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56 再会

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「貴様に問う。貴様は世界が敬意を表するに値する者か!?」

「それは誰に言っている?」

 反旗を翻す1人のナイトにイズルはオーラを飛ばした。

「貴様こそ、世界に忠誠を誓え!貴様の身勝手な振る舞いで世界は混乱に飲み込まれ、大きな戦が起きたのだ!貴様は世界を潰した!」

 ロベルトは絶対に屈したくは無い。
 かつてモンゴル帝国に戦に敗れ忠誠を誓った祖国を奪われたあの屈辱は2度と味わいたくは無い。

「つまり・・・お前達は反逆者だな」

「諸君、我らは戦うのだ!世界のために!」

「「「おー!」」」

 ロベルトのアイネ騎士団の仲間が呼応した。

「「「「「「うぉおおお!」」」」」」

 それに続いてジン軍からも地響きのような呼応が起きた。

「弓兵!」

 弓兵が弓を構えた。

「愚かな者どもらだ・・・行くぞ」

 イズルは単身敵に突撃した。

「放て!」

 合図と共に弓兵が一斉にイズルに向かって矢を放った。
 無数の矢がイズルを襲う。

「はっ!」

 イズルが太刀を振るうと、謎の衝撃波が矢を全て打ち落とした。

「なっなんだ!?」

 ロベルト達は混乱した。

「いったい何の魔術をかけたのだ?」

 4代目から柱のような黄金のオーラが立っていた。
 ところどころ黒い色が見えた。

 それは彼らが今まで見たことのないものであり、これが4代目がだしているオーラなのか戸惑っていた。

「我が首を討ち取れるか!」

 イズルが突撃した。
 それと共に異様なオーラが弓兵達を襲い、そのオーラに隊列が乱れた。

 隊列を乱されながらも数名の弓兵達はイズルに矢を射かけた。

「遅い」

 イズルの瞳孔が光り出す。
 飛んできた矢が止まった。

 止まって見えるのだ。

 イズルはその矢をつかんだ。
 そして弓兵をもう1人斬った。

 至近距離で1人の弓兵が矢を放とうとした。

 眉間に貫かれたような痛みが走った。
 弓兵は口から胸から血を流して倒れた。

 矢がまったく当たらない。
 次第に弓兵達は恐怖した。

「わぁ!」

 1人の弓兵が弓を捨てて逃亡した。
 それにつられてまた1人、また1人と逃げだし、ついに全員が逃げ出した。

「今更遅い!」
 
 イズルは追い討ちをかけた。
 そして残りの弓兵を全てかたづけた。

「我をなめるな!」

 イズルが叫んだ。
 その声にジン国の軍勢はちりじりになって逃げ出した。

 その中で逃げない部隊がいる。
 イズルはロベルト達に目をつけた。

「先ほどの言葉をもう一度言ってみろ」

「くっ・・・ナパシチ(突撃)!」

 アイネ騎士団が突撃した。
 軍馬の音が響き渡る。

「覚悟しろ!」

 ロベルトにかかった【剣撃(ソードアタック)】が最大限に高まった。
 ロベルトの身体から青いオーラがあふれ出た。
 馬上からイズルにロングソードを振り下ろした。

 目の前からイズルが消えた。

「!?」

 そしてすぐ横にいた仲間と彼が乗っていた馬の首が無くなっていた。
何がなんだか分からないまま後ろから何かの衝撃に襲われ、全員落馬した。

 起き上がり振り向くとイズルが太刀を振っていた。

「くっ!」

 アイネ騎士団はまだ諦めず戦おうとした。

「雑魚ども!」

 イズルは太刀を振り回した。
 騎士達は重厚な鎧ごと切り裂かれていった。

「終わりだ」

「まだだ!」

 ロベルトはまだ諦めない。
 イズルに突進した。

 より一層気迫のこもった【剣撃(ソードアタック)】の一撃を振り下ろした。

 ガァン!

 地面にヒビが入った。
 この力で、ルバツ国のモンスター達を殲滅した。

「弱いな」

 渾身の一撃はイズルの太刀に受け止められた。
 小柄の身体の細い腕の片方だけで。

 ダン!

「ぐっ!」

 ロベルトは吹き飛ばされ、落馬した。
 すぐに立ち上がった。

 イズルの太刀が振り下ろされる。

 ガン!

 その太刀を抑えイズルの眉間を狙った。

 ガッ!

 イズルの前蹴りにまた吹き飛ばされた。

「アイネさまお逃げください!」

 ロベルトが叫んだ。
 だが、アイネは逃げようとしなかった。

「ヒノ!」

 アイネは叫んだ。

「ご機嫌麗しくお喜び申し上げます・・・姉上」

 その声にイズルが応えた。
 倒れているロベルトにとどめを刺そうとしたがそれをいったん止め、姉上の方に振り向いた。

 久しぶりの対面だった。
 イズルが礼儀正しく、笑みを持ってアイネに挨拶した。

「まだ、私を姉上と呼んでくれるのですか?」

 アイネは震えた。

 今の妹は自分が知っている妹ではない。

 彼女がまだ5歳だった頃、自分といるのが好きで無邪気で可愛いかった。
 今は全身からあふれる黄金の覇気が彼女を狂わせているかのようだった。

「・・・応えなさい!」

 臆してはならない。

 アイネは恐怖を押し殺した。

「・・・・・・」

「言いたいことがあるのでしょう?・・・応え・・・なさい!」

 だまる妹に再度、気を強くして尋ねた。

 妹は笑顔を止め、すこし間を置いて返事をした。

「特別に、今だけは姉妹に戻りましょう」

 イズルが太刀を治めた。
 アイネも杖を地面に置いた。

「ヒノ、お願いです。戦いを止めてください」

 アイネが願った。
 その願いにイズルの眉が動いた。

「その言葉こそまさしく裏切り・・・」

「違います!私はあなたのためを思って言っているのです!わたしは・・・」

「ならば問う。あなたはなぜ逃げた!」

 やはりそうだったか。

 あの時のこと。

「わたしがまだ7歳の時、あなたは9歳だった。そしてわたしたち姉妹には12歳のアサヒ兄上がいた。だが、その兄上がまもなく亡くなった。覚えているか!」

 アイネの息が詰まった。

 2人には兄がいた。
 本当ならば、この者こそが4代目帝王になるはずだった。

 優秀にして、初代帝王の再来とも言われたアサヒ兄上。

「アサヒ兄上が亡くなったとき、本来ならば私が4代目帝王になるはずでした」

「そう、そしてわたし達は約束した。わたし達二人で偉大なる曾祖父、初代帝王が創り上げた帝国を守っていこうと。そしてわたしは4代目となったあなたを支えていくつもりで一生懸命、勉強した。違うか?」

「はい、あなたは私に分からないことをたくさん聞いてきました。私とあなたは一生懸命でした」

「だが、あなたが15歳になったとき・・・」

 イズルは口を振るわして叫んだ。

「あんたはその帝国から逃げた!そして今、その帝国を滅ぼそうとしている!」

 イズルの身体が震えている。あの時からずっと姉に持っていた恨みをぶちまけた。
 アサヒ兄上がいなくなり、カリン姉上までもが自分のもとから去って行った。

 許すまじ。
 
 妹の目がはっきりとそれを姉に伝えていた。

「・・・あなたは私に何をしてほしいのですか?」
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