底辺冒険者の俺をプロデュースしてS級冒険者にするって何が楽しいんですか?

星島新吾

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1章 底辺冒険者の俺をプロデュースする理由は何ですか?

ep15.罪の山頂

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不甲斐なさを噛みしめながらやっと、元いた場所の近くにまで帰ってくることに成功した。

パルモの匂いを探して辺りを探してみると、山道を見つけ、簡単に歩ける山道に少し感動させられながら彼女の元へと向かう。

(あと…少し…!)

そしてやっとの思いで辿りついたと持った矢先、俺はその光景に絶句した。

彼女の周りにはまだ新しい赤い血だまりと横たわる帝国兵士たちの姿があった。俺を吹き飛ばした風魔法を使う男の姿はなく、代わりに別の兵士たちが横たわっていた。

なぜ?という疑問と共にパルモの名を叫んだ。

「パルモ!」

「クルさん!ちゃんと戻ってこられたんだね」

パルモは横たわる兵士の頭から足をどかしてコチラへ歩いてくる。

そんな彼女の頬や服には彼らの返り血と思われるものが跳ねて赤く黒ずんでいた。

「パルモが全部やったのか…?コレ…」

「ううん?もう死んでいたんだよ。この辺りは魔物が多いから、多分魔物の仕業だね」

魔物の仕業…?だとするとその返り血は一体…。

「その服の血は…?それに怪我はないのか?」

「大丈夫、私は傷一つないぜ」

そういってサムズアップをした。

「そう…なのか…あの男は?」

「…急用が出来たみたいで帰ったよ」

下手な嘘に俺は呆然となった。

「そうか急用か…」

と返すしか出来なかった。

「どうしたの?クルさん」

パルモは不思議そうに聞いた。

(どっちだ?彼女がやったのか?それとも違うのか?)

彼女とは数日共にしただけだが、意味もなく人を殺すような人とは思えない。

本当に彼女のいう通り、魔物がココにやってきていたのかも知れない。

知らないのに疑うということはしたくなかった。

しかし、状況証拠は全て彼女が殺したと言っている。

自分の目を信じるか。

彼女の言葉を信じるか。

どちらにせよやりたいことは一つだった。

「パルモ。この兵士たちの亡骸をこのままってワケにもいかないよな…墓、建ててやっても良いか」

「また次の追手が来ないとも限らないし、私は早く行った方が良いと思うよ?適切な場所に埋葬するわけでもないんだし」

彼女はこの場から早く去りたいようだった。

ソレはそうだろう。でも・・・。

「そうしたいんだ」

強くパルモにそう伝えると、彼女は諦めたように頷いた。

『メディオ』

コンの声が背中から聞こえる。

(なんだ?)

『喰っていいか』

(ダメに決まっているだろ)

一瞬この死体全てをコンに食べさせれば証拠隠滅は完璧だ、なんて考えがよぎった自分を殴りたい気持ちだった。

(そんな残虐な行いが許されてたまるか)

『そうか』

それからコンはそれ以上何かを言うことはなかった。

問題の解決に相手を殺害し、証拠を抹消し隠ぺいする。その選択肢を用意すること自体が間違いなのだ。

パルモに両手で持っていたグロリアスマンティスの鎌を渡すと、三十分ほど時間をかけて人数分の穴を掘った。

そして一人ずつ埋めてやるために持ち上げる。

全員が苦しんだような顔で白目を剥き、顔を真っ赤にして死んでいた。

自白用の拷問を受けたような形跡もあり、俺はそれから目を背けた。

黙々とその死体となった元同僚たちを土の中へと埋めていく。

そして最後に盛り上がった土の上に木の棒を刺した。

「ゴメン…俺、カブトムシのお墓しか作ったことなくて…」

膝をついて土の中で眠る彼らに謝り、立ち上がった。

「よし…行こう」

「ねえクルさん。一つ聞いても良い?」

いつもより彼女の声のトーンが低い。

「なんだ?」

「知り合いとかいたかな」

ソレを聞いてなんて返したらいいか悩んだ。

彼らは俺が騎士の間、無能な平民と言う至極真っ当な理由で、靴で踏んだり木剣で殴ってきたりしていた輩だ。

もう少し自分に能力があれば彼らの対応もまた変わったのではないかと思うと、それも叶わぬこととなってしまったことが辛かった。

「…それを聞いてどうするんだ?」

「ううん、別に」

「…誰も見たことない連中だよ」

パルモにはなぜかそんな嘘をついた。

「そっか」

パルモはゾッとするほど無関心な返事をした。

(次…もしも彼女が誰かを殺さなければならない時があったなら、その時は俺が止める。もしそれすら無理なら俺が…)

そんなことを考えて首を振った。

(悪いことばかり想像するのは俺のよくない癖だな)

そしてもう後には引けないのだと心から理解出来た。だからこそ聞きたいことがあった。

「パルモ、どうしてそこまでして、俺をS級冒険者にさせたいんだ?」

彼女と出会った時から今まで、聞いても流されてきた答えを俺は彼女に求めた。

今なら彼女はきっと話してくれる。そんな気がした。

「そうだね…そろそろちゃんと話すべきだよね。分かった。山の頂上で景色でも見ながら話そうよ」

そう話す彼女の声はどこか優しくて、先ほどの声とはまるで別人のようだった。

「あ、そうそう」

「ん?パルモ、どうかしたか?」

「クルさんさっきお墓作ってあげていたけど。あれ死体遺棄罪と司法妨害罪って知ってる?」

「…犯罪なのか?」

「両方合わせると懲役十年ぐらいかな」

俺が無知なのが悪いが、俺が罪を犯そうとしていたのなら止めてほしかった。

いや、そういえば彼女は俺の行動をちゃんと止めていた。

俺はソレを無視して偽善者ぶって…自分の心を慰めるために墓を作ったんだ。

「本当に無知は罪だな」

「それがクルさんの愛嬌だよ」

馬鹿過ぎて罪を犯してしまったのに、彼女はソレを愛嬌だと表現した。

彼女の優しさ?が海よりも深いことを実感する。

「戻っていいか?」

「もう山頂につくよ?」

俺はその彼女の言葉を言い訳に、俺は踵を返して戻らないという選択を取った。

罪がなんだと言われた以上に、水筒の水を確認して辞めたのだ。

水筒の水は残りわずかしか残っていなかった。

山頂は寒いが喉が渇いた。

俺の心の円グラフは、罪の意識が三十パーセント、戻るのが面倒臭い二十パーセント、山を下りたいが三十パーセント、パルモから話を聞きたいが十パーセント、そして残りの十パーセントは歩くのが疲れた、だった。つまり…、

「…もう後戻りは出来ないな」

と、決心を固めるしか無かったのである。
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