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天使王編
あの怪物は誰か?
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どうしてあの敵が再生したかなどわからない。ただ、今は目の前に迫る友人の危機を救う方が先決である。
私は理性という鎖で自身の行動を制御する前に未知の敵に向かって駆け出していったのである。
その時だ。怪物の視線がこちらを向いた。怪物はそのまま冷静に鎖鎌を放り投げで鎖を使って私の両足を縛る。
私は「しまった!」という声を上げる暇もなく足を絡め取られてしまうのである。
それから私の体は鎖によってアメリカンクラッカーのように揺られていくのである。
「ハルッ!」
標的を変えられたマリアが腹を抱えながら先程の私と同様に敵に向かって突っ走っていく。
この時の私にとって幸運だったのは強力な力を持つ天使であるのにも関わらず、鎖鎌という武器を選んでしまったことにあるだろう。鎖鎌では一つしか拘束できず、しかもその状態では戦えないという欠点があるのだ。
怪物が悔しそうな声を上げている。いい気味である。私を早く離すがいい。
私が心の中で怪物を煽っていた時だ。不意に怪物が私ごと鎖鎌を放り投げて私を地面の上に直撃させたのである。
あまりの痛みに思わず悲鳴を上げる私。
だが、怪物は容赦なく私を釣り上げてもう一度、引き上げて私をもう一度、地面に叩き付けようとしていた。
幸いなことにマリアの妨害の前に怪物の恐るべき計画は阻止された。
怪物は私を部屋の上に外された鎖ごと放り投げた後にそのまま窓から去っていく。
マリアは窓に向かっていき、窓からを身を乗り出して怪物の名前を叫んだが、返答はなかった。
「……クソ、まさか部屋に奇襲をかけてくるなんて」
「予想外だったよね。私も驚いた」
私は自身の武装を解除しながら言った。
「……今回の襲撃とティーの手紙に何か関連性がある……というか、ここまできて無関係じゃない方がおかしいよ!」
マリアが大きな声で叫ぶ。マリアの意見には私も同意見だ。黙って首を縦に振る。
「私たちで独自に調べてみるというのはどうかな?」
「探偵小説の探偵みたいに!?」
私はいかにもとしたり顔を浮かべながら首を縦に動かす。
「面白そうだね。時間できたらやってみようかな」
マリアは乗り気だった。
「うん。私もーー」
私がマリアの前向きな返答に対して言葉を返そうとした時だ。扉を乱暴に跳ねる音が聞こえた。扉を開けて入ってきたのは血相を変えた様子のクリスだった。
「マリア!ハルちゃん!大丈夫!?」
おそらく先程の騒動を忘れて我先に駆け付けたのだろう。顔からは脂汗が滲み出ていた。
「うん。平気だよ。それよりさっきの天使、そっちの方にいってない?」
「ううん。今のところ討伐隊の方で死者や負傷者はいないよ」
「よかった」
私は安堵して胸を撫で下ろす。
「それよりもさぁ、どうしてこんなことが起きてるんだよッ!な、なんでポイゾくんやハルちゃんたちが襲われないといけないんだよォォォォ~!!」
クリスの絶叫が狭い部屋の中でこだましていく。
常人であるのならば鬱陶しいとさえ思うほどの声であったが、クリスの性格の良さが伝わってくるので、止まる気にはなれなかった。
二人で地面に突っ伏して泣き叫ぶクリスを逆に慰めていると次々と討伐隊の仲間たちが部屋に入ってきた。最後にティーがジョージを伴って入ってきて最後だ。
部屋に入ってきた仲間たちの言葉によればこの中で一番二人を心配していたのはジョージであるらしい。
ジョージは先程の怪物との戦闘で荒れ果てた部屋を見て絶句していたが、すぐに私たちの元へと駆け寄っていく。
「ねぇ、二人とも大丈夫!?」
「平気です。それよりも壊れた家具が心配です。幸いなことにベッドは壊されなかったので今日の夜はなんとか寝れます」
そう、不幸中の幸いというべきかベッドは壊されなかったのだ。お陰で今晩は熟睡できる。
「……そうだったのか、ベッドが無事で何よりだ。ベッドがないと我々は安眠することもできないからね」
「えぇ、それよりも私が少し残念なのは先生が来てくださらなかったことです。あんな恐ろしい怪物に会ったから先生は子供の私を心配して来てくれるものかと思っていたのですが……」
私はカマをかけてみた。この時に何か下手な言葉を口走ることを期待したのだ。
だが、ジョージは相変わらずの血相を変えた様子で詫びるばかりである。
思わずこちらが謝りたくなるほどの謝罪に私は強制的に言葉を切ってしまった。
「しかし、こうも立て続けに天使たちの襲撃があるだなんて……一体どうなっているんだ?」
「だよなッ!つーか、こんなことあんまりなかったじゃねーか。今何が起きてたんだよ」
ブレードが疑問を口にし、オットシャックがに愚痴を吐き捨てる。
「わからない。わからないけど、何か異様なことが起きているのは確かだよ」
私の指摘に一同が同意の意を示す。
「となると、日々のあちこちでも警戒をしておいた方がいいな。唐突に天使たちが現れる可能性もあるからね」
ブレードの言葉を聞けば私たちは日常から忍者のように気を付けなければならないということであるがやむを得ないだろう。
寝ている時も油断ができないなど辛いものだが、寝首を掻かれる恐怖を天秤にかけると熟睡するよりも警戒しながら眠った方がいいだろう。
私は頭の中で論理的な説明をまとめていたので、ブレードが同意の言葉を叫んだ際に同調しかねていた。
私はブレードから小言を言われることになってしまった。
その後は集まった全員で私の部屋の片付けである。
戦闘の際にズレた家具を戻したり、戦いで零れ落ちた壁紙の破片や割れた窓ガラスなどを箒と塵取りで拾ったりという初歩的な掃除であった。
自分たちだけで掃除を行うというのが前の世界の小学校における掃除の時間を思い出して面白かった。
全てのゴミを掃除し、家具も元に戻したので今日のところは完璧である。
窓がないので吹き曝しの状態となり、冷たい風が私に突き刺すが、一晩くらいならば布団を被って耐えられるだろう。
そう考えるより他になかった。翌朝、私はいつもよりも早い時間にくしゃみで強制的に起こされたのだ。
ベッドを片付け、身支度を整えて食堂へと向かう。
孤児院よりも予算が使われているだけのこともあり、孤児院でもあったようなスープとパンの他に野菜と果物が入ったグリーンサラダと水の他に牛乳が追加されている。
少し豪華な給食のような朝ごはんである。私がサラダを食べつつパンを齧っていた時だ。私の目の前の席にティーと共にジョージが座ってきたのだ。
「ねぇ、ここいいかな?」
「……どうぞ」
断る理由がない。私は躊躇なく席を勧めた。この場で昨晩のことを問い詰めてやろう。私は和やかな表情を浮かべる裏で密かに探りを入れ始めた。
私は理性という鎖で自身の行動を制御する前に未知の敵に向かって駆け出していったのである。
その時だ。怪物の視線がこちらを向いた。怪物はそのまま冷静に鎖鎌を放り投げで鎖を使って私の両足を縛る。
私は「しまった!」という声を上げる暇もなく足を絡め取られてしまうのである。
それから私の体は鎖によってアメリカンクラッカーのように揺られていくのである。
「ハルッ!」
標的を変えられたマリアが腹を抱えながら先程の私と同様に敵に向かって突っ走っていく。
この時の私にとって幸運だったのは強力な力を持つ天使であるのにも関わらず、鎖鎌という武器を選んでしまったことにあるだろう。鎖鎌では一つしか拘束できず、しかもその状態では戦えないという欠点があるのだ。
怪物が悔しそうな声を上げている。いい気味である。私を早く離すがいい。
私が心の中で怪物を煽っていた時だ。不意に怪物が私ごと鎖鎌を放り投げて私を地面の上に直撃させたのである。
あまりの痛みに思わず悲鳴を上げる私。
だが、怪物は容赦なく私を釣り上げてもう一度、引き上げて私をもう一度、地面に叩き付けようとしていた。
幸いなことにマリアの妨害の前に怪物の恐るべき計画は阻止された。
怪物は私を部屋の上に外された鎖ごと放り投げた後にそのまま窓から去っていく。
マリアは窓に向かっていき、窓からを身を乗り出して怪物の名前を叫んだが、返答はなかった。
「……クソ、まさか部屋に奇襲をかけてくるなんて」
「予想外だったよね。私も驚いた」
私は自身の武装を解除しながら言った。
「……今回の襲撃とティーの手紙に何か関連性がある……というか、ここまできて無関係じゃない方がおかしいよ!」
マリアが大きな声で叫ぶ。マリアの意見には私も同意見だ。黙って首を縦に振る。
「私たちで独自に調べてみるというのはどうかな?」
「探偵小説の探偵みたいに!?」
私はいかにもとしたり顔を浮かべながら首を縦に動かす。
「面白そうだね。時間できたらやってみようかな」
マリアは乗り気だった。
「うん。私もーー」
私がマリアの前向きな返答に対して言葉を返そうとした時だ。扉を乱暴に跳ねる音が聞こえた。扉を開けて入ってきたのは血相を変えた様子のクリスだった。
「マリア!ハルちゃん!大丈夫!?」
おそらく先程の騒動を忘れて我先に駆け付けたのだろう。顔からは脂汗が滲み出ていた。
「うん。平気だよ。それよりさっきの天使、そっちの方にいってない?」
「ううん。今のところ討伐隊の方で死者や負傷者はいないよ」
「よかった」
私は安堵して胸を撫で下ろす。
「それよりもさぁ、どうしてこんなことが起きてるんだよッ!な、なんでポイゾくんやハルちゃんたちが襲われないといけないんだよォォォォ~!!」
クリスの絶叫が狭い部屋の中でこだましていく。
常人であるのならば鬱陶しいとさえ思うほどの声であったが、クリスの性格の良さが伝わってくるので、止まる気にはなれなかった。
二人で地面に突っ伏して泣き叫ぶクリスを逆に慰めていると次々と討伐隊の仲間たちが部屋に入ってきた。最後にティーがジョージを伴って入ってきて最後だ。
部屋に入ってきた仲間たちの言葉によればこの中で一番二人を心配していたのはジョージであるらしい。
ジョージは先程の怪物との戦闘で荒れ果てた部屋を見て絶句していたが、すぐに私たちの元へと駆け寄っていく。
「ねぇ、二人とも大丈夫!?」
「平気です。それよりも壊れた家具が心配です。幸いなことにベッドは壊されなかったので今日の夜はなんとか寝れます」
そう、不幸中の幸いというべきかベッドは壊されなかったのだ。お陰で今晩は熟睡できる。
「……そうだったのか、ベッドが無事で何よりだ。ベッドがないと我々は安眠することもできないからね」
「えぇ、それよりも私が少し残念なのは先生が来てくださらなかったことです。あんな恐ろしい怪物に会ったから先生は子供の私を心配して来てくれるものかと思っていたのですが……」
私はカマをかけてみた。この時に何か下手な言葉を口走ることを期待したのだ。
だが、ジョージは相変わらずの血相を変えた様子で詫びるばかりである。
思わずこちらが謝りたくなるほどの謝罪に私は強制的に言葉を切ってしまった。
「しかし、こうも立て続けに天使たちの襲撃があるだなんて……一体どうなっているんだ?」
「だよなッ!つーか、こんなことあんまりなかったじゃねーか。今何が起きてたんだよ」
ブレードが疑問を口にし、オットシャックがに愚痴を吐き捨てる。
「わからない。わからないけど、何か異様なことが起きているのは確かだよ」
私の指摘に一同が同意の意を示す。
「となると、日々のあちこちでも警戒をしておいた方がいいな。唐突に天使たちが現れる可能性もあるからね」
ブレードの言葉を聞けば私たちは日常から忍者のように気を付けなければならないということであるがやむを得ないだろう。
寝ている時も油断ができないなど辛いものだが、寝首を掻かれる恐怖を天秤にかけると熟睡するよりも警戒しながら眠った方がいいだろう。
私は頭の中で論理的な説明をまとめていたので、ブレードが同意の言葉を叫んだ際に同調しかねていた。
私はブレードから小言を言われることになってしまった。
その後は集まった全員で私の部屋の片付けである。
戦闘の際にズレた家具を戻したり、戦いで零れ落ちた壁紙の破片や割れた窓ガラスなどを箒と塵取りで拾ったりという初歩的な掃除であった。
自分たちだけで掃除を行うというのが前の世界の小学校における掃除の時間を思い出して面白かった。
全てのゴミを掃除し、家具も元に戻したので今日のところは完璧である。
窓がないので吹き曝しの状態となり、冷たい風が私に突き刺すが、一晩くらいならば布団を被って耐えられるだろう。
そう考えるより他になかった。翌朝、私はいつもよりも早い時間にくしゃみで強制的に起こされたのだ。
ベッドを片付け、身支度を整えて食堂へと向かう。
孤児院よりも予算が使われているだけのこともあり、孤児院でもあったようなスープとパンの他に野菜と果物が入ったグリーンサラダと水の他に牛乳が追加されている。
少し豪華な給食のような朝ごはんである。私がサラダを食べつつパンを齧っていた時だ。私の目の前の席にティーと共にジョージが座ってきたのだ。
「ねぇ、ここいいかな?」
「……どうぞ」
断る理由がない。私は躊躇なく席を勧めた。この場で昨晩のことを問い詰めてやろう。私は和やかな表情を浮かべる裏で密かに探りを入れ始めた。
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