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第二章『王国を覆う影?ならば、この私が取り除かせていただきますわ』
重大な指針はそこにあって
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レキシーは一目見て、王の命が長くないことを知った。本来であるのならばこのまま見捨てるところであったのだが、リーバイトの約束がそれを邪魔した。レキシーは国王を少しでも助けるために全力を尽くすことに決めたのだ。
レキシーの腕ならば国王の体を寿命まで錯覚させる薬を作ることならばできた。その薬を使えば意思疎通を取ったり、椅子に座ったりすることができるようになるはずだ。
レキシーが椅子の上でそこまで考えていると、王の治療に関する考えとは別の疑問が頭の中に思い浮かんできた。
どうしてここにいる奴らは国王をここまで放置していたんだ、という至極真っ当な疑問であった。
レキシーが頭を悩ませていた時だ。第二王子のベクターとその婚約者であるマルグリッタがその姿を見せた。
ベクターは焦った様子で父王が眠るベッドの下へと駆け寄っていく。
そこで父王を揺らそうしたところをレキシーが大きな声で叫んで静止させたのである。
それを聞いたベクターが眉をピクリと動かしながらレキシーの方を振り向いた。
「何者だ、貴様は」
「あたしかい?あたしはここの医者に陛下を見るように頼まれた町の医者だよ。そういうあんたこそ何者だい?」
「貴様、なんだその口の利き方はッ!平民のくせにッ!それにおれの顔を知らんのか?おれはこの国の第一王子、ベクターだそッ!」
レキシーは『ベクター』という言葉を聞いて固まってしまう。ベクターは自分の相棒であるレキシーに婚約破棄の身分剥奪を言い渡した王子の名前であったからだ。
ベクターはレキシーが驚嘆してその場を動けないでいるのをいいことにレキシーの元へと詰め寄っていく。
「お前町医者も聞いたが、どうしてたかが町医者如きが父上の病気の診察に来ているのだ。ははぁ、わかったぞ。父上に取り入って財産を狙おうという魂胆なのだろう」
ベクターは側でマルグリッタが止めているのも聞かずにレキシーへの悪口を続けていく。
レキシーへの悪口がついに頂点に達した時だ。レキシーは黙って椅子の上から立ち上がり、ベクターの胸ぐらを勢いよく掴み上げた。
「舐めるんじゃないよ、あたしはねぇ、ウィリアム・バトラーっていう医者から頼まれてここにやって来たんだよ。あんたのパパを助けるためにね」
「ぶ、無礼なッ!このおれを誰だと思っている!?」
「王子様だろ?けど、それがどうかしたのかい?生憎だけどあたしはそんなことで怯えるような弱々しい性格をしていないんだよ」
レキシーはそのまま乱暴にベクターを突き放して地面の上に尻餅をついて痛がるベクターを見てフンと鼻を鳴らした。
その姿を見てマルグリッタが悲鳴を上げる。
「な、何をなされますの!殿下ッ!しっかりなさいませッ!」
この時マルグリッタは密かにレキシーを睨みつけたが、レキシーは意に返すこともなく腕を組んだまま地面の上に倒れているベクターを見下ろしていた。
一色触発ともいえる状況が続いた時だ。ベッドの上に横たわる国王が呻めき声を上げた。
それを聞いたベクターが我を忘れて国王の元へと駆け寄っていく。
レキシーは国王を揺れ動かそうとするベクターを止め、必死に口を動かして何かを言おうとしている国王の言葉に耳を傾けた。
国王はか細い声でベクターを呼んで耳元で何かを囁いた。
それを聞いたベクターの両目が大きく見開いたのをレキシーは見逃さなかった。レキシーは国王の元から離れると落ち込んだ様子のベクターの姿が見えた。何言われたのかはわからなかったが、ベクターにとってよくない話を聞いたというのがわかった。
その後に血相を変えたマルグリッタがベクターと小さな声で口論を行っているのを耳にした。
「どういうですの?この状況でフィン様をお呼びになられるだなんて……」
「おれだってわからない。だが、よくないことだというのは確かだ」
その言葉を聞いたレキシーは国王が何を言おうとしているのかを悟った。
どうやら国王は死の淵に立って見えなくなっていたはずの目を再び開けたらしい。一足先に冥界の王の元へと旅立ったリーバイも喜んでいるに違いない。
レキシーも心の内で密かに国王の目が覚めたことを笑っていた。
どうやら国王は今後の王家の指針を話そうとしているのだ。そのためわざわざ街の警備に回しているはずのフィンを呼びだすのだ。恐らく今後国王の体調が戻れば兄であるフィンを交えて、ベクターにとって望ましくない話が開かれるのだろう。ベクターの顔が青ざめていたのはこのためだろう。
レキシーはこのまま耳を澄ませて二人の話す内緒話に耳を傾けていく。
「心配するな。父上は病人……上手くいけば父上はこのままお隠れになるはずだ」
「……ですわね。このまま上手くいけば殿下が次の国王ですわ」
「その通りだ。だが、万が一ということもある。その時は……」
どうやら二人は国王が寝たきりであるのをいいことに二人にとって不味くなるであろう話を封殺させて、そのまま次の国王に就任するつもりであるらしい。
そうはさせてはならない。レキシーは国王の体を騙すための薬を是非とも開発し、二人を奈落の底へと叩き落とすことを決めたのであった。
レキシーは二人が小さな声での会議に夢中になっている間に国王の体を診察し、どのようにすれば体を騙せるのかを探っていくのであった。
処方するべき薬を思い付いた後に一旦は宮廷を退いて家へと戻っていくのだった。
レキシーの腕を持ってすれば国王の体を騙すことができるのは三ヶ月。今後のことを話し合うには十分だろう。
レキシーは馬車の中で一人笑っていた。というのも、自身の相棒をあれだけ苦しめた王子とその婚約者を合法的に地獄に叩き落とせる準備ができるのだから。
カーラからすればシュポスとのデートは正直にいえば楽しかった。シュポスは自分に惚れているということもあり、紳士的に振る舞ってくれていた。エスコートは完璧であったし、レディファーストという言葉も忘れなかった。好きなものを奢ってくれようとしたし、デート中もカーラの気を引くような面白い話をしてくれた。
ユーリという男とも引けを取らないほどの面白い話ばかりであり、カーラは自身の本来の目標を忘れ掛けそうになっていた。
もし、自分がまだ、恋を知らない身であったのならば恐らくシュポスという男に恋焦がれていたかもしれない。
カーラがそんなことを考えているとシュポスがレストランで何を頼みたいのかを尋ねた。
「……あぁ、そうでしたわね。では私は香草と魚を煮詰めたものをいただいてもよろしいでしょうか?」
「いいよ、それね」
シュポスは店員にその件を伝え終わった後で黙ってカーラに向き直って言った。
カーラがぼんやりとしているのが気になったのか首を傾げながら問い掛けた。
「そういえば、カーラさぁ、さっきからぼんやりしているけど、どうかしたの?」
「い、いえ、少し考え事をしていただけですわ」
「そうなの?なら別にいいけど」
怪しまれてはいないだろうか。その途端に心拍数が上がり、その音がカーラの両耳にまで聞こえるほどになっていた。
カーラは慌ててその心を沈め、自身に向かって必死に言い聞かせたのであった。
目の前の男は蓋を開ければ魅力的な男性であった。恋を知らない頃であったのならば自分も恋に落ちていたかもしれない。
だが、彼は自分の駆除の現場を目撃し、それをネタに強請ってきた。今はまだこの程度で済んでいるが、生かしておいては今後の駆除に影響が出かねない。
そう言い聞かせてカーラは自分を奮い立たせたのであった。カーラは夕方までシュポスとのデートを楽しんだ上でシュポスを始末するために人気のない空き地へと誘ったのであった。名目は二人で夕陽が落ちるのを楽しみたいという旨のものであった。
空き地で二人で並んで西陽が消えていく姿を見るのは初めてのことであったからカーラは別の意味でも緊張していた。
そんな淡い思いをカーラは必死に打ち消し、シュポスが夕陽を眺めているのを確認してから袖の下に仕込んだ針に手を掛ける。これでシュポスの延髄に向かって針を突き立てることができれば口封じは完了だ。
カーラが針を突き立てようとした時だ。不意にシュポスがカーラの元へと向き直り、カーラの右手首を勢いよく掴み上げたのだった。
夕陽を背にしているためかシュポスの背中がやけに大きく見えた。
本日の投稿遅れてしまい、誠に申し訳ありません。重要な場面でしたので何度も何度も考え直しているうちに投稿予定時間を大幅に超えてしまっていました。
大変身勝手な話ですが、お許しいただければ幸いです。
レキシーの腕ならば国王の体を寿命まで錯覚させる薬を作ることならばできた。その薬を使えば意思疎通を取ったり、椅子に座ったりすることができるようになるはずだ。
レキシーが椅子の上でそこまで考えていると、王の治療に関する考えとは別の疑問が頭の中に思い浮かんできた。
どうしてここにいる奴らは国王をここまで放置していたんだ、という至極真っ当な疑問であった。
レキシーが頭を悩ませていた時だ。第二王子のベクターとその婚約者であるマルグリッタがその姿を見せた。
ベクターは焦った様子で父王が眠るベッドの下へと駆け寄っていく。
そこで父王を揺らそうしたところをレキシーが大きな声で叫んで静止させたのである。
それを聞いたベクターが眉をピクリと動かしながらレキシーの方を振り向いた。
「何者だ、貴様は」
「あたしかい?あたしはここの医者に陛下を見るように頼まれた町の医者だよ。そういうあんたこそ何者だい?」
「貴様、なんだその口の利き方はッ!平民のくせにッ!それにおれの顔を知らんのか?おれはこの国の第一王子、ベクターだそッ!」
レキシーは『ベクター』という言葉を聞いて固まってしまう。ベクターは自分の相棒であるレキシーに婚約破棄の身分剥奪を言い渡した王子の名前であったからだ。
ベクターはレキシーが驚嘆してその場を動けないでいるのをいいことにレキシーの元へと詰め寄っていく。
「お前町医者も聞いたが、どうしてたかが町医者如きが父上の病気の診察に来ているのだ。ははぁ、わかったぞ。父上に取り入って財産を狙おうという魂胆なのだろう」
ベクターは側でマルグリッタが止めているのも聞かずにレキシーへの悪口を続けていく。
レキシーへの悪口がついに頂点に達した時だ。レキシーは黙って椅子の上から立ち上がり、ベクターの胸ぐらを勢いよく掴み上げた。
「舐めるんじゃないよ、あたしはねぇ、ウィリアム・バトラーっていう医者から頼まれてここにやって来たんだよ。あんたのパパを助けるためにね」
「ぶ、無礼なッ!このおれを誰だと思っている!?」
「王子様だろ?けど、それがどうかしたのかい?生憎だけどあたしはそんなことで怯えるような弱々しい性格をしていないんだよ」
レキシーはそのまま乱暴にベクターを突き放して地面の上に尻餅をついて痛がるベクターを見てフンと鼻を鳴らした。
その姿を見てマルグリッタが悲鳴を上げる。
「な、何をなされますの!殿下ッ!しっかりなさいませッ!」
この時マルグリッタは密かにレキシーを睨みつけたが、レキシーは意に返すこともなく腕を組んだまま地面の上に倒れているベクターを見下ろしていた。
一色触発ともいえる状況が続いた時だ。ベッドの上に横たわる国王が呻めき声を上げた。
それを聞いたベクターが我を忘れて国王の元へと駆け寄っていく。
レキシーは国王を揺れ動かそうとするベクターを止め、必死に口を動かして何かを言おうとしている国王の言葉に耳を傾けた。
国王はか細い声でベクターを呼んで耳元で何かを囁いた。
それを聞いたベクターの両目が大きく見開いたのをレキシーは見逃さなかった。レキシーは国王の元から離れると落ち込んだ様子のベクターの姿が見えた。何言われたのかはわからなかったが、ベクターにとってよくない話を聞いたというのがわかった。
その後に血相を変えたマルグリッタがベクターと小さな声で口論を行っているのを耳にした。
「どういうですの?この状況でフィン様をお呼びになられるだなんて……」
「おれだってわからない。だが、よくないことだというのは確かだ」
その言葉を聞いたレキシーは国王が何を言おうとしているのかを悟った。
どうやら国王は死の淵に立って見えなくなっていたはずの目を再び開けたらしい。一足先に冥界の王の元へと旅立ったリーバイも喜んでいるに違いない。
レキシーも心の内で密かに国王の目が覚めたことを笑っていた。
どうやら国王は今後の王家の指針を話そうとしているのだ。そのためわざわざ街の警備に回しているはずのフィンを呼びだすのだ。恐らく今後国王の体調が戻れば兄であるフィンを交えて、ベクターにとって望ましくない話が開かれるのだろう。ベクターの顔が青ざめていたのはこのためだろう。
レキシーはこのまま耳を澄ませて二人の話す内緒話に耳を傾けていく。
「心配するな。父上は病人……上手くいけば父上はこのままお隠れになるはずだ」
「……ですわね。このまま上手くいけば殿下が次の国王ですわ」
「その通りだ。だが、万が一ということもある。その時は……」
どうやら二人は国王が寝たきりであるのをいいことに二人にとって不味くなるであろう話を封殺させて、そのまま次の国王に就任するつもりであるらしい。
そうはさせてはならない。レキシーは国王の体を騙すための薬を是非とも開発し、二人を奈落の底へと叩き落とすことを決めたのであった。
レキシーは二人が小さな声での会議に夢中になっている間に国王の体を診察し、どのようにすれば体を騙せるのかを探っていくのであった。
処方するべき薬を思い付いた後に一旦は宮廷を退いて家へと戻っていくのだった。
レキシーの腕を持ってすれば国王の体を騙すことができるのは三ヶ月。今後のことを話し合うには十分だろう。
レキシーは馬車の中で一人笑っていた。というのも、自身の相棒をあれだけ苦しめた王子とその婚約者を合法的に地獄に叩き落とせる準備ができるのだから。
カーラからすればシュポスとのデートは正直にいえば楽しかった。シュポスは自分に惚れているということもあり、紳士的に振る舞ってくれていた。エスコートは完璧であったし、レディファーストという言葉も忘れなかった。好きなものを奢ってくれようとしたし、デート中もカーラの気を引くような面白い話をしてくれた。
ユーリという男とも引けを取らないほどの面白い話ばかりであり、カーラは自身の本来の目標を忘れ掛けそうになっていた。
もし、自分がまだ、恋を知らない身であったのならば恐らくシュポスという男に恋焦がれていたかもしれない。
カーラがそんなことを考えているとシュポスがレストランで何を頼みたいのかを尋ねた。
「……あぁ、そうでしたわね。では私は香草と魚を煮詰めたものをいただいてもよろしいでしょうか?」
「いいよ、それね」
シュポスは店員にその件を伝え終わった後で黙ってカーラに向き直って言った。
カーラがぼんやりとしているのが気になったのか首を傾げながら問い掛けた。
「そういえば、カーラさぁ、さっきからぼんやりしているけど、どうかしたの?」
「い、いえ、少し考え事をしていただけですわ」
「そうなの?なら別にいいけど」
怪しまれてはいないだろうか。その途端に心拍数が上がり、その音がカーラの両耳にまで聞こえるほどになっていた。
カーラは慌ててその心を沈め、自身に向かって必死に言い聞かせたのであった。
目の前の男は蓋を開ければ魅力的な男性であった。恋を知らない頃であったのならば自分も恋に落ちていたかもしれない。
だが、彼は自分の駆除の現場を目撃し、それをネタに強請ってきた。今はまだこの程度で済んでいるが、生かしておいては今後の駆除に影響が出かねない。
そう言い聞かせてカーラは自分を奮い立たせたのであった。カーラは夕方までシュポスとのデートを楽しんだ上でシュポスを始末するために人気のない空き地へと誘ったのであった。名目は二人で夕陽が落ちるのを楽しみたいという旨のものであった。
空き地で二人で並んで西陽が消えていく姿を見るのは初めてのことであったからカーラは別の意味でも緊張していた。
そんな淡い思いをカーラは必死に打ち消し、シュポスが夕陽を眺めているのを確認してから袖の下に仕込んだ針に手を掛ける。これでシュポスの延髄に向かって針を突き立てることができれば口封じは完了だ。
カーラが針を突き立てようとした時だ。不意にシュポスがカーラの元へと向き直り、カーラの右手首を勢いよく掴み上げたのだった。
夕陽を背にしているためかシュポスの背中がやけに大きく見えた。
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