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45 人造モンスター

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「仲間を呼びに行ったのか?」

「竜は賢い生き物です。アルブティガーを倒した虎吉さまの力を見て仲間を呼びに行ったのでしょう」

「お願いだ勇者よ!その偉大な力で竜を倒し、我らの無念を晴らしてくれ!」

 古の王が懇願している。

「あぁ・・・分かった・・・」

 こんな惨めな姿を見せて何が王だ。

「勇者さん・・・」

 童男が頭にかぶっていた輪っかを握って心配そうにしていた。

「・・・お主を神殿まで送り届ける・・・龍を退治して」

 童男にそう言うと童男は「違う」というように首を振った。

「龍は・・・」

 ドォオオオン!

「戻ってきたか」

 先ほどの竜が仲間をつれて戻ってきた。
 合計4匹、真ん中のやつが一番でかい。

 4匹の竜は某がいる雲の地面の遙か上を旋回していた。

「虎吉さま、中級の3匹はわたしが相手をします!虎吉さまは一番でかいのを!」

 ルナが杖をかざした。

「光よ稲妻となり、敵を射貫け・・・【雷矢(ライトニングアロウ)】!」

 ルナどのが一瞬にして9発の雷矢(ライトニングアロウ)を出し3匹の竜を攻撃した。

 3匹の竜はぎりぎりで躱すとルナの周りを旋回しだした。

 ルナの【雷矢(ライトニングアロウ)】の威力が上がっていた。その威力に中級の竜はうかつに手出しが出来なかった。

「よし!」

 中位の竜どもらはルナどのに任せて大丈夫だ。
 某は太刀を構えた。

「・・・・・・」

 2人が戦っている間、古の王は虎吉達から離れた。
 そして隠れて見ている古の王は懐から短剣を取り出した。

「出でよ・・・わが王国の守護神!」

 短剣が光り出した。

「・・・来いやぁ!」

 某が叫ぶと上位の龍が大口を開けて急降下してきた。
 【覚醒(アウェイクニング)】の力で思いっきり空へと飛んだ。某はまるで自分自身が竜になったかのごとく大空を飛んだ。
 
 そして竜の背中を斬った。
 竜が身体をくねらせ、某に噛みつこうとした。

 某は再び飛んで身近にあった岩ほどの大きなの雲に飛び移った。

 竜は追撃の手を緩めず、5本の鋭い刃で攻撃した。

「良い攻撃だ。アルブティガーほどじゃないがな!」

 マカミどのからいただいた天狗の太刀で竜の爪を防ぎながらあちこち浮かんでいる小さな雲に飛び移った。

「グゥオオオ」

 竜が周りを炎の海に変える覇気を発した。

「カァアアア」

 竜が咆哮を上げた。

 ドオオン!

 竜の炎が3発の鋭い刃となって某を襲ってきた。

「むん!」

 1発目を切り裂き、2発目を躱し、後ろから来る3発目を斬った。 アルブティガーと戦って鍛えた自身の力が、そしてルナどのがかけてくれた【覚醒(アウェイクニング)】の力が己を助けてくれた。

「せいや!」

 【覚醒(アウェイクニング)】がかかった力で天狗の太刀を使って炎の海を切り裂き、竜の頭へと太刀を振り下ろそうとした。

「!?」

 いったん竜から離れた。
 竜の背後に見えた神殿の内部に犬ほどの大きさの子竜がいた。

「どういうことだ?」

 子竜は鎖につながれていた。

「キュアアアア!」

 子竜が悲しそうに泣いていた。
 竜が咆哮を上げ子竜のところに飛んでいった。

 ドオオン!

 突然、黒い塊が現れた。
 ぶよぶよした形状がやがて形をなし岩のような皮膚で巨大な猿のような形となった。
 そして大きな両手で、竜の首を掴むと首をへし折った。

「虎吉さま、あれは・・・ゴーレム!?」

「ゴーレムとは何だ?」

 ルナどのが教えてくれた。

「はい、言い伝えでグローリは自らの力で竜類に匹敵する強力なモンスターを人工的に作り出したと言われています。その名は人造モンスター『ゴーレム』。言い伝え通りです。・・・あれは魔術によって操作されたと言われてますが・・・虎吉さまあれ!」

 ルナどのが指さす方に、禍々しい短剣を持つ古の王がいた。

「グゥオオオ!」

 怒り狂った竜がゴーレムに攻撃をした。
 ゴーレムは、巨大な腕で建物を崩しそれを投げ飛ばした。

「お願いです、僕を子竜のもとまで!」

 童男が叫んだ。
 某は童男の手を掴んで走り出した。

 ドオオン!

 目の前にもう一体のゴーレムが立ちはだかった。

「キュアアア!」

 大空から一体の魔物が飛んできた。
 魔物が巨大な風を巻き起こしゴーレムを吹き飛ばした。

「フウカ!?」

 フウカがゴーレムに噛みついた。
 ゴーレムはフウカを振りほどこうと動き、フウカを殴った。
 フウカは逆にゴーレムを持ち上げ、風の力で遠くに吹き飛ばした。

「フウカ、そこは任せる!」

 某は童男と友に子竜のもとへ。
 もう少しだ。

 ドオオン!

「まだおったか!」

 もう1体のゴーレムが姿を現した。

「童、そこで待っておれ。某がゴーレムを倒したら子竜の元まで行け!」

 太刀を構えた。
 ゴーレムが拳を振り下ろした。

 ザン!

 手首を斬った。

 すぐにゴーレム2発目の拳が振り下ろした。
 某は高く飛んだ。

 バン!

 天狗の太刀は、その岩のように硬いゴーレムの喉を切り裂いた。

 ゴーレムの手が某を握りつぶそうとした。
 指を切り落とした。

 地面に降りると再び飛んだ。

「くたばれ!」

 ゴーレムの額に天狗の太刀を深々と刺した。

 ゴーレムが形を失い、ブヨブヨの状態になった。
 そのブヨブヨが某を飲み込もうとした。
 その液体に身体が包み込まれたとき邪な念と嫌な記憶が見えた。

「喝!」

 邪念に己を見失わないよう、己の魂に気合いを入れ太刀を振った。

 ゴーレムは飛び散り、消滅した。

 神殿に着地すると童男が子竜を抱きかかえていた。
 鎖から解き放たれた子竜は、喜んでいるように見えた。

「お主が求めていたのは、この子竜か?」

「ありがとう!」

「よし、ルナどのの所に戻ろう」

  ルナどのの所に戻った。
 ルナどのの後ろに、王が隠れていた。

「お前が裏切ったのか?」

 ブヨブヨの中で消された記憶を見て分かった。

「違う!」

 王は首を振った。

「我らの栄光をこの国の力を永遠に守るために、そのために少しばかりで良いんだ。少しばかり世界のために数匹の竜に身を捧げてもらおうと思ったのだ」

 ガッ!

 王の胸ぐらをつかみ突き飛ばした。

「お主はもう死んでいる。見苦しいから、成仏しろ!」

 王は深くうなだれた。

 なんたる無様だ。

「理不尽だ・・・なぜ朕の時に・・・この偉大な国家が・・・」

 望みを叶えられなかった古の人間がうずくまりながら消えていった。

「勇者さん・・・」

 子竜を大事に抱えていた童男が、満足した顔でいた。

「お主は、このために現れたのか?」

「大切なものを守ろうとして守れなかった。その思いが心の奥底で消えずにいた。でも歴史から消された。それでも誰かに伝えたくて忘れて欲しくなくて・・・ずっと願っていた」

「それで某に頼んだのか?」

「うん、僕は必死に止めたかった。龍達には人間を嫌いになって欲しくなかったんだ。だって、ずっと仲良しだったんだ。でも・・・僕はあなたみたいに強くなかった」

 童男は、強くなれなかった自分を悔やみ瞳を潤わせながらしゃべった。

(某のように強く?)

「よく聞け・・・」

 童男に答えた。

「龍には伝える。人間に裏切ろうとしなかった心強き者がいたことを!」

「・・・これ・・・」

 童が自分がかぶっていたものを某に渡した。

「これ、本当は龍の角で作られた指輪なんだ。かつて王国が友情の証として、王国が大切に持っていたんだ。これを龍に返して欲しいんだ。・・・裏切ってごめんなさいって」

 それを言うと、童男は小竜を大事に抱えながら消えた。

 童男が消えると同時に我らも光に包まれた。
 光が消えると龍神がいた。
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