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船橋事変編
悪い奴ほどよく喋る
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「さてと、最期にもう一言、お聞きしてもよろしいですか?お嬢さん。いえ、失礼。文代さん」
「構いませんよ。何でしょう?」
「あなたのお父上のお名前を教えて頂けませんか?どうも、それだけを聞かないと落ち着かなくて……」
「よろしいですよ。私の父の名前はーー」
と、彼女が自分の父親の名前を口に出した時だ。突然、光弾が彼女の方へと向かっていく。
だが、彼女はその光弾が落ちていくのを見かけると、即座に手にあった短刀で光弾を撃ち落とす。
光弾を撃ち落とすのと同時に、彼女はそれを宣戦布告の合図の代わりと見做したのか、黙って綺蝶に向かって斬りかかっていく。
綺蝶はその攻撃を刀で塞ぎ、そのまま刀を弾いて目の前の文代に向かって刀を振るう。
だが、文代は短刀を盾にして刀を防ぐ。
「いいですッ!いいですッ!あなたの剣技!いい味を出しておりますわ!まるで、イキのいい魚を捌いている時みたい!」
「人を魚扱いとは随分と失礼ですね。あなた」
興奮する文代とは対照的に、綺蝶は至極冷静な声で告げる。
だが、戦い続ける中で彼女の不満というのはかき消されてしまったらしい。
楽しそうに彼女は小さな短刀で綺蝶を斬りつけていく。
綺蝶はその度に冷や汗をかきながら彼女を迎え撃つ。
そして、その度に魔獣覚醒の名前を呟いていく。
彼女の扱う魔獣覚醒は赤い炎。彼女が短刀を振るう度に、赤い彼岸花が彼女の前に咲いていく。
どうやら、小規模の炎を作り出すのが彼女の魔獣覚醒であるらしい。
綺蝶は自分の顔に火が飛び散りそうになる度に思わず冷や汗をかく。
次に、彼女は刀を振って文代の短刀を防ぐ。
短刀を持つ彼女は塞がれている刀から顔を覗かせて、綺蝶に向かって笑い掛ける。
いっその事、睨んでもしてくれた方が楽だ。綺蝶は思わず苦笑してしまう。
彼女は短刀を扱う彼女を弾き返して距離を取っていく。
だが、未だに綺蝶を狙う文代。文代は次に刀を振り回しながら、もう一度、彼女に向かって斬りかかっていく。
綺蝶は刀を横にして彼女の攻撃を防ぐと、今度は刀を光らせて彼女を浄化しようと目論む。
上手くいけば御の字。失敗しても自分の光を目の当たりにすれば今後の戦いに支障をきたすくらいは心に傷を負うだろう。
彼女はそう考えて刀を光らせたが、浄化するための光を目の当たりにしても彼女には効果がないらしい。
ニヤニヤとした笑いを浮かべたまま綺蝶を見つめていた。
綺蝶は作戦を変更し、刀で彼女と短刀の両方を弾き、斜め下から光に輝く刀を振り上げていく。
だが、文代はそれすらも受け止めると、今度は短刀から炎の弾を作り出す。
それが、綺蝶へと向かうのだからたまったものではない。
綺蝶は慌てて体を滑らせて炎の弾を避ける。背後の壁に焼け跡ができたが、その跡の大きさに彼女は驚かされてしまう。
何せ、壁がめり込むほどの痛みを見せ、痛々しい痕が遠方からも分かる程の攻撃だ。
もし、自分に当たっていたらと思うと……。
綺蝶は冷たい汗が首筋を垂れていくのを確認する。
「あらあら、やはり恐れてしまいましたの?あなたの様な一流の対魔師でもやはり、恐ろしいですか?炎は」
彼女はそう言うと、左手の掌から炎の弾を浮かせていく。
どうやら、それを自分に向けるつもりであるらしい。正直に言えば恐ろしい。
だが、妖鬼相手に弱みを見せるつもりもない。
だから、彼女は柔和な笑みを浮かべて言ってやる。
「ええ、もしあれが私に当たっていたらと思うとゾッとしますね。文代さん。あなた、確実に私を殺しにきてますね?」
彼女は黒い笑顔を浮かべたまま尋ねる。
それに対して歪みなど欠片も見せない無邪気な笑顔を浮かべて応える文代。
同じ笑顔でも、人は文代の邪気のない真っ直ぐな光の様な笑顔を好むに違いないん
刀を振り回しながら、綺蝶はそう考えた。
だが、今はそうも言っていられない。綺蝶は十分に刀を回し終えると、彼女に向かって再度問い掛ける。
「さぁ、何処からでも掛かってきてください。お嬢さん。あ、失礼。文代さんでしたね。私は稀に女性の妖鬼と対峙する事があるんですが、名前も名乗らない方も多いので、つい女性の妖鬼を見掛けると、『お嬢さん』という呼称を使ってしまうんです。お許し願えると嬉しいです」
「いえいえ、構いませんわよ。私は村の中で『肥溜め屋の娘』と蔑まれて暮らしてきたのですから、これくらいの事は寛大な気持ちで水に流して差し上げますわ」
「あ、上手い事言いますね。お嬢……失礼、文代さん。炎の魔獣覚醒を使用するあなたが水に流すとはちゃんちゃらおかしくて……」
「いえいえ、構いません。その程度の事……両親を村人に焼き殺され、資産も奪われた私には差し支えのない言葉ですわ」
この時にそれまでは公園で遊ぶ子供の様に眩しくて可愛らしい純粋な笑顔を浮かべていた彼女はその時に初めて表情を曇らせていく。
だが、直ぐに短刀を振り回しながら、多くの火炎弾を綺蝶に向かって放っていく。
綺蝶は舌を打って、そのまま攻撃を弾いたり身を避けたりという方法で交わしていくと、彼女の頭上に近寄って飛び上がって刀を振っていく。
けれども、彼女は自分が綺蝶よりも大きな体型であるという事を活かし、その場から離れて、刀を振りかぶり大きな隙を作った彼女の脇腹に向かって攻撃を繰り出していく。
綺蝶は咄嗟に刀を横に振って防いだものの、刀と短刀の刃の違いを利用して文代は刀を潜り抜けて、綺蝶に向かって炎の弾を放っていく。
彼女は慌ててその場から抜け出し、右斜め上から刀を振り上げて真下の見た目は幼い少女の姿をした妖鬼に向かって振り下ろす。
そんな右斜め上から繰り出された刀を文代はいとも簡単に受け止め、刀を止められている綺蝶に向けて左手の掌から炎弾を作り出していく。
彼女は今度こそ終わったと考えたが、それでも体は生存の本能に逆らえなかったのか、無意識のうちに首を逸らした事により、炎弾は回避される。
すると、彼女も本能に突き動かされたのか、刀を自分の元に戻すと、地面の上を転がっていく。
「あれぇ、これで終わりでございますか?少々、物足りのうございますわ」
「あら、ご満足頂けませんでしたか?なら、今度はこれで決着を付けましょうか」
綺蝶は刀にドス黒いものを纏わせていく。
そして、彼女に向かって告げた。
「これが、私のもう一つの破魔式。闇の破魔式です。次はこれでお相手願います」
真っ黒な笑顔を浮かべて言った時に、彼女が微かに手を振るわせるのを彼女は確認した。
「構いませんよ。何でしょう?」
「あなたのお父上のお名前を教えて頂けませんか?どうも、それだけを聞かないと落ち着かなくて……」
「よろしいですよ。私の父の名前はーー」
と、彼女が自分の父親の名前を口に出した時だ。突然、光弾が彼女の方へと向かっていく。
だが、彼女はその光弾が落ちていくのを見かけると、即座に手にあった短刀で光弾を撃ち落とす。
光弾を撃ち落とすのと同時に、彼女はそれを宣戦布告の合図の代わりと見做したのか、黙って綺蝶に向かって斬りかかっていく。
綺蝶はその攻撃を刀で塞ぎ、そのまま刀を弾いて目の前の文代に向かって刀を振るう。
だが、文代は短刀を盾にして刀を防ぐ。
「いいですッ!いいですッ!あなたの剣技!いい味を出しておりますわ!まるで、イキのいい魚を捌いている時みたい!」
「人を魚扱いとは随分と失礼ですね。あなた」
興奮する文代とは対照的に、綺蝶は至極冷静な声で告げる。
だが、戦い続ける中で彼女の不満というのはかき消されてしまったらしい。
楽しそうに彼女は小さな短刀で綺蝶を斬りつけていく。
綺蝶はその度に冷や汗をかきながら彼女を迎え撃つ。
そして、その度に魔獣覚醒の名前を呟いていく。
彼女の扱う魔獣覚醒は赤い炎。彼女が短刀を振るう度に、赤い彼岸花が彼女の前に咲いていく。
どうやら、小規模の炎を作り出すのが彼女の魔獣覚醒であるらしい。
綺蝶は自分の顔に火が飛び散りそうになる度に思わず冷や汗をかく。
次に、彼女は刀を振って文代の短刀を防ぐ。
短刀を持つ彼女は塞がれている刀から顔を覗かせて、綺蝶に向かって笑い掛ける。
いっその事、睨んでもしてくれた方が楽だ。綺蝶は思わず苦笑してしまう。
彼女は短刀を扱う彼女を弾き返して距離を取っていく。
だが、未だに綺蝶を狙う文代。文代は次に刀を振り回しながら、もう一度、彼女に向かって斬りかかっていく。
綺蝶は刀を横にして彼女の攻撃を防ぐと、今度は刀を光らせて彼女を浄化しようと目論む。
上手くいけば御の字。失敗しても自分の光を目の当たりにすれば今後の戦いに支障をきたすくらいは心に傷を負うだろう。
彼女はそう考えて刀を光らせたが、浄化するための光を目の当たりにしても彼女には効果がないらしい。
ニヤニヤとした笑いを浮かべたまま綺蝶を見つめていた。
綺蝶は作戦を変更し、刀で彼女と短刀の両方を弾き、斜め下から光に輝く刀を振り上げていく。
だが、文代はそれすらも受け止めると、今度は短刀から炎の弾を作り出す。
それが、綺蝶へと向かうのだからたまったものではない。
綺蝶は慌てて体を滑らせて炎の弾を避ける。背後の壁に焼け跡ができたが、その跡の大きさに彼女は驚かされてしまう。
何せ、壁がめり込むほどの痛みを見せ、痛々しい痕が遠方からも分かる程の攻撃だ。
もし、自分に当たっていたらと思うと……。
綺蝶は冷たい汗が首筋を垂れていくのを確認する。
「あらあら、やはり恐れてしまいましたの?あなたの様な一流の対魔師でもやはり、恐ろしいですか?炎は」
彼女はそう言うと、左手の掌から炎の弾を浮かせていく。
どうやら、それを自分に向けるつもりであるらしい。正直に言えば恐ろしい。
だが、妖鬼相手に弱みを見せるつもりもない。
だから、彼女は柔和な笑みを浮かべて言ってやる。
「ええ、もしあれが私に当たっていたらと思うとゾッとしますね。文代さん。あなた、確実に私を殺しにきてますね?」
彼女は黒い笑顔を浮かべたまま尋ねる。
それに対して歪みなど欠片も見せない無邪気な笑顔を浮かべて応える文代。
同じ笑顔でも、人は文代の邪気のない真っ直ぐな光の様な笑顔を好むに違いないん
刀を振り回しながら、綺蝶はそう考えた。
だが、今はそうも言っていられない。綺蝶は十分に刀を回し終えると、彼女に向かって再度問い掛ける。
「さぁ、何処からでも掛かってきてください。お嬢さん。あ、失礼。文代さんでしたね。私は稀に女性の妖鬼と対峙する事があるんですが、名前も名乗らない方も多いので、つい女性の妖鬼を見掛けると、『お嬢さん』という呼称を使ってしまうんです。お許し願えると嬉しいです」
「いえいえ、構いませんわよ。私は村の中で『肥溜め屋の娘』と蔑まれて暮らしてきたのですから、これくらいの事は寛大な気持ちで水に流して差し上げますわ」
「あ、上手い事言いますね。お嬢……失礼、文代さん。炎の魔獣覚醒を使用するあなたが水に流すとはちゃんちゃらおかしくて……」
「いえいえ、構いません。その程度の事……両親を村人に焼き殺され、資産も奪われた私には差し支えのない言葉ですわ」
この時にそれまでは公園で遊ぶ子供の様に眩しくて可愛らしい純粋な笑顔を浮かべていた彼女はその時に初めて表情を曇らせていく。
だが、直ぐに短刀を振り回しながら、多くの火炎弾を綺蝶に向かって放っていく。
綺蝶は舌を打って、そのまま攻撃を弾いたり身を避けたりという方法で交わしていくと、彼女の頭上に近寄って飛び上がって刀を振っていく。
けれども、彼女は自分が綺蝶よりも大きな体型であるという事を活かし、その場から離れて、刀を振りかぶり大きな隙を作った彼女の脇腹に向かって攻撃を繰り出していく。
綺蝶は咄嗟に刀を横に振って防いだものの、刀と短刀の刃の違いを利用して文代は刀を潜り抜けて、綺蝶に向かって炎の弾を放っていく。
彼女は慌ててその場から抜け出し、右斜め上から刀を振り上げて真下の見た目は幼い少女の姿をした妖鬼に向かって振り下ろす。
そんな右斜め上から繰り出された刀を文代はいとも簡単に受け止め、刀を止められている綺蝶に向けて左手の掌から炎弾を作り出していく。
彼女は今度こそ終わったと考えたが、それでも体は生存の本能に逆らえなかったのか、無意識のうちに首を逸らした事により、炎弾は回避される。
すると、彼女も本能に突き動かされたのか、刀を自分の元に戻すと、地面の上を転がっていく。
「あれぇ、これで終わりでございますか?少々、物足りのうございますわ」
「あら、ご満足頂けませんでしたか?なら、今度はこれで決着を付けましょうか」
綺蝶は刀にドス黒いものを纏わせていく。
そして、彼女に向かって告げた。
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