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第三章『私がこの国に巣食う病原菌を排除してご覧にいれますわ!』
ネオドラビア教は不滅なり
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ゼネラル・グレゴリオを乗せた馬車は王国の門の前へと辿り着き、ゼネラルを下ろすと、門の前から去っていく。王宮が呼んだ馬車であるので、恐らく王宮にあるスペースに戻るのだろうが、そんなことはゼネラルの知ったことではなかった。ゼネラルは味方のいない中、たった一人で、敵地となる宮殿の中をくぐっていったのだった。
宮殿の中をくぐると、王宮付きの執事と思われる白髪の男性に案内され、ゼネラルは応接室へと通された。
応接室に通されると、そこでお茶と茶菓子を振る舞われ、ゼネラルは比較的優雅な時間を過ごしていた。
追求の準備のためか、はたまた他の職務に追われていたためか、フィンがゼネラルの前に姿を現したのはゼネラルが茶を二杯ほどお代わりしたところであった。
フィンはゼネラルに対して待たせたことを詫び、ゼネラルの向かい側にある長椅子に腰を掛け、ゼネラルに向かって裁判長が判決文を読み上げるかのように長々とネオドラビア教にかかった罪状を読み上げていき、最後にはわざわざ長椅子の上から立ち上がり、ゼネラルの顔を凝視したのだが、彼は動じる姿を見せなかった。
それどころか、
「全て事実無根のことですな」
と、ゼネラルは差し出された茶を優雅に啜りながら言ったのだった。
「何を言う。貴君らが祀り上げる教皇なる人物がどのようなことを行なっているのかというのは明白なのであるぞッ!」
フィンは堪えきれずに机の上を大きく叩いて叫んだ。
その後で両者は王宮の一室にある応接室を利用して激しい口論を執り行っていたが、決着は付かなかった。
正確に言えばフィンがゼネラルによって「いなされている」という状況の方が的確であるかもしれない。
ゼネラルはフィンの追求をことごとく巧妙に交わしていき、ネオドラビア教の無実と教皇イノケンティウスの個人崇拝を否定したのである。
「あくまでも知らぬ存ぜぬを貫き通すというのか?」
「えぇ、もちろんです。全て我々の預かり知らぬところです」
「個人的な兵力があるという匿名のタレコミまであるぞ。それについても否定するつもりか?」
「どこのどなたがそんな馬鹿なことを仰られたので?」
「貴様らから身を守る意味もあるからな。その名前を明かすわけにはいかん」
「ならば、それは我が教団の権威と権勢を落とすために我々と対立する邪教の神官どもが仕組んだ偽の情報でしょうな」
ゼネラルの交わし方は一流であった。フィンは拳を震わせたままゼネラルを睨んでいたが、ゼネラルは余裕を持った表情でお茶を啜っていた。
フィンは教団の悪事の証拠としてかつて城下町を任されていた大司教セバスチャン・モランがプラフティー公爵家の家臣たちと手を組んで麻薬の密売を行っていたことやその後に派遣された教皇の息子ポールがベクターとマルグリッタの両名を懐柔し、国政を牛耳ろうとしていた一件などを明かしたが、ゼネラルは全てモランやポールが勝手に企てたことだと主張したのだった。
「我々としても勝手に教団の権威と権勢を使われて困惑していたのです。それに国王の尊厳を傷付けなければ宗教を信じる自由は古きはウィリアム三世王の時代から保障されている権利のはずですぞ」
「邪教のくせに何を偉そうに」
「邪教?一体我々のどこが邪教だというのですかな?」
「惚けるなッ!信者たちから布施と称して多額の金を巻き上げる教のどこが正当な教えだッ!」
フィンは激昂した。長椅子の上から勢いよく立ち上がったことでフィンの前に置かれていたカップの中に入ったお茶が大きく揺れた。
だが、ゼネラルはそれを見ても動じる様子など見せずにお茶を飲むどころか、茶菓子にまで手をつけていた。
ゼネラルは小馬鹿にするような笑顔を浮かべながら、
「落ち着きなさいませ。そんなに興奮なさると、お体にも触りますぞ」
と、嘲るかのように言葉を返したのであった。
フィンはこの瞬間からゼネラルが自分よりも優位な立ち位置にあるということを実感したのだった。
いくら証拠を出しても組織の規模が規模であるからいくらでも哀れな身代わりが仕立て上げられ、そのたびに教皇は知らぬ存ぜぬを貫き通す。
そして、いくら証拠を用意して激しく追及しても口の立つ手下がそれを交わしていくのだ。
フィンはゼネラルの小馬鹿にしたような笑みを見つめながらネオドラビア教を壊滅させられない自身の手腕に腹が立って仕方がなかった。
しかも、去る間際に至っては、
「では、陛下、これで失礼致します。そうだ。最後に警告の言葉を発しておきましょうかね。今後我々に関わることはおやめなされ、そうしないと、陛下は御譲位なされることになりますぞ」
と、国王の尊厳さえ踏み躙るような言葉を平気で口にしたのである。
「譲位だと?誰に位を譲れというのだ?」
フィンは悔しさ半分純粋な疑問半分で投げ掛けたが、ゼネラルはその回答に答えることはなかった。
もしかすれば、ゼネラルが考える『譲位』の相手というのは教皇イノケンティウス・ビグラフトのことではないだろうか。そう考えれば辻褄が合う。
そのことを悟ったフィンは俄かに焦燥感に駆られた。国王となったフィンには革新的な政策や身分にこだわらない政策などを行っているために保守的な貴族たちからは反感を買っている。
もし、自身に反感を持つ貴族たちと共謀してネオドラビア教が力を盛り返してしまった上に全盛期の勢いのままで、自身を王の位から引き摺り下ろすことは十分に可能なのだ。その後でイノケンティウス・ビグラフトが国王に即位するということも十分に考えられるのだ。
フィンはこの時の経験と悟ったことからネオドラビア教はイノケンティウス本人を取り除かなければ壊滅できないということを意識させられたのだ。
そのために手段は選んでいられまい。
フィンは慌てて会見の日の夜に自身にとって好意的な貴族の家々と連絡を取り合い、非公式の茶会を設定し、今後の方針を話し合っていた。
その中にバロウズ公爵家の令嬢マチルダも含まれていた。マチルダは父親の代わりとして茶会に招かれ、フィンの演説を拝聴していた。全員がフィンの演説を期待に満ちた眼で見つめていたが、不安となったのは最後に付け加えた一言であった。
「もし、イノケンティウスがその宗教的権威と権勢を用いて、国王に対して反感を持つ貴族たちを取り組み、武装蜂起やそれ以外の方法を用いて、簒奪を画策すれば、恐らく苦戦するに違いあるまい。最悪の場合はーー」
フィンは最後の言葉をわざと支援する貴族たちに聴かれないように濁したのであった。
だが、その場に居合わせた貴族たちはフィンの言いたいことを理解していた。
そして、それ以上にネオドラビア教という教団の恐ろしさに震えていたのだった。
身の保身のためならば国王よりもネオドラビア教に付いた方がいいとさえ考えていたかもしれない。
そんな状況を打破するべくフィンは拳を振り上げて、強い声を張り上げていく。
「しかし、絶望するにはまだ早いッ!これは天上におわす神々が我々に対して試練を与えておるのだと捉えればいいのだッ!」
「天上におわす神々の試練?」
集まった貴族の一人が首を傾げながら問い掛けた。
「その通り、これは試練である。神々は我々が怪しき宗教に負け、国が乗っ取られた場合、どうなるのかを見極めているのだッ!」
この瞬間フィンによってこの対立の中に既存の神々を巻き込み、貴族たちの信仰を利用して離散を阻止したのである。
フィンはかつての自分が見たのならば斬り倒していたかもしれないような姿だ。
自身に対して強烈な自己嫌悪を感じつつも、ネオドラビア教から王国を守るためにはこの手段しかないのだと判断し、集まった貴族たちに反ネオドラビア教を訴えたのであった。
非公式の茶会を終え、集まった貴族たちが各々帰路へ着き、フィンが部屋に戻って休もうとした時だ。
「あの、もし、陛下」
と、自身を呼ぶ声が聞こえた。フィンが振り返ると、そこにはマチルダが心配そうな顔でフィンを見つめていたのだった。
「レディ・マチルダ。どうかしたのかな?」
「陛下、もし、お困りであるのならば私がよい場所を紹介致しますわ」
「よい場所?」
「えぇ、陛下はこの世に巣食う人の形をした害虫たちを駆除する駆除人の存在をご存知でしょうか?」
フィンは反射的にマチルダと目を合わせた。二人は無言だった。お互いに意思のみで疎通を図っていた。両者は互いに駆除人とその駆除人ギルドへの連絡方法を知っていたということを理解したのだ。
そのことに安堵したフィンはマチルダに向かって無言で駆除人ギルドへと向かうということを耳元で囁いていく。
マチルダはフィンの言葉を聞くと、何も言わずに首肯してからその場を去っていった。
自室に戻り、平民の服を着て、自身に用意できるだけの金額を用意すると、王宮を抜け出して、駆除人ギルドへと向かっていくのであった。裏のやり方で王国に巣食う巨大な害虫を駆除するために。
駆除人ギルドの表稼業は酒場であることはファンは前国王の時代に警備隊の司令官を務めていた時に何度か通っていたので知っていた。依頼も同様だ。その手口は鮮やかと称してもよかった。
ギルドマスターの方も当初こそ国王となったフィンが来店したこともあり、驚きを隠せなかったようであるが、『ブラッディプリンセス』を注文したことでフィンを応接室へと連れて行かなくてはならないことだけは察し、フィンを応接室へと連れていく。
ギルドマスターはフィンの前にお茶を出して話を聞いていた。
「久し振りだな。マスター」
「えぇ、殿下……いいえ、失礼、陛下も。それで本日の御用は何用で?」
「ここに金貨が五百枚ある。これは私が自由にできる全ての金といってもよい。これを使ってネオドラビア教教皇イノケンティウス・ビグラフト並びにその部下ゼネラル・グレゴリオを葬ってもらいたい」
フィンは懐から出した金貨の入った袋を押し出しながら言った。
ギルドマスターは木製のハンマーで頭を強く殴られたような衝撃を受けた。
金貨五百枚という破格の報酬もさることながら、フィンの提示した相手がちょうど自分たちと敵対する新興宗教の教団であったからだ。
ギルドマスターは難しい顔を浮かべて考え込む様子を見せていた。
本日は二度目の更新が遅くなって申し訳ありません。色々とありまして、なかなか早く更新できない有様です。
最近また多忙になってきまして……。ご了承いただければ幸いです。
宮殿の中をくぐると、王宮付きの執事と思われる白髪の男性に案内され、ゼネラルは応接室へと通された。
応接室に通されると、そこでお茶と茶菓子を振る舞われ、ゼネラルは比較的優雅な時間を過ごしていた。
追求の準備のためか、はたまた他の職務に追われていたためか、フィンがゼネラルの前に姿を現したのはゼネラルが茶を二杯ほどお代わりしたところであった。
フィンはゼネラルに対して待たせたことを詫び、ゼネラルの向かい側にある長椅子に腰を掛け、ゼネラルに向かって裁判長が判決文を読み上げるかのように長々とネオドラビア教にかかった罪状を読み上げていき、最後にはわざわざ長椅子の上から立ち上がり、ゼネラルの顔を凝視したのだが、彼は動じる姿を見せなかった。
それどころか、
「全て事実無根のことですな」
と、ゼネラルは差し出された茶を優雅に啜りながら言ったのだった。
「何を言う。貴君らが祀り上げる教皇なる人物がどのようなことを行なっているのかというのは明白なのであるぞッ!」
フィンは堪えきれずに机の上を大きく叩いて叫んだ。
その後で両者は王宮の一室にある応接室を利用して激しい口論を執り行っていたが、決着は付かなかった。
正確に言えばフィンがゼネラルによって「いなされている」という状況の方が的確であるかもしれない。
ゼネラルはフィンの追求をことごとく巧妙に交わしていき、ネオドラビア教の無実と教皇イノケンティウスの個人崇拝を否定したのである。
「あくまでも知らぬ存ぜぬを貫き通すというのか?」
「えぇ、もちろんです。全て我々の預かり知らぬところです」
「個人的な兵力があるという匿名のタレコミまであるぞ。それについても否定するつもりか?」
「どこのどなたがそんな馬鹿なことを仰られたので?」
「貴様らから身を守る意味もあるからな。その名前を明かすわけにはいかん」
「ならば、それは我が教団の権威と権勢を落とすために我々と対立する邪教の神官どもが仕組んだ偽の情報でしょうな」
ゼネラルの交わし方は一流であった。フィンは拳を震わせたままゼネラルを睨んでいたが、ゼネラルは余裕を持った表情でお茶を啜っていた。
フィンは教団の悪事の証拠としてかつて城下町を任されていた大司教セバスチャン・モランがプラフティー公爵家の家臣たちと手を組んで麻薬の密売を行っていたことやその後に派遣された教皇の息子ポールがベクターとマルグリッタの両名を懐柔し、国政を牛耳ろうとしていた一件などを明かしたが、ゼネラルは全てモランやポールが勝手に企てたことだと主張したのだった。
「我々としても勝手に教団の権威と権勢を使われて困惑していたのです。それに国王の尊厳を傷付けなければ宗教を信じる自由は古きはウィリアム三世王の時代から保障されている権利のはずですぞ」
「邪教のくせに何を偉そうに」
「邪教?一体我々のどこが邪教だというのですかな?」
「惚けるなッ!信者たちから布施と称して多額の金を巻き上げる教のどこが正当な教えだッ!」
フィンは激昂した。長椅子の上から勢いよく立ち上がったことでフィンの前に置かれていたカップの中に入ったお茶が大きく揺れた。
だが、ゼネラルはそれを見ても動じる様子など見せずにお茶を飲むどころか、茶菓子にまで手をつけていた。
ゼネラルは小馬鹿にするような笑顔を浮かべながら、
「落ち着きなさいませ。そんなに興奮なさると、お体にも触りますぞ」
と、嘲るかのように言葉を返したのであった。
フィンはこの瞬間からゼネラルが自分よりも優位な立ち位置にあるということを実感したのだった。
いくら証拠を出しても組織の規模が規模であるからいくらでも哀れな身代わりが仕立て上げられ、そのたびに教皇は知らぬ存ぜぬを貫き通す。
そして、いくら証拠を用意して激しく追及しても口の立つ手下がそれを交わしていくのだ。
フィンはゼネラルの小馬鹿にしたような笑みを見つめながらネオドラビア教を壊滅させられない自身の手腕に腹が立って仕方がなかった。
しかも、去る間際に至っては、
「では、陛下、これで失礼致します。そうだ。最後に警告の言葉を発しておきましょうかね。今後我々に関わることはおやめなされ、そうしないと、陛下は御譲位なされることになりますぞ」
と、国王の尊厳さえ踏み躙るような言葉を平気で口にしたのである。
「譲位だと?誰に位を譲れというのだ?」
フィンは悔しさ半分純粋な疑問半分で投げ掛けたが、ゼネラルはその回答に答えることはなかった。
もしかすれば、ゼネラルが考える『譲位』の相手というのは教皇イノケンティウス・ビグラフトのことではないだろうか。そう考えれば辻褄が合う。
そのことを悟ったフィンは俄かに焦燥感に駆られた。国王となったフィンには革新的な政策や身分にこだわらない政策などを行っているために保守的な貴族たちからは反感を買っている。
もし、自身に反感を持つ貴族たちと共謀してネオドラビア教が力を盛り返してしまった上に全盛期の勢いのままで、自身を王の位から引き摺り下ろすことは十分に可能なのだ。その後でイノケンティウス・ビグラフトが国王に即位するということも十分に考えられるのだ。
フィンはこの時の経験と悟ったことからネオドラビア教はイノケンティウス本人を取り除かなければ壊滅できないということを意識させられたのだ。
そのために手段は選んでいられまい。
フィンは慌てて会見の日の夜に自身にとって好意的な貴族の家々と連絡を取り合い、非公式の茶会を設定し、今後の方針を話し合っていた。
その中にバロウズ公爵家の令嬢マチルダも含まれていた。マチルダは父親の代わりとして茶会に招かれ、フィンの演説を拝聴していた。全員がフィンの演説を期待に満ちた眼で見つめていたが、不安となったのは最後に付け加えた一言であった。
「もし、イノケンティウスがその宗教的権威と権勢を用いて、国王に対して反感を持つ貴族たちを取り組み、武装蜂起やそれ以外の方法を用いて、簒奪を画策すれば、恐らく苦戦するに違いあるまい。最悪の場合はーー」
フィンは最後の言葉をわざと支援する貴族たちに聴かれないように濁したのであった。
だが、その場に居合わせた貴族たちはフィンの言いたいことを理解していた。
そして、それ以上にネオドラビア教という教団の恐ろしさに震えていたのだった。
身の保身のためならば国王よりもネオドラビア教に付いた方がいいとさえ考えていたかもしれない。
そんな状況を打破するべくフィンは拳を振り上げて、強い声を張り上げていく。
「しかし、絶望するにはまだ早いッ!これは天上におわす神々が我々に対して試練を与えておるのだと捉えればいいのだッ!」
「天上におわす神々の試練?」
集まった貴族の一人が首を傾げながら問い掛けた。
「その通り、これは試練である。神々は我々が怪しき宗教に負け、国が乗っ取られた場合、どうなるのかを見極めているのだッ!」
この瞬間フィンによってこの対立の中に既存の神々を巻き込み、貴族たちの信仰を利用して離散を阻止したのである。
フィンはかつての自分が見たのならば斬り倒していたかもしれないような姿だ。
自身に対して強烈な自己嫌悪を感じつつも、ネオドラビア教から王国を守るためにはこの手段しかないのだと判断し、集まった貴族たちに反ネオドラビア教を訴えたのであった。
非公式の茶会を終え、集まった貴族たちが各々帰路へ着き、フィンが部屋に戻って休もうとした時だ。
「あの、もし、陛下」
と、自身を呼ぶ声が聞こえた。フィンが振り返ると、そこにはマチルダが心配そうな顔でフィンを見つめていたのだった。
「レディ・マチルダ。どうかしたのかな?」
「陛下、もし、お困りであるのならば私がよい場所を紹介致しますわ」
「よい場所?」
「えぇ、陛下はこの世に巣食う人の形をした害虫たちを駆除する駆除人の存在をご存知でしょうか?」
フィンは反射的にマチルダと目を合わせた。二人は無言だった。お互いに意思のみで疎通を図っていた。両者は互いに駆除人とその駆除人ギルドへの連絡方法を知っていたということを理解したのだ。
そのことに安堵したフィンはマチルダに向かって無言で駆除人ギルドへと向かうということを耳元で囁いていく。
マチルダはフィンの言葉を聞くと、何も言わずに首肯してからその場を去っていった。
自室に戻り、平民の服を着て、自身に用意できるだけの金額を用意すると、王宮を抜け出して、駆除人ギルドへと向かっていくのであった。裏のやり方で王国に巣食う巨大な害虫を駆除するために。
駆除人ギルドの表稼業は酒場であることはファンは前国王の時代に警備隊の司令官を務めていた時に何度か通っていたので知っていた。依頼も同様だ。その手口は鮮やかと称してもよかった。
ギルドマスターの方も当初こそ国王となったフィンが来店したこともあり、驚きを隠せなかったようであるが、『ブラッディプリンセス』を注文したことでフィンを応接室へと連れて行かなくてはならないことだけは察し、フィンを応接室へと連れていく。
ギルドマスターはフィンの前にお茶を出して話を聞いていた。
「久し振りだな。マスター」
「えぇ、殿下……いいえ、失礼、陛下も。それで本日の御用は何用で?」
「ここに金貨が五百枚ある。これは私が自由にできる全ての金といってもよい。これを使ってネオドラビア教教皇イノケンティウス・ビグラフト並びにその部下ゼネラル・グレゴリオを葬ってもらいたい」
フィンは懐から出した金貨の入った袋を押し出しながら言った。
ギルドマスターは木製のハンマーで頭を強く殴られたような衝撃を受けた。
金貨五百枚という破格の報酬もさることながら、フィンの提示した相手がちょうど自分たちと敵対する新興宗教の教団であったからだ。
ギルドマスターは難しい顔を浮かべて考え込む様子を見せていた。
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