王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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賞金稼ぎ部(ハンティング・クラブ)編

プロローグ:王女様と私

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率直に言おう。私はこの世界の人間では無い。
だが、この言葉尻だけを捉えて勘違いする人間もいるだろうから、この場においては敢えて、宇宙人とは違うとだけ説明しておこう。では、何者かと尋ねられたらのならば、返す言葉は一つだけである。
私は問い掛けられた人物には『転生者』であると胸を張って答えようではないか。
私はかつてはここに類似した世界で平凡な人間としてそれなりの一生を懸命に生きていたのだが、不運な事故によって死亡し、それを哀れに感じた神が私をこの世界に生まれ変わらせたのだった。
さて、私が神によって新たに産み落とされた世界だが、この世界は私どうやら、私のかつて生きていた世界とは瓜二つのようなのだが、歳を重ねていき、様々な事を学ぶうちに、大陸の名称や形、その人類史は私がかつて過ごしていた世界とは大きく異なる事を知った。
そして、その中で最も異なる点を挙げろというのならば、それは『魔法』の存在である。この世界は貴族のみならず平民でも魔法を使役でき、尚且つその関係はかつての我々が後世に伝えていた一方が一方を搾取する関係ではなく、『魔法』という対等な存在を通して、貴族と平民との結び付きの強い世界であった。
無論、私は生まれてこの方、私の住んでいる大陸を四分する一つの王国でしか過ごしていないので、各国では異なるのかもしれない。
だが、少なくとも、私は『魔法』というものが全てを変えてしまった世界だと思っている。
文化レベルは地球でいう所の19世紀の後半レベル、西部開拓も終わりを告げた頃の文化とほぼ同等程度であろうか。
だが、私の生きてきた世界と大きく異なるのはこの世界には魔法という存在がある事が大きいだろう。
魔法と科学の力が同時に発展したためか、国王やその他の国のトップの住むような大きな街では電車が走っているらしいし、噂によれば、各国は極秘裏に科学開発を進めているとも聞く。
要するに、西部劇と魔法アクションをハイブリッドさせたような奇妙な世界に生み落とされた私に与えられた名前は『ピーター』と言う。
私は王家の執事職を代々担うパンサー家の人間の家に生まれ、生まれた時からあるお方の側にお仕えするように教えられ、実際には物心の付く年齢に相当する歳には既に王女様の双子の姉の面倒を見させてもらっていた。
その双子の姉というのは他でも無い。民衆の羨む美貌と誰もがすれ違う様に二度見してしまうほどの大きな胸を持つあのお方。この街に引っ越してきた有力貴族の娘、ウェンディである。
私は生まれた時から義務付けられたお世話をさせて頂くために、私は美しい顔をした15歳の少女の持つグラスの中に上等の赤ワインを注ぐ。
私は側の書斎でこの国の成り立ちの書かれた本を読む王女の前にワインを差し上げる。
ワインを差し出された王女様はワインを受け取ると、何の躊躇いもなくグイッと飲み干す。
私は一気に王女様が飲み干されたワインを回収し、キッチンの方へと戻らせて頂く。
そして、王女様が本に夢中になり、喉が乾く前にワインを入れ直すのだ。
長い銀色の髪を靡かせ、黒色のロングスカートのドレスをお召しになった王女様の姿は魅力的であった。
まさしく、彼女こそが王に相応しいというべき風録であった。
そんな事を考えながら、私はあのお方が口にするであろうワインを注いでいく。
と、私がそのようなくだらない事を考えていると、王女様がワインをグラスを宙に浮かし、左右に揺らして、お代わりを催促していた。
私は慌ててワイングラスに代わりのワインを入れて代わりのお酒をお持ちする。
人によってはに仕えるなんて不幸だと私を嘲笑う人間もいる。現に、彼女が制服の右胸に付けている杖の無い金色に光るバッジがその証拠だという人間もいる。
だが、私はその事を不幸だとは思わない。あのお方は王家を追放されたとは言え、私が幼少期から使える事を運命付けられた王女である事には違いないのだから。あの高貴なるお方に仕えられるかと思うと胸が高鳴るのは私だけだろうか。
私はドクドクと唸る心臓を抑えながら、私の仕えるべきお嬢様の元へと向かう。












私の名前はウェンディ・スペンサー。
スペンサーという苗字の示す通り、王国に名を連ねる有力な貴族の一員であり、私はその家の令嬢とされている。
だが、それは表向きの私の経歴と肩書きに過ぎない。
なぜなら、私は王家の第二王女にして、現王国の第一王女のシンディ王女の実の姉であるのだから。
私が王国の王女の姉であるというのはあの子は私がたまに王宮をこっそりと訪れると、とても喜んでくれる事や幼い頃から私に仕える事を決められていた執事の男の約束が果たされている事などがそれらの証だと思っている。
だが、王家の人々や家臣達が私の事を疎ましく思っているのは事実である。
理由は簡単。私が基礎魔法の使えない落ちこぼれだと言われているからだ。
基礎魔法というのはこの世界に存在する四大系統の魔法を覚える際の基礎となる簡単な魔法の事を言い、これは貴族階級ならば誰でも使えるようになる簡単な魔法の事だ。
だが、私は自然、幻術、空間操作、肉体操作からなるどの系統の魔法の基礎魔法もとうとう十五の歳になるまで、使用する事が出来ず、私は幼い頃から仕える約束をされていた執事と共に王宮から放逐され、王位継承権を失ったのであった。
そのため、私は表向きは王家とは関係の無い一族であるとされているが、それでも、私は王女であるという事実は例え、王家がカルテを書き換えて、出生の秘密をねじ曲げようとも、私を一貴族の娘として追放しようとしても、変わりようのない不変の事実である事は間違い無いのだ。
その証拠は私がありとあらゆる武器を生成する魔法を使えるという事、そして、一度だけであるが、相手から魔法を奪い、その魔法を自分のものとして一度だけ使用できるという事、かつて、このウィンストン・セイライムに王国を築いた始祖リチャード・ストレイカーに並ぶ〈ガンスリンガー銃使い〉だと擬えられ、父王から称賛された事がその証拠だと言えるだろう。
それでも、姉が妹に劣るという事実は王国の外聞に関わるのだろう。
国王夫妻、私の実の両親は私を追い出す事に微塵の躊躇いも見せなかった。
私に新しく用意された屋敷は彼らなりの温情のつもりであったのだろう。この国のいや、この国の大陸の中では平均よりも高く高価な家が用意された。
実際に外を歩けば、私の屋敷の大きさはこの辺り家々の中では〈イレギュラー異質〉と言えるだろう。
不審者の侵入を防ぐべく、周りに張り巡らされた巨大な鉄の柵。
柵をくぐると現れるのは女神の象られた噴水に、青く広がり、太陽の輝きを眩しく放つ芝生。
芝生の端には何頭かの上等な馬が用意された馬小屋。
これらは全て国王陛下からの恩恵によって与えられた物である。
加えて、私は貴族として王立魔法学院への入学を許された。
授業料やその他諸々の経費は全て王室の私財から出されるらしい。
そこまでしてくれなくとも思ったが、文句を言う事でもないので、私は大人しく受け取っておく。
そんな事を考えていると、ワイングラスが空になっている事に気が付く。
私はワイングラスを揺らし、幼い頃からの執事にワインの催促を促す。
ピーターなる執事は幼い頃からの付き合いであり、同時に私の執事でもあった。
黒い髪に大きくて立派な筋肉質の体型。
私が王族でなければ彼に惚れていたかもしれない。それ程、立派な男であった。
だが、彼はあくまでも私の執事であるので、私は質実に対する主人の態度で接する。
執事の男は丁寧に頭を下げて、私にグラスを渡す。
グラスを受け取ると、私は乾いた喉を潤すべく、先程と同様に一気に飲み干す。
その後、私は彼に下がり、休むように指示を出すと、もう一度本を開く。
歴史の本を開くと、私は明日から学ぶ筈の勉強の事が頭に思い浮かぶ。
通常の勉強であるのならば、問題は無いが、問題は魔法の実技授業の方だ。
基礎魔法が出来ていない事を皮肉られる自分の様を考えると、私は自然と口から息が漏れている事に気が付く。
だが、まぁせいぜい頑張ってやろう。
私はそんな事を考えながら、寝室へと向かって行く。
寝室に向かうにあたり、私はそれまで着ていた学校の制服を意味する黒色のロングスカートのドレスを脱ぎ、寝る際に着用するネクジェに着替え終わると、改めて〈劣等生〉という烙印の証明であるバッジを眺める。
本来ならば、星型の胸バッジには銃と魔法使いの杖の両方が描かれていなければいけないのに、このバッジには銃しか描かれていない。
お前は魔法を使えないという劣等生の証明書である。
あの男は気にしていないという様子であるが、私は違う。
今に見ていろ、と私は杖の描かれていないバッジを握りながら、例の学校でのし上がる事を決めた。
『出来損ない』というレッテルを必ず、あの学校から剥ぎ取ってやろう、と。
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