入っている。
「人犬の街に戻りましょう。良い武器があるかもしれません」
ルナどのの言うとおり、人犬の街に戻らねばならぬのか。だが、人犬の街で良い太刀は見つかるのか。
「手伝おうか?」
ルナどのが料理に取りかかったので、手伝わねばと立ち上がろうとした。
「だめです休んでください!今、傷つき疲れた身体を癒やす食べ物を作りますので、虎吉さまはそれ食べて、しっかりと身体を癒やしてください」
「はい・・・」
ルナどのにあまえた。
「出来ました、たっぷり食べてください!」
料理が出来た。出てきたのは赤い汁に野菜と一緒にドラゴンバードの肉が入った料理だった。
「おおー力が蘇ってくる・・・」
噛むと肉汁が口の中にあふれ出た。
それが赤い汁と一緒に口の中から身体の前身へと巡り、心身を回復させるような気持ちになった。
「ドラゴンバードの肉です。竜類の肉は心身の回復には最強の食材なんです!それを身体の修復力を高めるマトマと一緒に煮込みました!」
「お前の女、料理の才があるじゃねぇか!」
マカミさまが笑いながら、肘で某をつついた。
「いや、ルナどのは某の付き人でありまして・・・いや、某が・・・」
「お前の女」という言葉が気になる。
ルナどのは某にとって・・・。
「だからお前の女だろ?ずっとお前のそばにいるわけだから」
ルナどのは某の女になるのか。
ルナどのを見た。
普通に食事をしていた。
「あ、虎吉さま。お風呂をどうぞ」
「先に入って良いのか?」
「はい、ゆっくりと疲れをとってください」
またまたルナどのにあまえて先に風呂に入った。
「虎吉さま!」
「ん?」
「マカミさまが虎吉さまの新しい着物を用意してくれました。置いておきますね」
「おお、それはかたじけない」
人犬の街に良い太刀があることを願い、ルナどのが作ってくれた飯を食べ、風呂に入り、そして床についた。
夜中。
虎吉達が深い眠りについた頃、マカミが部屋の奥から一本の刀を取り出した。
「スギノメ・・・面白い武士がこの世界にやってきたぞ」
朝が来た。
「ああ、良い朝じゃねぇか!」
「まさに」
外に出て朝の光を浴びていた。
マカミさまが用意してくれた新しい着物に某とルナどのは着替え、出立しようとしていた。
「我らの王!」
ダガーが数名の人狼を従えてやってきた。
その周りにダガーと同じく数名の人狼を従えた、おそらくはダガーと同じ人狼の長であろう者達もやってきた。
「各部族から今年成人する最強の若者達を連れてきました。是非、王と拳を交え、彼らを我ら人狼を率いる次の長への力をお与えください!」
「良いだろう」
マカミが承諾すると、人狼達の中から15人の若い人狼が前に進み出た。
我らの王を前にして、喜びと緊張を感じながら全員構え、マカミに比べて若々しいオーラを出した。
「かあ!」
1人の若者が強烈な右拳を放った。
若者はマカミの一撃を食らって膝をついた。
マカミは別の1人に突進した。
若者は腰をかがめてマカミの腰をつかもうとしてマカミの膝を食らった。
「せいや!」
別の1人がマカミの鳩尾に前蹴りを入れた。
マカミは躱すこともなく腹で前蹴りを受け止め、お返しに相手の鳩尾に一撃入れた。
15人の若者はマカミに歯が立たなかった。だが、それでも牙を折ることなく、構えを崩していない。
「お前ら、いい目をしてる・・・あいつを見ろ」
マカミが虎吉を指さした。
「あいつは昨日アルブティガーを倒した1人で・・・」
「「「まさか・・・」」」
その場にいた人狼達が全員信じられない顔をした。
「強者は俺たちだけじゃねえ。だから真の強者は鍛錬を怠らねぇんだよ。それを忘れるなよ!」
「「「ありがとうございます!」」」
人狼達は感謝を述べると帰って行った。
「やれやれ・・・正直言うと、俺は戦いなら誰にも負けねぇが、王として周りを治める才はねぇんだよ。だからこうして1人で暮らしてんだが、それでもあいつら俺のことを”王”と呼びやがる」
マカミさまは困ったようにつぶやいた。
「さて、われらも人犬の街に戻ろう」
「はい!」
我らはいったん人犬の街に戻ることにした。このアルブの森を抜けた先に『竜の楽園』があるらしいが、武器なしでこの先はいけない。
「マカミさま、最後に1つお尋ねしたいことがございます」
「何だ?」
「4代目と、初代帝王は戦えばどちらが強いのですか?」
「4代目の強さは一応サハリから聞いているが、経験がほとんどないから奴の強さは荒削りだ。ギケイは長年の経験のすえ真の強さへと到達した」
「今の某は4代目と、初代帝王に抗えますか?」
「お前、アルブティガーを倒したんだろ?4代目は倒しちゃいねぇ」
「初代帝王はどうやって倒したのですか?」
「あいつの太刀に混ぜたアルブティガーの素石は俺が倒したやつだ。初代帝王はアルブティガーを倒していない」
「え?」
「おまえの相手はあれは14才くらいのガキだな。あいつが対峙したのはお前のよりもっとでかい大人の奴だ。死にそうになったギケイを俺が助けた。」
「さ、さようで・・・」
「武の力で言えばお前だな。だが一番賢いのはギケイだな」
「どういう意味でございますか?」
「あいつは、この世界に来たとき己の才の愚かな部分を痛感していた。それ故にあいつは自分の欠点を補ってくれる者達を必死に集めた。お前は己の強さだけを追い求めるのが精一杯」
その通りだ。
弱いことを拒み続けた某はひたすら兵法を学び、武を鍛えた。その強さは竹崎季長よりも上のはずだった。
だが某は地頭になれず、奴が地頭になれたのは奴が武を磨いたそれ以外にも出世に必要な人を動かせる才を持っていたからであろう。
ガッ!
「いて!」
マカミさまから強烈な一撃を食らった。
「人生なんざよ、くだらねぇ勝負に負けなければ良いんだよ。だからお前に俺の友の太刀を渡す!」
マカミさまが太刀を一振り持ってきた。
マカミさまが太刀を抜くと、真っ白な刃が現れた。
「なんですか、この太刀は?」
「『天狗の玉鋼』で作った太刀だ。メタルタートル並に頑丈だ。持て!」
「は!」
持っていると、太刀から歴戦の臭いが感じられた。
「ありたがき幸せにございます!」
某は謹んでその太刀を拝領した。
「おめえ、父親はどんな奴だ。お前ほどの強者なら父親もざそかし強者だったのだろう?」
「某は本当の両親を知りませぬ。育ててもらったのは拾ってくれた両親です」
「そうか・・・この先で舟を持っている奴がいる」
前方の大河、竜ノ道(ドラゴンロード)が見えていた。
この先に『竜の楽園』があるのか。
「アルブティガーに勝ったんだ。竜に負けるなよ!」
必死に呼吸をしながら震える手でアルブティガーの素石を手にした。
そして溢れる涙のようにきた勝利の喜びをかみしめた。
「やるじゃねぇか。俺以外でこの大きさのアルブティガーを倒せたのはお前だけだ」
「・・・太刀が折れてしまいました」
「まあ、太刀のことは後で考えて・・・戻ろうや」
マカミさまと一緒に小屋に戻った。
「虎吉さま!」
小屋の前でルナどのが立っていた。
ルナどのを見たとき、ようやく自分が生きている実感がわいた。
「ひどい怪我!すぐに直します」
ルナどのが回復(ヒール)をかけてくれた。
傷がみるみる癒やされていった。
「戻ってきてくれて嬉しいです・・・」
ルナどのの笑顔の中にある瞳がすこし潤っている。
「ルナどのとの約束があるので・・・必死に戻ってきた・・・新しい太刀を手に入れねばならん」
鞘の中に無残にも折れてしまったメタルタートルの太刀が入っている。
「人犬の街に戻りましょう。良い武器があるかもしれません」
ルナどのの言うとおり、人犬の街に戻らねばならぬのか。だが、人犬の街で良い太刀は見つかるのか。
「手伝おうか?」
ルナどのが料理に取りかかったので、手伝わねばと立ち上がろうとした。
「だめです休んでください!今、傷つき疲れた身体を癒やす食べ物を作りますので、虎吉さまはそれ食べて、しっかりと身体を癒やしてください」
「はい・・・」
ルナどのにあまえた。
「出来ました、たっぷり食べてください!」
料理が出来た。出てきたのは赤い汁に野菜と一緒にドラゴンバードの肉が入った料理だった。
「おおー力が蘇ってくる・・・」
噛むと肉汁が口の中にあふれ出た。
それが赤い汁と一緒に口の中から身体の前身へと巡り、心身を回復させるような気持ちになった。
「ドラゴンバードの肉です。竜類の肉は心身の回復には最強の食材なんです!それを身体の修復力を高めるマトマと一緒に煮込みました!」
「お前の女、料理の才があるじゃねぇか!」
マカミさまが笑いながら、肘で某をつついた。
「いや、ルナどのは某の付き人でありまして・・・いや、某が・・・」
「お前の女」という言葉が気になる。
ルナどのは某にとって・・・。
「だからお前の女だろ?ずっとお前のそばにいるわけだから」
ルナどのは某の女になるのか。
ルナどのを見た。
普通に食事をしていた。
「あ、虎吉さま。お風呂をどうぞ」
「先に入って良いのか?」
「はい、ゆっくりと疲れをとってください」
またまたルナどのにあまえて先に風呂に入った。
「虎吉さま!」
「ん?」
「マカミさまが虎吉さまの新しい着物を用意してくれました。置いておきますね」
「おお、それはかたじけない」
人犬の街に良い太刀があることを願い、ルナどのが作ってくれた飯を食べ、風呂に入り、そして床についた。
夜中。
虎吉達が深い眠りについた頃、マカミが部屋の奥から一本の刀を取り出した。
「スギノメ・・・面白い武士がこの世界にやってきたぞ」
朝が来た。
「ああ、良い朝じゃねぇか!」
「まさに」
外に出て朝の光を浴びていた。
マカミさまが用意してくれた新しい着物に某とルナどのは着替え、出立しようとしていた。
「我らの王!」
ダガーが数名の人狼を従えてやってきた。
その周りにダガーと同じく数名の人狼を従えた、おそらくはダガーと同じ人狼の長であろう者達もやってきた。
「各部族から今年成人する最強の若者達を連れてきました。是非、王と拳を交え、彼らを我ら人狼を率いる次の長への力をお与えください!」
「良いだろう」
マカミが承諾すると、人狼達の中から15人の若い人狼が前に進み出た。
我らの王を前にして、喜びと緊張を感じながら全員構え、マカミに比べて若々しいオーラを出した。
「かあ!」
1人の若者が強烈な右拳を放った。
若者はマカミの一撃を食らって膝をついた。
マカミは別の1人に突進した。
若者は腰をかがめてマカミの腰をつかもうとしてマカミの膝を食らった。
「せいや!」
別の1人がマカミの鳩尾に前蹴りを入れた。
マカミは躱すこともなく腹で前蹴りを受け止め、お返しに相手の鳩尾に一撃入れた。
15人の若者はマカミに歯が立たなかった。だが、それでも牙を折ることなく、構えを崩していない。
「お前ら、いい目をしてる・・・あいつを見ろ」
マカミが虎吉を指さした。
「あいつは昨日アルブティガーを倒した1人で・・・」
「「「まさか・・・」」」
その場にいた人狼達が全員信じられない顔をした。
「強者は俺たちだけじゃねえ。だから真の強者は鍛錬を怠らねぇんだよ。それを忘れるなよ!」
「「「ありがとうございます!」」」
人狼達は感謝を述べると帰って行った。
「やれやれ・・・正直言うと、俺は戦いなら誰にも負けねぇが、王として周りを治める才はねぇんだよ。だからこうして1人で暮らしてんだが、それでもあいつら俺のことを”王”と呼びやがる」
マカミさまは困ったようにつぶやいた。
「さて、われらも人犬の街に戻ろう」
「はい!」
我らはいったん人犬の街に戻ることにした。このアルブの森を抜けた先に『竜の楽園』があるらしいが、武器なしでこの先はいけない。
「マカミさま、最後に1つお尋ねしたいことがございます」
「何だ?」
「4代目と、初代帝王は戦えばどちらが強いのですか?」
「4代目の強さは一応サハリから聞いているが、経験がほとんどないから奴の強さは荒削りだ。ギケイは長年の経験のすえ真の強さへと到達した」
「今の某は4代目と、初代帝王に抗えますか?」
「お前、アルブティガーを倒したんだろ?4代目は倒しちゃいねぇ」
「初代帝王はどうやって倒したのですか?」
「あいつの太刀に混ぜたアルブティガーの素石は俺が倒したやつだ。初代帝王はアルブティガーを倒していない」
「え?」
「おまえの相手はあれは14才くらいのガキだな。あいつが対峙したのはお前のよりもっとでかい大人の奴だ。死にそうになったギケイを俺が助けた。」
「さ、さようで・・・」
「武の力で言えばお前だな。だが一番賢いのはギケイだな」
「どういう意味でございますか?」
「あいつは、この世界に来たとき己の才の愚かな部分を痛感していた。それ故にあいつは自分の欠点を補ってくれる者達を必死に集めた。お前は己の強さだけを追い求めるのが精一杯」
その通りだ。
弱いことを拒み続けた某はひたすら兵法を学び、武を鍛えた。その強さは竹崎季長よりも上のはずだった。
だが某は地頭になれず、奴が地頭になれたのは奴が武を磨いたそれ以外にも出世に必要な人を動かせる才を持っていたからであろう。
ガッ!
「いて!」
マカミさまから強烈な一撃を食らった。
「人生なんざよ、くだらねぇ勝負に負けなければ良いんだよ。だからお前に俺の友の太刀を渡す!」
マカミさまが太刀を一振り持ってきた。
マカミさまが太刀を抜くと、真っ白な刃が現れた。
「なんですか、この太刀は?」
「『天狗の玉鋼』で作った太刀だ。メタルタートル並に頑丈だ。持て!」
「は!」
持っていると、太刀から歴戦の臭いが感じられた。
「ありたがき幸せにございます!」
某は謹んでその太刀を拝領した。
「おめえ、父親はどんな奴だ。お前ほどの強者なら父親もざそかし強者だったのだろう?」
「某は本当の両親を知りませぬ。育ててもらったのは拾ってくれた両親です」
「そうか・・・この先で舟を持っている奴がいる」
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