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1章後半 デビルサイド編
64.神秘の暴露
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黒い扉の向こう側に足を踏み入れる。ぶよぶよとした黒い血管を辿るように視線を奥にやると、椅子に座った誰かの姿が視界に入った。
「……マジかよ」
「なになにどうしたの? ……えっ? 」
部屋の奥には椅子に縛り付けられた状態で、頭に様々な器具が取り付けられたおにぎり族の死体があった。
まさかこんなところで同種の仲間に出会えるとは思いもしなかったが、おかげでこの地下で起きていた全ての謎が解けた。
僕も含めおにぎり族は食べたものを復元できる。例え指だろうと髪だろうと、食べたものの元の姿を、自分の体内にある栄養を使って復元できるのだ。
そう、教会が地下に押し込め秘匿した人体蘇生という神秘の正体は、おにぎり族を使った人間の複製工場というわけだった。
「なにが魔王像は神の力を弾くだ……」
クロックドムッシュの声が思い出される。
おじさんは知っていてあえて教会の蘇生の秘密について僕に教えなかったのだろう。この惨劇が魔族に広まれば、魔族は人類を滅ぼすかも知れない。僕の考えだってもっと違ったものになっていたかも。おじさんはそれが分かっていたんだ。
『……ハァー』
あの狼男はこういう秘密を沢山抱えているんだろうな。そう思うと深いため息が出る。
今、全てが終わった今だからこそ、見て正解のものだった。
そう言い聞かせて、また大きくため息をついた。
大丈夫だ、僕はまだ冷静でいられる。冷静でいたい。
「これ…やっぱり死んでるよね」
「野暮なこと聞くなよ。さてと、今拘束を外してやっからなー……」
血に染まった荒縄を解いて行くにつれて、彼が舌を噛み切って死んでいるのが分かった。死体の状況から見て、デポットリングを魔王像にかざしたあの時に死んだのだろうと思われる。
魔王様の力に包まれるようなあの感覚を、この暗い地の底で彼も感じたに違いない。笑顔で死んでいる彼を見れば、それは一目瞭然だった。
魔王様の支配領域に変わったことを察して、魂があの御方の元へ戻れると分かってから絶命したのだろう。
このおにぎり小僧はその点では十分に最後まで魔王様に忠義を尽くしたと言える。
縛り付けられたおにぎりボディはもう随分とカチカチになってしまっていた。動かせば体は崩壊してバラバラになってしまうのが、触れてすぐに分かった。
「よく……頑張った」
そうして、散らばらないようにベッドのシーツを持ってきてその上で古びたおにぎりボディを砕いた。
「なにをしているの? 」
「俺達おにぎり族の葬儀の仕方でね。どんなに古くなってもボディはこうして砕いて、身内の者が食べんのさ」
そう言うとマーコは小さく「食葬……」と、呟いた。
それに頷いて、バラバラになったボディを上に持って上がった。おにぎり族の魂は魔王様の物だが、肉体は我々一族の伝統が作り上げたものだ。我々が弔わなければならない。
「あの子達の体も一緒に持って上がってくれない? 」
マーコは呟くように僕に頼んだ。彼女は子供たちを弔いたいのだろう。僕は頷いて、部分的に白骨化しているウジの湧いた死体を一人ずつ、持って上がった。
そうして全て運び終えてから階段を上がると、やっと重苦しい空気から解放されたような気がして、大きく伸びをした。
「そっちの死体はどうするんだ? 」
腐敗した人間の死体を指さして言った。すると端的に「燃やすよ」と言われたので、「火葬か? 」と、返した。
「うん。この町じゃあ死体のまま放置すると魔物に乗り移られるって言われてるから。燃やして完全に骨にしたら…壺に入れて埋葬かな」
「魔物に乗り移られる…か。そう言うこともあるかもな」
そんな話をしながら教会の庭で、六人分の墓を掘って埋葬した。人間の埋葬というのを初めてやったが、不思議な気分だった。人を焼いた灰の味が辛くて苦いものだったからかも知れない。
「今度はそっちの葬儀しようよ。食べるんでしょ? 」
「そうだな」
そう言って宿屋に戻り、彼女に実践して見せることにした。
宿屋の一階には、宿の利用者が煮炊きに使える台所があり、今回の葬儀会場の場所となった。宿屋の店主に少しの間覗かないでくれと頼み、おにぎりボディで調理を始めた。
材料はこのパサついた古いおにぎりボディに、水と魚のルイベだ。どちらも宿屋の店主が使っていいと快く渡してくれたものだった。
「お茶漬けでも作るの? 」
「はい。古いおにぎりボディは砕いてお茶漬けにします。美味くはありませんが、それを食べてお終いです。食べますか? 」
「ううん…」
だろうなという気持ちと、なんでそんなに申し訳なさそうな顔をするのか分からないという気持ちの半分半分のまま、調理は順調に進んだ。
そして出来上がったモノに手を合わせてから、カカッと口に運んで飲み込んだ。塩味が効きすぎていて、やはりお世辞にも美味しいとは言い難い一品だった。
「コレで彼の肉体は僕の栄養となって、共に生き続けることになりました。葬儀は終了です」
手を合わせてご馳走様でしたと言う。そしてしばらく目を瞑り、あの凄惨な現場を思い出して目を開けた。
「教会の方々とは、少しお話がしたいですね」
「アタシも同意見かな」
教会のやっていることを許しておくことは出来ない。
旅をする目的がまた一つ、俺の中で生まれた。
「……マジかよ」
「なになにどうしたの? ……えっ? 」
部屋の奥には椅子に縛り付けられた状態で、頭に様々な器具が取り付けられたおにぎり族の死体があった。
まさかこんなところで同種の仲間に出会えるとは思いもしなかったが、おかげでこの地下で起きていた全ての謎が解けた。
僕も含めおにぎり族は食べたものを復元できる。例え指だろうと髪だろうと、食べたものの元の姿を、自分の体内にある栄養を使って復元できるのだ。
そう、教会が地下に押し込め秘匿した人体蘇生という神秘の正体は、おにぎり族を使った人間の複製工場というわけだった。
「なにが魔王像は神の力を弾くだ……」
クロックドムッシュの声が思い出される。
おじさんは知っていてあえて教会の蘇生の秘密について僕に教えなかったのだろう。この惨劇が魔族に広まれば、魔族は人類を滅ぼすかも知れない。僕の考えだってもっと違ったものになっていたかも。おじさんはそれが分かっていたんだ。
『……ハァー』
あの狼男はこういう秘密を沢山抱えているんだろうな。そう思うと深いため息が出る。
今、全てが終わった今だからこそ、見て正解のものだった。
そう言い聞かせて、また大きくため息をついた。
大丈夫だ、僕はまだ冷静でいられる。冷静でいたい。
「これ…やっぱり死んでるよね」
「野暮なこと聞くなよ。さてと、今拘束を外してやっからなー……」
血に染まった荒縄を解いて行くにつれて、彼が舌を噛み切って死んでいるのが分かった。死体の状況から見て、デポットリングを魔王像にかざしたあの時に死んだのだろうと思われる。
魔王様の力に包まれるようなあの感覚を、この暗い地の底で彼も感じたに違いない。笑顔で死んでいる彼を見れば、それは一目瞭然だった。
魔王様の支配領域に変わったことを察して、魂があの御方の元へ戻れると分かってから絶命したのだろう。
このおにぎり小僧はその点では十分に最後まで魔王様に忠義を尽くしたと言える。
縛り付けられたおにぎりボディはもう随分とカチカチになってしまっていた。動かせば体は崩壊してバラバラになってしまうのが、触れてすぐに分かった。
「よく……頑張った」
そうして、散らばらないようにベッドのシーツを持ってきてその上で古びたおにぎりボディを砕いた。
「なにをしているの? 」
「俺達おにぎり族の葬儀の仕方でね。どんなに古くなってもボディはこうして砕いて、身内の者が食べんのさ」
そう言うとマーコは小さく「食葬……」と、呟いた。
それに頷いて、バラバラになったボディを上に持って上がった。おにぎり族の魂は魔王様の物だが、肉体は我々一族の伝統が作り上げたものだ。我々が弔わなければならない。
「あの子達の体も一緒に持って上がってくれない? 」
マーコは呟くように僕に頼んだ。彼女は子供たちを弔いたいのだろう。僕は頷いて、部分的に白骨化しているウジの湧いた死体を一人ずつ、持って上がった。
そうして全て運び終えてから階段を上がると、やっと重苦しい空気から解放されたような気がして、大きく伸びをした。
「そっちの死体はどうするんだ? 」
腐敗した人間の死体を指さして言った。すると端的に「燃やすよ」と言われたので、「火葬か? 」と、返した。
「うん。この町じゃあ死体のまま放置すると魔物に乗り移られるって言われてるから。燃やして完全に骨にしたら…壺に入れて埋葬かな」
「魔物に乗り移られる…か。そう言うこともあるかもな」
そんな話をしながら教会の庭で、六人分の墓を掘って埋葬した。人間の埋葬というのを初めてやったが、不思議な気分だった。人を焼いた灰の味が辛くて苦いものだったからかも知れない。
「今度はそっちの葬儀しようよ。食べるんでしょ? 」
「そうだな」
そう言って宿屋に戻り、彼女に実践して見せることにした。
宿屋の一階には、宿の利用者が煮炊きに使える台所があり、今回の葬儀会場の場所となった。宿屋の店主に少しの間覗かないでくれと頼み、おにぎりボディで調理を始めた。
材料はこのパサついた古いおにぎりボディに、水と魚のルイベだ。どちらも宿屋の店主が使っていいと快く渡してくれたものだった。
「お茶漬けでも作るの? 」
「はい。古いおにぎりボディは砕いてお茶漬けにします。美味くはありませんが、それを食べてお終いです。食べますか? 」
「ううん…」
だろうなという気持ちと、なんでそんなに申し訳なさそうな顔をするのか分からないという気持ちの半分半分のまま、調理は順調に進んだ。
そして出来上がったモノに手を合わせてから、カカッと口に運んで飲み込んだ。塩味が効きすぎていて、やはりお世辞にも美味しいとは言い難い一品だった。
「コレで彼の肉体は僕の栄養となって、共に生き続けることになりました。葬儀は終了です」
手を合わせてご馳走様でしたと言う。そしてしばらく目を瞑り、あの凄惨な現場を思い出して目を開けた。
「教会の方々とは、少しお話がしたいですね」
「アタシも同意見かな」
教会のやっていることを許しておくことは出来ない。
旅をする目的がまた一つ、俺の中で生まれた。
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