太刀に宿る守護霊とその上位の神々に認められたので、弟と妹を殺された兄ちゃんは仇の相手である妖鬼に復讐を誓います!

アンジェロ岩井

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新しい時代の守護者編

戦雲玄竜の陰謀

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「成る程な。お主は妖鬼並びにそれを狩る対魔師。加えて、騎士団なる異様な組織とも合流したというのだな?」
老人の問い掛けに戦雲玄竜は黙って首を縦に動かして同意の意思を示す。
彼はそのまま立ち上がって、柔和な笑みを見せて、
「ですが、老師……我々は負けません。必ず警察も討滅寮も、そして化け物どもも我々の手で倒してみせます」
自分の最も信頼する部下の言葉を聞いて老人は安心して首を縦に動かす。
そして、ヨーロッパ王室の玉座を思わせる高価な椅子の背もたれに満足した顔で尻を埋めていく。
だが、直ぐに玉座の上から腰を上げて自分の目の前で意見の申し立てを伺う部下に向かって一言、気になった疑問を口にする。
「お前のその心意気は良い。だが、勝てる見込みはあるのか?」
それを聞いた彼は口元をいやらしく歪めて、
「ご安心を、老師……妖鬼と人間とのハーフにして風魔一族の最後の忍び、父、戦雲兵庫の教えを受けた身ですから、必ずや、老師の夢を叶えさせてご覧に入れてみれまする」
彼はそう言って頭を下げでその場から下がっていく。
彼は老師の謁見室の扉を閉めて、門番の男に言付けを退出の旨を伝えると、謁見の部屋の目の前に存在する幾何学上の螺旋を描いた階段を登っていく。
螺旋の階段を上ると、彼の前には巨大な扉。
それに加えて、ダイヤル式の鍵の付いている。
だが、戦雲玄竜は慣れた手つきで錠を解除して外へと出て行く。
外にはまたしても階段。階段を登り終えると、そこには鉄格子と先程と同じダイヤルの付いた扉。
これも、彼は慣れた手付きで解除する。
そして、鉄格子を閉めて更に階段を登っていくと、そこに存在するのはデパートの服売り場。
そう、彼が支配人という事になっている
彼の所属する組織の表向きの顔を表す場所。
紫のスーツ姿の彼はニコニコと愛想の良い笑顔を浮かべながら、訪れた客たちの接待を務めていく。
これが彼の今の仕事だ。彼がニコニコとした顔で客に媚を売っていると、若いというのに太い眉毛が目立つ男が彼の元で耳打ちを行う。
それを聞くと、玄竜は二、三度頭を下げて支配人室へと足を運ぶ。
すると、そこには美味しそうに緑茶を啜る派手なフリルの付いた黒いドレスを着た小柄な少女の姿。
少女は店長のひいては戦雲玄竜の顔を見て可愛らしい笑みを浮かべて彼を出迎える。
彼は彼女の目の前の長椅子に座り、いつもの愛想笑いを浮かべて言った。
「お客様、本日はどの様なご用件でしょうか?もしや、お客様、お客様のお父様のお使いであれを探しに来たのでしょうか?」
「あれ?」
と、言われても少女はピンとこないらしい。おかしそうに首を傾げる。
だが、彼は見抜いていると言わんばかりの商売用の笑顔を浮かべながら、支配人の座る椅子の下で何やら探っていく。
「お客様も冗談がお好きな様ですね。まぁ、結構な事です。大人になるにつれてそんな事を言う機会は減っていきますからな。なんと言っても今のうちに言うのが一番です。あ、そんな事を言っているうちにお客様のお探しの商品が出てきましたよ!」
彼はそう言って満面の笑みを浮かべて彼女に葉巻の入った金の装飾の施された箱を差し出す。
「ずばり、お客様のお父様が欲しがっているのはこれでございましょう?そう、葉巻!昭和31年に来日なさった砂漠の獅子王ハイレ・セラシエ一世陛下も愛用なさったバハマの葉巻!これからの国際化の世の中、やはり、嗜好品も日本ではなく、海外の方がーー」
「ねぇ、もう茶番はやめましょうぅ。戦雲玄竜」
彼女は呆れた様に大きな溜息を吐くと、次に彼が持っていた高価な葉巻と胸ポケットに隠してあったライターを奪い取り、足を組みながら長椅子の上に腰を掛けていく。
「お、おい、お前、金も払わないで!」
「金なら後で、紅葉姉様にでもつけておいてよぉ、それよりもあなたに大事な話があってきたのよぉ」
彼女は葉巻を片手に言った。
「は、話、それは何だ?」
男は彼女の座る目の前の長椅子に腰をかけながら尋ねる。
「それはねぇ、あなたも復讐したいんじゃあないのって思っているんじゃあないのかなということよぉ」
「復讐だと?馬鹿も休み休み言え、確かに、あの後に警察にオレの仲間が捕らえられた事を知ったが、奴らも筋金入り……そう簡単に情報を話したりはせんさ」
「でしょうねぇ、けど、復讐はしたい筈よ?なんだって、自分たちの仲間が薄汚い警察なんかに捕まったというのは変わらない事実なんだから」
彼女は巧妙に玄竜の復讐心を煽り立てていく。姑獲鳥のその言葉を聞いた瞬間に、彼の中に微かな憎悪が目覚めていく。
「そうだ、おれはやらなくちゃあならん。薄汚い警察を」
「ついでに言うとぉ、あたし達、妖鬼はあなた達と同盟を結びたいのぉ」
「同盟だと?」
それは願ってもない事だ。妖鬼を味方にできるのならば、それ程までに心強い事はない。そう思って、彼は首を縦に動かして彼女に握手を求めていく。
「こちらこそ、いずれ、人間と妖鬼とが仲良く結ばれる世の中を作ろうじゃあないか!」
「ええ、そんな理想の世界を作りましょう」
両者はここで手を結ぶ。最も、同盟を真剣に結べると考えているのは玄竜だけで、玉藻姑獲鳥は策略だとしか思っていないのだが……。
とにかく、これで両陣営は手を組み合い、敵を警察並びに騎士団と討滅寮の二つに絞る事ができた。
翌日、玉藻姑獲鳥は同盟の証明として安土桃山時代の混乱期に豪傑として名を轟かせ、晩年は天草の乱にて活躍し、乱世から太平の世に変わりつつあった世の中に最後の抵抗を見せたという妖鬼を彼に預けたのだった。
彼は武士らしく借られる先の主人にも頭を下げて、跪く。
「紹介致しますわぁ、かつて安土桃山時代に活躍し、徳川に最後まで刃向かった男、流鏑馬豪勇やぶさめごうゆうですぅ」
姑獲鳥の紹介に従って彼は丁寧に頭を下げて既に上げられた名前の他に、自分の自慢の技である槍を彼の前で披露していく。
槍の技の素晴らしさにすっかりと玄竜は虜になってしまったらしく、彼の演舞が終わる頃にはパチパチと両手を鳴らして、
「素晴らしい!この技を活かして必ずや、私の役に立ってくれ!」
「御意に」
彼は借られる先の主人に向かってもう一度深く頭を下げていく。
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