女王陛下と護衛兵たちの日々〜ワガママ女王陛下の騎士たちは王国の独立を夢見る

アンジェロ岩井

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第十六話 ゴールデンストリートからの招待状

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ルカ・ミラノリアがその日の酒により酔うことはなかった。自分の支配していた街の中で最大の地域である、ドイツ人街をカヴァリエーレ・ファミリーにより、奪還されたためだった。
「ええい、面白くない !」
ルカは乱暴にワインの入ったグラスを自身が座る黒塗りの高級ディスクに置く。中に入っている赤い液体がユラユラと揺れる。
「このままでは、おれはエドワードに殺されちまう、いやその前にしびれを切らしたコミッションの奴らが、おれを殺すに違いない、残っている地域は二箇所だけだからな……」
ルカはこれから自分が乗り越えなければならないハードルの高さを実感し、鬱蒼とした気分に陥る。そんな時だった。ルカのドアが叩かれる音がしたのは。
「誰だ?」
ルカが問いかけると、ドアがガチャリと開き、赤いドレスを身につけたまるで黄金のような煌びやかな金髪を携え、サファイアのような美しく青い瞳に、美女と表されてもしょうがない程の高い鼻に締まった口元。そう、例えるのなら、今咲いたばかりの花。そんな女性がルカの書斎に入ってきたのだ。
「おい、どうした?」
「ねえ、ルカ……あなた追い詰められるでしょう?わたしには分かるわ」
女は小さな巾着袋を取り出し、そこから何かの動物のものだと思われるツノやら毛を取り出す。
「おい、この部屋を荒らされては困るぞ」
「心配ないわよ、ルーシーとカヴァリエーレ・ファミリーに呪いがかかるように祈ってるの」
女のこの半ば能天気な発言に、ルカは鼻を膨らませる。
「おいッ!ふざけてる場合じゃあないぞ !カルロが殺されたんだッ!残るはお前とフランクだけなんだぞッ!」
女いや、メアリー・クイーンズはにっこりと笑う。
「大丈夫だわ、魔女ポワカの名は伊達じゃなくてよ」
メアリーは怪しげなツノをルカに投げる。
「わたし、それでこの地位にまで上り詰めたのよ」
メアリーは自身たっぷりに笑う。
「よし、お前とフランクが殺されたら、おれはおしまいだからな、キチンとルーシーの小娘を殺してくれ」
メアリーは「任せてよ」と笑う。その時だった。メアリーが入ってから、閉じられていたルカの書斎のドアが勢いよく開かれた。
「兄貴ッ!カルロの叔父貴が殺されたってッ!?」
入ってきたのは、ミラノリア・ファミリーの中枢メンバーであり、ルカの実の弟でもあるフランクであった。
「その通りさ、おれとファミリーはヴィトの小僧一人のために支配した街の殆どを手放されなければならなかったのだ」
ルカは忌々しく吐き捨てる。
「任せなよ、カルロの叔父貴は殺せても、オレは殺せねえよ、兄貴の例の力を貸してもらえりゃあ、ヴィトの野郎なんか一瞬で消してやるよ」
「ふふふ、面白い、よしお前はキューバに行く前と同様にゴールデンストリートを任せる……必ずやヴィトの小僧を殺し、この抗争に終止符を打つんだ !無論……我々の勝利でな」
ルカはそう微笑むと、フランクの肩をポンと叩く。
「ダメよ、フランクなんかじゃ……わたしに任せた方が安全だわ」
ここで意見したのは、メアリー・クイーンズだった。
「どうかな、お前はオレたちの血縁じゃあないし、ブードゥーの呪術なんて言っているが、本当かどうか怪しいもんだぜ」
「信じられないなら、いいわ……ここであなたに直接お目にかけましょうか?」
メアリーは不機嫌そうに巾着袋から、動物のツノを取り出す。まさに一触触発の状態だった。二人の上司であるルカが割って入るまでは。
「やめんか !仲間割れをしてる場合かッ!今回はフランクに一任するッ!」
ルカはそう言うと何も言うことなく、ワイン味わいの続きに戻る。
「後悔するわよ……」
メアリーは負け惜しみからか、或いは本当にそう思っていたのかは知らないが、顔を下に向き部屋を跡にする。
メアリーが部屋から退出するのを見届け、ようやくルカがフランクに口を開く。
「お前は、カヴァリエーレの小娘を始末する方法があると聞くが、どうするつもりだ?」
「任してくれや、オレらの中で一番社交界に通じてる奴がいるだろ?そいつを利用する……」
「ああ、セルマか……」
ルカが口にしたのは、ルカ・ミラノリアの名付け子ゴッドサンであり、この中で一番社交界に通じていると言われている、セルマ・アランチーニだった。
彼女はオックスフォード大学を出たエリートであり、同時に全米を騒がせる人気歌手であった。それだけではない、政治家との親交があり、ファミリーの後ろ盾であったジョゼフ・ギャリアー上院議員をルカに紹介したのもセリアだった。
「よし、セルマなら安心だ……」
「そう、パーティに油断している時に……」
フランクはその事を想像すると愉快になるのだった。

"カリーナ"・ルーシー・カヴァリエーレは"社交界の有名人"から招待状が来たことに思わず目を丸くしていた。
「信じられないわ、あのセルマ・アランチーニのホテルでのパーティーに招待されるなんて」
ルーシーは何度も何度も招待状を読んでいた。それこそ手紙が千切れるのではないかというくらいに……。
「どうしたのよ?」
入ってきたのは、マリアだった。彼女には分からないだろう。社交界の有名人のパーティに招待される気持ちなんて。
「何でもないわよ、ただパーティに呼ばれただけよ」
「パーティ !パーティですってッ!」
マリアが喜んでいる姿は可愛らしい。普段は女王だなんて言って偉ぶっているが、やはり、年相応の可愛さはあった。
それだけで、ルーシーは喜ばしいのだが、流石にこの場合だけは、マリアを関わらせなくなかった。
「そうよ、でも残念ね、このパーティは私名義に招待状が来たのよ、あなたは呼ばれてないの」
ルーシーは得意げに決めてみせる。それが、マリアには喜ばしくなようで、不機嫌そうな顔を見せている。
「何よ、ケチケチしないでよッ!あたしにも行く権利はあるわよッ!」
「残念ね、お嬢ちゃん」
ルーシーがそうからかうと、マリアは「誰がお嬢ちゃんよ !」と思いっきり叫ぶ。
そんな時だった。
「どうしたんだ?二人とも……」
ヴィトが入って来たのだ。
「ヴィトどうしたの?」
ルーシーが何もないわよという顔でヴィトに答える。
「聞いてよッ!こいつッ!あたしを除け者にするのよッ!」
「除け者って……事実でしょう?このパーティには、私とヴィト以外は同席してはいけないって書いてあるのッ!」
ルーシーは大人気なくマリアに応対する。
「まぁまぁ、落ち着いて……それよりもパーティって?」
二人はヴィトが話を知らない事を思い返し、顔を見合わせた。



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