王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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賞金稼ぎ部(ハンティング・クラブ)編

私のこれからのSchool Days

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友人が学校近くの下宿に帰るのを見届けると、私はそのまま馬に乗って何処に寄るでもなく、真っ直ぐに屋敷へと戻っていく。
私が門の前で待っていると、丁度、庭で仕事をしていたと思われる執事のピーターが頑丈に閉ざされた門を開く。
私は馬から降りると、馬をピーターに渡し、大きな門をくぐり、屋敷の中に入っていく。
ピーターが馬を屋敷の庭の端に用意されている馬小屋に繋いでいる間は私自身の手で着替えなければならない。
制服から私服の藍色のドレスに着替える折に、寝室の鏡台の上にバッジを置き、服を着替えて昼食を摂ろうとした時だ。
勢い良く何度もノックの音が聞こえ、私は彼が呼んでいる事に気が付く。
私は扉を開いて、ピーターを招き入れ、何用なのかを問う。
ピーターは呼吸を整えてから、真剣な表情で私に向き直って、
「シンディ王女殿下の御到着でございます。お姉様の入学祝いをとの事で……既に一階のリビングルームにてお待ち頂いておりますので、早くに向かった方がよろしいのでは?」
一人焦ったような様子のピーターを無視して、私は優雅にのんびりとした様子でリビングルームへと降りていく。
自分の寝室を開けても、尚、二階には十五の部屋とそこに行くまでの廊下が存在しており、私の寝室は十五の部屋のうち、一番階段から近い位置にある。
なので、私は大きな玄関を上がった先に存在する分厚くて柔らかいカーペットの敷かれた階段を登り下りして、なので、早いタイミングでONとOFFを完全に入れ替えし、私は自宅で過ごす事ができるし、来客とあれば制服ではなく、私服のドレス姿という格好で出迎える事が出来る。
実に合理的なシステムだと言っても良いだろう。
私が階段を降り、階段から左に向かって、普段は私が過ごすリビングルームに向かう。
リビングルームはキッチンと併設されており、そのキッチンでいつもピーターは食事や食後のワインの世話をしてくれたりする訳なのだ。
そのリビングルームにはいつも、私が座る長椅子に腰掛けた私と瓜二つの顔を持つ短い銀色の髪の少女が笑顔で手を振って出迎えていた。背も形も殆ど同じであったのだが、双子を区別する明確な印があった。それは、私の胸が世間一般では大きく注目を集めるという点に対し、妹の胸は全く無いという評価をかろうじて免れる程度の大きさ、つまり、服の上からかろうじて膨らんでいるのが見える程度の大きさなのだ。
だが、妹はそんな自身の体型にコンプレックスを持つ事も無く、柔らかい笑顔を浮かべて長椅子の上に座っていた。
その椅子の側には彼女の従者と思われる地味な色のロングスカートのドレスを着た二人の若い女性が箱のようなものを持って控えて立っている。
私はそれを見届けると何も言う事なく、彼女の目の前の長椅子に腰を下ろす。
私が長椅子に腰を掛けるのと同時に、妹が祝福の言葉を述べる。
「入学おめでとうございます!お姉様!本日はお姉様のために祝いを持って参りましたの」
そう言うと、彼女はパンパンと手を叩き、お付きの女性を自身の元に寄せて、何やら耳打ちする。
主人からの命令を受けた女性は黙々とした表情で箱を開き、私にその箱の中身を見せ付けた。
それを見た途端に私は思わず言葉が出てしまっている事に気が付く。
「何なのこれは?」
「お姉様!お気付きになられましたか!?これは私が陛下から頂いた小遣いを注ぎ込んで専門の銃職人の方に作って頂いた黄金の回転式拳銃ですわ!」
私は手を伸ばして、その拳銃を拝借する。確かに、眩いばかりの光を放ち、見る人が見れば自分は黄金郷にでも迷い込んだかのような錯覚を与えるかもしれない。銃をベースにしているだけあり、もし、愚鈍な人間がこれを手にした場合には自らを強くなったと思わせるような効果もあるのかもしれない。
だが、私は黄金の玩具を持つつもりは無いし、それで強くなった錯覚を起こす気も無い。
私は妹に気持ちだけは受け取ると言って、黄金の回転式拳銃を拒否した。
妹は私の返答を聞くと、しょげた表情を見せたものの、もう一度手を叩いて従者を呼び寄せ、私に中に入っている拳銃を見せた。
妹の説明によるとその銃は最近、『バームレリア』大陸の西側を制し、多くの属州を持ち、大国を支配する強大な帝国、ルーア帝国にて新規発売された拳銃であり、その噂を見聞した日には私に使って欲しいという思いを爆発させ、わざわざ帝国から一丁輸入させたのだと聞く。
銃口の下に存在する弾倉は固定弾倉と呼ばれるものらしく、回転式の拳銃やこの国や大陸においては一部で用いられている着脱弾倉式の物よりも精度は優れているという。
私は加えて、飲み込まれそうになる程の素晴らしいデザインに魅せられ、加えて実用的だという事もあり、その拳銃はもらっておく事にした。
すると、ようやく贈り物を受け取ってくれた喜びからか、彼女は明るい顔を浮かべていた。
その様子を見て、私も優しく微笑む。
だが、ピーターや二人の侍女は私と妹の間に存在するどうしようもないジレンマを見抜いていたのかもしれない。
そう、基礎魔法を使えないというどうしようもない事実、実の姉妹であろうとも、隔てられ、両親に贔屓にされずに過ごすという事実の事を……。
私は妹が好きだし、妹も私を慕っているが、この事だけはどうしようもないと割り切っているのだと思う。
だからこそ、妹はたまに理由を付けて、私の屋敷を訪れ、数少ない姉妹の面会を楽しんでいるのでは無いのだろうか。
私にはそんな気がしてならない。
だが、とにかく楽しい一日であったのは間違いない。
あれから、互いに昼食を取り合い、時間を過ぎるのも忘れて話していた私達姉妹に時間の経過を指摘したのは侍女の二人であった。
二人はシンディの耳に時間を告げ、窓から見える景色を指差す。
夕陽が西の方に差し掛かっている事から、どうやら夕方という時間になっているらしい。
帰るのを嫌がっていた妹を諭し、執事のピーターと共に彼女が馬車に乗るのを確認し、家の門から去るのを見届けてから、私は屋敷へと戻っていく。
屋敷の門はいつも通り、ピーターが施錠してくれるであろうから、問題は無いだろう。
私は屋敷に戻り、寝室に向かうと、着替える際に置いてあった鞄から明日からの学校のスケジュールの書かれた紙を取り出して、予定を見て思わず苦笑してしまう。
なんと、落ちこぼれと判断されたE~Gの六時間ほどのクラスの授業の半分がが体力作りと魔法の実技練習授業と射撃授業に当てられるらしい。
それに、専門の体操服もあるとはいえ、着替えるのも女子は教室、男子は廊下という有様である。
こんな所にまで、不平等の風が来ているのかと私は音も立てずに笑う。
そして、紙を鞄に仕舞い直すと、不快な気分を治すために、一階のリビングルームへと向かう。
ピーターにワインを入れて貰えば、気分も少しは収まるだろう。
そんな事を考えながら、私は階段を降りていくのだった。
そして、私は妹の残り香を残す長椅子の上に座り、去った妹を名残惜しく思いながら、執事の用意したワインを飲み干す。
その時のワインはとても苦かった事を覚えている。
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