7 / 7
7.変われたのは、彼女かオレか、その両方
しおりを挟むオレが女の子相手に臆病になったのは、中学の頃だった。
クラスに好きな女子がいて。
でもその子とは友達の関係を崩したくなくて……いい雰囲気だよなって、勝手に思ってて告白できないままだった。
そんなある日。
理一の家に遊びに行ったオレは……。
その子と理一がエッチしてる現場に出くわしてしまったのだ。
「ごめん。お前が好きな子だって知ってたら、手え出さなかった」
流石にこの時ばかりは、「女なら誰でもいいんだし」とは言わず、理一は真剣な顔でオレに謝った。
悪いのは理一じゃない、悪いのはオレ自身だ。
そうだ、オレはなにもしなかった。
告白もせず勝手に好きになって、相手にされなかっただけ。
いつもの事だ。
でもただそれだけの事なのに、どうして胸がここまで痛いんだ。悔しいんだ。思考がぐちゃぐちゃになる。
理一も、勿論その子も悪くない。
だからどこにもぶつけられずに、こじらせてた。
傷ついた気持ちを無理やり押し込んで、封印する。
オレは恋に臆病になった。
意識か、無意識か、自分はそことは違う場所に置こうとしていた。
そして生々しい事にも。
さっきの理一と兵梨のやり取りは、そのトラウマをオレの中から引きずりだした。
臆病だった、何もできない……いや、しなかった自分。
だから……。
オレは一つ深呼吸をして、兵梨に言った。
「好きって言うのは凄い勇気がいる事で、兵梨はすごいやつだと思う」
「す、すごくないよ。ただゆうあは漣くんがスキなだけだもん!」
「ごめん、いっぱい好きって言わせて」
「あやまらないで」
「本当にごめん」
「あやまらないでよぅ……」
オレが謝るたびに兵梨はまた泣きそうになってるのか涙声だった。
「兵梨のそんな精一杯を。いままでかわして、ごめん」
「だから……謝らないで漣くん」
兵梨は、なぜかオレの言葉の先をはぐらかそうとしている。
でも、オレは聞いてほしかった。
「聞いてくれ」
オレは抱きしめていた兵梨の両肩を掴むと、体から離す。
顔を見て言いたかった。
今の体制は、あの時兵梨に「大事な一人だけとしろ」と言い聞かせた体勢と一緒だ。
オレも勇気を出さなきゃいけない。
「こんな愛想尽かされても仕方ないオレだけど、間に合うか?」
「?」
「兵梨、オレ兵梨の事……好きだ」
泣きそうに歪んでた兵梨の表情が一瞬固まる。
「嘘……」
「オレも兵梨の事好きだ……付き合ってくれ」
「………………」
無言。
その無言の時間が、じりじりとオレを攻め立てる。
「よかったぁ」
そういって兵梨は大きな目から涙を流す。
マジ泣き。
慌てて、ポケットに入っていたくしゃくしゃのハンカチを差し出した。
「謝られるから。今度こそはっきりと振られるのかとおもったぁ」
そんなつもりは全くなかったオレは、兵梨の態度に納得する。
「今までね、漣くんが優しいから……断らないでもらえればそばに居れるって思ってた……それであんな事になっちゃって、もう嫌われたかと思っちゃった。でも、こんなゆうあでもいいの?」
「いや、兵梨こそオレなんかで本当にいいのか?」
どう考えても散々格好悪かったオレは、兵梨に好かれる要素なんか見当たらなくて、聞き返してしまう。
「うん、漣くんじゃなきゃダメなの……好き。大好き」
大きな目が、オレを見つめてる。その瞳に映ってるのはオレ。
急に意識すると恥ずかしくなって、オレは兵梨と距離をとった。
これ以上密着は、危険だ。
危険すぎる。
「……オレも、好きだ」
テレて、目線を外すオレ。
でも兵梨はお構い無しにオレに抱きつこうとする。それを拒否する恰好もあの日と同じ。
だけどお互いの気持ちは確実に違ってて、特にオレの方はというとその誘惑に屈しそうになる。
マテマテここは学校で、朝で。
いや場所や時間が問題ではなく、冷静になれオレ。
ネクタイをあげたときよりもとろけた顔で、兵梨はオレを嬉しそうに見つめる。好きな子にこんな顔されて我慢できる訳が。ない。
「漣くんがすき、しよ!」
「……………」
――我慢しろ、オレ。
いつもの調子でチョップすると、それでも兵梨は笑顔だった。
えへへ~と締まりのない顔でへらへらしている。
「何がそんなに嬉しいん……だよ」
「だって今のチョップキレがなかったし、間があった、から……漣くんちょっとは考えてくれたのかなぁって」
ちょっとどころかすごいこと考えてましたよ、ああ。
なんでいつも鈍い癖にこんな時だけ鋭いんだ……オレは顔が赤くなるのを止められない。
「あ~もう、わかった、わかったよっ……兵梨、目閉じて」
「うん!」
完全にキス待ちポーズ。
読まれてるのが悔しくて、それよりも唇にする勇気がなくて、オレは頬に掠めようとしたのに。
「!!」
「えへへ、漣くん大好き」
薄目を開けていた兵梨は頬をずらして、お互いの唇が触れる。
その唇は柔らかくて、もっともっと触れていたい、浸ってたいと思いながらも、やっぱり臆病なオレは反射的に兵梨から離れた。
「や、やっぱり、当分こういう事はナシ、ナシだ!!」
「えーっ! やだやだっもっとラブラブしたいよ!」
両思いになっても、やっぱり勇気の出ないオレ。
でも兵梨は文句を言いながらも、すごくうれしそうで。
「うっそ、あんだけお膳立てしたっつーのにチュウだけ!?」
両想いになって、無事にカレカノになり。
おさえのきかなくなった、兵梨のラブラブしよう攻撃からやっとの事で逃れて、チャイムが鳴る前に教室についたオレは理一に「いい病院紹介しようか?」と、嬉しそうな様子でからかわれたのは言うまでもない。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました
小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」
二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。
第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。
それから二十年。
第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。
なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。
不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。
これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。
※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
まだ3話までしか読んでないけど、これは良作の予感。
読んでて口元がにやけます。これからも頑張って下さい!
ありがとうございます
しかし一癖も二癖もある嗜好ですので
最後の最後まで良作と思って頂けるといいのですが