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第一章『この私、カーラ・プラフティーが処刑台のベルを鳴らせていただきますわ』
夜の闇は祓われて
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「さぁ、この薬をお飲みくださいませ。我が師匠から渡された薬ですわ」
カーラが横になっているセバスチャンにレキシーから手渡された薬を渡したが、セバスチャンは青い顔を浮かべて受け取ろうとしない。慌てて首を横に振って薬の受け取りを拒否し、横たわって体を背けたものの、それは娘が許さなかった。大きな声で薬を飲むように強制させたのである。
セバスチャンは首を振って服薬を拒否したが、結局は娘メーデルの手によって無理矢理薬を飲まされてしまったのである。薬を含んだセバスチャンは先のティーダー侯爵とその一家の例に倣って、このまま息絶えてしまうかと思われたのだが、薬を飲んでも不快感が体から湧き上がることはなかった。
そればかりか自身を襲う頭痛の痛みが引いていく感触すら感じたのだ。
セバスチャンは満面の笑みを浮かべてカーラに下がるように指示を出す。代理とはいえ診察に訪れたカーラに対してお礼の言葉を述べようともせずに。
カーラとしてもお礼など言われても嫌悪感しかわからないのでお互いにとってメリットがあったのはいうまでもない。
カーラが診療所を戻る際に伯爵家の長い廊下を歩いていた時だ。ふと地面に違和感を感じた。他の床は整えられているというのにこの場所だけ何か別のものが当て嵌められているかのような違和感を感じたのだ。
カーラが周りに誰もいないことを確かめてから床に手を伸ばすと、床はあっさりと外れたのだ。どうやら入り口なっていたらしい。
カーラが床の下に潜入すると、そこは巨大な通路となっていた。
地下とは思えないほどの巨大な通路が広がり、そこから様々なところに行き来できるようになっていたのだ。
どうやらこの床下を通してセバスチャンは伏兵を忍ばせたり、時には襲撃に備えて逃げ口として用いていたらしい。
カーラはこの時に脳裏にある一つの素晴らしい考えが思い浮かんだ。それはこの通路を利用してセバスチャン本人とその娘メーデルを仕留められないかというものであった。
だが、この通路には用心深いセバスチャンのことであるから伏兵がいる可能性も捨てきれなかった。そうした可能性も考慮すれば侵入する際にヒューゴとギークの両名も必要だろう。
カーラは一旦床下から這い出ると、こっそりと屋敷の中を探索することにした。他にも地下に侵入できないか探し始めたのであった。
屋敷の使用人たちに見つからないように地下の通路を探索し終えた後でカーラは診療所へと戻り、その件を報告したのであった。
「……レキシーさん。どうですの?本日私が見つけた地下通路を探っての決行というのは?」
「時期尚早だという気がするね」
「今回はオレもレキシーさんに賛成です。確かに地下通路を通っての駆除という案は魅力的ですが、少ししか調べていません。部が悪すぎますよ」
「……ぼくも同感さ。もう少し下調べをしてからいくべきじゃないかな?せっかく薬を渡しに行けるんだからそれを名目に下調べを行うとか」
結局のところ三人の反対によってカーラの提案は跳ね除けられてしまい、結局薬渡しの名目でカーラが毎度使用人たちの目を盗んで調べてくることになった。
カーラの命懸けの冒険が一週間ほど続く中でメイドの一人に気が付かれそうになったというハプニングなどもあったが、カーラがメイドに良いストレス解消の方法を教えたことによってそのメイドを懐柔させることに成功させた。
以後は忙しい間に気軽なことを喋れる友達という間柄となったのだ。カーラは喋り友達となったメイドの力を借りて屋敷の間取りなどを知ることさえもできた。
メイドを懐柔してからの下調べは楽だった。カーラからすればもう少し掛かるかと思われた決行の準備が最初の一週間を含めて僅か二週間で終了したのは本当にありがたかった。
加えて、カーラには病気が良くなるまでは駆除人たちへの暗殺が中止となって、イーサンが他の仕事もあるということで教会に戻っていたことも幸いしていた。
もし、彼に睨まれていたのであるのならばカーラはいかにメイドの手引きがあっても、もう少し不便な探索を強いられていたであろう。
その話を聞くのと同時にカーラはフォレストの死を悟った。もし、フォレストが生きていたのならばどういう形にしろ尋問のために連れ去られるからだ。
そして調査終了となる日、メイドに招かれて彼女の部屋でお茶を飲んでいた時にカーラが思い出したように言った。
「ねぇ、アリスさん。あなたここをクビになったら行く宛がありますの?」
「うーん。ないかな?けど、どうしてそんなことを?」
「もしもの話でしてよ。もしここを辞められるのならどこに行きたいのか……私気になりまして」
アリスはそれを聞くと顎の下に人差し指と親指を置いてうーんと唸ってから苦笑いを浮かべながら言った。
「……特にないかな。カーラちゃんには話してなかったけど、あたしの家、元は下級貴族の間柄だったんだ。それで少しだけ裕福な家庭だったんだけど、お父様が旦那様と出会ってから……お金が……」
アリスの口が吃り始めていく。カーラはお茶を置いてからアリスを優しく抱き締めていく。アリスという少女は恐らく借金の分を稼ぐという目的で家のメイドにさせられたに違いない。
カーラはそんな哀れなアリスの背中を優しく摩りながら慰めるように言った。
「ご安心なさいませ。あなたを苦しませるようなことはもうなくなりますわ」
この時、部屋の壁を見つめていたカーラの両目が青白く光った。
カーラは決意していたのだろう。この日の夜に全てに方を付ける、と。
夜の伯爵邸、セバスチャン・ミーモリティの居室では娘のメーデルを交えてひと時の談笑が行われていた。
「パパッ!元気になってよかったッ!」
メーデルはあくまでも痛みを和らげるための薬であるということを忘れ、無邪気に笑っていた。
「そうだろう?これも全てパパがいい医者を呼んだおかげだ。お前もこれからは仕事に出れるし、あの男も教会から呼び戻せる……フフッ、見ていろ忌々しい奴らめ、今度こそ然るべき制裁をーー」
だが、セバスチャンが全てを言い終える前に床下が勢いよく開かれて、カーラとその一行がその姿を見せた。
カーラは逃げ出そうとするメーデルに手刀を喰らわせて気絶させた後で袖に隠していた針を抜いて、ベッドの上のセバスチャンに向かってその先端を突き付ける。
セバスチャンはベッドの上でひどく怯えた姿を見せて慌ててベッドの上から起き上がろうとしたが、病み上がりの体であるためか体が上手く動かなかったのかベッドの下に真っ逆さまに落ちていったかと思うと「ギャッ」と小さな悲鳴を上げた。
そのままセバスチャンは這いながら部屋の外へと出ようとした時だ。その手をレキシーが強く踏み付けていく。
手に強い衝撃を受けたためかベッドから落ちてきた時とは比較にもならないほどの悲鳴を上げるが、レキシーは容赦することなく手を踏み付けていく。
「あんた、こうして人の手を踏んできたんだろ?多くの人を脅してさ……本当にとんだ悪党だよ」
「き、貴様ッ!たかだか医者の分際で……わしを誰だと思っているッ!恐れ多くも軍務大臣にしてーー」
「そんな肩書きなんて関係ないねぇ。あんた駆除人のことを甘く見過ぎだよ」
「……ち、ちくしょう。オレをどうするつもりだ?このまま殺すのか?」
「いやいや、殺すのはあんたの娘さんだけ。あんたはこのまま放って帰るよ」
「ふざけるな。娘を離せ……」
背後で娘を二人がかりで運んでいるギークとヒューゴを睨みながら言ったが、二人はセバスチャンの言葉など無視して元来た床下にメーデルを運んでいく。
大きな声でそれを止めようとした時だ。レキシーはその手を勢いよく踏み付けて足元で呻き声を上げるセバスチャンを見下ろしながら告げた。
「そうそう、あたしの薬ね。あれ痛みを和らげるなんてことはできないんだよ。できるのは体を騙すことだけ。それも体に身体的、精神的な負担が掛からないと誤魔化せないって厄介な奴でね。今の調子だとそろそろ痛みが戻ってくる頃だね?」
レキシーが足を離した瞬間にセバスチャンの頭に前にまで感じていた強烈な痛みが迸っていく。頭を刃物で刺されたかのような痛みが襲っていくのだ。
セバスチャンは溜まりかねて腹の底から声を上げて自身の苦しみを訴え掛けたが、レキシーはそれを無視して元来た道を引き返し、カーラは苦しんでいるセバスチャンからノートを奪い取った後で地下通路へと引き返したのであった。
その後は床下を閉ざし、地下に通じる通路と寝室とを完全に切り離したのであった。やがてセバスチャンの叫びを聞き付けて屋敷にいるメイドや執事たちが慌てて駆け寄ってきたが、使用人たちがベッドの前に駆け寄ったのはセバスチャンが耐えようもない痛みによってあの世へと旅立った直後のことであった。
後日、川の上からセバスチャンの娘であるメーデルの死体が流れ着いたのを付近で洗濯をしていた婦人たちが発見して悲鳴を上げた。
メーデルの死体はこの世のものとは思えぬほどの陰湿なやり方で傷付けられた後に川の中に投げ込まれたものだとされ、発見した役人が眉を顰めるほどであった。
カーラが横になっているセバスチャンにレキシーから手渡された薬を渡したが、セバスチャンは青い顔を浮かべて受け取ろうとしない。慌てて首を横に振って薬の受け取りを拒否し、横たわって体を背けたものの、それは娘が許さなかった。大きな声で薬を飲むように強制させたのである。
セバスチャンは首を振って服薬を拒否したが、結局は娘メーデルの手によって無理矢理薬を飲まされてしまったのである。薬を含んだセバスチャンは先のティーダー侯爵とその一家の例に倣って、このまま息絶えてしまうかと思われたのだが、薬を飲んでも不快感が体から湧き上がることはなかった。
そればかりか自身を襲う頭痛の痛みが引いていく感触すら感じたのだ。
セバスチャンは満面の笑みを浮かべてカーラに下がるように指示を出す。代理とはいえ診察に訪れたカーラに対してお礼の言葉を述べようともせずに。
カーラとしてもお礼など言われても嫌悪感しかわからないのでお互いにとってメリットがあったのはいうまでもない。
カーラが診療所を戻る際に伯爵家の長い廊下を歩いていた時だ。ふと地面に違和感を感じた。他の床は整えられているというのにこの場所だけ何か別のものが当て嵌められているかのような違和感を感じたのだ。
カーラが周りに誰もいないことを確かめてから床に手を伸ばすと、床はあっさりと外れたのだ。どうやら入り口なっていたらしい。
カーラが床の下に潜入すると、そこは巨大な通路となっていた。
地下とは思えないほどの巨大な通路が広がり、そこから様々なところに行き来できるようになっていたのだ。
どうやらこの床下を通してセバスチャンは伏兵を忍ばせたり、時には襲撃に備えて逃げ口として用いていたらしい。
カーラはこの時に脳裏にある一つの素晴らしい考えが思い浮かんだ。それはこの通路を利用してセバスチャン本人とその娘メーデルを仕留められないかというものであった。
だが、この通路には用心深いセバスチャンのことであるから伏兵がいる可能性も捨てきれなかった。そうした可能性も考慮すれば侵入する際にヒューゴとギークの両名も必要だろう。
カーラは一旦床下から這い出ると、こっそりと屋敷の中を探索することにした。他にも地下に侵入できないか探し始めたのであった。
屋敷の使用人たちに見つからないように地下の通路を探索し終えた後でカーラは診療所へと戻り、その件を報告したのであった。
「……レキシーさん。どうですの?本日私が見つけた地下通路を探っての決行というのは?」
「時期尚早だという気がするね」
「今回はオレもレキシーさんに賛成です。確かに地下通路を通っての駆除という案は魅力的ですが、少ししか調べていません。部が悪すぎますよ」
「……ぼくも同感さ。もう少し下調べをしてからいくべきじゃないかな?せっかく薬を渡しに行けるんだからそれを名目に下調べを行うとか」
結局のところ三人の反対によってカーラの提案は跳ね除けられてしまい、結局薬渡しの名目でカーラが毎度使用人たちの目を盗んで調べてくることになった。
カーラの命懸けの冒険が一週間ほど続く中でメイドの一人に気が付かれそうになったというハプニングなどもあったが、カーラがメイドに良いストレス解消の方法を教えたことによってそのメイドを懐柔させることに成功させた。
以後は忙しい間に気軽なことを喋れる友達という間柄となったのだ。カーラは喋り友達となったメイドの力を借りて屋敷の間取りなどを知ることさえもできた。
メイドを懐柔してからの下調べは楽だった。カーラからすればもう少し掛かるかと思われた決行の準備が最初の一週間を含めて僅か二週間で終了したのは本当にありがたかった。
加えて、カーラには病気が良くなるまでは駆除人たちへの暗殺が中止となって、イーサンが他の仕事もあるということで教会に戻っていたことも幸いしていた。
もし、彼に睨まれていたのであるのならばカーラはいかにメイドの手引きがあっても、もう少し不便な探索を強いられていたであろう。
その話を聞くのと同時にカーラはフォレストの死を悟った。もし、フォレストが生きていたのならばどういう形にしろ尋問のために連れ去られるからだ。
そして調査終了となる日、メイドに招かれて彼女の部屋でお茶を飲んでいた時にカーラが思い出したように言った。
「ねぇ、アリスさん。あなたここをクビになったら行く宛がありますの?」
「うーん。ないかな?けど、どうしてそんなことを?」
「もしもの話でしてよ。もしここを辞められるのならどこに行きたいのか……私気になりまして」
アリスはそれを聞くと顎の下に人差し指と親指を置いてうーんと唸ってから苦笑いを浮かべながら言った。
「……特にないかな。カーラちゃんには話してなかったけど、あたしの家、元は下級貴族の間柄だったんだ。それで少しだけ裕福な家庭だったんだけど、お父様が旦那様と出会ってから……お金が……」
アリスの口が吃り始めていく。カーラはお茶を置いてからアリスを優しく抱き締めていく。アリスという少女は恐らく借金の分を稼ぐという目的で家のメイドにさせられたに違いない。
カーラはそんな哀れなアリスの背中を優しく摩りながら慰めるように言った。
「ご安心なさいませ。あなたを苦しませるようなことはもうなくなりますわ」
この時、部屋の壁を見つめていたカーラの両目が青白く光った。
カーラは決意していたのだろう。この日の夜に全てに方を付ける、と。
夜の伯爵邸、セバスチャン・ミーモリティの居室では娘のメーデルを交えてひと時の談笑が行われていた。
「パパッ!元気になってよかったッ!」
メーデルはあくまでも痛みを和らげるための薬であるということを忘れ、無邪気に笑っていた。
「そうだろう?これも全てパパがいい医者を呼んだおかげだ。お前もこれからは仕事に出れるし、あの男も教会から呼び戻せる……フフッ、見ていろ忌々しい奴らめ、今度こそ然るべき制裁をーー」
だが、セバスチャンが全てを言い終える前に床下が勢いよく開かれて、カーラとその一行がその姿を見せた。
カーラは逃げ出そうとするメーデルに手刀を喰らわせて気絶させた後で袖に隠していた針を抜いて、ベッドの上のセバスチャンに向かってその先端を突き付ける。
セバスチャンはベッドの上でひどく怯えた姿を見せて慌ててベッドの上から起き上がろうとしたが、病み上がりの体であるためか体が上手く動かなかったのかベッドの下に真っ逆さまに落ちていったかと思うと「ギャッ」と小さな悲鳴を上げた。
そのままセバスチャンは這いながら部屋の外へと出ようとした時だ。その手をレキシーが強く踏み付けていく。
手に強い衝撃を受けたためかベッドから落ちてきた時とは比較にもならないほどの悲鳴を上げるが、レキシーは容赦することなく手を踏み付けていく。
「あんた、こうして人の手を踏んできたんだろ?多くの人を脅してさ……本当にとんだ悪党だよ」
「き、貴様ッ!たかだか医者の分際で……わしを誰だと思っているッ!恐れ多くも軍務大臣にしてーー」
「そんな肩書きなんて関係ないねぇ。あんた駆除人のことを甘く見過ぎだよ」
「……ち、ちくしょう。オレをどうするつもりだ?このまま殺すのか?」
「いやいや、殺すのはあんたの娘さんだけ。あんたはこのまま放って帰るよ」
「ふざけるな。娘を離せ……」
背後で娘を二人がかりで運んでいるギークとヒューゴを睨みながら言ったが、二人はセバスチャンの言葉など無視して元来た床下にメーデルを運んでいく。
大きな声でそれを止めようとした時だ。レキシーはその手を勢いよく踏み付けて足元で呻き声を上げるセバスチャンを見下ろしながら告げた。
「そうそう、あたしの薬ね。あれ痛みを和らげるなんてことはできないんだよ。できるのは体を騙すことだけ。それも体に身体的、精神的な負担が掛からないと誤魔化せないって厄介な奴でね。今の調子だとそろそろ痛みが戻ってくる頃だね?」
レキシーが足を離した瞬間にセバスチャンの頭に前にまで感じていた強烈な痛みが迸っていく。頭を刃物で刺されたかのような痛みが襲っていくのだ。
セバスチャンは溜まりかねて腹の底から声を上げて自身の苦しみを訴え掛けたが、レキシーはそれを無視して元来た道を引き返し、カーラは苦しんでいるセバスチャンからノートを奪い取った後で地下通路へと引き返したのであった。
その後は床下を閉ざし、地下に通じる通路と寝室とを完全に切り離したのであった。やがてセバスチャンの叫びを聞き付けて屋敷にいるメイドや執事たちが慌てて駆け寄ってきたが、使用人たちがベッドの前に駆け寄ったのはセバスチャンが耐えようもない痛みによってあの世へと旅立った直後のことであった。
後日、川の上からセバスチャンの娘であるメーデルの死体が流れ着いたのを付近で洗濯をしていた婦人たちが発見して悲鳴を上げた。
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