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第二章『王国を覆う影?ならば、この私が取り除かせていただきますわ』
アイクラフト男爵一家の顛末
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カーラが仕掛ける手間が省けたとばかりにその場を離れ、隣にあるネルソンのパートナーであるディアナの部屋へと向かっていく。
カーラが鍵穴から部屋の様子を覗くと、ディアナは椅子の上で読書をしているところだった。鍵穴から表紙を確認すると最近流行りの古代の神話をわかりやすく小説に書き下したようなものを読んでいるらしい。神話とはこの世に最後に読む本としては適切ではないだろうか。
カーラは扉をノックした上に飲み物を運んできたメイドを装おってティアナを呼び出したのだった。
ディアナは扉の向こうから機嫌の悪い声を出しながら部屋の扉を開けていく。
「ちょっと、遅いじゃないッ!」
「……申し訳ありません」
カーラがそう言ってディアナの背中を掴んで、その首元に針を突き立てようとした時だ。不意にディアナの首元に長くて細い鞭が巻き付いていく。カーラが慌ててディアナの体から離れ、その鞭の様子を見つめると、鞭がドアノブに巻き付いた上にディアナの首元に巻き付いていた気が付く。ディアナの体はドアノブに巻き付いた鞭に引っ張られていき、扉の前で彼女は助けを求めて手を伸ばしていくものの、カーラはその姿を見ていることしかできなかった。
鞭が強く締められていくとディアナは首の骨が折れたことによってその生涯という名の舞台に強制的に幕を下ろされたのだった。
カーラが鞭が戻っていく方向を見つめていく。初めてカーラの視界に映るのは深い夜の闇ばかりであった。だが、その闇の中から闇を切り開いていくかのようにユーリの姿が見えた。カーラがはっきりとユーリ本人だと断定できたのは一度ギークとの戦いに負けて負傷したユーリの姿を見たことがあったからだ。
ユーリはカーラの元に辿り着くとまるで、親しい友人と久し振りに再開したかのような口調で話し掛けてきたのだった。
「よぉ、久し振りだな。カーラ」
「お久し振りでございますわ。ユーリさん」
「あぁ、そんなことよりもだ。カーラは今夜は何の用があってここに来たのだ?」
「私はこの屋敷に巣食う害虫の駆除に参りましたの。多くの罪のない人たちを己の身勝手な欲望で殺す害虫の駆除が目的ですわ」
「なるほど、オレたちはオレたちの所属する神に害をなす奴らへの粛清ってところかな?」
「なるほど、お互いに目的は違えども標的が運悪く被ってしまったということでよろしいでしょうか?」
カーラが両目に青白い光を帯びながらユーリに向かって尋ねる。ユーリはカーラの言葉を聞いて黙って首を縦に動かす。
同時にユーリは鞭を構えながらカーラと向き合っていく。カーラも来るべき鞭の攻撃に備えて袖の下に仕込んでいた針を出して、ユーリに向かって突き付けていく。
鞭と針。距離があるのならば鞭の方が有利だろう。しかし、可能性としては五分五分というところだ。その理由はカーラの腕にあった。カーラの針を使っての駆除の腕前は非常に優れたものであり、鞭を避けたり、弾いたりしながらユーリの首元に針を突きつけ、そのまま首元から針を突き刺してユーリを絶命させることもできた。
もちろんユーリとしてもその可能性は頭の中に置いているから簡単にカーラを近付けたりはしないだろう。カーラが近付く前に鞭を放って、カーラの体に打撃を与えるくらいはやりかねない。その後で飛び掛かってカーラの首を絞めることはやりかねない。お互いに一色触発の状態が続いたところでシュポスがネイソンの部屋の中から出てきたのは幸いだった。
明るい笑顔を浮かべたシュポスは二人の間に割って入り、隙を見せれば今にも殺し合いかねない二人を必死に宥めたのだった。
ネイソンの説得の結果二人はようやく互いの武器を収めたのであった。
シュポスは二人の肩を叩いた上で満面の笑みを浮かべて提案したのだった。
「どうせだったら、奴らを協力して始末しねぇか?」
「本気でして?あなた方とは所属が違うはずですわ。大体あなた方に私の駆除に力を貸すメリットなどございませんわ」
「……オレが駆除人の真似をしたくなったという理由では駄目か?」
「あなた方は駆除人ではございませんので……」
「らしいぜ、ここはさっさと屋敷を去った方が得なんじゃねぇのか?」
ユーリの言葉を聞いてシュポスは考え込む素振りを見せていた。
だが、すぐに明るい笑顔を浮かべて言った。
「なら、お前だけ逃げな。オレはカーラと駆除人をするから」
「……お前、そんなバカなことをやっていると、本当に首が飛ぶぞ」
「そう固いことを言うな。わざわざこの辺境の兵隊であるお前を本山所属である相棒に指名したのはオレなんだぞ」
「それとこれとは話が別だろうが、というか、お前はいつからそんな風に恩を着せるようになったんだ?」
「その恩に負けて、暗殺しなくてもよかったディアナを始末したのは誰だっけ?」
シュポスがニヤニヤとした笑みを浮かべながら問い掛ける。
「仕方がないだろ。帰った後で資料を読んで憤慨したお前が男爵だけじゃなくてその家族も暗殺したいと言い出したんだから」
「そうしないと暗殺を受けないと駄々をこねたからな。まぁ、駆除人の真似事というのも面白いものだろ?」
シュポスの問い掛けに対してユーリは不満そうに顔を背けていた。
そして立場上は逆らえなかったのか、毒を吐いたもののシュポスに付き従うことにしたのだった。
カーラは二人に先にレオを始末したことを告げ、残るはエドワードとイブリンの二名だけと説明したのだった。
カーラとしても掟に反するために二人を引き入れたくはなかったのだが、断れば一色触発の状況になり、この屋敷の中で殺し合うことになる可能性もあったので受け入れざるを得なかったのだ。
三人で屋敷の中を探し回った結果、二人の居室は屋敷の最奥部に存在していた。
外からは遠く逃げるのには多少不利であるが、エドワードとイブリンはどうやら共通の寝室を使っているらしく、まとめて両者を片付けることができた。
二人は近くに人がいないことを確認し、ユーリに見張りをさせ、二人の部屋を見張る。
鍵穴からは二人が部屋の中で晩酌を楽しんでいる姿が見えた。仲睦まじく酒を楽しんでいる姿からは本当に息子の悪事を知った上で加担していたのかと疑うほどに仲睦まじい様子を見せていたが、カーラは人間の中には二面性があることを理解していた。
故に微笑ましい晩酌の光景を見ても躊躇うことなくメイドを装っての呼び出しを行えた。
「エドワード様、イブリン様、お待たせして申し訳ありませんわ。先程ご注文をいただきましたワインを持って参りましたの」
「ワインだと?そんなものを頼んだ覚えはないが」
「まぁ、いいじゃない。もし、違っていたのならば私たちの手でお仕置きを行えばいいだけなのだから」
イブリンの声から聞こえた『お仕置き』という言葉はどこか意味深に聞こえ、これまで息子の悪事に積極的に関わっていたことがわかる。カーラは怒りの感情が強く湧き上がっていく。
カーラは声を潜ませてシュポスと相談して扉を開いた瞬間同時に二人を襲撃することを立案したのだ。
シュポスは首を縦に動かし、カーラの言葉を了承する。それから一旦扉の前を離れてから二人が扉を開けるのを待った。
そして扉が開いた瞬間に二人同時に飛び掛かり、互いに構えていた針を二人に向かって突き立てていく。
カーラの針がイブリンの耳の中へと食い込み、シュポスの針がエドワードの眉間へと突き刺さっていく。
これで悍ましい二人の老人はこの世から永遠に去ることになったのだった。
二人は互いの針を二人の遺体から抜き取ると、そのままユーリと共に闇に紛れながら屋敷を後にしていくのだった。
屋敷を後にし、城下町へと辿り着き、駆除人ギルドへと向かい、ギルドマスターに駆除の報告を行う。
だが、肝心のギルドマスターはこうした厄介な事例に関しては初めて対処するために頭を悩ませていた。
相手が駆除人であるのならば報酬を山分けするのが規則である。しかし、二人は駆除人ではない。ネオドラビア教所属の暗殺者なのだ。二人が混じったのはたまたま標的が重なったからという偶然によるものだった。
しかし、二人の話によれば本来の標的は男爵だけであったのにも関わらず、その家族までも皆殺しにする結果になったというのだから結果的にこの依頼は達成されたことになる。彼らの働きがなければカーラはもう少し苦戦していたことも考慮すると、ギルドマスターはお金を払うしかなかった。
加えて、ギルドマスターは二人に報酬を払うことで自分たちが加担したという事実を二人に植え付け、二人を教団に喋らせないようにするという目的もあった。
ギルドマスターは理由があったとはいえ掟を破って二人を受け入れたカーラを叱責し、後払いの報酬から三人に報酬を渡していくのだった。
カーラが鍵穴から部屋の様子を覗くと、ディアナは椅子の上で読書をしているところだった。鍵穴から表紙を確認すると最近流行りの古代の神話をわかりやすく小説に書き下したようなものを読んでいるらしい。神話とはこの世に最後に読む本としては適切ではないだろうか。
カーラは扉をノックした上に飲み物を運んできたメイドを装おってティアナを呼び出したのだった。
ディアナは扉の向こうから機嫌の悪い声を出しながら部屋の扉を開けていく。
「ちょっと、遅いじゃないッ!」
「……申し訳ありません」
カーラがそう言ってディアナの背中を掴んで、その首元に針を突き立てようとした時だ。不意にディアナの首元に長くて細い鞭が巻き付いていく。カーラが慌ててディアナの体から離れ、その鞭の様子を見つめると、鞭がドアノブに巻き付いた上にディアナの首元に巻き付いていた気が付く。ディアナの体はドアノブに巻き付いた鞭に引っ張られていき、扉の前で彼女は助けを求めて手を伸ばしていくものの、カーラはその姿を見ていることしかできなかった。
鞭が強く締められていくとディアナは首の骨が折れたことによってその生涯という名の舞台に強制的に幕を下ろされたのだった。
カーラが鞭が戻っていく方向を見つめていく。初めてカーラの視界に映るのは深い夜の闇ばかりであった。だが、その闇の中から闇を切り開いていくかのようにユーリの姿が見えた。カーラがはっきりとユーリ本人だと断定できたのは一度ギークとの戦いに負けて負傷したユーリの姿を見たことがあったからだ。
ユーリはカーラの元に辿り着くとまるで、親しい友人と久し振りに再開したかのような口調で話し掛けてきたのだった。
「よぉ、久し振りだな。カーラ」
「お久し振りでございますわ。ユーリさん」
「あぁ、そんなことよりもだ。カーラは今夜は何の用があってここに来たのだ?」
「私はこの屋敷に巣食う害虫の駆除に参りましたの。多くの罪のない人たちを己の身勝手な欲望で殺す害虫の駆除が目的ですわ」
「なるほど、オレたちはオレたちの所属する神に害をなす奴らへの粛清ってところかな?」
「なるほど、お互いに目的は違えども標的が運悪く被ってしまったということでよろしいでしょうか?」
カーラが両目に青白い光を帯びながらユーリに向かって尋ねる。ユーリはカーラの言葉を聞いて黙って首を縦に動かす。
同時にユーリは鞭を構えながらカーラと向き合っていく。カーラも来るべき鞭の攻撃に備えて袖の下に仕込んでいた針を出して、ユーリに向かって突き付けていく。
鞭と針。距離があるのならば鞭の方が有利だろう。しかし、可能性としては五分五分というところだ。その理由はカーラの腕にあった。カーラの針を使っての駆除の腕前は非常に優れたものであり、鞭を避けたり、弾いたりしながらユーリの首元に針を突きつけ、そのまま首元から針を突き刺してユーリを絶命させることもできた。
もちろんユーリとしてもその可能性は頭の中に置いているから簡単にカーラを近付けたりはしないだろう。カーラが近付く前に鞭を放って、カーラの体に打撃を与えるくらいはやりかねない。その後で飛び掛かってカーラの首を絞めることはやりかねない。お互いに一色触発の状態が続いたところでシュポスがネイソンの部屋の中から出てきたのは幸いだった。
明るい笑顔を浮かべたシュポスは二人の間に割って入り、隙を見せれば今にも殺し合いかねない二人を必死に宥めたのだった。
ネイソンの説得の結果二人はようやく互いの武器を収めたのであった。
シュポスは二人の肩を叩いた上で満面の笑みを浮かべて提案したのだった。
「どうせだったら、奴らを協力して始末しねぇか?」
「本気でして?あなた方とは所属が違うはずですわ。大体あなた方に私の駆除に力を貸すメリットなどございませんわ」
「……オレが駆除人の真似をしたくなったという理由では駄目か?」
「あなた方は駆除人ではございませんので……」
「らしいぜ、ここはさっさと屋敷を去った方が得なんじゃねぇのか?」
ユーリの言葉を聞いてシュポスは考え込む素振りを見せていた。
だが、すぐに明るい笑顔を浮かべて言った。
「なら、お前だけ逃げな。オレはカーラと駆除人をするから」
「……お前、そんなバカなことをやっていると、本当に首が飛ぶぞ」
「そう固いことを言うな。わざわざこの辺境の兵隊であるお前を本山所属である相棒に指名したのはオレなんだぞ」
「それとこれとは話が別だろうが、というか、お前はいつからそんな風に恩を着せるようになったんだ?」
「その恩に負けて、暗殺しなくてもよかったディアナを始末したのは誰だっけ?」
シュポスがニヤニヤとした笑みを浮かべながら問い掛ける。
「仕方がないだろ。帰った後で資料を読んで憤慨したお前が男爵だけじゃなくてその家族も暗殺したいと言い出したんだから」
「そうしないと暗殺を受けないと駄々をこねたからな。まぁ、駆除人の真似事というのも面白いものだろ?」
シュポスの問い掛けに対してユーリは不満そうに顔を背けていた。
そして立場上は逆らえなかったのか、毒を吐いたもののシュポスに付き従うことにしたのだった。
カーラは二人に先にレオを始末したことを告げ、残るはエドワードとイブリンの二名だけと説明したのだった。
カーラとしても掟に反するために二人を引き入れたくはなかったのだが、断れば一色触発の状況になり、この屋敷の中で殺し合うことになる可能性もあったので受け入れざるを得なかったのだ。
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二人は互いの針を二人の遺体から抜き取ると、そのままユーリと共に闇に紛れながら屋敷を後にしていくのだった。
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だが、肝心のギルドマスターはこうした厄介な事例に関しては初めて対処するために頭を悩ませていた。
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しかし、二人の話によれば本来の標的は男爵だけであったのにも関わらず、その家族までも皆殺しにする結果になったというのだから結果的にこの依頼は達成されたことになる。彼らの働きがなければカーラはもう少し苦戦していたことも考慮すると、ギルドマスターはお金を払うしかなかった。
加えて、ギルドマスターは二人に報酬を払うことで自分たちが加担したという事実を二人に植え付け、二人を教団に喋らせないようにするという目的もあった。
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