7 / 7
1.日常生活
やっぱり長男
しおりを挟む
「かーっ、夕方は冷えんなぁ」
その足取りはペタペタと、地面から離れるのは遅かった。
薄暗くなり、街灯がつき始めた頃に猪一郎は家に着いた。
「寒ぃ寒ぃ…」
自身の体を抱きしめるようにし、腕をさすりながら実家の玄関へと上がる。
明かりのついた居間からは、ガヤガヤと兄弟達がいるのが見受けられた。
浮「というか、威一郎兄貴いないな」
カチャカチャと箸で何かをつつきながら聞こえる声。
莉「えー?取り分減るからいいって。速敬兄さんがあいつの分は平気って言ってたし…あ~、おいし!」
夕食時から少しずれただけでこの有様だ。
男子しか兄弟がいないのも原因だろうが…
しかめっ面で居間へと足を進め、立ち入ると、兄弟の中心にはだいぶ中身が減った鍋があった。
威「あ!!!おい、オレの分は!」
速敬「お前は食ってくるかもなって言っておいてやった、喜べ」
茶碗を置き、ピースをしては「ざまぁ」と言わんばかりの表情をする。
真面目そうに見えてよくもまあ、こういうことをやりやがる。
速人「もしかして食べてきてなかったとか、残念だったね、ザマァ」
七男は思ったことをズバッと言った。
威「わーったって…さっきの根に持ってるんだろ??残りくれりゃいいし…」
かろうじて残っていた、一枚の肉。
テーブルを囲うように兄弟の間に座り込むと、食べ終わっていそうな奴の茶碗と箸を借りる。
粋「……」
借りられていった箸と茶碗を眺めながら、欠伸をする粋唯。
威「さてと、いっただきまーー…」
箸を伸ばしたものの、横から割り込んできた箸が残り一枚の肉を攫っていく。
正「あ、最後の肉じゃん、これ。やった、ツイてるー」
独り言紛いなことを言いながら、ちらりと威一郎を見やる。
威「(こいつ…わざとやりやがったな)」
攫われた肉を取り戻すべく、自分が操る箸で相手が口の中に放り込む前に、箸でつまむ。
正「おい!いいじゃん、鍋にまだ野菜残ってるんだから!」
威「野菜しか残ってねーだろ!!?」
すると、そろそろと横に寄ってきた誰かの手が、肉を手掴みして持っていく。
正&威「なっ!!」
ぱかっと開かれた口に、肉はすぐに入れられ、むしゃむしゃと食べられた。
蒼「肉が冷めまっせ…もったいないじゃん」
はて、と首を傾けてはさも当然のような顔をする。
威「…肉食いたかったわ…アホ…」
速人「にしても、夕飯時にどこかに行く威一郎がいけないと思うんだよね」
先ほどの恨みもあり、ジロジロと見やる。
その小わきでグッと親指を立て、蒼天ナイス、と言ってみせる。
威「お前ら本当可愛げがねェーよ、泣きそう」
さほど表情も変わらず、鍋に残った野菜をたれをかけて口へと運ぶ。もぐもぐと咀嚼すれば、テーブルを囲む兄弟の顔を見て。
莉「僕はあれだよ、自分が可愛い」
速敬&正「俺たちはお前と同じ歳なんだが」
粋「…べつに、普通としか思わない」
浮「オレは速敬兄貴が兄貴でいれば別に」
蒼&健「楽しくなきゃつまらないからねえ!」
ごくっと咀嚼したものを飲み込むと、本当いたわる気ゼロだな、こいつら、と頭をかく。
まあ、そのおかげで兄らしくしていなくてもいいというのだけは利点であった。はあ、とため息をついてから伸びをする。
威「いや、やっぱ弟らしい弟じゃなくてよかったわ、んなんプレッシャーでオレ死にそう」
特に大したことはなかった、ただ一時の迷いは最近よくあるもので。
どうしたものかねぇ…。
威「んじゃ、まあ…寝るわ、外にいたから体力消費してっしね。」
くぁぁ、と欠伸をすればダラダラと共有の自室へと威一郎は姿をくらませて行った。
粋「…心なしか、いつもよりなんか、おとなしい」
速人「怒られて懲りたのかな」
長男の姿が見えなくなれば、2人が顔を合わせて話し出す。とはいえ自室に戻ったとしても、いつものペースで話せばまる聞こえ。この時ばかりは声の大きさは小さかった。
速敬「まあ、気にすることはない。俺が把握している限り。」
正「出た、速敬の自意識過剰、ぶふっ」
知ったかぶりー、と煽りながら腹を抱えて笑う。
健「兄さんは大丈夫大丈夫!」
莉媛が静かに鍋やら食器を片付けながら、「みんなも少しはやってよね…」と項垂れていた。
自室の布団に潜りもぞもぞと足を動かす。
寝られない。
色々と考えることがあった。
威「あー…やだやだ、眠てえのに」
しまいには歯ぎしりを始め、左右にゴロゴロと寝返りを打つ。
威「…特異体質ってのは、嫌だねー、粋唯ぁ…」
ただ一人、兄弟の名前を発すると目を閉じて無理やり眠った。
その足取りはペタペタと、地面から離れるのは遅かった。
薄暗くなり、街灯がつき始めた頃に猪一郎は家に着いた。
「寒ぃ寒ぃ…」
自身の体を抱きしめるようにし、腕をさすりながら実家の玄関へと上がる。
明かりのついた居間からは、ガヤガヤと兄弟達がいるのが見受けられた。
浮「というか、威一郎兄貴いないな」
カチャカチャと箸で何かをつつきながら聞こえる声。
莉「えー?取り分減るからいいって。速敬兄さんがあいつの分は平気って言ってたし…あ~、おいし!」
夕食時から少しずれただけでこの有様だ。
男子しか兄弟がいないのも原因だろうが…
しかめっ面で居間へと足を進め、立ち入ると、兄弟の中心にはだいぶ中身が減った鍋があった。
威「あ!!!おい、オレの分は!」
速敬「お前は食ってくるかもなって言っておいてやった、喜べ」
茶碗を置き、ピースをしては「ざまぁ」と言わんばかりの表情をする。
真面目そうに見えてよくもまあ、こういうことをやりやがる。
速人「もしかして食べてきてなかったとか、残念だったね、ザマァ」
七男は思ったことをズバッと言った。
威「わーったって…さっきの根に持ってるんだろ??残りくれりゃいいし…」
かろうじて残っていた、一枚の肉。
テーブルを囲うように兄弟の間に座り込むと、食べ終わっていそうな奴の茶碗と箸を借りる。
粋「……」
借りられていった箸と茶碗を眺めながら、欠伸をする粋唯。
威「さてと、いっただきまーー…」
箸を伸ばしたものの、横から割り込んできた箸が残り一枚の肉を攫っていく。
正「あ、最後の肉じゃん、これ。やった、ツイてるー」
独り言紛いなことを言いながら、ちらりと威一郎を見やる。
威「(こいつ…わざとやりやがったな)」
攫われた肉を取り戻すべく、自分が操る箸で相手が口の中に放り込む前に、箸でつまむ。
正「おい!いいじゃん、鍋にまだ野菜残ってるんだから!」
威「野菜しか残ってねーだろ!!?」
すると、そろそろと横に寄ってきた誰かの手が、肉を手掴みして持っていく。
正&威「なっ!!」
ぱかっと開かれた口に、肉はすぐに入れられ、むしゃむしゃと食べられた。
蒼「肉が冷めまっせ…もったいないじゃん」
はて、と首を傾けてはさも当然のような顔をする。
威「…肉食いたかったわ…アホ…」
速人「にしても、夕飯時にどこかに行く威一郎がいけないと思うんだよね」
先ほどの恨みもあり、ジロジロと見やる。
その小わきでグッと親指を立て、蒼天ナイス、と言ってみせる。
威「お前ら本当可愛げがねェーよ、泣きそう」
さほど表情も変わらず、鍋に残った野菜をたれをかけて口へと運ぶ。もぐもぐと咀嚼すれば、テーブルを囲む兄弟の顔を見て。
莉「僕はあれだよ、自分が可愛い」
速敬&正「俺たちはお前と同じ歳なんだが」
粋「…べつに、普通としか思わない」
浮「オレは速敬兄貴が兄貴でいれば別に」
蒼&健「楽しくなきゃつまらないからねえ!」
ごくっと咀嚼したものを飲み込むと、本当いたわる気ゼロだな、こいつら、と頭をかく。
まあ、そのおかげで兄らしくしていなくてもいいというのだけは利点であった。はあ、とため息をついてから伸びをする。
威「いや、やっぱ弟らしい弟じゃなくてよかったわ、んなんプレッシャーでオレ死にそう」
特に大したことはなかった、ただ一時の迷いは最近よくあるもので。
どうしたものかねぇ…。
威「んじゃ、まあ…寝るわ、外にいたから体力消費してっしね。」
くぁぁ、と欠伸をすればダラダラと共有の自室へと威一郎は姿をくらませて行った。
粋「…心なしか、いつもよりなんか、おとなしい」
速人「怒られて懲りたのかな」
長男の姿が見えなくなれば、2人が顔を合わせて話し出す。とはいえ自室に戻ったとしても、いつものペースで話せばまる聞こえ。この時ばかりは声の大きさは小さかった。
速敬「まあ、気にすることはない。俺が把握している限り。」
正「出た、速敬の自意識過剰、ぶふっ」
知ったかぶりー、と煽りながら腹を抱えて笑う。
健「兄さんは大丈夫大丈夫!」
莉媛が静かに鍋やら食器を片付けながら、「みんなも少しはやってよね…」と項垂れていた。
自室の布団に潜りもぞもぞと足を動かす。
寝られない。
色々と考えることがあった。
威「あー…やだやだ、眠てえのに」
しまいには歯ぎしりを始め、左右にゴロゴロと寝返りを打つ。
威「…特異体質ってのは、嫌だねー、粋唯ぁ…」
ただ一人、兄弟の名前を発すると目を閉じて無理やり眠った。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる