王立魔法学院の落第生〜王宮を追放されし、王女の双子の姉、その弱い力で世界を変える〜

アンジェロ岩井

文字の大きさ
164 / 211
ホープ・オブ・マジシャンスクール編

学院内討論会の結末に子羊は苦い夢を見た

しおりを挟む
結局、あれ以来ケネスとは部活以外ではあまりに会話を挟めないままただ日数を重ねていった。
あの後、部室には生徒会執行委員の次には部活連の頭目が現れたのだが、シャストル部長が彼らを上手くあしらう事により、事なき事を得た。
だが、一番の気がかりは彼らではなく、あの日以来、賞金稼ぎ部に姿を見せないオリビア・モンドラゴンだ。
時たまにマーティやクラリスが私に彼女が新聞部に出入りする様子を教えてくれるのだが、正直に言えば私にとってはどうでも良い話だ。彼女が怒りに任せて新聞部である事ない事を喚き散らしたとしても無視すれば良いだけの話だ。
そう言って報告に訪れた二人を一蹴した。この時の私の中に夏頃にこの国を訪れる大陸の向こうの王女の事で頭がいっぱいだったのが、結果としてその時の私の対応は失敗だと評しても良いだろう。新聞部のネガティブキャンペーンは成功に終わってしまったのだ。
現在の学生たちの中では賞金稼ぎ部を廃部に追い込んだり、来年度からの賞金稼ぎ部の活動に口を挟むつもりはないが、自分たちの弟や妹、或いはそれよりももっと下の世代にも賞金稼ぎ部へのヘイトを植え付けていくという事を明確に表した。つまり、現在の我々の活動にはあまり支障はきたさないが、未来の賞金稼ぎ部の部活動には大きな影響をきたすという事らしい。
どうやら、新聞部の学院内新聞に影響された生徒の言葉によれば、私たちは若い世代にとって賞金稼ぎ部は憎しみの的として伝えられていくのだそうだ。
勿論、それは困ると現在の一年生や私たち二年生を中心とした反論グループが結成され、新聞部と講堂で公開討論を行う事になった。
普段はゴールドマン校長の演説が行われる雛壇を借り切っての討論会は各々十人ずつが台の背後に立って隣の台の相手と調停役の生徒会長の台を挟んで議論を交わし合うという実にシンプルなものであった。
台の前に喋る生徒が立てば、その背後に九人の代理人が居て、台の上の誰か一人が言葉に詰まれば、その人物の代わりに台の上に立って相手と討論を交わし続けるというものだ。
議論の時間は放課後の時間を使用しての三時間。
私たちの未来の賞金稼ぎ部部員のためにも、時間内に討論で決着を付けて、新聞部の
例のムーン部長率いる新聞部は手強く、多くの生徒たちの関心を買ったのだが、こちらも負けじと賞金稼ぎ部の功績並びに射殺の正当性を訴えていく。
燃えるような赤い髪にニキビ面という新人という印象を受けやすいジェイミー・フリークソンなる青年が熱弁を振るうが、彼に同じ一年生の生徒だと思われる丸い眼鏡をかけた少女で反論を試みた。
「お待ち下さい……あなたは賞金稼ぎ部の最大の功績として少し前にこの近くに現れたテロリストのエリアーナの射殺を挙げていますが、それはスペンサー氏が個人的に仕留めたものでは?」
彼女は眼鏡を人差し指で上げて彼の主張に対して突っ込む。
ジェイミーは答えられずに詰まったので、彼の代わりに長い緑色の髪の愛らしい顔の少女が姿を表して反論を加えていく。
「1ーFクラスのパトリシア・アドラーです。新聞部の主張に対して反論を申し上げます」
彼女は居住まいを正した後に彼女の主張に対して真っ向からの反論を試みていく。
それは直前に学院を保安委員の人間が訪れており、その誘いに応じ賞金稼ぎ部として彼女を捕まえると決意した後に彼女が襲撃を行なってきており、それを撃ち殺したのでこれは賞金稼ぎ部の活動として保安医委員の方でも受理されたというものだ。
私は彼女の議論の強さに思わず舌を巻く。普段は部室で楽しそうにお喋りをしている印象とボッーとした印象が強かかったためか、彼女がこれ程までに議論に強いとは予想外である。
次に新聞部は別の部員を出してきたのだが、これも彼女が論破。
彼女は新聞部の記事の偏りを指摘し、事実との相違点を挙げていく。
少し前の火炎瓶男の話であったが、これには大きな誇張が入っていた。何でも、この件は私が手柄を奪うために、オリビアが追い詰めていた賞金首を横取りにしたという筋書きになっていたらしい。
オリビアの証言を鵜呑みにして書いたために、この記事の偏りには気が付かなかったらしい。
講堂に集まっていた生徒からオリビアを呼べという野次が飛び、議論台の後列に立っていたオリビアが現れて、パトリシアに反論を試みるが、その時の私とケネスの話で証言が食い違っている事と仮に横から手柄を奪うために入ってきたのだと仮定すると、撃たれた瓶の位置が真逆だと有望な一年生は突き付けていく。
オリビアも反論が出来なくなった所で中央の台で黙って意見を聞いていた生徒会長が懐から懐中時計を取り出し、三時間の経過を告げて議論の終了を告げた。
集まった生徒たちはヒソヒソと噂をし合って、今日の議論の結果を話し合っていく。
オリビアはその様子を見て拳を握り締めながら、強い視線で私を睨む。
「よくも……よくもやってくれたわね。今回の討論で新聞部の信頼が損なわれた上に、あんた達への信頼も戻ったじゃあない……」
雛壇の上で静かな声で私たちを弾劾する彼女だったが、私たちは誰も目もくれずに檀の下へと降りていく。
仲間である筈の新聞部にまで声を掛けられずに置いていかれていく姿が哀れに感じられた。
すっかり日も沈んだ講堂の中で私はたった一人、夜の闇の中で佇む彼女と向き合う。
「……ッ!私は納得がいかなかったッ!あなた達がッ!いや、騎士である父の様なやり方がッ!凶悪犯だって人間……だから、私は人道愛ヒューマニズム通じると思って……」
「……あなたがそれを信じるのは自由よ。けれど、覚えておいてこの世の中には決して話し合いなんて通じない凶悪犯だっている事を……」
私の言葉を聞いて彼女がハッと息を飲んだ事に気が付く。
「外道に人権なんてない。それが私のスタンスだから、あなたや新聞部に幾ら責められても、これだけは変えようとは思わないわ」
私はそう言って彼女を放って帰ろうとしたのだが、彼女は壇から降りようとする私を呼び止めて、
「待って!厚かましいお願いだけれども聞いてくれないかしら!?」
「何なの?」
「私は夏休みに護衛を担当する事になってるの!この国の王女、シンディ王女と大陸のマルセラ王女の!!その時に二人を守れるのかどうか教えて欲しくてーー」
私は彼女のこの言葉と先程、彼女が発した「騎士」という単語で少し前に妹が自身とマルセラ王女の護衛として使う例の少女だと確信した。
まさか、あれ程、突っ掛かってきた少女がそうだとは思いもしなかった。
私はそんな迷える子羊にたった一つの確実なアドバイスを教えた。
「それはあなた次第。あなたの信じる方法で二人を守りなさい」
そう言って私は振り返る事なく講堂を去っていく。
少し手厳しいかもしれないが、これが彼女のためだ。
立派な王国騎士になるための……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

処理中です...