好き、しよ!

狭雲月

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6.見えない答えと、出た答えと

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「早く服脱ぎなよ」

 俺は我慢の限界だった。
 さっさとしろよと不機嫌そうな、理一の声が引き金になって、まるで何かから解き放たれたように、ドアを勢いよく開ける。

「理一!!」
「やっぱり漣くんじゃなきゃ、イヤぁ!!」

 オレの声と兵梨の声が同時に響く。
 必死になって入ってきたオレが見たのは、泣きそうな顔で拒否ってる兵梨と、そのネクタイに手をかける理一。
 必死なオレにむかって、理一はこの場にそぐわない笑顔を向けて迎え入れた。

「兵梨、大丈夫か!? 理一っ! お前一体どういうつもりだよ!」
「遅かったな、漣」
「はぁ!? お前何言ってっ……」
「結亜ちゃんイジワル言っちゃってゴメンね、今の冗談だから」

 そう言って、ゆっくりと兵梨のネクタイを離す。

「冗談って! お前タチ悪すぎるぞ!」
 オレの怒りや兵梨の戸惑った顔なんてなんのその、理一は完全にスルーだ。
「じゃ、言うべき事分かってるよね。俺の役目はおわったわー」
「理一?」

「答え……でただろ?」

 意地の悪い顔でそう言うと、ポンとオレの肩を叩き、部屋から何もなかったように出ていく理一。
 取り残されるオレと兵梨。
 オレはハッとする。

 理一お前まさか……試すってこう言うことか!

 兵梨が、オレに本気かどうか。
 兵梨が、他の男の誘惑にのるかどうか。
 試したって事か!?
 理一の言葉が、怒りのために鈍くなった頭にやっと浸透する。
 冷静に思い返して見れば、さっきの理一はこれは無茶ブリだろっていう言動と……全く普段のアイツらしくない行動だった。
 オレオレ詐欺のように、冷静に考えれば荒唐無稽な話。
 でもオレの怪我で動揺している兵梨は本気にして、そして断れなかっただろう。
 そして何より。
 アイツは嫌がる女の子に無理強いはしない。
 そんなに不自由してない、ってのもあるけれど、そんなの今までの付き合いで知っている。十分知っていたにも関わらず、嘘だと思わなかったのは。

 オレがそんな親友を疑ったのは。
 冷静になれなかったのは。

 相手が兵梨だったからで。



 ――答えが、出た。



 その「答え」を意識した途端、かっと頭に血が上る。
 試されたのは、兵梨じゃなくオレだ。
 戸惑った兵梨が泣きそうな顔になっているのを見て、やっと我にかえった。

「漣くん……怪我、大丈夫っ……?」
「あー平気、平気。病院の検査の結果何もなかったし」
「ごめんね、本当にごめんねっ……」
「あやまんなくていいよ」
「だって、理一くんとエッチできなくて……怒ってるよね」
「え。そっち? いやいやいやあれは、理一の嘘だから……オレそんな事、言わないから」

 兵梨は混乱してて、さっきのあの茶番が、まだ本当だと思っているようだった。
 むしろ、断ってくれて……すごい嬉しかった。
 そう言って、兵梨を安心させようとしたのに、兵梨はイヤイヤと首を振る。

「やっぱり私、漣くんじゃないとイヤだよぉ……」
「兵梨、あれは」
「初めは漣くんの為だったらできるって思ってた、けど……漣くん以外からこのネクタイを外されてるって思っただけですごくイヤだったよ。漣くんのお願いでも他の人となんてでき……ない」

 兵梨の胸元を飾るのは……オレがあげた何の変哲もない学校指定のネクタイ。
 兵梨はそれをぎゅっと握りしめて、オレの言葉を聞かずに、オレに嫌われたくないとだけ切々と訴える。

「漣くん言ってくれたよね。他の奴にさせたくないほどの男としろって……それが今のゆうあには、漣くん、なのっ」

 兵梨はぽろぽろと涙を流す。
 反則だろ、この可愛さ。

「漣くん以外、えっちぃことするのイヤ」

 ふるふると、頭を振る仕草。
 いつもと違って、遠慮がちにオレの服の裾をつかんでる。
 何度か兵梨を可愛いと思ったことはあったけど、今までにないぐらい兵梨を可愛いと思った。
 ダメだ、自覚したら――――止まらなくなった。
 ここまで必死にオレの事を好きだと訴える兵梨を、オレは初めて自分から抱きしめた。
 小さくて、柔らかい体。
 抱きしめれば、いい匂いがする。
 それは……昨日の懐かしい香り。

 覚えのある匂いだったのは、当然だ。
 いつも側にひっついていた、兵梨の香りだったんだから。

 なんで今まで兵梨の誘惑に、こっちから触ることを我慢できていたのか不思議なほどの、ここちいい感触だった。びくりと体を震わせる兵梨に、嫌がられた? と不安になったが、もう自分をごまかすのはやめたとばかりにオレは力を込めると、体を預けてくる。
 その感覚に何とも言えない嬉しい気分になった。

 兵梨の気持ちが「本気」だって気がついてた。
 それに気がつかないふりをしてたのは……傷つきたくなかったから。
 臆病な自分。

「ごめん、兵梨」

 そう謝ると、腕の中の兵梨が弾かれたようにオレを見た。

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