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1章後半 デビルサイド編
25.デビルサイド
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丘の上に作られた人間の町デビルサイドは、南北に門が一つずつあるだけの、堅牢な見た目の町だ。
城壁もそれなりに高く通路も少ないから、真正面から突撃するとなると、弓兵で上から責められて痛い思いをすることだろう。
今のところその予定はないが、滅ぼすとなれば骨が折れそうな作りをしている。
「おいおい、今日はヤケに騒がしいな」
そんな城壁を前に、戦亀を動かすホクロが面倒臭そうにぼやく。
籠の横から顔を出して見ると、確かにホクロの言うように、門前が随分と騒がしい様子だった。
人間達の町はそうなのかも知れないと木こり達をみても、やはりこの町の騒がしさは異常なのか困惑しているようだ。
「なにか、あったんすかね」
「ホクロが聴くからちょっと黙ってろ」
振り返ったワッサーボーンの顔はこの寒さで苛立ちを抑えられなくなっているようだった。
普段は陽気な彼だが、こう悪条件が重なると仕方がない。
三時間以上寒空の中、戦亀の上で寒さに耐えたんだ。
彼の唇はサツマイモみたいな色だし、冗談や談笑なんかをする気力すら湧いてこないのも理解できる。
「衛兵どの、どうされました」
ホクロが門番に声をかけると、衛兵は少し疲れたように愛想笑いを返す。
「大勢の冒険者が揃ってこの町から去ってしまいましてね。町の人間もその異変に気づいてこの町から逃げようとしておるんです。領主様が現在原因の調査をしているとのことだが…いつになることやら」
「ほう……」
「いつも通り品は木炭で間違いないかね」
「あぁ、黒炭も高級な白炭も両方持ってきてるぞ」
「助かる。冒険者も減ったうえに、この寒さにも耐えねばならんとなったら、流石に参ってしまうからな。手続きは手短にすると約束しよう。メープルさんは後ろの方にいるのかい」
「お頭、呼んでます」
ホクロの合図で最後列から、僕達は胴上げのような形でお頭を運びだした。
「なにかようかい」
「いえっ、お元気そうで何より」
お頭の姿を見て少し元気になった衛兵を見て、
「ハァ……? まぁ…アンタも元気そうで何よりだよ」
と、お頭は貫禄のある対応を取った。
見た目で見れば子どもが大人を舐めているようにしか見えないが、衛兵は喜んでいるように見えるからそれで良いんだろう。
ともあれ、何事もなく門も通過し、バリケード前に居座る町人を横目に僕らは人間の町へ入った。
南北の門を結ぶ一本の長い道がメイン通りとなり、その両側には家や施設が建てられている。戦亀から周囲を見渡すと、どこを見ても人々がいる光景が広がっていた。人、人、人、とにかく人の群れだ。
人間の町なのだから辺り前だけど、謎の感動が僕の腹の底をくすぐった。
この感動は初めて牧場で牛の群れを見た時以来に感じる。
そこで人々は端でベンチや座敷の上で、ご飯を食べたり、刺繍をしたりしている。
門前は忙しそうだったけれど、街中に入ってみれば穏やかなものだった。
目的地は町の南にある商業施設のようで、南入り口から入った僕達にとっては目と鼻の先にある場所だった。
「最果てのギルド、デビルサイド商会にようこそおいで下さいました」
受付嬢にカウンター越しに笑顔の対応を受け、取引が始まった。
と言っても、金銭のやり取りをするのはお頭とホクロだけで、他は字が読めないから後ろでメンチを切るぐらいしかやることがなかった。
メンチを切ることは交渉事で大事らしい。
お頭曰く、
「舐められたら終わりだ」
とのことだ。
なるほど、人間のコミュニケーションは興味深い。
本来意味のなさそうなことが形式として存在し、それが信仰のレベルで暗黙知となっている。
また一つ、人間について詳しくなることができた。
「あのー…何か? 」
「アァん? 」
受付嬢の困惑顔にも睨み返す。
そしてその効果が現れているのか、受付嬢の目には明らかに恐れの色が見えた。
なるほどコイツは確かに下品だが使えるようだ。
「ウチの若いのが悪いね。おい、お前ら下がってな。後はアタシとホクロで済ませるから」
お頭の機嫌がいい。
どうやら、僕達は役割を全う出来たようだ。
ショットとワッサーボーン、それにアスパルテームの四人で商業施設の外に出ると、大きく伸びをした。
レンガ造りの街並みは人がいるせいか、森の中よりも温かい。
活動する意欲を沸いてくるというものだ。
「皆のもの、夜の鐘が鳴ったら酒場に集合だ。ではっ、解散! 」
ショットの合図で、ワッサーボーンとアスパルテームは事前に決めていた通りの場所へと散って行った。
事前に聞いていた話ではワッサーボーンは酒場で博打、アスパルテームは肉屋でソーセージを選ぶらしい。
そして僕はというと、やるべき仕事の前に、ショットとの付き合いで浴場へ行くことになっていた。
「こう寒いと湯が沁みそうだぜ」
「あぁ全くだ。イソマルト、急ぐぞ」
「あいよ」
風呂なら自分のタイミングで抜け出すことが出来る。仕事前に疲れを取っておくのも一興だろう。
城壁もそれなりに高く通路も少ないから、真正面から突撃するとなると、弓兵で上から責められて痛い思いをすることだろう。
今のところその予定はないが、滅ぼすとなれば骨が折れそうな作りをしている。
「おいおい、今日はヤケに騒がしいな」
そんな城壁を前に、戦亀を動かすホクロが面倒臭そうにぼやく。
籠の横から顔を出して見ると、確かにホクロの言うように、門前が随分と騒がしい様子だった。
人間達の町はそうなのかも知れないと木こり達をみても、やはりこの町の騒がしさは異常なのか困惑しているようだ。
「なにか、あったんすかね」
「ホクロが聴くからちょっと黙ってろ」
振り返ったワッサーボーンの顔はこの寒さで苛立ちを抑えられなくなっているようだった。
普段は陽気な彼だが、こう悪条件が重なると仕方がない。
三時間以上寒空の中、戦亀の上で寒さに耐えたんだ。
彼の唇はサツマイモみたいな色だし、冗談や談笑なんかをする気力すら湧いてこないのも理解できる。
「衛兵どの、どうされました」
ホクロが門番に声をかけると、衛兵は少し疲れたように愛想笑いを返す。
「大勢の冒険者が揃ってこの町から去ってしまいましてね。町の人間もその異変に気づいてこの町から逃げようとしておるんです。領主様が現在原因の調査をしているとのことだが…いつになることやら」
「ほう……」
「いつも通り品は木炭で間違いないかね」
「あぁ、黒炭も高級な白炭も両方持ってきてるぞ」
「助かる。冒険者も減ったうえに、この寒さにも耐えねばならんとなったら、流石に参ってしまうからな。手続きは手短にすると約束しよう。メープルさんは後ろの方にいるのかい」
「お頭、呼んでます」
ホクロの合図で最後列から、僕達は胴上げのような形でお頭を運びだした。
「なにかようかい」
「いえっ、お元気そうで何より」
お頭の姿を見て少し元気になった衛兵を見て、
「ハァ……? まぁ…アンタも元気そうで何よりだよ」
と、お頭は貫禄のある対応を取った。
見た目で見れば子どもが大人を舐めているようにしか見えないが、衛兵は喜んでいるように見えるからそれで良いんだろう。
ともあれ、何事もなく門も通過し、バリケード前に居座る町人を横目に僕らは人間の町へ入った。
南北の門を結ぶ一本の長い道がメイン通りとなり、その両側には家や施設が建てられている。戦亀から周囲を見渡すと、どこを見ても人々がいる光景が広がっていた。人、人、人、とにかく人の群れだ。
人間の町なのだから辺り前だけど、謎の感動が僕の腹の底をくすぐった。
この感動は初めて牧場で牛の群れを見た時以来に感じる。
そこで人々は端でベンチや座敷の上で、ご飯を食べたり、刺繍をしたりしている。
門前は忙しそうだったけれど、街中に入ってみれば穏やかなものだった。
目的地は町の南にある商業施設のようで、南入り口から入った僕達にとっては目と鼻の先にある場所だった。
「最果てのギルド、デビルサイド商会にようこそおいで下さいました」
受付嬢にカウンター越しに笑顔の対応を受け、取引が始まった。
と言っても、金銭のやり取りをするのはお頭とホクロだけで、他は字が読めないから後ろでメンチを切るぐらいしかやることがなかった。
メンチを切ることは交渉事で大事らしい。
お頭曰く、
「舐められたら終わりだ」
とのことだ。
なるほど、人間のコミュニケーションは興味深い。
本来意味のなさそうなことが形式として存在し、それが信仰のレベルで暗黙知となっている。
また一つ、人間について詳しくなることができた。
「あのー…何か? 」
「アァん? 」
受付嬢の困惑顔にも睨み返す。
そしてその効果が現れているのか、受付嬢の目には明らかに恐れの色が見えた。
なるほどコイツは確かに下品だが使えるようだ。
「ウチの若いのが悪いね。おい、お前ら下がってな。後はアタシとホクロで済ませるから」
お頭の機嫌がいい。
どうやら、僕達は役割を全う出来たようだ。
ショットとワッサーボーン、それにアスパルテームの四人で商業施設の外に出ると、大きく伸びをした。
レンガ造りの街並みは人がいるせいか、森の中よりも温かい。
活動する意欲を沸いてくるというものだ。
「皆のもの、夜の鐘が鳴ったら酒場に集合だ。ではっ、解散! 」
ショットの合図で、ワッサーボーンとアスパルテームは事前に決めていた通りの場所へと散って行った。
事前に聞いていた話ではワッサーボーンは酒場で博打、アスパルテームは肉屋でソーセージを選ぶらしい。
そして僕はというと、やるべき仕事の前に、ショットとの付き合いで浴場へ行くことになっていた。
「こう寒いと湯が沁みそうだぜ」
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風呂なら自分のタイミングで抜け出すことが出来る。仕事前に疲れを取っておくのも一興だろう。
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