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デートからの大胆告白!
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「ねぇ、姉さん、何処かに出掛けるの?」
部屋の中で、鏡面の前で身支度を整える私に向かって弟が訝しげな顔を浮かべて尋ねる。
不意を突かれた私は思わずブラシを落としてしまう。
「な、な、部屋に入る時はノックくらいしてよ!」
「してたよ。さっきから、でも返事がなかったから……」
「お姉ちゃんだって返事ができない時くらいあるってば!」
「でも、聞こえてなさそうだったから」
相変わらずの低く澄んだ声。しかも、その声でたまに凄む時があるから恐ろしい。
その時には、我が弟ながら、思わず恐怖心を覚えてしまう。
しかも、今日は変にオシャレぶった服装だから警戒しているのだろう。
弟は私に彼氏ができるのを好ましく思っていないらしい。
だから、あんな声になってしまうのだろう。危ない、危ない、あの弟に私が今、恋焦がれている人の事を告げたら、弟は手から糸でも出して、あの人をサイコロステーキ状にでもして殺してしまいそうだ。
だから、私はテンプレ的な言い訳を言い放ち、弟を誤魔化す。
「友達と遊びに行くんだって!ほ、ほら、あたし、最近勉強尽くめだったからさぁ~」
適当に戯けてみせたが、弟は納得していないらしい。
相変わらず、私を睨んでいる。いや、正確には私を通して見える、その相手を。
それでも、母に言い付けないのは、彼自身の慈悲によるものなのだろう。
変なところで優しいところがある弟である。
ちなみに、今日、母は町内の婦人会に出席するため、不在である。
その事も目論んだ日程を、あの人に渡したのだ。
そして、初デートの場所は映画館。これは、私の指定ではない。
デート前日の日に、彼の方から映画に誘ってくれたのだ。
私が胸を弾ませながら、指定の場所に行くと、その人は本を読みながら待っていた。
元々が美しい人だったから、壁にもたれかかりながら、本を読む様はとても似合っており、私にルネサンス期の絵画の様な美しさを思い起こさせた。
私が茹でた蛸のように顔を真っ赤にして、その様を見つめていると、向こうは私の存在に気が付いたらしく、本を閉じて、私の方へと向き直る。
「おぅ、来てたのか、じゃあ、早速、入ろうか」
彼はニコニコと笑いながら、紳士的に私をエスコートしていく。
映画は元カレと同じで、私の好きなものを見せてくれたし、その後のコースも私が気兼ねしないように、そこそこの場所ばかりを案内していく。
その点も、ついつい元カレと比べてしまう。
その日の夜、夜の街が見渡せる場所に位置するお好み焼きで食事を取っていると、私はふとある事を思い出す。
私は目の前にいる人の名前を知らないのだ。ずっと聞き損ねていたのだが、今、この時こそ聞くべきなのではないだろうか。
「あの、良かったら、名前を教えてくれない?あたし、まだあなたの名前も知らないから……」
「あぁ、そう言えば、そうだったな」
彼は烏龍茶を入れたジョッキを下ろすと、空咳を出し、胸を張ると、
「おれの名前は桐生誠太郎だ」
うん?待て、桐生?それに、確か、最初に会った時に、彼は高校生の息子が居ると言っていた。
まさかとは思うが……。不安になった、私は堪らなくなり、口籠もりながらも、なんとか、彼に向かって尋ねる。
「まさかとは思うけど、息子さんの名前って零って名前?」
「……なんで、それを知ってる?」
向こうは意外そうに目を見張っている。
どうやら、私の不安は的中したらしい。
部屋の中で、鏡面の前で身支度を整える私に向かって弟が訝しげな顔を浮かべて尋ねる。
不意を突かれた私は思わずブラシを落としてしまう。
「な、な、部屋に入る時はノックくらいしてよ!」
「してたよ。さっきから、でも返事がなかったから……」
「お姉ちゃんだって返事ができない時くらいあるってば!」
「でも、聞こえてなさそうだったから」
相変わらずの低く澄んだ声。しかも、その声でたまに凄む時があるから恐ろしい。
その時には、我が弟ながら、思わず恐怖心を覚えてしまう。
しかも、今日は変にオシャレぶった服装だから警戒しているのだろう。
弟は私に彼氏ができるのを好ましく思っていないらしい。
だから、あんな声になってしまうのだろう。危ない、危ない、あの弟に私が今、恋焦がれている人の事を告げたら、弟は手から糸でも出して、あの人をサイコロステーキ状にでもして殺してしまいそうだ。
だから、私はテンプレ的な言い訳を言い放ち、弟を誤魔化す。
「友達と遊びに行くんだって!ほ、ほら、あたし、最近勉強尽くめだったからさぁ~」
適当に戯けてみせたが、弟は納得していないらしい。
相変わらず、私を睨んでいる。いや、正確には私を通して見える、その相手を。
それでも、母に言い付けないのは、彼自身の慈悲によるものなのだろう。
変なところで優しいところがある弟である。
ちなみに、今日、母は町内の婦人会に出席するため、不在である。
その事も目論んだ日程を、あの人に渡したのだ。
そして、初デートの場所は映画館。これは、私の指定ではない。
デート前日の日に、彼の方から映画に誘ってくれたのだ。
私が胸を弾ませながら、指定の場所に行くと、その人は本を読みながら待っていた。
元々が美しい人だったから、壁にもたれかかりながら、本を読む様はとても似合っており、私にルネサンス期の絵画の様な美しさを思い起こさせた。
私が茹でた蛸のように顔を真っ赤にして、その様を見つめていると、向こうは私の存在に気が付いたらしく、本を閉じて、私の方へと向き直る。
「おぅ、来てたのか、じゃあ、早速、入ろうか」
彼はニコニコと笑いながら、紳士的に私をエスコートしていく。
映画は元カレと同じで、私の好きなものを見せてくれたし、その後のコースも私が気兼ねしないように、そこそこの場所ばかりを案内していく。
その点も、ついつい元カレと比べてしまう。
その日の夜、夜の街が見渡せる場所に位置するお好み焼きで食事を取っていると、私はふとある事を思い出す。
私は目の前にいる人の名前を知らないのだ。ずっと聞き損ねていたのだが、今、この時こそ聞くべきなのではないだろうか。
「あの、良かったら、名前を教えてくれない?あたし、まだあなたの名前も知らないから……」
「あぁ、そう言えば、そうだったな」
彼は烏龍茶を入れたジョッキを下ろすと、空咳を出し、胸を張ると、
「おれの名前は桐生誠太郎だ」
うん?待て、桐生?それに、確か、最初に会った時に、彼は高校生の息子が居ると言っていた。
まさかとは思うが……。不安になった、私は堪らなくなり、口籠もりながらも、なんとか、彼に向かって尋ねる。
「まさかとは思うけど、息子さんの名前って零って名前?」
「……なんで、それを知ってる?」
向こうは意外そうに目を見張っている。
どうやら、私の不安は的中したらしい。
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※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
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