魔法刑事たちの事件簿

アンジェロ岩井

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第一部 『白籠町のアンタッチャブル (決して触れられないもの達)』

第四話 リンゴの木からリンゴの籠へ

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絵里子は弟を自宅に招いた後に、得意料理であるオムレツを振る舞う。
「うむ、美味いな! 姉貴! 料理の腕が上達したじゃあないか! 」
孝太郎は姉の出してくれたオムレツに舌を打っている。
「ありがとう。それよりも……刈谷の奴をどうやって逮捕するべきかしら?」
絵里子のいつになく真剣そうな顔に答え、孝太郎も顔を締まらせる。
「20世紀の初頭にアル・カポネなるマフィアの親玉がシカゴ市という街を牛耳っていたそうだが、その時にアル・カポネはの容疑で逮捕されたらしいな……」
絵里子はその言葉にハッと息を呑む。
「そうだわ! 刈谷の奴も税金を払っていない筈だわ!! アル・カポネと同様の手口で捕まえられるかもしれないわッ!」
絵里子は興奮気味に拳を握り締めている。
「だな、だが問題は奴が麻薬やらで稼いだ金を銀行でフロタリングしているからな、それに上手いこと税をチョロまかしているから、告発するのは至難の技かもな……」
孝太郎は期待させておいて落とすような真似をした申し訳無さからか、絵里子に対し視線を逸らす。
「少なくとも脱税容疑ではでしょ!?」
絵里子はそれから、共和国の大統領が演説をする時のように手のひらを宙に浮かし、叫ぶ。
「いい、わたし達は警察官よ! 刈谷や他の犯罪者を検挙する義務があるのよ! 例えアイツらが強力な魔法師だろうと、或いはこの街の市長以上の権力を持っていようとも負けるわけにはいかないわ! そうでしょ?孝ちゃん!?」
絵里子の言葉に孝太郎は胸を打たれたのか、絵里子をジッと見つめた後に抱擁した。
「……絵里子。お前は成長したよ、大丈夫だ。この街で唯一腐敗していない警察官であるオレが腐っていない警官を見つけて、必ず刈谷をふん捕まえてやるさ! 」
絵里子は目の前の老いたとはいえ、逞しい弟に少なからず惹かれるところがあるのかもしれない。絵里子にとってのかつての王子様だったから。

弟を見送った後に絵里子は一人の部屋で化粧を落とした後にビール缶を飲む。
ビール缶は24世紀になってもなお、庶民の身近なアルコール飲料であった。
特に絵里子はビールのあのしゅわしゅわとすると泡の感覚と後の苦味が好物であった。
「孝ちゃん……」
絵里子は幼い時に弟と映画を観ていた時のことを思い出す。
あの時に弟にキスをすれば良かった。
幼い時に怖いところから、自分を光に連れ出してくれた最愛の弟。
「孝ちゃんはあたしの運命の人なの……」
絵里子はお酒の勢いもあってか、頰を紅潮させながら一人の部屋で呟く。

翌日になり、携帯端末に設定してあった目覚まし時計のベルが鳴る。
「うん、今は8時ね……出勤は9時だから充分間に合うし、今日は……」
絵里子がそのままベットで寝ようとした時だ。
「いけないわ! 今日は孝ちゃんと警察学校で腐っていない警官を見つける予定だったわ!! 」
絵里子は急いで食料配給センターから送られる朝食を受け取り、身支度を済ませて玄関を開け自分のマンションを跡にする。
マンションが始まった詳しい年代は絵里子には分からぬが、マンション自体は20世紀から世界に点在する由緒正しい歴史ある建築物の一つである。
庭には小さな公園やら芝生やらがあり、ここに住んでいる子供が楽しめるようになっている。
(でも、刈谷の奴が存在する限り、白籠市は危ないのよね……)
そんな絵里子の心配する気持ちなど知らない子供たちは外の公園で保育園やら幼稚園に行く前のひと時として遊具で夢中になって遊んでいた。


警察学校の前では孝太郎が腕を組んで待っていた。
「ったく、遅いぞ……10分の遅刻だ」
「ごめんなさい! 電車に乗るのが少し遅れてしまって……」
絵里子は必死の弁解が通じたのか、孝太郎は怒りを解き、寛大な笑顔を見せる。
「よし、なら、早速有能な警官を見つけに行くとするか……」

警察学校での有能な腐ってない警官の探索は容易であった。
孝太郎の質問に対してその面接された警官が、どんな答えを繰り出すかによって孝太郎は有能な警官を見抜く(彼は若いながらに、観察眼の優れた警察官であった)
そして、彼の厳しい面接試験に合格したのは石井聡子と呼ばれる一人の婦警であった。
彼女は物怖じも人見知りもしない性格であり、尚且つ短気な性格に目を瞑れば、警察官に相応しいものを殆ど揃えていた有能な警官であった。
短いが、まるでサファイアのような綺麗な青い髪。それに端正な目と鼻と口。新聞を通しても絶世の美女と評された絵里子を通して美人と言われたくらいである。
「つまりさぁ~あんたらの仲間になれってことだよなぁ?」
休憩タイムというのもあり、聡子は警察学校の食堂で売っている堅パンを頬張りながら、尋ねる。
「そうよ、刈谷を捕まえるのにあなたの協力がいるのよ、助けてくれない?」
絵里子の懇願する目を聡子はジッと見つめている。
「別にさぁ~アンタに協力しないとは言ってないよ?でもさぁ~あたしだって命は惜しいわけじゃん」
そこで孝太郎が口を挟む。
「やれやれ、関西人というは東京に来ると怖気つくらしいな、だからオレはビッグ・オオサカの連中が東京に……」
ここで、聡子が魔法を使える右手を孝太郎に向ける。
「うるせえ! あたしの故郷をバカにすんな! この場で叩き殺してや……」
それを言う前に絵里子が聡子の右手を防ぐ。
「それ以上言っちゃダメよ、みんな見てるから……」
聡子は周囲の冷ややかな空気に気づき、キョロキョロと視線を動かす。
一通り見終えた後に、右手をしまい、孝太郎を睨みつけるように瞳を見てから、孝太郎に向かってため息を吐きながら、言った。
「負けたよ、アンタについて行く」
聡子は孝太郎の手を握り締めた。
「よし、これで仲間の一人が決まったな、だが、もう一人くらい欲しいな……」
孝太郎がため息混じりに、呟くと、絵里子が携帯端末を取り出し。
「見てよ! この子が上の方から刈谷阿里耶の逮捕協力のために、派遣されるんですって! 」
孝太郎はその写真をジックリと眺める。メガネをかけた一見すれば、少女と言っても過言ではない人物だが、どこかに知性は感じさせれるという印象を抱いた。
「まぁ、チームに帳簿係が欲しかったんだ。これで、必要な役職は埋まったかもな」
孝太郎は自分が参謀。絵里子がリーダー。後ろの青髪の少女が戦闘員。そして、まだ見ぬ女性を帳簿係に加えた白籠市のアンタッチャブルを妄想した。
孝太郎はこの四人なら、いけるだろうと何故か考えてしまう。その根拠は何一つ無かったが……。
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