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第三章『私がこの国に巣食う病原菌を排除してご覧にいれますわ!』
悪魔とお会い致しまして
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カーラが自身に恨みを持つエドガーという男とその相棒であるマグシーたちと決闘を行ってから一週間という時間が経過した。
その間にもネオドラビア教の襲撃は絶えることなく続いた。ある時は道端で通り魔を装って、ある時は事故に見せかける形でそれぞれ刺客が現れ、カーラたちの命を狙っていた。
その度にカーラたちは自分たちの得物を用いて、ネオドラビア教の刺客たちを打ち破っていったのだった。
刺客たちを相手に取る駆除人たちは自分と対峙する刺客たちの焦燥感を見るたびに追い詰められているということが肌で察せられた。
その姿はカーラがかつてレキシーに向かって語った『手負いの獣は喉笛に噛み付く』という言葉がピタリと当て嵌まっているように思われた。
どうやらこれ以上国王によって力を削がれる前に因縁がある城下町の駆除人たちを駆除しておく必要があるという理由で戦士たちを用いて執拗な攻撃を浴びせているのだろう。
現にカーラたちが戦士たちはどこか必死であった。誰も彼も猟犬を追いかけて顔全体から汗を流しながら獲物を追う猟師のような表情をしていたのだ。
その姿はカーラからすればどこか哀れに映った。敵を倒すためだけに派遣された戦士。教団の敵を倒すためだけに教育され、他の楽しみもなくひたすら教団のために尽くすのだ。カーラはそんな戦士たちがこれまでにどのような人生を歩んできたのかというのかが気掛かりになっていた。
そのことをレキシーに相談してみると、レキシーは難しい顔をしながら唸っていた。
だが、最終的に出した回答は、
「あたしには想像もできないねぇ」
という当たり障りのないものであった。
カーラはレキシーからしてもそのように答えるしかないのだと思い、深くは追及しなかった。
翌日も診療所の手伝いを終え、服飾店へとドレスを渡した帰り道のことだった。
若い男性とその母親と思われる中年の女性とが道を歩きながら噂話を囁き合っていたのである。
「聞いたかい?」
「聞いたって何をさ?」
「いよいよ陛下がネオドラビア教を壊滅させるために教皇イノケンティウス・ビグラフトをここ王都に呼び寄せるって話さ」
カーラはその言葉を聞いて思わず立ち止まってしまう。若い男性はカーラの存在など気にしなかったのか、熱心な口調で中年の女性に対して教皇イノケンティウス召喚の件について語っていく。
男性曰く、教皇イノケンティウスは宗教施設内に戦力を隠し持っているという噂があり、反逆罪の疑いがかけられていることや宗教団体であることを隠れ蓑に信徒たちから多額の寄付金を受け取り、その金を懐へと仕舞い込んだことなどを咎められて召喚されるのだという。
他にも教団内においては各街にいたとされる大司教が多額の上納金や献上品を差し出し、あたかも国王のように振る舞っていたことも国王フィンの怒りを買ったとされるのも大きな原因だとされている。
話したいことを全て話し終えた若い男性は満足したのか、中年の女性の手を引いて、長い話を聞かせたお詫びとばかりに近くの菓子店へと連れていく。
カーラはその二人を見送ってから自宅へと戻っていく。普段であるのならばドレスを納めた帰りに菓子を買って帰るのだが、この日ばかりは寄り道することなく自宅へと戻った。
少しばかり興奮した様子で自宅に戻ると、カーラはレキシーにあのことを伝えたのだが、レキシーは診療所から自宅までの帰り道で同じ話を仕入れたらしく、カーラの話を聞いても驚く様子は見せなかった。
へぇ~と適当な相槌を打っただけだ。それからカーラの顔を見ながら口を一文字に結びながら言った。
「あんたが言いたいことは大体わかるさ。駆除人ギルドの力を使ってイノケンティウスを駆除しようという魂胆だろ?」
「えぇ、いけませんの?」
「生憎だけれどもあたしたちは駆除人だよ。報酬もなしに動くっていうのはどうもねぇ」
レキシーの言葉は正論であった。カーラは反論することができずにいた。害虫駆除人はギルドマスターを通して依頼人から金を渡されることで初めて駆除が許可されるのだ。金もなしに自分たちの一方的な判断で駆除を行えばそれはまさしく神にも匹敵する思い上がりとなるのだ。
そうして思い上がってしまえば世の中にのさばる悪を次々と殺していかなくてはならない。それは世界に人間というものがいる限り、無限に続けなくてはならぬ行為であり、例えるのならば無限に続くマラソンにも匹敵する愚行ともいえるだろう。
そして、休むことなく走り続ければいつかは倒れてしまうように、思い上がって人を殺し続ける人はいずれ返り討ちに遭ってしまうのだ。
そのため害虫駆除人が害虫駆除の代金を貰うのは人間としての最後の歯止めであるといってもいい。
そして、害虫駆除人は公的権力によって裁けない害虫を非合法の手段で裁くという最後の手段という前提もある。
カーラもその前提についてはプロの駆除人として、十分に理解していたつもりなのだが、ネオドラビア教と決着を付けることができるというのでその辺りの判断が鈍ってしまっていたらしい。
カーラは非礼を詫びてからレキシーの機嫌を取るために本日の夕食の支度を自ら買って出た。
その日の夕食はそら豆と枝豆、それに鶏肉を混ぜて煮込んだスープに白い丸パンにサラダという簡素なメニューであった。二人はその日の食事を雑談を交わしながら楽しげに食べていた。食事を進めていく中で、先程のやり取りは完全に忘れられたらしい。
お陰で楽しい夕食の時間になったことには感謝するより他にない。
このまま何事もなく物事が運ぶのかと思ったのだが、そうでもないらしい。
翌日の朝にイノケンティウス本人が召喚を拒否し、その代理に手を挙げたのが、城下町に布教という名目で滞在していたゼネラル・グレゴリオという男であった。ゼネラルは大司教の地位にあり、イノケンティウスの代理としては申し分のない男であったといってもいいだろう。
もっともゼネラルはネオドラビア教の裏における戦士たちを総括する『提督』という役割にも就いており、表と裏の両方においてネオドラビア教を総括する役割にあるのだが、この事実は外部の人間には知られてない。カーラたちすらゼネラル・グレゴリオという男の名前は今日初めて聞いた。
カーラたちは当初この男をただの大司教だと思って甘く見ていた。だが、三日ほど後になってゼネラル・グレゴリオという男が大司教などという器で収まる男でないということがわかったのだ。診療所を自ら訪れ、対峙したことで、二人はそのことを理解した。
カーラもレキシーもあの時のことはしばらく忘れられないだろう。
その日の朝、日が照りつける頃に明らかに異様な僧衣を身に纏った男たちを引き連れてゼネラル・グレゴリオは診療所に姿を現した。
義手に鋭い眼光を帯びた瞳から二人は既に只者ではないと察していた。ゼネラルは自らの名前を名乗り、職業を告げると、そのまま二人に頭を下げた。その後でレキシーに腹の痛みを訴えたのである。
この時レキシーとカーラは二人で診察にあたったのだが、ゼネラルの言葉が嘘であるということを見抜いた。
腹の痛みなどない。ゼネラルの腹は健康そのものであった。見抜いた後で二人は顔を見合わせながらお互いにゼネラルの目的を察し、苦い顔を浮かべていた。
ゼネラルはかつて、イーサンやパトリックといったネオドラビア教からの戦士たちが自分たちを始末するために用いたのと同じ方法で現れたのだ。
だが、これまでの敵たちと異なるのはこれまでの敵たちが基本的に一人だけで襲撃を掛けてきたのに対し、ゼネラル・グレゴリオという男は部下を引き連れてやってきたのだ。
万が一、この場で暴れられては困る。周りには大勢の患者たちがいるのだ。
一人だけならば二人で抑えられるかもしれないが、ここまで大人数ならば他の患者たちを人質にして自分たちの命を奪うかもしれない。
そうなれば真っ先にこの場におけるリーダー格であるゼネラルを仕留めるべきだろう。そんなことを考えていた時だ。
ゼネラルが苦痛に顔を歪めたかと思うと、大きな声で腹痛をカーラとレキシーに訴えた。
やむを得ずにカーラがゼネラルの元へと駆け寄ると、ゼネラルがこっそりとカーラに耳打ちを行った。
「お前さんだな?ユーリやシュポスを破った腕利きの駆除人というのは?」
カーラは思わず両肩を強張らせてしまった。だが、すぐに太々しい笑みを浮かべながら口元に意味深な笑みを浮かべながら小声で言い返したのだった。
「えぇ、そうですわ。よくお分かりになりましたわね」
「フフッ、我々の情報網を舐めてもらっては困るな」
ゼネラルは勝ち誇ったような笑みを浮かべながら言った。
「それで、わざわざそんなことをお尋ねになりましたの?」
「フフッ、まさか……オレはな、釘を刺しにきたのさ。お前さん方、駆除人は恐らくオレがあの若造と話をしている隙を狙って殺しに来ようとするんだろうが、それは無駄だと言っておくぞ」
ゼネラルが小さな、氷のような冷たい声でカーラにそう告げるとのと同時にゼネラルの護衛だと思われる僧衣の男たちの目がカーラへと降り注がれていく。
歯切れのいいよく手入れされた剣を思わせるような鋭い視線である。通常の人間であるのならば思わず身震いしてしまうかのような恐ろしい視線だ。
だが、カーラは屈することなく顔に余裕のある笑みを含みながら言葉を返した。
「あら、私たちはそのようなことをするつもりは毛頭ございませんわ。それは恐らく大司教様の思い過ごしというものではありませんの?」
「かもしらんな。だが、貴様らは油断できん存在だ。何をしでかすのかわからん」
「あら、信用がありませんのね」
カーラは惚けた顔を浮かべながら言った。
「覚えておけ、オレはこれまでの奴らとは違うのだとな」
カーラの言い方に腹が立ったのか、ゼネラルは剣の刃のように鋭い瞳でカーラを睨んでいく。
その鋭い眼光はかつての強敵モラン大司教を思い起こさせた。モラン大司教も追い詰められていなければあれ程まで簡単に駆除することはできなかっただろう。
もし、ゼネラルという男を駆除する機会があるのならばその時はモラン大司教以上にゼネラルを追い詰めなくてはならない。そうでなければ駆除は不可能だろう。
そんなことを考えながらカーラは薬棚から胃腸薬を取り出し、ゼネラルを見送りながらそんなことを考え、フィンがゼネラルを相手に上手く立ち回れることを祈ったのだった。
そして、レキシー、カーラとゼネラルが邂逅した日から二日の後に運命の日ともいうべきフィンとゼネラルとの対決の日が訪れたのであった。
二人は街路に集う民衆に紛れながらゼネラルが乗ったバスを見送っていた。
その間にもネオドラビア教の襲撃は絶えることなく続いた。ある時は道端で通り魔を装って、ある時は事故に見せかける形でそれぞれ刺客が現れ、カーラたちの命を狙っていた。
その度にカーラたちは自分たちの得物を用いて、ネオドラビア教の刺客たちを打ち破っていったのだった。
刺客たちを相手に取る駆除人たちは自分と対峙する刺客たちの焦燥感を見るたびに追い詰められているということが肌で察せられた。
その姿はカーラがかつてレキシーに向かって語った『手負いの獣は喉笛に噛み付く』という言葉がピタリと当て嵌まっているように思われた。
どうやらこれ以上国王によって力を削がれる前に因縁がある城下町の駆除人たちを駆除しておく必要があるという理由で戦士たちを用いて執拗な攻撃を浴びせているのだろう。
現にカーラたちが戦士たちはどこか必死であった。誰も彼も猟犬を追いかけて顔全体から汗を流しながら獲物を追う猟師のような表情をしていたのだ。
その姿はカーラからすればどこか哀れに映った。敵を倒すためだけに派遣された戦士。教団の敵を倒すためだけに教育され、他の楽しみもなくひたすら教団のために尽くすのだ。カーラはそんな戦士たちがこれまでにどのような人生を歩んできたのかというのかが気掛かりになっていた。
そのことをレキシーに相談してみると、レキシーは難しい顔をしながら唸っていた。
だが、最終的に出した回答は、
「あたしには想像もできないねぇ」
という当たり障りのないものであった。
カーラはレキシーからしてもそのように答えるしかないのだと思い、深くは追及しなかった。
翌日も診療所の手伝いを終え、服飾店へとドレスを渡した帰り道のことだった。
若い男性とその母親と思われる中年の女性とが道を歩きながら噂話を囁き合っていたのである。
「聞いたかい?」
「聞いたって何をさ?」
「いよいよ陛下がネオドラビア教を壊滅させるために教皇イノケンティウス・ビグラフトをここ王都に呼び寄せるって話さ」
カーラはその言葉を聞いて思わず立ち止まってしまう。若い男性はカーラの存在など気にしなかったのか、熱心な口調で中年の女性に対して教皇イノケンティウス召喚の件について語っていく。
男性曰く、教皇イノケンティウスは宗教施設内に戦力を隠し持っているという噂があり、反逆罪の疑いがかけられていることや宗教団体であることを隠れ蓑に信徒たちから多額の寄付金を受け取り、その金を懐へと仕舞い込んだことなどを咎められて召喚されるのだという。
他にも教団内においては各街にいたとされる大司教が多額の上納金や献上品を差し出し、あたかも国王のように振る舞っていたことも国王フィンの怒りを買ったとされるのも大きな原因だとされている。
話したいことを全て話し終えた若い男性は満足したのか、中年の女性の手を引いて、長い話を聞かせたお詫びとばかりに近くの菓子店へと連れていく。
カーラはその二人を見送ってから自宅へと戻っていく。普段であるのならばドレスを納めた帰りに菓子を買って帰るのだが、この日ばかりは寄り道することなく自宅へと戻った。
少しばかり興奮した様子で自宅に戻ると、カーラはレキシーにあのことを伝えたのだが、レキシーは診療所から自宅までの帰り道で同じ話を仕入れたらしく、カーラの話を聞いても驚く様子は見せなかった。
へぇ~と適当な相槌を打っただけだ。それからカーラの顔を見ながら口を一文字に結びながら言った。
「あんたが言いたいことは大体わかるさ。駆除人ギルドの力を使ってイノケンティウスを駆除しようという魂胆だろ?」
「えぇ、いけませんの?」
「生憎だけれどもあたしたちは駆除人だよ。報酬もなしに動くっていうのはどうもねぇ」
レキシーの言葉は正論であった。カーラは反論することができずにいた。害虫駆除人はギルドマスターを通して依頼人から金を渡されることで初めて駆除が許可されるのだ。金もなしに自分たちの一方的な判断で駆除を行えばそれはまさしく神にも匹敵する思い上がりとなるのだ。
そうして思い上がってしまえば世の中にのさばる悪を次々と殺していかなくてはならない。それは世界に人間というものがいる限り、無限に続けなくてはならぬ行為であり、例えるのならば無限に続くマラソンにも匹敵する愚行ともいえるだろう。
そして、休むことなく走り続ければいつかは倒れてしまうように、思い上がって人を殺し続ける人はいずれ返り討ちに遭ってしまうのだ。
そのため害虫駆除人が害虫駆除の代金を貰うのは人間としての最後の歯止めであるといってもいい。
そして、害虫駆除人は公的権力によって裁けない害虫を非合法の手段で裁くという最後の手段という前提もある。
カーラもその前提についてはプロの駆除人として、十分に理解していたつもりなのだが、ネオドラビア教と決着を付けることができるというのでその辺りの判断が鈍ってしまっていたらしい。
カーラは非礼を詫びてからレキシーの機嫌を取るために本日の夕食の支度を自ら買って出た。
その日の夕食はそら豆と枝豆、それに鶏肉を混ぜて煮込んだスープに白い丸パンにサラダという簡素なメニューであった。二人はその日の食事を雑談を交わしながら楽しげに食べていた。食事を進めていく中で、先程のやり取りは完全に忘れられたらしい。
お陰で楽しい夕食の時間になったことには感謝するより他にない。
このまま何事もなく物事が運ぶのかと思ったのだが、そうでもないらしい。
翌日の朝にイノケンティウス本人が召喚を拒否し、その代理に手を挙げたのが、城下町に布教という名目で滞在していたゼネラル・グレゴリオという男であった。ゼネラルは大司教の地位にあり、イノケンティウスの代理としては申し分のない男であったといってもいいだろう。
もっともゼネラルはネオドラビア教の裏における戦士たちを総括する『提督』という役割にも就いており、表と裏の両方においてネオドラビア教を総括する役割にあるのだが、この事実は外部の人間には知られてない。カーラたちすらゼネラル・グレゴリオという男の名前は今日初めて聞いた。
カーラたちは当初この男をただの大司教だと思って甘く見ていた。だが、三日ほど後になってゼネラル・グレゴリオという男が大司教などという器で収まる男でないということがわかったのだ。診療所を自ら訪れ、対峙したことで、二人はそのことを理解した。
カーラもレキシーもあの時のことはしばらく忘れられないだろう。
その日の朝、日が照りつける頃に明らかに異様な僧衣を身に纏った男たちを引き連れてゼネラル・グレゴリオは診療所に姿を現した。
義手に鋭い眼光を帯びた瞳から二人は既に只者ではないと察していた。ゼネラルは自らの名前を名乗り、職業を告げると、そのまま二人に頭を下げた。その後でレキシーに腹の痛みを訴えたのである。
この時レキシーとカーラは二人で診察にあたったのだが、ゼネラルの言葉が嘘であるということを見抜いた。
腹の痛みなどない。ゼネラルの腹は健康そのものであった。見抜いた後で二人は顔を見合わせながらお互いにゼネラルの目的を察し、苦い顔を浮かべていた。
ゼネラルはかつて、イーサンやパトリックといったネオドラビア教からの戦士たちが自分たちを始末するために用いたのと同じ方法で現れたのだ。
だが、これまでの敵たちと異なるのはこれまでの敵たちが基本的に一人だけで襲撃を掛けてきたのに対し、ゼネラル・グレゴリオという男は部下を引き連れてやってきたのだ。
万が一、この場で暴れられては困る。周りには大勢の患者たちがいるのだ。
一人だけならば二人で抑えられるかもしれないが、ここまで大人数ならば他の患者たちを人質にして自分たちの命を奪うかもしれない。
そうなれば真っ先にこの場におけるリーダー格であるゼネラルを仕留めるべきだろう。そんなことを考えていた時だ。
ゼネラルが苦痛に顔を歪めたかと思うと、大きな声で腹痛をカーラとレキシーに訴えた。
やむを得ずにカーラがゼネラルの元へと駆け寄ると、ゼネラルがこっそりとカーラに耳打ちを行った。
「お前さんだな?ユーリやシュポスを破った腕利きの駆除人というのは?」
カーラは思わず両肩を強張らせてしまった。だが、すぐに太々しい笑みを浮かべながら口元に意味深な笑みを浮かべながら小声で言い返したのだった。
「えぇ、そうですわ。よくお分かりになりましたわね」
「フフッ、我々の情報網を舐めてもらっては困るな」
ゼネラルは勝ち誇ったような笑みを浮かべながら言った。
「それで、わざわざそんなことをお尋ねになりましたの?」
「フフッ、まさか……オレはな、釘を刺しにきたのさ。お前さん方、駆除人は恐らくオレがあの若造と話をしている隙を狙って殺しに来ようとするんだろうが、それは無駄だと言っておくぞ」
ゼネラルが小さな、氷のような冷たい声でカーラにそう告げるとのと同時にゼネラルの護衛だと思われる僧衣の男たちの目がカーラへと降り注がれていく。
歯切れのいいよく手入れされた剣を思わせるような鋭い視線である。通常の人間であるのならば思わず身震いしてしまうかのような恐ろしい視線だ。
だが、カーラは屈することなく顔に余裕のある笑みを含みながら言葉を返した。
「あら、私たちはそのようなことをするつもりは毛頭ございませんわ。それは恐らく大司教様の思い過ごしというものではありませんの?」
「かもしらんな。だが、貴様らは油断できん存在だ。何をしでかすのかわからん」
「あら、信用がありませんのね」
カーラは惚けた顔を浮かべながら言った。
「覚えておけ、オレはこれまでの奴らとは違うのだとな」
カーラの言い方に腹が立ったのか、ゼネラルは剣の刃のように鋭い瞳でカーラを睨んでいく。
その鋭い眼光はかつての強敵モラン大司教を思い起こさせた。モラン大司教も追い詰められていなければあれ程まで簡単に駆除することはできなかっただろう。
もし、ゼネラルという男を駆除する機会があるのならばその時はモラン大司教以上にゼネラルを追い詰めなくてはならない。そうでなければ駆除は不可能だろう。
そんなことを考えながらカーラは薬棚から胃腸薬を取り出し、ゼネラルを見送りながらそんなことを考え、フィンがゼネラルを相手に上手く立ち回れることを祈ったのだった。
そして、レキシー、カーラとゼネラルが邂逅した日から二日の後に運命の日ともいうべきフィンとゼネラルとの対決の日が訪れたのであった。
二人は街路に集う民衆に紛れながらゼネラルが乗ったバスを見送っていた。
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