俺らは多兄弟!

春之介

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1.日常生活

やっぱり長男

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「かーっ、夕方は冷えんなぁ」
その足取りはペタペタと、地面から離れるのは遅かった。


薄暗くなり、街灯がつき始めた頃に猪一郎は家に着いた。
「寒ぃ寒ぃ…」
自身の体を抱きしめるようにし、腕をさすりながら実家の玄関へと上がる。
明かりのついた居間からは、ガヤガヤと兄弟達がいるのが見受けられた。

浮「というか、威一郎兄貴いないな」
カチャカチャと箸で何かをつつきながら聞こえる声。
莉「えー?取り分減るからいいって。速敬兄さんがあいつの分は平気って言ってたし…あ~、おいし!」
夕食時から少しずれただけでこの有様だ。
男子しか兄弟がいないのも原因だろうが…
しかめっ面で居間へと足を進め、立ち入ると、兄弟の中心にはだいぶ中身が減った鍋があった。
威「あ!!!おい、オレの分は!」
速敬「お前は食ってくるかもなって言っておいてやった、喜べ」
茶碗を置き、ピースをしては「ざまぁ」と言わんばかりの表情をする。
真面目そうに見えてよくもまあ、こういうことをやりやがる。
速人「もしかして食べてきてなかったとか、残念だったね、ザマァ」
七男は思ったことをズバッと言った。
威「わーったって…さっきの根に持ってるんだろ??残りくれりゃいいし…」
かろうじて残っていた、一枚の肉。
テーブルを囲うように兄弟の間に座り込むと、食べ終わっていそうな奴の茶碗と箸を借りる。
粋「……」
借りられていった箸と茶碗を眺めながら、欠伸をする粋唯。
威「さてと、いっただきまーー…」
箸を伸ばしたものの、横から割り込んできた箸が残り一枚の肉を攫っていく。
正「あ、最後の肉じゃん、これ。やった、ツイてるー」
独り言紛いなことを言いながら、ちらりと威一郎を見やる。
威「(こいつ…わざとやりやがったな)」
攫われた肉を取り戻すべく、自分が操る箸で相手が口の中に放り込む前に、箸でつまむ。
正「おい!いいじゃん、鍋にまだ野菜残ってるんだから!」
威「野菜しか残ってねーだろ!!?」
すると、そろそろと横に寄ってきた誰かの手が、肉を手掴みして持っていく。
正&威「なっ!!」
ぱかっと開かれた口に、肉はすぐに入れられ、むしゃむしゃと食べられた。
蒼「肉が冷めまっせ…もったいないじゃん」
はて、と首を傾けてはさも当然のような顔をする。
威「…肉食いたかったわ…アホ…」
速人「にしても、夕飯時にどこかに行く威一郎がいけないと思うんだよね」
先ほどの恨みもあり、ジロジロと見やる。
その小わきでグッと親指を立て、蒼天ナイス、と言ってみせる。
威「お前ら本当可愛げがねェーよ、泣きそう」
さほど表情も変わらず、鍋に残った野菜をたれをかけて口へと運ぶ。もぐもぐと咀嚼すれば、テーブルを囲む兄弟の顔を見て。
莉「僕はあれだよ、自分が可愛い」
速敬&正「俺たちはお前と同じ歳なんだが」
粋「…べつに、普通としか思わない」
浮「オレは速敬兄貴が兄貴でいれば別に」
蒼&健「楽しくなきゃつまらないからねえ!」
ごくっと咀嚼したものを飲み込むと、本当いたわる気ゼロだな、こいつら、と頭をかく。
まあ、そのおかげで兄らしくしていなくてもいいというのだけは利点であった。はあ、とため息をついてから伸びをする。
威「いや、やっぱ弟らしい弟じゃなくてよかったわ、んなんプレッシャーでオレ死にそう」
特に大したことはなかった、ただ一時の迷いは最近よくあるもので。
どうしたものかねぇ…。
威「んじゃ、まあ…寝るわ、外にいたから体力消費してっしね。」
くぁぁ、と欠伸をすればダラダラと共有の自室へと威一郎は姿をくらませて行った。


粋「…心なしか、いつもよりなんか、おとなしい」
速人「怒られて懲りたのかな」
長男の姿が見えなくなれば、2人が顔を合わせて話し出す。とはいえ自室に戻ったとしても、いつものペースで話せばまる聞こえ。この時ばかりは声の大きさは小さかった。
速敬「まあ、気にすることはない。俺が把握している限り。」
正「出た、速敬の自意識過剰、ぶふっ」
知ったかぶりー、と煽りながら腹を抱えて笑う。
健「兄さんは大丈夫大丈夫!」
莉媛が静かに鍋やら食器を片付けながら、「みんなも少しはやってよね…」と項垂れていた。


自室の布団に潜りもぞもぞと足を動かす。
寝られない。
色々と考えることがあった。
威「あー…やだやだ、眠てえのに」
しまいには歯ぎしりを始め、左右にゴロゴロと寝返りを打つ。
威「…特異体質ってのは、嫌だねー、粋唯ぁ…」
ただ一人、兄弟の名前を発すると目を閉じて無理やり眠った。
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