隙を突かれて殺された伝説の聖女騎士と劣等生の夫、共に手を取り、革命を起こす!

アンジェロ岩井

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入学編

魔銃士育成学園の心得

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国立魔銃士学園。それは暗黒時代から存在する国家で魔法を扱う銃士を育成するための学園の名前。太古の世、竜暦元年に伝説の竜を倒した事を機に、フリードリヒ王が権立したのが始まりだと言われている。
時代により、王立だったり、帝立だったりと冠は違うが、それでも変わらないのは『国立魔銃士学園』という名前。
この学園で多くの魔銃士を目指す少年少女が泣き、笑い、怒り、そして様々な物語を作り上げてきたのだ。
その建物はやはり、その重厚な歴史に相応しく荘厳な建物で、見上げればそれは太古の巨人が横たわっているかの様に大きい。

一千年の眠りから解き放たれた女騎士もこれには感嘆したらしい。「ほぅ」と唸る声がジードの耳にも聞こえた。
ジードは女騎士が外から見える校舎の眺めを長い時間、楽しませた後に懐から一枚のカードを取り出す。

すると、彼が懐から出したカードは鳥の様に羽ばたいて校舎へと飛んでいく。
このカードは平たく言えば鍵。厳重に閉ざされた魔法学園とそれ以外の人が住まう街とを仕切る鍵なのである。
同時にそれまで街と校舎とを仕切っていた大きな黒くて冷たい門が油の切れかけた音を立てて開いていく。

ジードは物珍しそうに校舎を見物する彼女を連れ、校舎へと手招きする。
女騎士はうっかりしていたらしく、「おおっと」と呟いて慌ててジードの後をかけていく。
だが、一千年の眠りから覚めた女騎士が珍しがるのも無理はあるまい。と、いうのも門から校舎へと繋がる一本道は竜暦が用いられる以前の暗黒時代には見られなかったレンガが敷き詰められているし、庭には噴水がある。魔法ではなく化学で水を押し上げているなど彼女には理解できまい。

だが、そんな素晴らしい庭を眺めていても、やがては通路は分岐して十本に分かれていく。
校門から続く門はそのまま真っ直ぐに歩いていけば、校舎へと突き当たる事になるが、それぞれ分岐した場所を辿ると怪物を閉じ込めておく小屋や、安全のため、普段は生徒のための練習用の銃を置いてある武器庫。そして、年少組と呼ばれるごく僅かな幼い生徒のために用意された子供部屋などがあるが、通常の寮は四つに分かれている。
一つ目は巨人を意味する『ティータニアン』二つ目は英雄を意味する『ヘルト』三つ目は賢者を意味する『クルーガー』そして四つ目、ジードの所属する寮にして落ちこぼれの巣窟を集めたと言われる『リントヴルム』名前自体は竜に擬えられる素晴らしいものなのだが、いかせん名前負けしている。何せ、学園では〈獲物〉と称されるクラスの面々が集まるのだから、それが嫌で彼は寮ではなくアパートでの一人暮らしを選んだのだが、そこさえも他の寮に所属する一部の柄の悪いエリート連中が目を付けて溜まり場にしてしまう。

寮に泊まるのが自由意志であった事に当初は感謝したが、今となっては後悔の念しか湧かない。少なくとも、寮に泊まっていれば、自宅が溜まり場にされる事はなかったであろうから。
ジードは取り敢えず、アパートに泊めるのはよしとしないのと編入試験との相談のために学校に連れて来たのだが、どうして良いものかと迷っていた。
すると、不意にリントヴルムへと繋がる道に設置された街灯が一斉に光を照らしていく。

冷や汗をかくジードと自動的に光の灯される街灯を見て物珍しそうに見つめるルイーダとは対照的に二人の前に躍り出た人物はどうも機嫌が悪いらしく、口元を一文字に結び、両腕を組みながら向かって来た。

「リントヴルム監督生のカール・ローゼスだ。《魔法道具マジックアイテム》から連絡を受けてここにやって来た。だが、ジード。あんたは寮所属だが、そこで暮らしてはいなかったな?寮で暮らしていなければ、夜分の外出など貴様の責任……私が出る幕ではないと思うのだが」

「そ、そりゃあそうだけど、でも、オレが今回あんたを呼んだのは夜遅くの外出のために反省文を書くためじゃあない。あんたに編入試験の事を聞きたかったんだ」

「編入試験だと?」

それまでの立腹した態度を収め、彼はしみどもろな態度を取るジードを見つめる。
そして、暫くの後にジードではなくその隣の女騎士を見つめて「あぁ」と納得した様な声を上げる。

「その女がか?」

監督生は訝しげな目を向ける。だが、彼女は無視して話を続けていく。

「あぁ、私は翌日にでもこの学園に編入するつもりだ。何せ、私はこの男の婚約者なのだからな」

そう言って彼女はこれ見よがしにジードに自分の腕を交わらせて、彼女自身の豊満とも言える胸を擦り寄せていく。
ジードは怒っていたためか、はたまた恥ずかしくなったからか、顔を真っ赤にして何か言葉を口にしているが、彼女は澄ました顔で無視をして監督生に向かって問う。

「どうだ?私を入れてはくれぬか?そんじょそこらの優等生どもよりいい働きを貴様に見せてくれるぞ」

と、ここで監督生の男の顔が変わる。表情を青く染め上げて慌てて辺りを見渡すと、唇の上に人差し指を当てて、

「シーッ!黙って!あんたが何者かは知らないけれど、そんな事をあいつらが知られたらーー」

「おい、誰に知られたらって?」

そこに三人の人影が見える。背後を振り返ると胸元に丘の上で吠え立てる犬を模したバッジを飾った三人の男の姿。
その中のリーダー格と思われる男がポケットに手を突っ込みながら問い掛ける。

「テメェ!誰を倒すって?」

「い、いえ、そんな事は……」

「お前たちの事だよ。聞こえぬのならば何度でも言ってやろう」

女騎士は両腕を組みながら、澄ました顔で三人組の男を見下ろす。
その態度が癪に触ったのか、三人の男たちは腰に下げていた杖を取り出して女騎士に向けていく。

「もう許さねぇよ。オレの方でちょいとお仕置きしてやるよ」

男が勢いよく振り上げようとした時だ。彼女は地面を蹴ると同時に腰に下げていた剣を抜いて男たちの前に振り上げていく。
普通に剣を振り上げるだけならば男たちはせせら笑ったに違いない。
だが、女騎士が駆けるのと同時に剣から光を生じさせてたちまちのうちに三人の男たちを地面の上に打ち倒していく。
ジードも監督生の男も何が起こったのか理解できなかった。彼らの前にはただ、彼女の剣から光が生じるのと同時に三人の男たちが倒れた様に見えたのだから。

だが、種を明かせば話は簡単。彼女が両手に握った剣から小さな天使が現れて彼女が剣を振り上げる寸前に男たちの口の中に入り込み、男たちの意識を奪った後に地面の上に倒したに過ぎないのだ。
女騎士は得意げな顔を浮かべて剣を鞘の中に仕舞う。
呆然とした顔の二人を置いて。
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