王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

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賞金稼ぎ部(ハンティング・クラブ)編

賞金稼ぎ部への入部許可証

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「結論から言うわ、少し無茶をし過ぎよ」
両腕を組みながら、私とケネス、マーティの三人に説教を行っているのは賞金稼ぎ部の会長であり、私達は街に常設されている王国軍保安局の一室にて、賞金を受け取りに来た所を部長に待ち伏せされ、説教を受けていたのであった。
椅子の上に座って、調書をとっている保安委員のバッジを付けた青色の制服を着た男も思わずだれている程、エマ・ダーリング部長は私達三人に長く説教を行っているのだ。
どうして、こう長くなったのかと言えば、説教を喰らい続ける中で、私が毒婦メアリーの件で彼女に楯突いたのがいけなかったらしい。
反省していないと見なされた私は他の二人と共に説教を喰らわされ続け、結果として既に陽が西に傾いても尚、説教を喰らわせられ続けているのであった。
だが、エマ部長も自身が長く説教を続け過ぎた事を自覚したのか、最後に大きく溜め息を吐いて、側で調書をとっていた制服の男に毒婦メアリーを仕留めた報酬を渡すように言う。
男は渋々机の引き出しからグリップで止められた百枚の王国ドル紙幣を机の上に置く。
「そらよ。それ持ってきな。そして、早く帰ってくれ」
うんざりした様子で手を払う男に何かくるものがあったのだろう。
エマ部長は無言で彼に近付いたが、私が彼に近付く前に部長の腕を止める事により防ぐ。
部長は文句を言う事も出来ずに、私と仲間三人に引きづられて部屋を出ていく。
一見すると、この王国では二階建ての洋館を思わせる保安局の建物は市庁舎に並ぶ重要な建物の一つとして位置付けられており、当然建物内も広く、初見では迷子になってしまう程かもしれない。
実際、二階のこの部屋に辿り着くのも私は苦労したものだ。
その事を思い返しながら、部長を引き摺り、廊下を歩いていると、ふと私の目の前に人の写真の下に一定の額を示す文字の描かれたポスターとそれを貼る掲示板の存在に気が付く。
それを見ると、私は歩みをやめて、立ち止まってしまう。
それを見たのか、部長は先程まで引き摺られていたとは思えない程、早く立ち上がり、私の右肩の上に可愛らしい小さな首を乗せて、
「ほぅ、賞金首の写真か……この国に従わない無法者や反政府主義者アナーキストどものリーダーの写真だな」
罪を犯した無法者、国王制打倒を叫ぶいわゆる反政府主義者の集団はこの国では最も敬遠されるべき存在であり、歴代の王はそのどちらにも断固たる処遇を取っていた事で有名である。
そして、部長は現在、リストに挙げられている主な賞金首の名前を読み上げていく。
「今、この中に載っている中で著名なのと言えば〈早撃ち〉のビリー・ベクターに、〈強盗夫人〉ヒルトン・バートリー。そして、王国北部に務めていたパスカル保安局長を殺害し、北部に混乱を与えた〈革命派の貴公子〉クリストファー・サンフォードなどか……」
「そうそうたる面子ですね……」
私がリストに載っている面々を眺めていると、ふと一つの賞金首に目がいく。
明らかにこの凶悪な連中の中では浮いている存在、何も描かれていない真っ黒なポスター。
だが、そのポスターはその中に載っているどの賞金首よりも額が高い事に気が付く。気になった私は部長に指摘をし、問題のポスターを人差し指で指差す。
「あれ、部長、どうしてこのポスターには写真が貼られていないんですか?」
「あぁ、そうだな、それはーー」
「それはね、その賞金首の顔写真がまだ割れていないからよ。無用の混乱を巻き起こし、王は躍起になってそれを探しているけれども、手掛かりは未だにゼロ。だから、最高金額の賞金首なのに、写真が貼られていないの」
その賞金首の解説を聞いて、部長と私は同時に背後に振り向く。
そこにはオレンジの髪をした生徒会会長が微笑を浮かべて立っていた。
「ご機嫌よう。〈杖無し〉のガンマンさん……あら、この場合は〈非マジシャンガンマン〉と呼ぶべきかな?」
悪意に満ちた台詞に私の眉間に青筋が寄っていくような気がした。同時に部長も私の肩からその頭を離して、険しい顔を生徒会の会長に向けていた。
「生徒会会長のきみがどうして保安局に?」
「いやだなぁ、生徒会会長だから、ここにいるんじゃあない?私もメアリーの立てこもり事件の現場に居たから、さっきまで事情聴取だったのをお忘れ、賞金稼ぎ部部長、エマ・ダーリングさん」
エマ部長は拳を握り締めながら、長いオレンジの髪の生徒を睨む。
だが、オレンジ髪の生徒会長はケタケタと笑いながら、その髪を大雑把に払って、踵を返して軽快なステップを踏みながらその場を去っていく。
「くそ、あの女……昔から何を考えているのかよく分からない奴だったけれども、今日は一段と気味が悪いな」
忌々しけに呟くエマ部長の発した言葉が気になったのだろう。
先程まで背後で私達のやり取りを見守っていたマーティが沈黙を崩して、質問した。
「エマ部長とあの生徒会長は同じクラスだったんですか?」
「うん、けれどね、生徒会と賞金稼ぎ部は仲が悪い事で有名だろ?加えて、あの女と初めて会った時から私は噛み合わないと本能的に察していたんだ」
「なるほど、すっごく納得できる動機です」
マーティは困惑した笑みを浮かべながら言っていた。
それにつられてエマ部長も困ったように笑う。
そして、私達三人に対し三枚の何も書かれていない紙を懐から差し出す。
「合格だ。キミたち三人で毒婦メアリーを討った功績を認めて、我が部活賞金稼ぎ部ハンティング・クラブへの入部を許可しよう。明日、この紙にきみ達三人の名前を書いて、部室の方に持ってきたまえ」
そう言うと、エマ部長はその場から立ち去ろうとするが、突如、保安局の入り口で悲鳴が聞こえて、危機を察した私たちは銃を構えて一目散に廊下を駆け、階段を降りて、玄関に辿り着く。
だが、その光景を見て私と三人は思わず絶句してしまう。
なぜなら、私たち四人並びに保安局に勤めており、玄関に駆け付けた局員の前に映っていたのは口にするのも及ばられる様な残酷な光景が広がっていたからだ。
首を飛ばされ、バラバラにされた男性の刺殺死体が入り口の前に放置されており、この光景を見た人の中には気絶したり、中にあるものを戻したりしている人もいた。
だが、私は目を逸らす事なく、バラバラになり、心臓部にナイフを突き立てられた無残な死体の側に落ちていたと思われる一枚の紙を拾い上げる。
「何を書いているのかしら?」
私が紙を広げると、そこにはこう記されていた。
『これはゲームの始まりだ。間抜けな警察ども。オレを逮捕するのが早いか、オレが王国中を恐怖の底に落とすのが早いか、勝負だ。
親愛なるウィリアム・ウィルソンより』
その記された内容を見て、私は嫌悪感というよりも人を人とも思わないこの匿名の犯人に向かって怒りで両肩を震わせていく。
私の中の情熱の炎がウィリアム・ウィルソンなる男の逮捕もしくは射殺という目標に向かって燃えていく事を実感した。
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