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揺れ動く心

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副社長を見て首を傾げる瑞紀を横目で確認しながら、俺は口元を無理矢理上げて。

「…副社長。ご無沙汰しております。」

俺がそう言うと。

「…っ」

瑞紀は、俺の後ろにさっと隠れた。

そんな瑞紀を見て、副社長は気を悪くした様で眉を寄せながら。

「…聞いてた話と違うじゃないか。」

このたぬき。

何が。

ふざけるな。

「さぁ。何の事でしょう。」

「その、綺麗な奥さんに君は愛情がなかったんじゃなかったかね?」

うるさい。

黙れ。

お前に関係無い。

そのたぬきを睨みながら。

「ええ。愛情なんてありませんよ。」

その言葉に。

後ろで瑞紀の体が強張ったのが分かった。

その瑞紀に気づかないふりをして。

「だったら、「ですが、これは俺のです。」

これ、と言いながら後ろにいた瑞紀の肩を持って引き寄せた。

目の前のたぬきは屈辱を感じた様に唇を噛み締めながらも。

「…君の年齢は34だったろう。で、瑞紀さんは17だったね。自分より二倍年下の女の子なんてただの子供にしか見えないだろう?それだったら私の息子の方が「貴方の息子さんよりは、年を食ってますけどそれがなんです?別に年齢が全てじゃないでしょう。かと言って恋愛感情を持ってるわけじゃありませんが、副社長はそんな事に捉われるような小さなお方じゃありませんよね。」

俺はそう言ってから。

笑いながら、息子とそっくりの顔に近づいて。

「離婚の話は無しとさせて頂きます。」

たぬきの顔が、怒りに歪む。

「君!「ありがとうございます。さすが副社長は話が分かる方ですね!」

わざと大きな声を出すと。

周りは俺達の方を振り返り始めた。

その様子を見て、副社長はぐっと唇を噛む。

「クビにしたければどうぞ。後悔すると思いますけど。日頃の仕事の成績、知らないはずは無いでしょう?」

俺は苦痛に歪むたぬきの顔を楽しそうに笑いながら見る。

「今日のお礼は、これから時間をかけてゆっくりと…お返しさせて頂きますから。楽しみになさってて下さいね。」

「…っ「失礼します。」

俺はそう言って。

ざわつく会場から、瑞紀の手をしっかりと持ちながら。

脚を踏み出した。
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