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天楼牛車決戦編
24魔将の残り滓
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「氷堂冴子の撃破は成し遂げた。後は残りの24魔将……」
風太郎が目の前を歩いていると、彼の目の前に平安時代の武士装束を身に付けた男と戦国時代の傷だらけの鎧を身に付けた男が立ち塞がる。
「……今度は侍オールスターか?なら、おれもそれに答えて全力を出してやるよ!」
ここに一人と二体による刀の斬り合いが始まる。
同じ頃。綺蝶と日向。日下部暁人と海崎英治。桐生と菊園寺和巳の組み合わせで牛車の中で玉藻紅葉の詮索を続けていた。
「全く、何処まで行っても!部屋!部屋だ!何処まで続いているんだ!?」
「我慢してください。近作さん。それよりも……来ますよ」
彼女の言葉通り、二人の目の前には上空から兜鎧を身に付けた中年と思われる顔の男が現れた。
「我が名は比叡丸!源平合戦の折に、源頼朝公の手から逃げる際に、妖鬼となった!そこの対魔師の方!儂のお相手仕るぞ」
「これは、これは、ご丁寧に、私の名前は斑目綺蝶と言います。上位の対魔師であり、二人の弟子を持つ者でもあります」
綺蝶は丁寧に一礼をしてから、日向を差して、
「こちらがその一人です。彼の名前は近作日向と言います。どうか、お相手になってください」
彼はそれに答える代わりに、無言で刀を抜く。
それに従って日向も無言で刀を抜いて相手を睨む。
暫く無言の間で刀と太刀を握り合う両者であったが、次第に距離を詰めて互いに刃を交わし合う。
金属音が鳴り響いたかと思うと、日向はすれ違い様に彼を無言で叩き斬る。
相手に魔獣覚醒を使用する暇さえ与えずに。
綺蝶はそれを見て弟子の才能の突出性を誉めた。
「お見事です!近作さん!まさか、すれ違い様に破魔式を放つとは……この斑目綺蝶感服致しました!」
彼は師匠にいや、美人の女性に褒められたためか、頭をかいて照れ臭そうに笑う。
彼が取得した破魔式の名前は霧。目には見えない微量の痺れを放つ霧が相手を包み込んだ瞬間には相手は全身が麻痺し、その瞬間を対魔師に叩き斬られるというものである。
日向は大した事はないと思っていたのだが、実は大した実力者である。
と、言うのも最後にこの破魔式を使用したのは大正期の実力のある対魔師であり、近年まではこの近作日向を置いて他に同じ破魔式を使う人間は居なかったからだ。
大正時代~昭和初期。それは対魔師たちが最後に活躍できた時代であり、同時につい先程まで、警察が対魔師たちを引き抜いて、騎士団を引き連れて妖鬼と対魔師たちの戦いに介入し始めた時代とも言われている。
黒崎が力を貸したのも少し前に彼自身が話した事件とその当時の時代背景が影響していたのではないだろうか。
そんな事を考えながら、綺蝶は日向と肩を並べて玉藻紅葉の繰り出す妖鬼の群れと戦っていく。
どうやら、近作日向との相性は風太郎程ではないが合うらしい。
「全く何処もかしこも、妖鬼だらけだ。嫌になるな」
菊園寺和巳は刀を振り回しながら、隣で刀を構える桐生桃に問い掛ける。
「あぁ、全くだ。玉藻の奴め、ここで我々を皆殺しにするために、24魔将の全てを出してきたらしいな。稀にクソみたいな妖鬼の中にそこそこ強い妖鬼が混じっている」
桐生はそう言うと、岩石と炎の紋章を作り出して、目の前から迫る怪物の群れに炎の付いた岩石を飛ばしていく。
「菊園寺。そろそろ、向かうぞ、我々の敵は玉藻紅葉ただ一つだ」
「勿論だ。玉藻紅葉はおれの実の父の仇でもあるんだからな」
和巳は顔を曇らせながら言った。
桐生は首を縦に動かす。二人は互いに肩を並べて天楼牛車の迷路を進む。
「何処もかしこも、妖鬼だらけだ。うじゃうじゃと湧いて出やがる」
日下部暁人は自身の刀を震わせながら、肩を預けて刀を振るう海崎英治に向かって告げる。
「うん、だが、これだけの妖鬼が居たんじゃあ、玉藻紅葉も観念したんだろうね。もうこれだけの妖鬼を出すしかないと」
海崎の言葉は的を突いていた。だが、日下部は心の何処かでそれを否定している。
確かに、玉藻紅葉は追い詰められて自分の持つ戦力の全てを投入しているのかもしれない。
だが、それ以上に日下部にはあの女の深い意志を感じられた。
是非とも、この場でこの時間で対魔師たちを皆殺しにするという強い意志が……。
二人がその場から前へと向かおうとした時だ。突然、彼らの前に小さな戦闘機が現れて、二人を襲っていく。
二人は慌ててその場に下がる。二人が先程まで立っていた位置には火薬と硫黄の匂い、そして、噴煙が巻き上がっていた。
何事かと思って目の前を見つめると、そこには禿頭に白いシャツにズボンを履いた若い男の姿。
一瞬、近作日向と勘違いしてしまったが、それ程までに髪型が似ているのだ。
咄嗟に二人は刀を構える。すると、目の前の男は何やらぶつぶつ呟くと、恨みがましい目を向けながら、小さな戦闘機を飛ばす。
目の前にプロペラの付いた戦闘機は明確に二名を襲っていく。
二人が刀を振って立ち向かおうとした時だ。
またしても、目の前を阻まれてしまう。
二人は刀を構えて目の前の相手に向かって叫ぶ。
「何者だ!?」
「……あー、面倒くせー。どうして、お前らは生きてんだよ?生きてるんだったらよぉ~また、あのお方に怒られちまうだろうがぁ~」
「何者かとぼくたちが聞いているんだけれど、話を聞いてくれないかな?」
海崎英治は刀を使用して強制的に位置を入れ替えて、男に刀を突き付ける。
「チッ、わざわざ敵に名乗りを上げなくちゃあいけないのよ?で、名前の次は何だ?家名か、それとも一族の自慢話か、何を名乗らなくちゃあいけねぇ。くだらねぇな」
「なら、こちらの方から名乗らせて頂こう。おれの名前は日下部暁人。こいつの名前は海崎英治。共に正妖大学妖鬼対策研究会の会員だ」
「なぁにぃ、大学生だとぉ?そいつはいいな、そいつはいいなぁ。おれはよぉ、昭和18年から大学には行けなかったんだぞぉ、終わってからも、復興やら何やらでよぉ~あぁ~もう!そんなおれの心も知らないで大学だぁ~ふざけんじゃねぇぞ!」
男は肌を紅潮させながら叫ぶ。同時に、小さな飛行機で攻撃を繰り出していく。
小さな機関銃が二人に狙いを定めていく。
二人は慌ててその場から去ろうとしたが、海崎は少しだけ遅れてしまい、右肩を負傷してしまう。
日下部は血相を変えて海崎に駆け寄ったが、それを見ると男はケタケタと面白そうに笑いながら、
「面白い!いい面になったぜ!海崎とやら!」
と、彼は小躍りをせんばかりに飛び跳ねて言った。
どうやら、この男とは徹底的にやらなければならないらしい。
日下部は覚悟を決めた。
風太郎が目の前を歩いていると、彼の目の前に平安時代の武士装束を身に付けた男と戦国時代の傷だらけの鎧を身に付けた男が立ち塞がる。
「……今度は侍オールスターか?なら、おれもそれに答えて全力を出してやるよ!」
ここに一人と二体による刀の斬り合いが始まる。
同じ頃。綺蝶と日向。日下部暁人と海崎英治。桐生と菊園寺和巳の組み合わせで牛車の中で玉藻紅葉の詮索を続けていた。
「全く、何処まで行っても!部屋!部屋だ!何処まで続いているんだ!?」
「我慢してください。近作さん。それよりも……来ますよ」
彼女の言葉通り、二人の目の前には上空から兜鎧を身に付けた中年と思われる顔の男が現れた。
「我が名は比叡丸!源平合戦の折に、源頼朝公の手から逃げる際に、妖鬼となった!そこの対魔師の方!儂のお相手仕るぞ」
「これは、これは、ご丁寧に、私の名前は斑目綺蝶と言います。上位の対魔師であり、二人の弟子を持つ者でもあります」
綺蝶は丁寧に一礼をしてから、日向を差して、
「こちらがその一人です。彼の名前は近作日向と言います。どうか、お相手になってください」
彼はそれに答える代わりに、無言で刀を抜く。
それに従って日向も無言で刀を抜いて相手を睨む。
暫く無言の間で刀と太刀を握り合う両者であったが、次第に距離を詰めて互いに刃を交わし合う。
金属音が鳴り響いたかと思うと、日向はすれ違い様に彼を無言で叩き斬る。
相手に魔獣覚醒を使用する暇さえ与えずに。
綺蝶はそれを見て弟子の才能の突出性を誉めた。
「お見事です!近作さん!まさか、すれ違い様に破魔式を放つとは……この斑目綺蝶感服致しました!」
彼は師匠にいや、美人の女性に褒められたためか、頭をかいて照れ臭そうに笑う。
彼が取得した破魔式の名前は霧。目には見えない微量の痺れを放つ霧が相手を包み込んだ瞬間には相手は全身が麻痺し、その瞬間を対魔師に叩き斬られるというものである。
日向は大した事はないと思っていたのだが、実は大した実力者である。
と、言うのも最後にこの破魔式を使用したのは大正期の実力のある対魔師であり、近年まではこの近作日向を置いて他に同じ破魔式を使う人間は居なかったからだ。
大正時代~昭和初期。それは対魔師たちが最後に活躍できた時代であり、同時につい先程まで、警察が対魔師たちを引き抜いて、騎士団を引き連れて妖鬼と対魔師たちの戦いに介入し始めた時代とも言われている。
黒崎が力を貸したのも少し前に彼自身が話した事件とその当時の時代背景が影響していたのではないだろうか。
そんな事を考えながら、綺蝶は日向と肩を並べて玉藻紅葉の繰り出す妖鬼の群れと戦っていく。
どうやら、近作日向との相性は風太郎程ではないが合うらしい。
「全く何処もかしこも、妖鬼だらけだ。嫌になるな」
菊園寺和巳は刀を振り回しながら、隣で刀を構える桐生桃に問い掛ける。
「あぁ、全くだ。玉藻の奴め、ここで我々を皆殺しにするために、24魔将の全てを出してきたらしいな。稀にクソみたいな妖鬼の中にそこそこ強い妖鬼が混じっている」
桐生はそう言うと、岩石と炎の紋章を作り出して、目の前から迫る怪物の群れに炎の付いた岩石を飛ばしていく。
「菊園寺。そろそろ、向かうぞ、我々の敵は玉藻紅葉ただ一つだ」
「勿論だ。玉藻紅葉はおれの実の父の仇でもあるんだからな」
和巳は顔を曇らせながら言った。
桐生は首を縦に動かす。二人は互いに肩を並べて天楼牛車の迷路を進む。
「何処もかしこも、妖鬼だらけだ。うじゃうじゃと湧いて出やがる」
日下部暁人は自身の刀を震わせながら、肩を預けて刀を振るう海崎英治に向かって告げる。
「うん、だが、これだけの妖鬼が居たんじゃあ、玉藻紅葉も観念したんだろうね。もうこれだけの妖鬼を出すしかないと」
海崎の言葉は的を突いていた。だが、日下部は心の何処かでそれを否定している。
確かに、玉藻紅葉は追い詰められて自分の持つ戦力の全てを投入しているのかもしれない。
だが、それ以上に日下部にはあの女の深い意志を感じられた。
是非とも、この場でこの時間で対魔師たちを皆殺しにするという強い意志が……。
二人がその場から前へと向かおうとした時だ。突然、彼らの前に小さな戦闘機が現れて、二人を襲っていく。
二人は慌ててその場に下がる。二人が先程まで立っていた位置には火薬と硫黄の匂い、そして、噴煙が巻き上がっていた。
何事かと思って目の前を見つめると、そこには禿頭に白いシャツにズボンを履いた若い男の姿。
一瞬、近作日向と勘違いしてしまったが、それ程までに髪型が似ているのだ。
咄嗟に二人は刀を構える。すると、目の前の男は何やらぶつぶつ呟くと、恨みがましい目を向けながら、小さな戦闘機を飛ばす。
目の前にプロペラの付いた戦闘機は明確に二名を襲っていく。
二人が刀を振って立ち向かおうとした時だ。
またしても、目の前を阻まれてしまう。
二人は刀を構えて目の前の相手に向かって叫ぶ。
「何者だ!?」
「……あー、面倒くせー。どうして、お前らは生きてんだよ?生きてるんだったらよぉ~また、あのお方に怒られちまうだろうがぁ~」
「何者かとぼくたちが聞いているんだけれど、話を聞いてくれないかな?」
海崎英治は刀を使用して強制的に位置を入れ替えて、男に刀を突き付ける。
「チッ、わざわざ敵に名乗りを上げなくちゃあいけないのよ?で、名前の次は何だ?家名か、それとも一族の自慢話か、何を名乗らなくちゃあいけねぇ。くだらねぇな」
「なら、こちらの方から名乗らせて頂こう。おれの名前は日下部暁人。こいつの名前は海崎英治。共に正妖大学妖鬼対策研究会の会員だ」
「なぁにぃ、大学生だとぉ?そいつはいいな、そいつはいいなぁ。おれはよぉ、昭和18年から大学には行けなかったんだぞぉ、終わってからも、復興やら何やらでよぉ~あぁ~もう!そんなおれの心も知らないで大学だぁ~ふざけんじゃねぇぞ!」
男は肌を紅潮させながら叫ぶ。同時に、小さな飛行機で攻撃を繰り出していく。
小さな機関銃が二人に狙いを定めていく。
二人は慌ててその場から去ろうとしたが、海崎は少しだけ遅れてしまい、右肩を負傷してしまう。
日下部は血相を変えて海崎に駆け寄ったが、それを見ると男はケタケタと面白そうに笑いながら、
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