底辺冒険者の俺をプロデュースしてS級冒険者にするって何が楽しいんですか?

星島新吾

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2章 底辺冒険者の俺をプロデュースしていて楽しいですか?

ep19.パワーアップ

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山の森の中で、丁度魔物の匂いのしない洞穴を見つけ、そこにテントを張った俺達は、簡単な食事を済ませた後、すぐに就寝に入った。

「ぐぬぬぬ…」

「クルさんどうしたの?」

広げられた簡易テントの中で横になっていると、隣で寝袋に入ったパルモに唸り声を聞かれてしまう。

「夜になると、よくないことを考えてしまうアレだ」

大きな魔物と初めて戦い勝利はしたものの、残った恐怖が夜の闇に紛れて記憶から蘇ってきたのだ。

そして他にもパルモが返り血を浴びて平気な顔をしていた光景など、トラウマになりそうな出来事が多くあったせいで、瞳を閉じるとそれらが襲い掛かってくるような衝動に、体はくたくたに疲れているのに眠れないでいた。

「明日も早いよ」

「あぁ…そうだな」

何もしていないのに心臓の鼓動が早くなったり、遅くなったりするのでどうにかして心臓の鼓動だけでも止まらないモノかと、寝袋に顔を埋めつつ考える。

しかし、考えてもどうにもならず俺は寝袋から這い出た。

「クルさん?」

「ちょっと空気吸ってくる」

洞穴の外に出ると、すぐに鼻を使って魔物の位置を探った。

洞穴の外は全くの暗黒で、月光すらもそれほど多くは差し込まない空間だった。

コンの赤い宝石が夜の中にポッっと光り、その赤い点だけが唯一の小さな光源と言えた。

(コン…聞こえるか)

『どうした』
(弱い魔物を探す手伝いをしてくれ)

『なぜ?』

(体を動かさないと…やっていられないんだよ!)

コンを握りしめ、足元も見えぬまま洞窟の周囲を走りまわる。

体は疲れていて今にも眠れそうなのに、なぜか思考がハッキリして眠れない。

そんな時は、死ぬほど体を疲れさせて強制的に脳を気絶させることで眠った事にする。それが俺の次の日どうしてもちゃんと起きなきゃいけない日に、ちゃんと眠る方法である。

(眠れない俺は最強…眠れない俺は最強…)

『夜は魔物も狂暴化していると言っていなかったか?』

(眠れない俺は最強…眠れない俺は最強…)

『聞く耳持たず…か。やれやれ、手頃なのだと昼間に見たクワガタの口と羽、ムカデの体を持つ、魔物がいただろう。ココから少し離れた場所だが、いるみたいだぞ』

自分の手元も殆ど見えない暗闇の中、コンの言った通りの魔物が森の中を蛇行して飛んでいるのを耳で聞き取った。

目が使えない分、より鋭利に鼻と耳が聞こえる俺は、虫や動物の出す微弱な音波も感じ取れるようになっていた。

小さな命の音が森の全てから聞こえてくる。

そしてその中に一際大きな音を鳴らす怪物を耳が捉えた。

足場の状態を足の裏で感じ取りつつ、歩いていく。

この山にある森と一つになって、狩りをしているような気持ちになっていくのを感じる。

ピッタリと纏わりつく闇の海の中をゆっくりと進んでいく。

すると、大きな鼓動を鳴らすクワガタともムカデともいえる魔物を発見した。

(…見つけた)

『一つ言っておくが、今の君ではおそらく勝てないぞ』

(うるせえ…こっちはなぁ、寝むれないんだよ。眠りたいのに。この苦しみがお前に分かるか)

『さあな。私は忠告したぞ?』

俺は鼓動のなる方へと歩いていき、どうやって戦いを仕掛けるか考える。

夜に行動をしないのか、例の魔物の動きは昼に見た時よりも遅い。

木の上から飛び移って羽さえ折ってしまえば、空から襲われることはなさそうだ。

(…ちっとは、俺を楽しませてみろよ…クワガタ野郎…!)

木によじ登り、クワガタに襲い掛かった瞬間に強い衝撃が頬に走った。

空の色が一瞬にして閃光に包み込まれる。

受け身を取ろうと、腕を動かそうとするがうまくいかない。

「なんだ!?何が起こった…!?」

「おーい、いつまで寝ぼけているの?クルさーん」

パルモの声に、ガバッと起き上がると暗闇の森もなく、クワガタともムカデとも形容しがたい魔物もいなかった。

変わりにあるのは、起き上がった瞬間に俺とおでこをぶつけて額を赤くしているパルモだけだ。

「へ…?…魔物は…?」

「夢でも見ていたの?」

赤くなったおでこをさするパルモに言われてようやく先ほどの出来事がリアルな夢だと理解出来た。

(そうだ…確かに俺が危険って言われている夜の森に一人で出るなんてあるわけない…そんなの怖いじゃないか)

多量の汗と共に、寝袋から這い出ると外はすでに明るくなっていた。

(夜の俺…凄く勇敢だったな…)

夜の感覚を思い出そうとすると、夢の中ほどではないにしろ、小さな虫の羽音ぐらいならどこにいるかも分かるぐらいには耳を澄ませるようになっていることに気が付いた。

『おそらく、君の体が大きく変化した身体能力に驚いたんだろう。それが夢と言う形で君に知らせたんだ』

(パワーアップしたってことか?)

『ああ。実際に君の聴覚は昨日よりも格段に良くなっている』

(町の中に入ったら凄く煩く聞こえるんだろうか?)

『さあな。実際に行ってみて確かめてみると良い』

(そう言えば、コンが光っている夢も見たんだが…出来るか?)

『君の見た夢とやらを覗き見てやろう…ふむ、夢の中の私はこんなことが出来たのか…面白い。やってみよう』

そういうとコンはドクンドクンと脈打つ速度を増して、そしてそのままピカーと光った。

『どうだ。光り輝いて見えるか?』

(自分じゃ分からないのか?)

『あぁ。どうなんだ?』

(おまえ、今光輝いてるぜ)

『どうやら新しく光る能力に目覚めたようだな。これは私の今までの機能にはなかった力だ』

(おぉ…凄いな。生物でも自分で発光する奴の方が少ないぞ。どういう原理なんだ?)

『さあな。小娘に聞いてみたらどうだ?』

パルモに光っているコンを見せて意見を求めた。

「これ、なんで光るか分かるか?」

「えぇ…?…うーん…基質が酸化して生成されたエネルギーが光になって放出されているんじゃない?発光生物なら大体そうでしょ?」

「なるほど…」

パルモはそう当たり前でしょ?みたいに言ったが、コチラに学が無かったためよく分からなかった。
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