太刀に宿る守護霊とその上位の神々に認められたので、弟と妹を殺された兄ちゃんは仇の相手である妖鬼に復讐を誓います!

アンジェロ岩井

文字の大きさ
92 / 135
新しい時代の守護者編

遠距離からの刺客

しおりを挟む
ジョーは女性を一人、庇っている短い黒い髪の青年に狙いを定めていく。
彼の扱う魔獣覚醒は発射前の銃弾を自由自在に操れる『魔法の弾丸』
彼が銃の中にセットした弾丸は何があっても目標へと飛んでいくというものだ。
勿論、これに弱点がある事は今のケースを見てもよく分かる。
それが、あの青年が咄嗟にあの女性を庇った事により、弾が届けられなかった事だろう。
狙いを定めた位置が固定されるのはこの弾丸の弱点。従って、あまりよく動き回る相手には的確ではない。
どちらかと言えば、狩りや暗殺向けの魔獣覚醒。
向こうがこちらに気付いたとなれば、こちらも戦術を変えなければなるまい。
彼は第二の魔獣覚醒を使用する。それは自身の体に強力なバリアを張り、同時に相手の攻撃を受けるたびにバリアの防御率を高めていくというものであった。
サムライは接近戦で戦うと聞いているが、その斬撃が効かなければ接近戦もクソもないだろう。
彼はニヤリと笑ってサムライの青年を挑発する。
「カモン、ボーイ」
そう言うと、彼は青年を手招きしていく。
だが、それを見ても彼は青筋を立てるどころか、皮肉を秘めた笑みを浮かべて、
「わざわざこっちに来いという訳か、そりゃあ、わざわざご丁寧にどうも!」
彼はそう言って刀を振り上げていく。やはり、バリアーに、ピンク色の体を覆う膜に守られていたとしても、サムライがカタナを振り上げてくる姿は脅威だ。
堪らずに彼は銃口を風太郎に向かって突き付ける。
だが、銃弾は当たらない。どうやら、彼は銃口が向けられるのと同時に位置を変えているらしい。
それが、彼の視力よりも早いために彼の銃口は風太郎に追い付けないのだ。
風太郎はジョーの目の前に付くのと同時に、右斜め下から刀を振り上げて彼を始末しようと試みたが、直前になり躊躇ってしまう。
どうしてなのだろう。嫌な予感がする。
と、風太郎が躊躇っていた時だ。彼に迷いが生じた隙を利用してジョーは風太郎の彼が言うボーイの腹に至近距離で拳銃を突き付けていた。
「さてと……サムライボーイ。これでユーはチェックメイトになるんだ。日本語で言えば『詰み』だな。将棋っていうんだろ?あのチェス擬きのゲーム盤の名前は?」
「確かに、チェスと似たり寄ったりのゲームだが、オレはどちらも弱いんでね。一回、綺蝶に負けたきりどちらも全然やっていない」
「ボーイ、どうやら、キミは賭けに弱いようだな。オレが見たところによれば、選んだ番号についで自問自答した後に不安に駆られて直前の所でカードを変えて失敗するタイプだ。まぁ、今回に限ってはそれが正解だった訳だがね」
ジョーはそう言って風太郎の腹に突き付けている拳銃に込める力を強めていく。
彼は笑っている。生殺与奪の権を全て手に入れたと、と言わんばかりに。
実際にそうだと彼は心の中で同調する。
実際に、今の自分の状況は将棋でいう所の『詰み』の状態、何処に王将を動かしても負け、と言わんばかりの状態だ。
それでも、風太郎としては仲間が助けてくれる事に期待の票を入れたいが、彼よりも遠い位置にいる仲間では先にあの男の拳銃の餌食になってしまうだろう。
唯一、この男を倒せる可能性があるとするのならば、位置入れ替えの破魔式を持つ海崎英治。
だが、いかに海崎と言えどもわざわざ至近距離からピストルを放たれるためだけに自分と位置を入れ替えたりするだろうか。
いいや、しない。断言できる。
ジョーを打倒するための方法はないのだろうか。風太郎が策を巡らせていた時だ。
ふと、彼の脳裏に三年間の修行の日の事が頭に思い浮かんでいく。
これが、走馬灯という奴なのだろうか。いいや、違う。これは自分に与えられた汚名返上の機会。
彼は全神経を集中させて過去の世界に意識を投入させていく。
あれは、修行二年目。まだ破魔式が上手く使いこなせなかった時の事だ。
伸び悩んでいる彼を見て綺蝶がいつものあの柔和な笑みを浮かべて提案したのだ。
「獅子王院さん。良かったら、今日は将棋でも打ちませんか?良い息抜きになりますよ」
彼女はそう言っていつもの柔和な笑顔を浮かべて彼を将棋に誘った。
彼女から将棋の規則を教わり、そのままそれを打っていくものの、一向に勝てる気配は見えない。
風太郎が頬を膨らませて彼女に抗議の意思を見せると、彼女は可愛らしい顔を浮かべて笑って、
「確かに、将棋は難しいからですね。では、こうしましょう?私は金将と銀将無しで勝負致します」
その条件で風太郎は綺蝶に挑んだが、それでも負けてしまう。
悔しくて膝を落とす風太郎の肩を優しく撫でて、綺蝶は言った。
「安心してください。獅子王院さん。打てない事はありません!それに、勝つとまではいかずとも、きっと上手いところまではいけるようになれますよ」
彼女はそう言って将棋のやり方を教えていく。目から鱗だったのは飛車を取らせつつも、玉将を上へと逃す事で挽回を測るというものだった。
これには風太郎も抗議の言葉を述べたが、綺蝶は首を横に振って、
「所がそうでもないんです。案外、切り札と思われるものが人によっては大した事がなかったり、逆に大した事ないものが意外な所で切り札になったりする事が多いんですよ。これ、実は世の中では言われていませんけれど、これって結構、世の的を突いた言葉だと私は思っているんです」
彼女はそう言うと、風太郎に笑い掛けていく。
「さぁ、もう一戦、戦いましょうか!獅子王院さん。大事なのは自分では大事じゃない思っているものにふと目を向けてみる事です」
その後の将棋の結果は今も覚えている。結局の所は負けたが、綺蝶をいい所まで追い詰めたのを覚えている。
つまり、自分では左程、大事ではないと思っている事に目を向ける事に意義があるのではないか。
彼はここまでで自分が見落としていないかを探っていく。
一体、何があるだろう。そうだ。これは大きな事ではないのか。
風太郎は大きな声で、
「なぁ、最後に教えてくれよ。どうして、あんたは軍服を着ていないんだ!?」
風太郎は何気ない調子で言ったのだが、突然、男は青筋を立てて彼を怒鳴り付けていく。
「黙れッ!貴様に何が分かるって!オレはお前たちのようなバカのために軍務を追われたんだッ!そのオレを追い詰めた奴らの一員のお前がよくも……」
彼は声を震わせながら、風太郎に拳銃を突き付けていく。
いいや、最後は風太郎の予想の上をいく。彼はあのピンクの膜から手を出して風太郎に銃口を突き付けたのだ。
風太郎はその腕に目掛けて大きく太刀を振りかざしていく。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

処理中です...