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1章前半コボルト村
10.ククル村にデポットリングを
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「そのお姿はまさか…おにぎり元帥ではございませんか」
倒れていたコボルトの中で、古参らしき男が胸の傷を押さえながら前に出てきた。人型の犬と形容される彼らだが、毛並みに元気がなく、抜け毛もあってか地肌が露出していた。
それによく見ると他のコボルト達も顔には精気がなく、痩せ細っている。
食事が十分に足りていないのだろう。
早く魔王像の下へと向かわんければ。
「いいえ。僕はおにぎり元帥の息子、おにぎり小僧です。父上であればもっと心強いのでしょうが…申し訳ない」
僕も父上も頭は同じ三角おにぎりだ。匂いも炊き立ての米の香りが常にするだろうし、匂いに敏感な彼が見間違うのも仕方がなかった。
「貴方様がおにぎり元帥のおっしゃっていた…」
その続きを話す前に、男は膝が抜けるように足を折った。
「ぐぅぬぅ…」
装備は冒険者との戦いでボロボロになっている。彼らは最後の力を振り絞り、抵抗していたようだ。
「今はコチラを」
そう言ってから弓使いのおにぎりを配って回ったが、どうにも数が足りない。
これでは無用な争いが生まれるかと思い気や、おにぎりを受け取ったコボルト達はそのおにぎりを自分達で食べようとはしなかった。
「どうされました? 」
おにぎりを渡され、硬直したかのように動かないコボルト達。彼らは雑食のはずだから何でも食べられるはずだ。……見た目のインパクトが悪かっただろうか。
いやそんなはずはない。なにせ、おにぎりを見てお腹を鳴らしている者もいる。
食欲が問題なのではなさそうだが…。
「妻や子供に食べさせてやりたい」
お腹を鳴らした壮年のコボルトが、消えるような声で言った。
他の者たちも同じ理由から手渡したおにぎりを食べていないようだった。
なるほど、妻子持ちとは全く予想すらしていなかった。なにせ、コチラは誰もが羨む十七歳だ。子供は愚か結婚すら視野にない。
「分かりました。それではお持ち帰り下さい」
頷いたコボルト達は、各々がおにぎりを持って別々の穴へと歩いていった。
「おにぎり元帥もこうして俺達におにぎりを分けてくださったな…」
残ったコボルト古参兵が少し震えるような声でそう呟いた。
僕に言ったワケではないのは十分承知の上だが、当時ココにいた父上と無意識に比較されているような気がした。
そのせいで、無意識に劣等感を感じる面倒な心境だった。
おそらく自分も腹が空いているのだろう。
―――それからコボルト古参兵に連れられ、魔王像のある村の入り口までやってきた。
他のダンジョンと違って、石階段が敷かれていたり、松明で入口が照らされていたりと、少し設備の行き届いたダンジョンだということに気づく。
コボルト古参兵はバウッ! と遠吠えを響かせてしばらくの後に、闇から痩せ細った精気のない目のコボルト兵士が顔を覗かせた。
装備は問題ないようだが、こちらも体は痩せ細っていて、限界が近いようだった。
「ハァ……カルブ村の村長がなんのようだ」
敵意のある言い方だったが、戦意もなく、覇気も感じられない。飢餓の前では何もかもが無気力になるようだった。
「魔王様の使いが支援に来て下さった。魔王像まで案内しろ」
「…ちょっとまってろ。確認してくる」
コボルト兵士の足は来た時よりもやや急ぎ足になって階段を下りていった。何かが変わるかも知れない、そんな期待がコボルト兵士の足を速めたのかも知れない。
そしてまたしばらく待っていると、今度は息を切らしながらコボルト兵士がダンジョンから顔を出した。
「い、い、今すぐに頼む! 」
状況を理解したのかコボルト兵士の顔は先ほどの顔とは打って変わって、希望に満ち溢れたものに変わっていた。
そこからはとんとん拍子に話が進み、魔王像の元まで案内される運びとなった。
「私が村長のククルだ。さぁ、さっそく指輪を」
ククル村の村長であるおばあさんコボルトに急かされ、指輪を魔王像の前にかざした。彼女がなぜデボットリングについて知っているのか疑問は残りつつも、指輪は正常に作動し、リングの中から黒い煙が出て像の周囲を取り囲んだ。
そして像はピカッと目を光らせると、この辺一帯に魔王様の力が行き渡ったような感覚を味わう。
そしてそれはコボルト達も同じようで、全員が心穏やかになったようだった。
『トゥートゥトゥトゥトゥー♪』
指輪から始めて聞く音楽が流れた。どうやらデボットリングとククル村の魔王像は正常にリンクしたらしい。…多分その音だと思われる。
その証にすぐに連絡の通信が入った。
「おにぎり小僧、私だ。クロックドムッシュだ」
「お疲れ様です」
「あぁ、ご苦労さん。どうやら復興の旅は順調のようだな。魔王様は大変お悦びだ」
「そこにいらっしゃるのですか」
そう聞くと、チャンネルが切り替わったのか、ブツンと音が鳴って別の声が聞こえてきた。
「コホン……予だが」
言葉からは感じ取れないが、本当に喜んでおられるのだろうか?
「魔王様! 」
「初任務、大儀であった」
な、なんと慈悲深きお言葉。
その魔王様の御言葉一つで、血圧が三倍速になったような高揚感を感じることが出来る。
―――早くお返事をしなければ。
「そのようなお言葉を承り、望外の喜びです」
冷静を装いつつも、心の中ではしみじみと嬉し涙が零れていた。
そしてリングからは何やら慌ただしい話合いがされているのが聞こえてくる。何を話しているかまでは、聞き取れないが何やら揉めているような…?
「早速で悪いが、その付近にポータルを作る。周りに物がないか確認をとれ」
ゲートの下位互換であるところの小さな穴がポータルだ。
何かゲート設置前にコチラで準備することがあるのだろうか。
「問題ありません。いつでもポータルの設置は可能です」
「よし、それでは卿も少し離れていろ。巻き込まれでもしたら洒落にもならんからな」
言われた通りに離れて待っていると、魔王像の背後で大きな穴が開いた。
倒れていたコボルトの中で、古参らしき男が胸の傷を押さえながら前に出てきた。人型の犬と形容される彼らだが、毛並みに元気がなく、抜け毛もあってか地肌が露出していた。
それによく見ると他のコボルト達も顔には精気がなく、痩せ細っている。
食事が十分に足りていないのだろう。
早く魔王像の下へと向かわんければ。
「いいえ。僕はおにぎり元帥の息子、おにぎり小僧です。父上であればもっと心強いのでしょうが…申し訳ない」
僕も父上も頭は同じ三角おにぎりだ。匂いも炊き立ての米の香りが常にするだろうし、匂いに敏感な彼が見間違うのも仕方がなかった。
「貴方様がおにぎり元帥のおっしゃっていた…」
その続きを話す前に、男は膝が抜けるように足を折った。
「ぐぅぬぅ…」
装備は冒険者との戦いでボロボロになっている。彼らは最後の力を振り絞り、抵抗していたようだ。
「今はコチラを」
そう言ってから弓使いのおにぎりを配って回ったが、どうにも数が足りない。
これでは無用な争いが生まれるかと思い気や、おにぎりを受け取ったコボルト達はそのおにぎりを自分達で食べようとはしなかった。
「どうされました? 」
おにぎりを渡され、硬直したかのように動かないコボルト達。彼らは雑食のはずだから何でも食べられるはずだ。……見た目のインパクトが悪かっただろうか。
いやそんなはずはない。なにせ、おにぎりを見てお腹を鳴らしている者もいる。
食欲が問題なのではなさそうだが…。
「妻や子供に食べさせてやりたい」
お腹を鳴らした壮年のコボルトが、消えるような声で言った。
他の者たちも同じ理由から手渡したおにぎりを食べていないようだった。
なるほど、妻子持ちとは全く予想すらしていなかった。なにせ、コチラは誰もが羨む十七歳だ。子供は愚か結婚すら視野にない。
「分かりました。それではお持ち帰り下さい」
頷いたコボルト達は、各々がおにぎりを持って別々の穴へと歩いていった。
「おにぎり元帥もこうして俺達におにぎりを分けてくださったな…」
残ったコボルト古参兵が少し震えるような声でそう呟いた。
僕に言ったワケではないのは十分承知の上だが、当時ココにいた父上と無意識に比較されているような気がした。
そのせいで、無意識に劣等感を感じる面倒な心境だった。
おそらく自分も腹が空いているのだろう。
―――それからコボルト古参兵に連れられ、魔王像のある村の入り口までやってきた。
他のダンジョンと違って、石階段が敷かれていたり、松明で入口が照らされていたりと、少し設備の行き届いたダンジョンだということに気づく。
コボルト古参兵はバウッ! と遠吠えを響かせてしばらくの後に、闇から痩せ細った精気のない目のコボルト兵士が顔を覗かせた。
装備は問題ないようだが、こちらも体は痩せ細っていて、限界が近いようだった。
「ハァ……カルブ村の村長がなんのようだ」
敵意のある言い方だったが、戦意もなく、覇気も感じられない。飢餓の前では何もかもが無気力になるようだった。
「魔王様の使いが支援に来て下さった。魔王像まで案内しろ」
「…ちょっとまってろ。確認してくる」
コボルト兵士の足は来た時よりもやや急ぎ足になって階段を下りていった。何かが変わるかも知れない、そんな期待がコボルト兵士の足を速めたのかも知れない。
そしてまたしばらく待っていると、今度は息を切らしながらコボルト兵士がダンジョンから顔を出した。
「い、い、今すぐに頼む! 」
状況を理解したのかコボルト兵士の顔は先ほどの顔とは打って変わって、希望に満ち溢れたものに変わっていた。
そこからはとんとん拍子に話が進み、魔王像の元まで案内される運びとなった。
「私が村長のククルだ。さぁ、さっそく指輪を」
ククル村の村長であるおばあさんコボルトに急かされ、指輪を魔王像の前にかざした。彼女がなぜデボットリングについて知っているのか疑問は残りつつも、指輪は正常に作動し、リングの中から黒い煙が出て像の周囲を取り囲んだ。
そして像はピカッと目を光らせると、この辺一帯に魔王様の力が行き渡ったような感覚を味わう。
そしてそれはコボルト達も同じようで、全員が心穏やかになったようだった。
『トゥートゥトゥトゥトゥー♪』
指輪から始めて聞く音楽が流れた。どうやらデボットリングとククル村の魔王像は正常にリンクしたらしい。…多分その音だと思われる。
その証にすぐに連絡の通信が入った。
「おにぎり小僧、私だ。クロックドムッシュだ」
「お疲れ様です」
「あぁ、ご苦労さん。どうやら復興の旅は順調のようだな。魔王様は大変お悦びだ」
「そこにいらっしゃるのですか」
そう聞くと、チャンネルが切り替わったのか、ブツンと音が鳴って別の声が聞こえてきた。
「コホン……予だが」
言葉からは感じ取れないが、本当に喜んでおられるのだろうか?
「魔王様! 」
「初任務、大儀であった」
な、なんと慈悲深きお言葉。
その魔王様の御言葉一つで、血圧が三倍速になったような高揚感を感じることが出来る。
―――早くお返事をしなければ。
「そのようなお言葉を承り、望外の喜びです」
冷静を装いつつも、心の中ではしみじみと嬉し涙が零れていた。
そしてリングからは何やら慌ただしい話合いがされているのが聞こえてくる。何を話しているかまでは、聞き取れないが何やら揉めているような…?
「早速で悪いが、その付近にポータルを作る。周りに物がないか確認をとれ」
ゲートの下位互換であるところの小さな穴がポータルだ。
何かゲート設置前にコチラで準備することがあるのだろうか。
「問題ありません。いつでもポータルの設置は可能です」
「よし、それでは卿も少し離れていろ。巻き込まれでもしたら洒落にもならんからな」
言われた通りに離れて待っていると、魔王像の背後で大きな穴が開いた。
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