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シニョリーナ・エスコート・トラベル編
幻覚兵隊と幽体離脱ーその⑤
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会見は結局、泥沼のまま終了した。
総一郎は慌てて、昌原道明の元へと電話をかける。
「おい、困るぞ、幻覚剤の件は外にバレないと言っていたじゃあないか! 」
総一郎の指摘に道明は電話の向こうで、しばらくの沈黙を守っていたが、大きく息を吸ってから、独特のしゃがれ声で総一郎の質問に答えた。
「大丈夫だ。例の薬はみんな、昨日の信者への『天界を除く儀式』に使ったんだ。肝心の薬がないんだ。露呈する筈がないだろう」
道明は慌てて、電話を切った。
電話を切ってから、腹心の部下である弁護士の赤川義政が部屋に入ってきた。
「会長。弁護士の藤村誠が我々を批判しておりますが、その件はどう致しますか?」
赤川義政はネズミ顔のいかにも小物という印象を与える男であったが、これでも彼は大学卒業後の22歳で弁護士資格を取得した天才であった。
「お前に任せる。そうだ、外交担当の村山茂晴も連れて行った方がいいな、弁護士の弁論に勝つには、もう一人雄弁な喋り手が必要だろ?」
教祖の言葉に赤川は深々と頭を垂れ、感謝の言葉を述べた。
そして、昌原はこの白籠市にやって来た外国人の友人に電話を入れた。
「おい、トミーとか言ったな?藤村誠という男を宇宙へと返せるかね?」
宇宙究明学会において、『宇宙へと返す』という言葉は殺人を意味する言葉として半ば、日常的に使われていた。
この言葉を使い、被害者は宇宙に生まれ変わり、より高い世界に転生するという事を信者に伝えていたのだった。
「その言い方は好みじゃあないな、素直に『殺す』と言えばいいのによぉ~」
トミーの言葉に昌原は苦笑し、自分の教義を説く。
「分かった。分かった。そう言えば、いいんだろ?オレらの中に一人白籠市に向かわせるよ」
「交渉が成功すれば、それでいいんだよ、私としては交渉が成功し、上手いこと藤村氏がご自分の悪行に気づいてくれれば、私としても、そんな事をしなくてもいいんだ」
昌原の言葉はトミーはまるで、暗い中を歩いている時に背中を何か冷たいもので冷やされた時のような嫌悪感を抱く。
純粋な恐ろしさ。つまり、この人に絶対に殺されたくはないとい思いを感じさせるのなら、自分の主人であるジョー・ボルジアの方が上だが、昌原は生物学的な恐ろしさを感じさせられた。
「頼んだよ」
そう言って、昌原は電話を切る。トミーは誰を向かわせるのかを思案しなければ、ならない事を非常に面倒な事のように思われた。
絵里子は孝太郎に自分の背中を任せ、目の前の恐竜たちに挑む。
「頼んだわよ! 」
「オレもな!! 」
二人は各々の右腕を恐竜たちに向けながら、サムとポーリーの二人を探索せんとしていた。
孝太郎の破壊の右腕と絵里子の繰り出す魔法の機関銃により、次々と恐竜たちは消えて行くのだが……。
「オレの事を忘れてないか!?」
ポーリーがナイフを持って、絵里子に向かって行く。絵里子は機関銃でポーリーを撃ち続けているのだが、一向に弾は当たらない。むしろ、絵里子の放った弾はポーリーの体をすり抜けていく。
(やっぱり、彼の肉体は幽体なんだわ! そうでなければ、弾がすり抜けていくことの説明がつかないもの!! )
絵里子は咄嗟にポーリに向かって、ガソリンが入ったポリタンクを投げ付け、それからライターを作り出したのだが……。
「残念だなッ!オレを焼き殺して、成仏させようという魂胆なんだろ!?だが、そんな事は無駄さッ!物理的な攻撃は一切聞かんのだよ! 」
ポーリーが突っ込もうとし、絵里子は咄嗟にライターをポリタンクの近くにまで、放り投げてしまう。絵里子は殺されてしまうと目を瞑った時に、恐竜を片付けたと思われる孝太郎が右腕でポーリーを削ろうとした。
だが、孝太郎の右腕はポリタンクの閉め口を破壊しただけで、ポーリーには傷一つなかった。
「ふん、無駄な事はやめろよ、孝太郎くん、大方、その魔法でオレを『破壊』できないと考えたんだろうが、オレは幽体なんでね、この世のものじゃあないんだ。オレを破壊しようなんて……」
その時だ。孝太郎が一気に姉を連れ、林の出口に向かって行く。
「うん?何を考えている?」
と、ポーリーは口に出してしまったのだが、その瞬間に先ほどポリタンクに穴が開いたのを思い出した。そして、近くに付けっ放しのライターがある事を。
「しまったァァァ~!!! 」
ポリタンクからの火で林全体に火が広がっていく。
(まっ、まずい! オレの本体はこの林の中で眠りこけてんだぞ! )
ポーリーは徐々に燃えていく林に危機を感じ、自分が眠っている駐車場の自分たちの車の裏の木の下にまで走っていく。
その後ろを、孝太郎が燃えた木を破壊しながら、付けて行っているとも知らずに……。
「よし、オレの本体は無事だッ!このまま、反撃に……」
その時だ。眠りこけている自分の本来の頭に銃が突きつけられた。
「あっ、あっ……」
「最初はこの作戦にはためらいがあったんだが、よくよく考えたら、オレの魔法で破壊できないものはないからな、木が全体に燃え広がる前に、全部の燃えている木を破壊していったのさ……」
ポーリーは観念するしかないと、自分の本来の体に戻っていく。
絵里子は何とか、サムを追い詰めていた。サムは近くの木の上で双眼鏡を使いながら、待機しているところを絵里子が発見したのだった。
「あなたが、サムね! 殺人未遂の現行犯で逮捕するわッ!」
「オレを逮捕するだと?やってみろよ、クソ女ッ!! 」
サムは再び、自分の両手の手のひらを絵里子に向けようとするのだが、今の絵里子には通用しない。絵里子は咄嗟に自分の魔法で作り出したアーミーナイフをサムの右足に投げ付けた。
「うぎゃァァァァァァァ~~!!! 」
サムは自分を襲った痛みに耐えられずに、その場で足を抑えてのたうち回っている。
「どう、降参する?つまり、警察に逮捕されるか、どうかを聞いているのよ」
絵里子の質問にサムは首を縦に振らざるを得ない。
こうして、一行を襲った強力な魔法師はここにお縄についたのだった。
聡子と明美とコニーは何が起こっていたのかを二人が車に容疑者を引き連れ、戻ってきた時にようやく知った。
「そんな事があったのか~」
聡子はバッグに入れていたであろうたい焼きを食べながら、感心したように呟く。
「ああ、コイツらはコニーさんの命を狙って来たんだよ、全くふてぇ奴らだ」
孝太郎はサムの頭をパチンと軽く叩く。
「しかし、これで終わりとはどうしても、思えないんですよ、まだまだ来そうな気がするんです」
両目の瞳をせわしなく左右に動かして言っているのは明美。
「そうだな、とにかく、今日のところは近くの警察署に行って、理由を説明しないとな、二人はアイツらの車で近くの警察署にまで引っ張るから」
そうして、孝太郎は聡子と明美に目をやる。
「あたしらが!?」
「頼むよ、それにオレと姉貴は戦いを終えて、ヘトヘトだからさ、それに、この車を運転するのもオレだし」
孝太郎のその言葉に二人は顔を見合わせて、溜息を吐き、サムとポーリーを連れ、その車へと向かって行く。
「どれ、オレたちも出発するか」
と、孝太郎が運転席に座ろうとした時だった。
「あたしが運転します! 」
コニーが孝太郎の代わりに運転席に座った。
「やめてくれよ、コニーさん。あんたは後部座席に……」
「いえいいんです。あたしは守られてばかりだし、今回の孝太郎さんのお話を聞いて、あたしでも役に立ちたいなって、思って……」
そう言われれば、孝太郎としても断るわけにはいかない。
大人しく運転をコニーに任せ、助手席に座ろうとしたのだが……。
「ダメよ、孝ちゃんは、後ろに座らなくちゃあいけないの!! 」
姉の絵里子から、そう睨まれては引っ込むしかあるまい。孝太郎は大人しく後部座席で、次に白籠市の自分の家に帰ったら、何のDVDを借りようかと考える事にした。
総一郎は慌てて、昌原道明の元へと電話をかける。
「おい、困るぞ、幻覚剤の件は外にバレないと言っていたじゃあないか! 」
総一郎の指摘に道明は電話の向こうで、しばらくの沈黙を守っていたが、大きく息を吸ってから、独特のしゃがれ声で総一郎の質問に答えた。
「大丈夫だ。例の薬はみんな、昨日の信者への『天界を除く儀式』に使ったんだ。肝心の薬がないんだ。露呈する筈がないだろう」
道明は慌てて、電話を切った。
電話を切ってから、腹心の部下である弁護士の赤川義政が部屋に入ってきた。
「会長。弁護士の藤村誠が我々を批判しておりますが、その件はどう致しますか?」
赤川義政はネズミ顔のいかにも小物という印象を与える男であったが、これでも彼は大学卒業後の22歳で弁護士資格を取得した天才であった。
「お前に任せる。そうだ、外交担当の村山茂晴も連れて行った方がいいな、弁護士の弁論に勝つには、もう一人雄弁な喋り手が必要だろ?」
教祖の言葉に赤川は深々と頭を垂れ、感謝の言葉を述べた。
そして、昌原はこの白籠市にやって来た外国人の友人に電話を入れた。
「おい、トミーとか言ったな?藤村誠という男を宇宙へと返せるかね?」
宇宙究明学会において、『宇宙へと返す』という言葉は殺人を意味する言葉として半ば、日常的に使われていた。
この言葉を使い、被害者は宇宙に生まれ変わり、より高い世界に転生するという事を信者に伝えていたのだった。
「その言い方は好みじゃあないな、素直に『殺す』と言えばいいのによぉ~」
トミーの言葉に昌原は苦笑し、自分の教義を説く。
「分かった。分かった。そう言えば、いいんだろ?オレらの中に一人白籠市に向かわせるよ」
「交渉が成功すれば、それでいいんだよ、私としては交渉が成功し、上手いこと藤村氏がご自分の悪行に気づいてくれれば、私としても、そんな事をしなくてもいいんだ」
昌原の言葉はトミーはまるで、暗い中を歩いている時に背中を何か冷たいもので冷やされた時のような嫌悪感を抱く。
純粋な恐ろしさ。つまり、この人に絶対に殺されたくはないとい思いを感じさせるのなら、自分の主人であるジョー・ボルジアの方が上だが、昌原は生物学的な恐ろしさを感じさせられた。
「頼んだよ」
そう言って、昌原は電話を切る。トミーは誰を向かわせるのかを思案しなければ、ならない事を非常に面倒な事のように思われた。
絵里子は孝太郎に自分の背中を任せ、目の前の恐竜たちに挑む。
「頼んだわよ! 」
「オレもな!! 」
二人は各々の右腕を恐竜たちに向けながら、サムとポーリーの二人を探索せんとしていた。
孝太郎の破壊の右腕と絵里子の繰り出す魔法の機関銃により、次々と恐竜たちは消えて行くのだが……。
「オレの事を忘れてないか!?」
ポーリーがナイフを持って、絵里子に向かって行く。絵里子は機関銃でポーリーを撃ち続けているのだが、一向に弾は当たらない。むしろ、絵里子の放った弾はポーリーの体をすり抜けていく。
(やっぱり、彼の肉体は幽体なんだわ! そうでなければ、弾がすり抜けていくことの説明がつかないもの!! )
絵里子は咄嗟にポーリに向かって、ガソリンが入ったポリタンクを投げ付け、それからライターを作り出したのだが……。
「残念だなッ!オレを焼き殺して、成仏させようという魂胆なんだろ!?だが、そんな事は無駄さッ!物理的な攻撃は一切聞かんのだよ! 」
ポーリーが突っ込もうとし、絵里子は咄嗟にライターをポリタンクの近くにまで、放り投げてしまう。絵里子は殺されてしまうと目を瞑った時に、恐竜を片付けたと思われる孝太郎が右腕でポーリーを削ろうとした。
だが、孝太郎の右腕はポリタンクの閉め口を破壊しただけで、ポーリーには傷一つなかった。
「ふん、無駄な事はやめろよ、孝太郎くん、大方、その魔法でオレを『破壊』できないと考えたんだろうが、オレは幽体なんでね、この世のものじゃあないんだ。オレを破壊しようなんて……」
その時だ。孝太郎が一気に姉を連れ、林の出口に向かって行く。
「うん?何を考えている?」
と、ポーリーは口に出してしまったのだが、その瞬間に先ほどポリタンクに穴が開いたのを思い出した。そして、近くに付けっ放しのライターがある事を。
「しまったァァァ~!!! 」
ポリタンクからの火で林全体に火が広がっていく。
(まっ、まずい! オレの本体はこの林の中で眠りこけてんだぞ! )
ポーリーは徐々に燃えていく林に危機を感じ、自分が眠っている駐車場の自分たちの車の裏の木の下にまで走っていく。
その後ろを、孝太郎が燃えた木を破壊しながら、付けて行っているとも知らずに……。
「よし、オレの本体は無事だッ!このまま、反撃に……」
その時だ。眠りこけている自分の本来の頭に銃が突きつけられた。
「あっ、あっ……」
「最初はこの作戦にはためらいがあったんだが、よくよく考えたら、オレの魔法で破壊できないものはないからな、木が全体に燃え広がる前に、全部の燃えている木を破壊していったのさ……」
ポーリーは観念するしかないと、自分の本来の体に戻っていく。
絵里子は何とか、サムを追い詰めていた。サムは近くの木の上で双眼鏡を使いながら、待機しているところを絵里子が発見したのだった。
「あなたが、サムね! 殺人未遂の現行犯で逮捕するわッ!」
「オレを逮捕するだと?やってみろよ、クソ女ッ!! 」
サムは再び、自分の両手の手のひらを絵里子に向けようとするのだが、今の絵里子には通用しない。絵里子は咄嗟に自分の魔法で作り出したアーミーナイフをサムの右足に投げ付けた。
「うぎゃァァァァァァァ~~!!! 」
サムは自分を襲った痛みに耐えられずに、その場で足を抑えてのたうち回っている。
「どう、降参する?つまり、警察に逮捕されるか、どうかを聞いているのよ」
絵里子の質問にサムは首を縦に振らざるを得ない。
こうして、一行を襲った強力な魔法師はここにお縄についたのだった。
聡子と明美とコニーは何が起こっていたのかを二人が車に容疑者を引き連れ、戻ってきた時にようやく知った。
「そんな事があったのか~」
聡子はバッグに入れていたであろうたい焼きを食べながら、感心したように呟く。
「ああ、コイツらはコニーさんの命を狙って来たんだよ、全くふてぇ奴らだ」
孝太郎はサムの頭をパチンと軽く叩く。
「しかし、これで終わりとはどうしても、思えないんですよ、まだまだ来そうな気がするんです」
両目の瞳をせわしなく左右に動かして言っているのは明美。
「そうだな、とにかく、今日のところは近くの警察署に行って、理由を説明しないとな、二人はアイツらの車で近くの警察署にまで引っ張るから」
そうして、孝太郎は聡子と明美に目をやる。
「あたしらが!?」
「頼むよ、それにオレと姉貴は戦いを終えて、ヘトヘトだからさ、それに、この車を運転するのもオレだし」
孝太郎のその言葉に二人は顔を見合わせて、溜息を吐き、サムとポーリーを連れ、その車へと向かって行く。
「どれ、オレたちも出発するか」
と、孝太郎が運転席に座ろうとした時だった。
「あたしが運転します! 」
コニーが孝太郎の代わりに運転席に座った。
「やめてくれよ、コニーさん。あんたは後部座席に……」
「いえいいんです。あたしは守られてばかりだし、今回の孝太郎さんのお話を聞いて、あたしでも役に立ちたいなって、思って……」
そう言われれば、孝太郎としても断るわけにはいかない。
大人しく運転をコニーに任せ、助手席に座ろうとしたのだが……。
「ダメよ、孝ちゃんは、後ろに座らなくちゃあいけないの!! 」
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