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第三章『私がこの国に巣食う病原菌を排除してご覧にいれますわ!』
復讐というのは何のためにあるの?
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エドガーとマグシーの両名は自身が当面の棲家にしている林近くの空き家が七人ほどの人物に囲まれていることに気が付いた。
二人は当初自分たちと因縁の深いハンセン公爵家の刺客かと考えたのだが、それにしては殺気が消えていたの。そのためエドガーは自分たちを囲んでいるのが刺客ではなく、この街の駆除人がカーラを守る目的で攻撃を仕掛けてきたのだと考えた。
「いよいよ、この街の駆除人どもが総攻撃を仕掛けてきたみたいですな」
マグシーはエドガーが何かをいうよりも前に壁に立てかけていた剣を手に取りながら言った。
「あぁ、みたいだな」
ここまでのことを思うとむしろ遅いくらいである。もう少しで滞在費が尽きるところだったではないか。
二人は苦笑いを浮かべながら、そんなくだらないことを考えていると、扉が勢いよく開かれ、剣を振り上げた中年男性の姿が見えた。自身に向かって襲い掛かってきた男性をエドガーは一直線に躊躇うこともなく斬り伏せたのであった。
中年の男はエドガーの剣が早くて見えなかったのだろう。そのまま一刀両断にされ玄関の前に倒れた。
続いて、今度は赤い髪をしたニキビの目立つ若い男が短剣を構えながら頭上から襲いかかってこようとしたのだが、マグシーは頭上に向かって剣を突き上げることで男を返り討ちにしたのだった。
二人はそれを終えてから棲家を抜け出ると、互いに背を預けながら自分たちの家の周りを取り囲む五人ほどの敵たちに剣を構えていくのだった。
カーラやヒューゴを含む五人の駆除人たちは仲間二人が葬られたことを恐れ、なかなか近付いて来れないようであった。
エドガーは物足りないとばかりに剣を振り上げ、その辺り一帯を震わせるかのように大きな声で叫んだのである。
「どうした!?貴様らは所詮こんな程度か!?この程度の弱さで貴様らは駆除人などと名乗っているのか!?」
その言葉を聞いても言い返すことができなかったのだろう。集まった駆除人たちは悔しげに下唇を噛み締めている。
エドガーが情けない姿を見せる駆除人たちの姿を見て鼻を鳴らしていると、不意に背後でヒュッと微かに風を切る音が聞こえ、慌てて振り返ると、自身の首元を目掛けて長鞭が飛んできていることに気が付いた。
恐らく長鞭で自身の首元を巻き付け、そのまま引っ張り上げて始末する算段であったのだろう。考えたものである。
だが、そんな容易い攻撃に引っ掛かるエドガーではない。エドガーは剣を持ってきて長鞭を捕まえると、そのまま剣を使って長鞭ごと使用者を投げ飛ばしたのであった。
自身の家の近くに聳え立つ林の入り口付近にある木の陰から悲鳴が聞こえた。エドガーが鞭を辿って木陰へと向かうと、そこには鞭を持った可愛らしい顔をした絶世と冠しても文句の言いようがないほどの美貌を持つ少年の姿が見えた。
「貴様か?先程、おれに向かって鞭を放ったのは?」
「だったらどうする?」
少年は鋭い目でエドガーを睨み付けながら問い掛けた。エドガーはそれに対し絡まっていた長鞭を解いてから、剣を突き付けていく。エドガーとしてはこのまま少年を串刺しにする予定だった。
エドガーがその予定を確実に進めていこうと考えていた時だ。背後から気配を感じ、振り返ると、背後に針を構えた簡素なドレスを着た金髪の少女の姿が見えた。間違いない。カーラだ。
エドガーはカーラを見た途端に果てしない怒りに駆られた。突き動かされた怒りというものは抑えようと思っても抑えられないものであるらしい。
エドガーは無造作に剣を振り回していくものの、冷静さを欠いているために剣は当たらない。
翻弄されていくエドガーの姿を見て、マグシーは棲家の辺りでヒューゴを相手に取りながらも懸命に落ち着きを取り戻すように叫んだのである。
相棒の言葉を聞いて、エドガーはようやく落ち着きを取り戻し、今度こそカーラを確実に駆除しようかと考えていた時だ。木の近くで倒れていたはずのギークの姿が見当たらないことに気が付いた。
エドガーが首を傾げていると、ギークが腰から剣を引き抜いて、自身に襲い掛かってきていたことに気が付く。
エドガーはギークの剣を受け止めると、そのままギークを睨み付けた。
「なぜだ。お前たちには関わりようのないことではないか?だというのに、どうしてお前たちはあの小娘の味方なぞをするのだ!?」
「そりゃあ、あの子に生きていて欲しいと願っているからさ」
ギークの言葉にエドガーは揺り動かされたような気がした。自身の娘は人の恨みを買って殺されてしまった。
だが、娘を殺した相手は人から生きることを望まれている。この差はなんだというのだろう。自分の娘と仇のカーラとにはなんの違いもないはずだ。
エドガーはまたしても冷静さを欠いてしまった。大きな声を振り上げて、ギークに向かって襲い掛かっていく。
エドガーの見せた僅かな隙はカーラにとって絶好の機会へと繋がった。カーラは針を逆手に構えて、エドガーの背中へと飛び掛かり、その延髄に向かって勢いよく針を食い込ませたのである。
これまで多くの害虫を駆除してき名うての駆除人であったとしても、また、これまで多くの刺客を葬ってきた剣客であったとしても冥界王の導きからは逃れられない運命であったのかもしれない。
エドガーの延髄へと打ち込まれた針は脳へと運び込まれていくはずの血液の動きを阻害し、そのまま彼を死へと至らしめたのであった。
カーラが針を抜き取ると、大きな声を上げたマグシーが剣を振り上げながらこちらへと向かってきていた。
「よくもッ!よくもッ!よくもエドガーさんを殺したなァァァァ~!!!」
マグシーは怒りに駆られていたものの、冷静さは失っていなかったらしい。
カーラは咄嗟の判断で後方へ下がらなければそのまま一直線に斬られていたに違いなかった。勢いのままマグシーがカーラへと追い縋ろうとしていたところにギークが脇から割り込み、そのままマグシーに向かって剣を振るったのであった。
マグシーは剣を盾にして攻撃を防ぎ、そのままギークと激しい斬り合いを続けていく。今しかあるまい。カーラは針を逆手に握り締め、先程のエドガーの例を前例とし、マグシーに向かって攻撃を仕掛けていったのである。
だが、先程も記したようにマグシーはエドガーを殺されたという怒りに駆られていたものの、冷静さというものは失っていない。ギークの剣を弾き返し、カーラに剣を振り上げたのであった。
横一文字に向かって繰り出されるマグシーの剣はカーラの喉まであと一歩のところへと迫っていた。あと少しカーラが反っていなければ喉を掻き切り、その命を奪っていたに違いない。カーラは運によって危ういところを助けられたといってもいいだろう。
マグシーはもう一撃を喰らわせようとしたところ、またしてもギークの妨害によって断念せざるを得なかった。
マグシーはカーラを始末することができなかった鬱憤を晴らすかのようにギークに対する攻撃を強めていく。
カーラも加わろうとしたのだが、いかせんマグシーから放たれる殺気に怯んでしまい、飛び掛かることもできなかったのだ。そのために臆病であるとカーラを煽ることもできまい。
というのも、自身が助けようと飛び掛かったとしても返り討ちにされるというのが目に見えているからだ。
それでも何か別の方法でギークを助ける方法があるはずだ。カーラが何かないかと思い立ち、慌てて辺りを見回していると、近くにギークが落とした長鞭が見えた。これを使えば遠方から助けられるかもしれない。
カーラは咄嗟に長鞭を取り上げ、近くでマグシーに向かって長鞭を放っていく。
狙うのは首元ではない。足元である。足のバランスを奪い、転倒させたところをギークに狙わせるのいう筋書きであった。完璧な作戦である。惜しむべき点はカーラがこの鞭を初めて使うということだ。
だが、ここまできた以上はやるしかあるまい。カーラは長鞭を飛ばし、マグシーの足のバランスを奪おうと試みた。しかし、鞭は上手い具合に巻き付かず、結果としてマグシーの両足を鞭で叩くというものに終わってしまった。もし、この時の使用者がギーク本人や亡くなったユーリであるのならばこの試みは成功していたに違いない。
カーラは改めてこれまで出会ってきた鞭使いたちの凄さというものを思い知らされたのだった。
先程の一撃はマグシーにはなんの関心も与えられていなかったことを自覚した。
ギークが追い詰められていくのをカーラが絶望に瀕した顔で見つめていた時だ。
鋭い音が聞こえたかと思うと、宙の上で細い閃光の尾を引きながらマグシーの背中へと直撃したのであった。カーラが背中を確認すると、それはクロスボウのために作られた短めの矢。慌てて振り返ると、エドガーとマグシーが根城にしていた家のあたりにレキシーがクロスボウを構えて立っていることに気が付く。
どうやらレキシーが棲家の辺りで合流した後で、自分たちの戦いを見つめながら、タイミングを見計らってクロスボウの引き金を引いたに違いない。
故にここまで反撃が上手くいったのだろう。カーラが安堵した笑みを浮かべていると、マグシーが短い悲鳴を上げ、痛みで悶えており、両足が痛さに耐え切れず揺らいでいることに気が付いた。
ギークがその隙を逃さない筈がなかった。剣を振り上げて、マグシーに向かって勢いよく振り下ろしたのであった。
ギークの剣によってマグシーは大きな悲鳴を上げて地面の上へと倒れ込んだ。
恐らく仕留められたに違いない。戦いが終わるのと同時に雨が降り注いできた。
土砂降りの雨だ。まるで、バケツをひっくり返したかのような大雨が駆除人たちを襲っていく。
カーラたちによる二人への埋葬を終え、自宅に帰り身を清めた後でお茶を啜りながらカーラは溜息を吐きながらどこか寂しげな様子で言った。
「……これで私は親子二人をこの針で冥界の門をくぐらせたことになりますのね」
「だね。それだけあたしたちは罪が深い存在なんだよ。なんだかんだ正当化してもやっていることは汚い人殺し稼業さ。だから、そのツケがいつ回ってくるのかわかったもんじゃない。そういう人間なんだよ。あたしたちは」
レキシーがお茶を啜りながら言った。
「ですわね」
カーラはレキシーの言葉に溜息を交えながら答えた。
この時外で降り注ぐ雨はより一層強くなり、激しい雨音が室内にいても聞こえた。雨はカーラたちの不安を表すかのように凄まじい音を立てて荒れていた。
本日は投稿時間がこのようにバラバラとなってしまい誠に申し訳ありませんでした。所用のために色々とありましたのと昨日の夜に色々とありまして、書き溜める余裕がなかったので、普段ならば上げない時間に上げさせていただきました。
改めてお詫び致します。
二人は当初自分たちと因縁の深いハンセン公爵家の刺客かと考えたのだが、それにしては殺気が消えていたの。そのためエドガーは自分たちを囲んでいるのが刺客ではなく、この街の駆除人がカーラを守る目的で攻撃を仕掛けてきたのだと考えた。
「いよいよ、この街の駆除人どもが総攻撃を仕掛けてきたみたいですな」
マグシーはエドガーが何かをいうよりも前に壁に立てかけていた剣を手に取りながら言った。
「あぁ、みたいだな」
ここまでのことを思うとむしろ遅いくらいである。もう少しで滞在費が尽きるところだったではないか。
二人は苦笑いを浮かべながら、そんなくだらないことを考えていると、扉が勢いよく開かれ、剣を振り上げた中年男性の姿が見えた。自身に向かって襲い掛かってきた男性をエドガーは一直線に躊躇うこともなく斬り伏せたのであった。
中年の男はエドガーの剣が早くて見えなかったのだろう。そのまま一刀両断にされ玄関の前に倒れた。
続いて、今度は赤い髪をしたニキビの目立つ若い男が短剣を構えながら頭上から襲いかかってこようとしたのだが、マグシーは頭上に向かって剣を突き上げることで男を返り討ちにしたのだった。
二人はそれを終えてから棲家を抜け出ると、互いに背を預けながら自分たちの家の周りを取り囲む五人ほどの敵たちに剣を構えていくのだった。
カーラやヒューゴを含む五人の駆除人たちは仲間二人が葬られたことを恐れ、なかなか近付いて来れないようであった。
エドガーは物足りないとばかりに剣を振り上げ、その辺り一帯を震わせるかのように大きな声で叫んだのである。
「どうした!?貴様らは所詮こんな程度か!?この程度の弱さで貴様らは駆除人などと名乗っているのか!?」
その言葉を聞いても言い返すことができなかったのだろう。集まった駆除人たちは悔しげに下唇を噛み締めている。
エドガーが情けない姿を見せる駆除人たちの姿を見て鼻を鳴らしていると、不意に背後でヒュッと微かに風を切る音が聞こえ、慌てて振り返ると、自身の首元を目掛けて長鞭が飛んできていることに気が付いた。
恐らく長鞭で自身の首元を巻き付け、そのまま引っ張り上げて始末する算段であったのだろう。考えたものである。
だが、そんな容易い攻撃に引っ掛かるエドガーではない。エドガーは剣を持ってきて長鞭を捕まえると、そのまま剣を使って長鞭ごと使用者を投げ飛ばしたのであった。
自身の家の近くに聳え立つ林の入り口付近にある木の陰から悲鳴が聞こえた。エドガーが鞭を辿って木陰へと向かうと、そこには鞭を持った可愛らしい顔をした絶世と冠しても文句の言いようがないほどの美貌を持つ少年の姿が見えた。
「貴様か?先程、おれに向かって鞭を放ったのは?」
「だったらどうする?」
少年は鋭い目でエドガーを睨み付けながら問い掛けた。エドガーはそれに対し絡まっていた長鞭を解いてから、剣を突き付けていく。エドガーとしてはこのまま少年を串刺しにする予定だった。
エドガーがその予定を確実に進めていこうと考えていた時だ。背後から気配を感じ、振り返ると、背後に針を構えた簡素なドレスを着た金髪の少女の姿が見えた。間違いない。カーラだ。
エドガーはカーラを見た途端に果てしない怒りに駆られた。突き動かされた怒りというものは抑えようと思っても抑えられないものであるらしい。
エドガーは無造作に剣を振り回していくものの、冷静さを欠いているために剣は当たらない。
翻弄されていくエドガーの姿を見て、マグシーは棲家の辺りでヒューゴを相手に取りながらも懸命に落ち着きを取り戻すように叫んだのである。
相棒の言葉を聞いて、エドガーはようやく落ち着きを取り戻し、今度こそカーラを確実に駆除しようかと考えていた時だ。木の近くで倒れていたはずのギークの姿が見当たらないことに気が付いた。
エドガーが首を傾げていると、ギークが腰から剣を引き抜いて、自身に襲い掛かってきていたことに気が付く。
エドガーはギークの剣を受け止めると、そのままギークを睨み付けた。
「なぜだ。お前たちには関わりようのないことではないか?だというのに、どうしてお前たちはあの小娘の味方なぞをするのだ!?」
「そりゃあ、あの子に生きていて欲しいと願っているからさ」
ギークの言葉にエドガーは揺り動かされたような気がした。自身の娘は人の恨みを買って殺されてしまった。
だが、娘を殺した相手は人から生きることを望まれている。この差はなんだというのだろう。自分の娘と仇のカーラとにはなんの違いもないはずだ。
エドガーはまたしても冷静さを欠いてしまった。大きな声を振り上げて、ギークに向かって襲い掛かっていく。
エドガーの見せた僅かな隙はカーラにとって絶好の機会へと繋がった。カーラは針を逆手に構えて、エドガーの背中へと飛び掛かり、その延髄に向かって勢いよく針を食い込ませたのである。
これまで多くの害虫を駆除してき名うての駆除人であったとしても、また、これまで多くの刺客を葬ってきた剣客であったとしても冥界王の導きからは逃れられない運命であったのかもしれない。
エドガーの延髄へと打ち込まれた針は脳へと運び込まれていくはずの血液の動きを阻害し、そのまま彼を死へと至らしめたのであった。
カーラが針を抜き取ると、大きな声を上げたマグシーが剣を振り上げながらこちらへと向かってきていた。
「よくもッ!よくもッ!よくもエドガーさんを殺したなァァァァ~!!!」
マグシーは怒りに駆られていたものの、冷静さは失っていなかったらしい。
カーラは咄嗟の判断で後方へ下がらなければそのまま一直線に斬られていたに違いなかった。勢いのままマグシーがカーラへと追い縋ろうとしていたところにギークが脇から割り込み、そのままマグシーに向かって剣を振るったのであった。
マグシーは剣を盾にして攻撃を防ぎ、そのままギークと激しい斬り合いを続けていく。今しかあるまい。カーラは針を逆手に握り締め、先程のエドガーの例を前例とし、マグシーに向かって攻撃を仕掛けていったのである。
だが、先程も記したようにマグシーはエドガーを殺されたという怒りに駆られていたものの、冷静さというものは失っていない。ギークの剣を弾き返し、カーラに剣を振り上げたのであった。
横一文字に向かって繰り出されるマグシーの剣はカーラの喉まであと一歩のところへと迫っていた。あと少しカーラが反っていなければ喉を掻き切り、その命を奪っていたに違いない。カーラは運によって危ういところを助けられたといってもいいだろう。
マグシーはもう一撃を喰らわせようとしたところ、またしてもギークの妨害によって断念せざるを得なかった。
マグシーはカーラを始末することができなかった鬱憤を晴らすかのようにギークに対する攻撃を強めていく。
カーラも加わろうとしたのだが、いかせんマグシーから放たれる殺気に怯んでしまい、飛び掛かることもできなかったのだ。そのために臆病であるとカーラを煽ることもできまい。
というのも、自身が助けようと飛び掛かったとしても返り討ちにされるというのが目に見えているからだ。
それでも何か別の方法でギークを助ける方法があるはずだ。カーラが何かないかと思い立ち、慌てて辺りを見回していると、近くにギークが落とした長鞭が見えた。これを使えば遠方から助けられるかもしれない。
カーラは咄嗟に長鞭を取り上げ、近くでマグシーに向かって長鞭を放っていく。
狙うのは首元ではない。足元である。足のバランスを奪い、転倒させたところをギークに狙わせるのいう筋書きであった。完璧な作戦である。惜しむべき点はカーラがこの鞭を初めて使うということだ。
だが、ここまできた以上はやるしかあるまい。カーラは長鞭を飛ばし、マグシーの足のバランスを奪おうと試みた。しかし、鞭は上手い具合に巻き付かず、結果としてマグシーの両足を鞭で叩くというものに終わってしまった。もし、この時の使用者がギーク本人や亡くなったユーリであるのならばこの試みは成功していたに違いない。
カーラは改めてこれまで出会ってきた鞭使いたちの凄さというものを思い知らされたのだった。
先程の一撃はマグシーにはなんの関心も与えられていなかったことを自覚した。
ギークが追い詰められていくのをカーラが絶望に瀕した顔で見つめていた時だ。
鋭い音が聞こえたかと思うと、宙の上で細い閃光の尾を引きながらマグシーの背中へと直撃したのであった。カーラが背中を確認すると、それはクロスボウのために作られた短めの矢。慌てて振り返ると、エドガーとマグシーが根城にしていた家のあたりにレキシーがクロスボウを構えて立っていることに気が付く。
どうやらレキシーが棲家の辺りで合流した後で、自分たちの戦いを見つめながら、タイミングを見計らってクロスボウの引き金を引いたに違いない。
故にここまで反撃が上手くいったのだろう。カーラが安堵した笑みを浮かべていると、マグシーが短い悲鳴を上げ、痛みで悶えており、両足が痛さに耐え切れず揺らいでいることに気が付いた。
ギークがその隙を逃さない筈がなかった。剣を振り上げて、マグシーに向かって勢いよく振り下ろしたのであった。
ギークの剣によってマグシーは大きな悲鳴を上げて地面の上へと倒れ込んだ。
恐らく仕留められたに違いない。戦いが終わるのと同時に雨が降り注いできた。
土砂降りの雨だ。まるで、バケツをひっくり返したかのような大雨が駆除人たちを襲っていく。
カーラたちによる二人への埋葬を終え、自宅に帰り身を清めた後でお茶を啜りながらカーラは溜息を吐きながらどこか寂しげな様子で言った。
「……これで私は親子二人をこの針で冥界の門をくぐらせたことになりますのね」
「だね。それだけあたしたちは罪が深い存在なんだよ。なんだかんだ正当化してもやっていることは汚い人殺し稼業さ。だから、そのツケがいつ回ってくるのかわかったもんじゃない。そういう人間なんだよ。あたしたちは」
レキシーがお茶を啜りながら言った。
「ですわね」
カーラはレキシーの言葉に溜息を交えながら答えた。
この時外で降り注ぐ雨はより一層強くなり、激しい雨音が室内にいても聞こえた。雨はカーラたちの不安を表すかのように凄まじい音を立てて荒れていた。
本日は投稿時間がこのようにバラバラとなってしまい誠に申し訳ありませんでした。所用のために色々とありましたのと昨日の夜に色々とありまして、書き溜める余裕がなかったので、普段ならば上げない時間に上げさせていただきました。
改めてお詫び致します。
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