いじめられ勇者が世界を救う!?〜双子のいじめられっ子が転生した先で亡国の女王を助け、世界を救うと言うありふれた話〜

アンジェロ岩井

文字の大きさ
40 / 106
第一部 第三章 ドラゴンを従えし王

王土の守護者

しおりを挟む
エヴァとの決闘に勝利を収めた、ディリオニスならびにジークフリードはガラドリエルと神々の祭られる祭壇の前に跪き、
「恐れながらも、異界の神々に申し上げます!今回の決闘を制し、王たる資格を得たのは我らがガラドリエル女王陛下であります!このお方こそが守護獣ガーディアン・ビーストを得て、広大なるプロイセン大陸を統治するのに相応しいお方にございましょう!」
ディリオニスはジークフリードに喋る様を任せていたが、その雄弁さには堪らずに舌を巻いていた。
と、ここでディリオニスに続いてガラドリエルの護衛を務める騎士、ガートールードも祭壇と神々の前に跪く。その上で彼女は先程のジークフリードの弁に足らなかった言葉を付け足す。
「他にもガラドリエル女王陛下はガルマン民族の統治者に相応しいお方でございます!謹んで申し上げます。神々に対する女王陛下の対応が正当性のあるものであると願っております」
ガーオールードに従って黒のローブを帯びた麗しき魔道士も祭壇の元に跪き、
「神々に申し上げます。現在こそ、我らが居住するプロイセン大陸は統一戦争に明け暮れておりますが、争いはそろそろ決着を付けなければならない所まできておりますの。魔王エルミアの治める北の国と呼ばれる未開の国の侵攻を控えております。その乱を打ち返す事ができるのは、偉大なるジークフリードとブリュンヒルデを宿す人間を従える器を持つガラドリエル女王陛下に他なりませんわ。どうか、賢明なご判断を」
ユーノ言葉に釘を刺されたのか、神々がこの期に及んで、ガラドリエルに守護獣ガーディアン・ビーストを渡さないという反応はないだろう。現に神々は顔をしかめて話し合いをしていたものの、代表である小型の老人の神がガラドリエルの前に現れて、杖を掲げた。
ガラドリエルと跪き損ねたマートニアは慌てて祭壇と神々の前に跪く。
長神は寛大な笑顔を向けてから、両手を大きく広げて儀式の言葉を呟く。
「よかろうッ!お主、ガラドリエルをプロイセン大陸の支配者にしてガルマン民族の統治者として認めよう!」
ガラドリエルは神の言葉に従い、頭を下げる。
「したがってお主には我らの誇る最も偉大なる怪物をお主の護衛として従わせよう!」
リーダーと思われる神は天空に向かって杖を振るうと、たちまちのうちに暗雲が割れて、赤と青と白の鱗を持つドラゴンが現れた。
ドラゴンは降下すると、高層ビル程もあった身長を小柄の鳥程の慎重に縮めて、ガラドリエルに頭を下げた。
ガラドリエルは僅かに眉をしかめだが、直ぐにいつもの冷静な顔に戻して、
「これは?」
「うむ、こやつらがお主を守護し、玉座へと導く怪物じゃ。三匹の色の異なるドラゴンはお主の言う事ならば何でも聞く。縮まらせて共に移動するのも、空を飛ばせるのもお主の裁量次第じゃ」
そう言って神々のリーダーを務める神は他の神々を先導して、天界へと戻って行く。
だが、帰り際にディリオニスとマートニアの方向に向き直り、
「そうじゃ、お主ら二人に言っておくぞ!何があってもガラドリエルを裏切ってはならん!偉大なる神オーディンは魔王の侵攻に耐え切られるのはお主だけだと考えておるからのぉ。特にあの女……ザビーネの甘言にだけは耳を貸すなッ!以前、独断であやつの甘言に乗せられて、怪物を与えた愚かな神がいるでな。十分に気をつけなされ!」
神は二人への短い接見を終えると、再び神々の世界へと戻って行く。
ガラドリエルは神々が去り行くのを眺めて、地面を立つ。
ガラドリエルは起き上がってから、同じように地面から立ち上がったディリオニスとマートニアに向かって微笑みかけ、
「成る程、私はお前達二人が、私の元にやってきた理由を分かった気がしたぞ」
ガラドリエルはそう言って口元を歪めた。
「お前達二人の活躍には女王として感謝しておる。これからも活躍を期待しておるぞ」
相変わらずの澄ました笑顔。傲慢とも言える態度。そして、たまにだけ見せる優しさに慈悲深さ。こんなガラドリエルだからこそ、二人は従っているのだと、顔を見合わせて笑う。
ユーノは会話が終わったのだろうと推測して、ドラゴンに乗ってみないかとガラドリエルに提案した。
ガラドリエルは満面の笑みで答えた。ガラドリエルは三匹のドラゴンに指示を出し、元の姿に戻させる。それから、聡明な女王は乗る順番を定めて、臣下たちを乗せていく。
赤色の鱗を持つドラゴンに自分とガートールードが。青色の鱗を持つドラゴンにディリオニスとマートニアが。そして、白色の鱗を持つドラゴンにユーノが乗る事になった。ユーノは自分が一人だけ乗る事に頬を膨らませていたが、ガラドリエルは先導役を務めてほしいと言うと、渋々と了承した。
ユーノは三匹のドラゴンの先頭に立って、異界へと繋がる霧を精製した。
途端に山の周りは霧に包まれる。
ユーノは山頂近くで待機するドラゴンに乗る主人と仲間達に指示を出し、霧の向こうへと向かって行く。三匹のドラゴンは蝙蝠のような立派な翼をはためかせて行く。




「よしよし、お前はいい子ね」
ザビーネは森近くの村で食事を終えたばかりの自身の守護獣ガーディアン・ビーストの頭を撫でる。
怪物は竜の頭を持ち、蛇のような体に邪気のような黒い霧を纏っていた。
よく抵抗がないものだと、マクシミリアンは内心感心していた。
この怪物は食べ始めたら止まらずに、村全てを全滅させる程の旺盛な食欲を見せ付けていた。悪魔のような怪物にマクシミリアンは嫌悪感を感じられないが、ザビーネが命じた若い娘だけは殺していない点からも主人の命令だけは忠実に守るらしい。
マクシミリアンが震える手を掲げたザビーネに質問を浴びせた。何故に若い娘だけを生かしておいたのかと。
ザビーネはその質問を聞くなり、髪を撫で上げて真っ白な犬歯を見せて笑う。
それから、人差し指を舐めて答えた。
「決まっているでしょ?遊ぶのよ。私ねペットが好きなの。ペットはどんな言う事でも聞くわ。恐怖と悲観にくれた目で私を見つめるの。ゾクゾクするわ」
ザビーネは言葉通りに体を震わせながら答えた。
「では、転送魔法で?」
ザビーネは満面の笑みでマクシミリアンの言葉を肯定した。
マクシミリアンの魔法によって哀れなる乙女たちは彼女の城へと送られて行く。
ザビーネが帰城した時の事を考えると、いさかか彼女達が哀れに思われたが、彼女は恩人の主人なのだ。
目の前の『サディスト』という言葉を全体で体現した女はその様子を眺めると、地図を開く。
そして、北の国に近いブレーメレという街を真っ白な手で指差し、
「ここよ。ここにガラドリエルはやって来るわ。間違いないわ」
ザビーネは口元を三日月の形に歪めて笑う。マクシミリアンはその様子を無言で眺めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...