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こういう男は黒執事というべきなのだろうか
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お前のやり方は間違っていると、指摘する奴はいなかったのだろうか。
日本史でいうところの藤原広嗣にしろ、橘奈良麻呂にしろ、後世の人間のみならず当時の人間でさえも首を傾げている理由で反乱を起こす奴の事を読む度にそう思っていたが、今のこの親父を見ていたら、止める奴がいなくて暴走する人間の周りに居た人の気持ちが分かる気がする。
要するに、放っておこうと思われたに違いない。
言っても、分からねー馬鹿と、某有名魔法少女アニメに出て来る赤い髪の気が強く食いしん坊のキャラもそう言っていたしな。
俺は奴に気付かれないように、奴を軽蔑した目で見送ると、ベッドの上に大の字になりながら、ぼんやりと大陸の神話の事を考えていた。
大陸の神話を考えていると、またしてもノックの音が聞こえた。
先程の主犯の男かと思ったのだが、扉の向こうから現れたのは、台車を引っ張った黒い背広に黒いネクタイという格好の男である。
男は俺の元に現れると、丁寧に頭を下げて、真っ白な歯を溢しながら言った。
「おはようございます。グレースお嬢様、私の名前はエミリオ、エミリオ・マスグレープと申します。本日より、解放の日までお嬢様の身の回りを手助けさせてもらいましょうか」
中々に美男子である。女性と見間違えられるという中性的な容姿を持つ美男子ではなく、甘いマスクの、それこそ異性から騒がれる程のものである。
こんな格好の良い男を俺のお世話係として付けてくれるなんて、あんな男でも良い事があるではないか。
俺が鼻歌を歌っていると、男は怪訝そうな顔で俺を見つめる。
「随分と楽しそうですね?誘拐されているというのに?」
はっ、そうだった。俺は慌てて笑顔を打ち消し、不安そうな顔を浮かべる。
「い、嫌ですわ。私ったら、無理に強がって……あぁ、どうしましょう。お父様にこのまま会えなければ、私……私……」
と、テンプレ的な台詞を目の前で、吐いてやる。
それを見た執事は慌てて俺の元に近寄って、
「ご心配なく。あなた様を真に愛するあの人たちならば、容易に王位継承権を放棄するでしょう。その後の事も万事、私のご主人様にお任せくだされば、悪い様には致しませんよ。ご主人様は寛大ですから、あなたもあなたのご友人も公爵の地位にくらいには付かせてくれますよ」
普通の令嬢もしくは俺が今、憑いていた性悪女であるならば『公爵』という文字に湧き踊った違いない。
だが、俺は違う。今度は執事に忌々しげな視線を向けていく。
すると、執事はクスクスと笑って、
「成る程、それでは不足と?あなたも欲深い人だなぁ。よろしい、では、あなたをお妃様に推薦しましょうか?」
この執事は一体、どういう権限でそんな事を言っているのだろうか。
というか、そもそもその考え方は間違っているのだが……。
日本史でいうところの藤原広嗣にしろ、橘奈良麻呂にしろ、後世の人間のみならず当時の人間でさえも首を傾げている理由で反乱を起こす奴の事を読む度にそう思っていたが、今のこの親父を見ていたら、止める奴がいなくて暴走する人間の周りに居た人の気持ちが分かる気がする。
要するに、放っておこうと思われたに違いない。
言っても、分からねー馬鹿と、某有名魔法少女アニメに出て来る赤い髪の気が強く食いしん坊のキャラもそう言っていたしな。
俺は奴に気付かれないように、奴を軽蔑した目で見送ると、ベッドの上に大の字になりながら、ぼんやりと大陸の神話の事を考えていた。
大陸の神話を考えていると、またしてもノックの音が聞こえた。
先程の主犯の男かと思ったのだが、扉の向こうから現れたのは、台車を引っ張った黒い背広に黒いネクタイという格好の男である。
男は俺の元に現れると、丁寧に頭を下げて、真っ白な歯を溢しながら言った。
「おはようございます。グレースお嬢様、私の名前はエミリオ、エミリオ・マスグレープと申します。本日より、解放の日までお嬢様の身の回りを手助けさせてもらいましょうか」
中々に美男子である。女性と見間違えられるという中性的な容姿を持つ美男子ではなく、甘いマスクの、それこそ異性から騒がれる程のものである。
こんな格好の良い男を俺のお世話係として付けてくれるなんて、あんな男でも良い事があるではないか。
俺が鼻歌を歌っていると、男は怪訝そうな顔で俺を見つめる。
「随分と楽しそうですね?誘拐されているというのに?」
はっ、そうだった。俺は慌てて笑顔を打ち消し、不安そうな顔を浮かべる。
「い、嫌ですわ。私ったら、無理に強がって……あぁ、どうしましょう。お父様にこのまま会えなければ、私……私……」
と、テンプレ的な台詞を目の前で、吐いてやる。
それを見た執事は慌てて俺の元に近寄って、
「ご心配なく。あなた様を真に愛するあの人たちならば、容易に王位継承権を放棄するでしょう。その後の事も万事、私のご主人様にお任せくだされば、悪い様には致しませんよ。ご主人様は寛大ですから、あなたもあなたのご友人も公爵の地位にくらいには付かせてくれますよ」
普通の令嬢もしくは俺が今、憑いていた性悪女であるならば『公爵』という文字に湧き踊った違いない。
だが、俺は違う。今度は執事に忌々しげな視線を向けていく。
すると、執事はクスクスと笑って、
「成る程、それでは不足と?あなたも欲深い人だなぁ。よろしい、では、あなたをお妃様に推薦しましょうか?」
この執事は一体、どういう権限でそんな事を言っているのだろうか。
というか、そもそもその考え方は間違っているのだが……。
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