人間は絶対勝てない最強の存在 ~奴の力を持っている某は仲間の力も得て奴と戦う~

オオカミ

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ホロとククリ

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 ダッ!

 鬼が突進した。姿勢を低くして、両手の武器を地面すれすれまで下げて、向かってきた。
 右斜め下からの斬撃が某を襲った。

 バキャア!

「オゥオオオゥエエエ!」

 渾身の一撃で鬼の武器を粉々に砕いた。鬼は首を震わせながら奇声をあげて距離をとった。

 ガシァア!

 鬼は3倍ほど大きくなった輪っかを両手に具現化させた。

「ギュァアアア!」

 左右から攻撃してきた。

 バキィ!

 大きくなった2つの武器を真っ二つに切った。
 奴の血が異常な力を某に与えた。
 透き通る神漸の刃が少し曇った。

「!?」

 鬼が左を向いた。
 1人の女が立っていた。白髪の琥珀色の瞳をもった美しい女が弓を構えて立っていた。

「ククリ・・・」

 鬼がつぶやいた。

「ククリィーーー!」

 鬼が叫びながら女に突進した。
 女の右手から矢が現れた。
 蒼い甲冑が具現化され、白い髪が水色へと変わった。

「妖怪か!?」

 ダァン!

 放たれた矢は大きく開かれた鬼の口へと飛んだ。

 ザッ!

 間一髪鬼は塀へと飛び退いた。

「ククリ、マタ会オウ・・・」

 鬼は消えた。

「そなたが光殿か?」

 鬼がいなくなるとククリという女武者が尋ねてきた。

「いかにも、某は光だ」

 体格はサクヤ様と変わりは無い。だが、鋭い眼は百戦錬磨の強者を感じた。

「サクヤ様は?」

「もう出てきて大丈夫じゃ」

 ククリ殿がそう言うと、薄暗い所から直垂姿のサクヤ様が現れた。
 実はサクヤ様は一条戻橋まで某の側にいた。
  某がサクヤ様の替え玉を使って鬼神をだまそうとしていた時、サクヤ様はすねに脛巾をまき、直垂姿で男に変装して後ろにいた。

 鬼神を替え玉が見破られたと某が逃げるように神泉苑へと誘う。
 その間、サクヤ様は東市まで逃げた。都の所々で天狗達が鬼神の配下の眼を東市からそらした。

「わたしはすぐにククリさまに助けられました・・・」

「ククリ殿、かたじけない!」

 本来ならば、助っ人が来た後に都を出立するつもりだった。だが、それよりも早く鬼神が襲ってきた。
 サクヤ様は師匠に頼んだ助っ人が来るまで東市で動かず、合流すれば都から脱出することにした。
 奴の力に人間だけでは太刀打ちできない。妖怪の力を借りねばならない。

 だが、妖怪達の力を持ってしても奴から時を作るのは容易ではない。
 それならば、奴を封印するしか無い。奥州に行くまでの間に時を作らねばならない。

 誰かが犠牲にならねば・・・。

 誰かと考えていた時、巫様が犠牲になってくれた。サクヤさまの替え玉を使い鬼神を誘い、巫様の犠牲をもって時を作った。

 腹をさすった。
 痛みを感じる。

 神斬を見た。
 刃こぼれも傷も何一つ無い。透き通った刃の中にある呪禁を見せていた。
 先ほど鬼神とその配下の鬼と戦ったのに全くの無傷だった。

 この太刀を作った刀匠はどんな玉鋼を使い、どれほどの修行をつんでこの太刀を作ったのだ?

「サクヤ様・・・・」

「はい・・・・」

「巫様が時を作ってくれました。行きましょう、奥州へ!」

「・・・・はい」

 どこか沈んだ様子のサクヤさま。
 無理もない。
 先ほど母が亡くなったのだ。

 自分を大切にしてくれた人がいなくなった。

 辛い気持ちはわかる。
 だが、今は悲しみに浸る余裕はない。都はおろか日本中の大勢の天狗党の仲間でサクヤさまを守り、来たるべき日に備えてきた。

 その日が来た。
 先ほど、自分の腕が奴に通じなかった。
 だが、某はまだ負けてはいない。

「とっとと都から逃げるぞ!」

 人狼が母屋に入ってきた。

「ククリ、怪我はないか?」

 入ってくるなり、白髪の女に近づくと頭をなでなでした。

「こんな時に、バカなことするでない!」

 女は顔を赤くしながら男の手を振り払った。

「わっはっはっは~。もし危なくなったら俺を呼ぶんだ!」

「馬鹿にするでない!そんなことより、先ほど戦った鬼がわらわの名を知っておった」

「何、鬼と浮気したか!?」

「たわけ!!!」

 こんな時に何を言い合っているのか。
 やって来た2人の助っ人は某とサクヤ様を無視してこれは夫婦喧嘩であろうか?

「某は光と申す。そこもとらは名は何と申す?」

 ずっと黙っているわけにもいかぬ。2人の会話を無理矢理止めて、まずは名を聞くとしよう。

「俺はホロ。で女は我が妻よ!」

「ククリと申す」

 柔らかなサクヤさまとは違い、勇ましさを感じる女性だった。琥珀色の瞳はこちらを射貫くように鋭い眼差しだった。
 女武者と呼ぶにふさわしい風格を備え、清らかさも感じられた。

 いったいどういう妖怪であろう?

「お前の女よりククリが綺麗だ」

「へっ?」

 ホロ殿が変な事を言ってきた。

「サクヤ様が綺麗だ」

 言い返した。

「てめぇ、このヤロー!」

 ホロ殿が腰に差していた古の刀を抜いた。
 某も脇差しを握った。

「何をバカなことを聞いておるのじゃ!」

 ククリ殿が怒って止めた。

「ククリ、お前が一番綺麗だ!」

「分かったから早く刀をしまうのじゃ!」

 ククリ殿に言われるとホロ殿は刀を鞘に収めた。
 某の手も脇差しから離れた。
 女武者のククリ殿に対してホロ殿とやらは武士というより、わかりやすいほど人狼だ。

「ホロ殿は・・・」

「ホロといえ!」

「え?」

 丁寧にホロ殿と言うと怒られた。

「すまぬ、ホロは礼儀正しくが嫌いでな。お主を殿をつけて呼びたくないから、自分を呼ぶときも殿をつけるなという意味じゃ」

 ククリ殿が耳打ちしてくれた。

「ククリ・・・殿は?」

「わらわを呼び捨てにすると、ホロに殺される。わらわを呼び捨てにできるのはホロだけ・・・とホロは思っておる」

「心得た・・・」

 ちょっとめんどくさいな。

「ではホロ。お主はもと人間の妖怪で間違いないな?」

「ん?俺は元人間だ」

 念のため聞いてみた。
 妖怪になるとき、必ずしも人間が人間のまま、獣が獣のまま、妖怪になるとは限らない。
 獣が人間の姿になって妖怪になることもあれば、人間が獣の姿で妖怪になることもある。

「おいおい・・・」

「何か?」

「サクヤの直垂でけぇな。直垂が肩からずり落ちてるぞ・・・」

「某の直垂を貸したからなぁ・・・確かに」

 ホロの指摘にサクヤ様の直垂が肩からずり落ちて中の単が露わになっているのを見た。
 サクヤ様は慌てて直したが、やはり大きいのでまたずり落ちた。

「と申しても今すぐ変える暇など無い。それは後で考えよう。今はこの都から脱出して平泉を目指す事だ」

「おぅよ、平泉までお前達を守ってやるぜ」

「奴の配下の臭いは感じるか?」

「都中に何体か・・・都にいるおめぇの仲間は鬼神がほとんど消しちまったようだ」

「だろうな・・・」

 奴が襲ってくることを見越して仲間から腕の立つ者を選び抜いていた。
 それは精鋭中の精鋭のつもりだった。

 だが、その者たちを奴は一瞬にして消してしまった。

「・・・その者らはちゃんと覚悟を作っておった」

「あと、これから平泉に行くんだろ?道中、奴の配下がいたぜ。危ないぞ?」

 都から奥州まで一月はかかる。
 巫さまの犠牲がいつまで持つか分からない。
 奴の手下が何体も襲って来たら絶体絶命だ。

「人の世だけで、ここまで来たのか?」

「ああ・・・」

 人の世に奴の配下がいるのはホロが確認した。
 だが、奥州に行くまでの道は人の世だけではない。

「人の世と異界を行き来する」

「危ねぇけど、確かにそれなら奴の目をかいくぐれるかもしれんな」

「某も手は打っている。日本中、そして異界でも仲間の天狗が教えてくれる。それで奥州まで行く!それで奥州の方は大丈夫なのか?」

「四代目には俺が留守の間は俺の主に守って貰えって言っておいた。それをちゃんと守っていれば、大丈夫だと思うが・・・だが、あの野郎、俺達が奥州に到着するまでに封印から復活するのは確かだろうな・・・奴の手下も来るかもしれねぇ」

「・・・行くしか無い。我らは行くしかない!」

「よっしゃ!」

 ホロが我先にと動き出した。
 某が続きその側にはサクヤ様がくっつくようについてきた。
 そのサクヤ様のすぐ後ろにはククリ殿が後ろを警戒した。
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