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追跡編
殺人鬼との決着
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ルイーダとしてはここで決着を付けるつもりである。
もう、これ以上、先に伸ばして、犠牲者を出すのが嫌だったのだ。
超高速空間の中で互いに剣と槍とを飛ばし、首を狙っていく。
その戦いの様子はまさしく死闘。槍と剣身が絡み合い、夜の街の中で大きな音を立てていく。
その間も彼女は狂ったように笑っていた。
ルイーダは剣を盾にして交わすものの、長い時間を戦っていたので、体全体に疲労が溜まっていたものか、両腕に痺れのようなものが生じていく。
いや、疲ればかりではない。戦う度についた擦り傷や刺し傷といった小さな傷の痛みが今になって響いてくるのだ。
その事を彼女に見透かされたのか、エルリカは槍を叩いて、右側面からルイーダを攻撃していく。
ルイーダはその槍を自らの剣を縦に構えると事で回避したが、彼女はあろう事か、槍を器用に動かし、剣の間を滑らせて、ルイーダの体を突こうと目論んでいた。
ルイーダは懸命に刃を動かして、最悪の事態を防いではいるものの、少しばかり手元が狂えば、あの槍は真っ直ぐに自分を突き刺すだろう。
その事は十分に理解できた。だからこそ、彼女は今、歯を食いしばっているのだろう。
エルリカはその様子がおかしいらしく、大きな声を上げながら、ルイーダに向かって問い掛ける。
「ねぇ、お姉様?もう限界がきたんじゃあないの?悪い事は言わないから、このまま私の『芸術品』になってくれませんか?お姉様は我が学園の英雄にして気高い女騎士……信じていたフリードリヒ王に裏切られた聖女様、こんなに素晴らしい芸術品はないんですもの!」
「お前が人を殺す動機がなんとなく理解できたよ。要するに、お前は満たしたいんだ。自分の中にある変な気持ちを」
「変な気持ち?お姉様にはわからないよ。私の芸術への思いと英雄への憧れの思いは」
落胆したような表情を見せる彼女に対し、ルイーダは大きな声で抗議の言葉を浴びせていく。
「……お前、やっぱり、頭がイカれてるよッ!」
怒りの感情で少しばかり疲労や傷のダメージを誤魔化せたのだろう。
剣を下から大きく突き上げて、槍ごとエルリカを跳ね飛ばす。
衝撃のためにエルリカは地面の上で尻餅を付いたらしい。勢いよく尻から地面の上に衝突するのが見えた。
衝突により、ダメージの生じた彼女に向かって、ルイーダは躊躇う事なく真上から剣を振りかぶっていく。
彼女は真上から迫る剣を見るのと同時に、初めて冷や汗を垂らしたが、すぐに先祖由来の槍を捨て、新たに生成した肉切り包丁を利用して、剣を防ぐ。
そして、そのまま剣ごとルイーダを弾いて、地面の上に投げられた彼女の首元にその刃を突き付け、もう片方の空いた手でルイーダの首の横の地面を触り、馬乗りの体勢を維持していく。
「私の勝ちだね。お姉様……」
「……まだ終わっていないぞ。貴様など怖くはない」
「アッハッハッ、お姉様、強がっちゃって、でも、ダメだよ。お姉様は私の芸術品になるんだから」
エルリカが肉切り包丁を逆手に持ち、ルイーダの顔に突き付けようとした時だ。
彼女は咄嗟にエルリカの利き手の手首を掴み抵抗を試みる。
エルリカは懸命にその手を動かそうとするが、効果はないらしい。
このままではルイーダを芸術品にはできない。
彼女の中での苛立ちが頂点に達した時だ。ルイーダは自らの頭をエルリカの顔にぶつけて、彼女の視界から一瞬ではあるものの、正常な景色を奪う。
そして、その一瞬はあまりにも大きかった。彼女はその時に顔をさするために、地面を支えていたもう片方の手を離してしまったのである。
ルイーダはすかさずにもう片方の手で彼女の離れた手を掴む。
そして、そのまま、勢いよくエルリカを後方へと跳ね飛ばし、地面の上へと起き上がっていく。
二本足での対等な勝負。エルリカは野獣のような呻き声を上げながら、肉切り包丁を捨て、先程、捨てたはずの石の槍を再び拾い上げて、エルリカと対峙していく。
再び、槍と剣による打ち合いが始まった。夜の街の広場に金属と石とが打ち合う音が響いているので、周りに住んでいる人たちは事情を知らなければ、その煩しさに抗議の言葉を述べにきていたかもしれない。
そんな事を考えていたためか、エルリカは自分の頬にルイーダの剣が掠めた事に気が付く。
それも、軽い傷ではない。かなり深い傷であり、下手をすれば、後になれば、傷跡として残ってしまうのではないだろうか。
エルリカは戦闘の最中であるのにも関わらず、頬を摩り、本当に傷が出たのかを確認していく。
「こ、これ……血だよね!?血だよね!?わ、私の顔に血がッ!ァァァァァァァァァァ~!!!」
そこから、彼女が狂うのは早かった。高速魔法を利用したかと思うと、肉切り包丁を滅茶苦茶に振り回しながら、訳の分からない言葉を上げて、ルイーダに向かっていく。
彼女は確かに美しい。童話のお姫様に例えられるほどの美顔だ。
だから、あんな直接的な傷を受けるのが我慢ならなかったのだろう。
それこそ、それまでの冷静さをかなぐり捨てる程に。
ルイーダはこの隙を逃す事なく、この怪物の首元へとその剣を飛ばす。
剣先が迸り、華麗な一閃を描いていく。
同時に、首元から噴水のように勢いよく赤黒い血が噴き出し、辺りを赤く染め上げていく。
ルイーダは剣を仕舞うと、信じられないと言わんばかりに目を見開いたまま事切れたエルリカに向かって吐き捨てた。
「……芸術品というのは見る人が素晴らしいと思うから、芸術品と称されるんだ。お前のアレは断じて、芸術品なんかじゃあない。その証拠にお前以外は誰も芸術だとは言わなかったじゃあないか」
彼女のその言葉が聞こえたかのように死体となった彼女はピクピクと動いていく。
だが、彼女からすればそんな事に関心を割いている暇などない。
彼女は背後で激闘を繰り広げている双子の騎士の救援へと向かう。
デニスの魔法は電気。電気を弾丸に纏わせての攻撃は勿論であるが、直接放つ事もできる。
加えて、炎や氷とかち合ったとしても、負けない程の力を誇っている。
彼が二人と互角に渡り合えているのもこの魔法のためである。
デニスは背後でエルリカが敗れたのを確認すると、背中を向けて、背後で剣を抜いて、こちらへと向かってくるルイーダに向かってその電流を向けていく。
ルイーダは竜の黒い炎を放って、デニスの電流を迎え撃ったかと思うと、そのまま剣を持って、それを真横に構えて、デニスへと向かう。
ルイーダは殺人鬼との決着を付けるのと同時に、武装警察隊との決着を付けるべく動いていく。
もう、これ以上、先に伸ばして、犠牲者を出すのが嫌だったのだ。
超高速空間の中で互いに剣と槍とを飛ばし、首を狙っていく。
その戦いの様子はまさしく死闘。槍と剣身が絡み合い、夜の街の中で大きな音を立てていく。
その間も彼女は狂ったように笑っていた。
ルイーダは剣を盾にして交わすものの、長い時間を戦っていたので、体全体に疲労が溜まっていたものか、両腕に痺れのようなものが生じていく。
いや、疲ればかりではない。戦う度についた擦り傷や刺し傷といった小さな傷の痛みが今になって響いてくるのだ。
その事を彼女に見透かされたのか、エルリカは槍を叩いて、右側面からルイーダを攻撃していく。
ルイーダはその槍を自らの剣を縦に構えると事で回避したが、彼女はあろう事か、槍を器用に動かし、剣の間を滑らせて、ルイーダの体を突こうと目論んでいた。
ルイーダは懸命に刃を動かして、最悪の事態を防いではいるものの、少しばかり手元が狂えば、あの槍は真っ直ぐに自分を突き刺すだろう。
その事は十分に理解できた。だからこそ、彼女は今、歯を食いしばっているのだろう。
エルリカはその様子がおかしいらしく、大きな声を上げながら、ルイーダに向かって問い掛ける。
「ねぇ、お姉様?もう限界がきたんじゃあないの?悪い事は言わないから、このまま私の『芸術品』になってくれませんか?お姉様は我が学園の英雄にして気高い女騎士……信じていたフリードリヒ王に裏切られた聖女様、こんなに素晴らしい芸術品はないんですもの!」
「お前が人を殺す動機がなんとなく理解できたよ。要するに、お前は満たしたいんだ。自分の中にある変な気持ちを」
「変な気持ち?お姉様にはわからないよ。私の芸術への思いと英雄への憧れの思いは」
落胆したような表情を見せる彼女に対し、ルイーダは大きな声で抗議の言葉を浴びせていく。
「……お前、やっぱり、頭がイカれてるよッ!」
怒りの感情で少しばかり疲労や傷のダメージを誤魔化せたのだろう。
剣を下から大きく突き上げて、槍ごとエルリカを跳ね飛ばす。
衝撃のためにエルリカは地面の上で尻餅を付いたらしい。勢いよく尻から地面の上に衝突するのが見えた。
衝突により、ダメージの生じた彼女に向かって、ルイーダは躊躇う事なく真上から剣を振りかぶっていく。
彼女は真上から迫る剣を見るのと同時に、初めて冷や汗を垂らしたが、すぐに先祖由来の槍を捨て、新たに生成した肉切り包丁を利用して、剣を防ぐ。
そして、そのまま剣ごとルイーダを弾いて、地面の上に投げられた彼女の首元にその刃を突き付け、もう片方の空いた手でルイーダの首の横の地面を触り、馬乗りの体勢を維持していく。
「私の勝ちだね。お姉様……」
「……まだ終わっていないぞ。貴様など怖くはない」
「アッハッハッ、お姉様、強がっちゃって、でも、ダメだよ。お姉様は私の芸術品になるんだから」
エルリカが肉切り包丁を逆手に持ち、ルイーダの顔に突き付けようとした時だ。
彼女は咄嗟にエルリカの利き手の手首を掴み抵抗を試みる。
エルリカは懸命にその手を動かそうとするが、効果はないらしい。
このままではルイーダを芸術品にはできない。
彼女の中での苛立ちが頂点に達した時だ。ルイーダは自らの頭をエルリカの顔にぶつけて、彼女の視界から一瞬ではあるものの、正常な景色を奪う。
そして、その一瞬はあまりにも大きかった。彼女はその時に顔をさするために、地面を支えていたもう片方の手を離してしまったのである。
ルイーダはすかさずにもう片方の手で彼女の離れた手を掴む。
そして、そのまま、勢いよくエルリカを後方へと跳ね飛ばし、地面の上へと起き上がっていく。
二本足での対等な勝負。エルリカは野獣のような呻き声を上げながら、肉切り包丁を捨て、先程、捨てたはずの石の槍を再び拾い上げて、エルリカと対峙していく。
再び、槍と剣による打ち合いが始まった。夜の街の広場に金属と石とが打ち合う音が響いているので、周りに住んでいる人たちは事情を知らなければ、その煩しさに抗議の言葉を述べにきていたかもしれない。
そんな事を考えていたためか、エルリカは自分の頬にルイーダの剣が掠めた事に気が付く。
それも、軽い傷ではない。かなり深い傷であり、下手をすれば、後になれば、傷跡として残ってしまうのではないだろうか。
エルリカは戦闘の最中であるのにも関わらず、頬を摩り、本当に傷が出たのかを確認していく。
「こ、これ……血だよね!?血だよね!?わ、私の顔に血がッ!ァァァァァァァァァァ~!!!」
そこから、彼女が狂うのは早かった。高速魔法を利用したかと思うと、肉切り包丁を滅茶苦茶に振り回しながら、訳の分からない言葉を上げて、ルイーダに向かっていく。
彼女は確かに美しい。童話のお姫様に例えられるほどの美顔だ。
だから、あんな直接的な傷を受けるのが我慢ならなかったのだろう。
それこそ、それまでの冷静さをかなぐり捨てる程に。
ルイーダはこの隙を逃す事なく、この怪物の首元へとその剣を飛ばす。
剣先が迸り、華麗な一閃を描いていく。
同時に、首元から噴水のように勢いよく赤黒い血が噴き出し、辺りを赤く染め上げていく。
ルイーダは剣を仕舞うと、信じられないと言わんばかりに目を見開いたまま事切れたエルリカに向かって吐き捨てた。
「……芸術品というのは見る人が素晴らしいと思うから、芸術品と称されるんだ。お前のアレは断じて、芸術品なんかじゃあない。その証拠にお前以外は誰も芸術だとは言わなかったじゃあないか」
彼女のその言葉が聞こえたかのように死体となった彼女はピクピクと動いていく。
だが、彼女からすればそんな事に関心を割いている暇などない。
彼女は背後で激闘を繰り広げている双子の騎士の救援へと向かう。
デニスの魔法は電気。電気を弾丸に纏わせての攻撃は勿論であるが、直接放つ事もできる。
加えて、炎や氷とかち合ったとしても、負けない程の力を誇っている。
彼が二人と互角に渡り合えているのもこの魔法のためである。
デニスは背後でエルリカが敗れたのを確認すると、背中を向けて、背後で剣を抜いて、こちらへと向かってくるルイーダに向かってその電流を向けていく。
ルイーダは竜の黒い炎を放って、デニスの電流を迎え撃ったかと思うと、そのまま剣を持って、それを真横に構えて、デニスへと向かう。
ルイーダは殺人鬼との決着を付けるのと同時に、武装警察隊との決着を付けるべく動いていく。
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