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2章 底辺冒険者の俺をプロデュースしていて楽しいですか?
ep26.傷痕はどこへ
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その夜、疲れのせいか低いテーブルの前で胡坐を掻いているとそのまま眠りに落ちそうになっていたところをパルモに一喝された。
「起きてクルさん」
「んあっ…?」
頭の半分が眠っているような状態で彼女の声に耳を傾ける。
彼女の場所は香水の匂いがする方向から後ろから声をかけているのが分かった。
「ちょっと服めくってみてくれない?」
パルモのその一言ですぐに意識を覚醒し、腹筋に力を入れる。
いや、全く割れているとかはないのだが、見られてもいいようの体が誰しもあるはずなのだ。
「ど、どうした?」
背中を見られ、少し恥ずかしく思いながら彼女に聞いた。
「傷が…ない…」
背中を見ているパルモはそう言った。
騎士団にいた時にも大きな怪我はしなかったし、マナダストを集めていた時にも別に洞窟に転げ落ちるようなことも無かった。
これまで怪我無しの人生である。
「そりゃ怪我するような仕事はしてきませんでしたから」
「そうじゃないよ。デーモンモンキーと戦った時の傷。擦り傷なり打撲なりあっても良さそうな攻撃を受けていたでしょ?攻撃を受けた後も笑っていたから大した傷じゃないのかと思ったけど…」
パルモに言われてそう言えば、と腹を見る。殴られた衝撃で痣にでもなっているかと思ったが、特に赤くなっていたりもしなかった。
「おぉー特にどうにもなってないな。赤くなってないと変か?」
「それじゃあすまない攻撃だったから変なんだよ…謎に頑丈なんだね。あばら骨なんて浮いているぐらいガリガリなのに…」
(あ…アバラ!?どこ見ているんだ!?)
「み、見すぎ…」
「ちょっと!手邪魔!」
「はい…すいません」
変な見方をされていると思い隠そうとしたが、パルモの力が強く結局上半身の殆どを見せたが、傷はどこにもなかったそうだ。
「クルさん、ちょっとゴメンね」
「え?」
後ろから言われ、何をされるのかと思った瞬間、上腕部に痛みが走った。
(斬られた?)
腕から血がツーと流れ落ち、腰まで血が垂れた。
「えっ…!?どうしたパルモ!?」
前に逃げるように這うと、後ろにはナイフを持ったパルモが立っていた。
「おおおおちおちおち落ち着け!パルモ!早まるな!?」
「大丈夫。ちょっとチクッとしただけでしょ」
彼女はナイフを仕舞い、傷をつけた肩をジッと見つめている。
「血が出るわね」
「当たり前だぁ!」
この子は俺を実験用のペットか何かだと思っているのだろうか。
こんなバカなことでポーションを使う事になるとは思わず、リュックの中からポーションを探していると彼女がその手を止めた。
「なんだ?」
「包帯で我慢してみよ?ポーション高いし」
パルモは人の心をどこかに置き忘れてきたのだろうか。しかし彼女のいう通り、緊急時ではないため即効性のあるポーションを使うのは勿体ない。
言われた通りに包帯を巻くと、出血箇所の血がゆっくり止まっていくのが分かった。
「ふぅ…包帯使ったから血が止まったな」
人生で一度も怪我で包帯を巻いたことが無かったが、結構凄い効果があるらしい。
「なわけないでしょ。はい、包帯外して」
見てみると、数分と立たないうちに傷にカサブタが出来ていた。
「「なにこれ…」」
体に起きた異様な状態に二人の声が重なった。
自分でもびっくりする状況に、パルモに何が起こっているのか聞こうと彼女の顔を見るとサングラスの奥からでも彼女が動揺しているのが分かった。
「これ…いつから?」
何時から、と言われても騎士の時代にはそんなことはなかった。マナダストの回収業者だった時はそもそも病気をしても怪我はしたことはなかったので分からなかった。
「ここ数年じゃないかな」
「…そう。あとね、クルさん、ちょっとこの部屋涼しいなって感じない?」
パルモに言われると確かに涼しいと思った。さっきよりも五度ぐらい下がった気がした。
「確かに。春の夜だからか…結構涼しいな」
「違うよ。クルさんが熱くなっているの」
パルモに言われて自分の体を湯気が包んでいることに気づく。彼女は俺の額の温度を確かめるために手を当てたが、それも冷たかった。
「そうなのか?…手貸してくれ」
そういってどさくさに紛れてパルモの手を握ると、彼女の手は血の通っていない人形のように冷たかった。
「死んでる?」
「生きてるよ。私の手が元から冷たいって言うのもあると思うけど…多分クルさんの手が熱すぎるの」
「ふうん…まだ上がっているように感じるか?」
彼女に体温が上昇しているのか確認して貰う。決してやましい考えがあるわけではない。当然だ。当たり前だ。
…しかし体温が上昇しているかについて彼女は「たぶん今は変わってないと思う」と、首を振るだけだった。
「そっか…ならいいや。明日の朝にドロドロになっていたら型にはめて戻しておいてくれ」
「…うん分かった」
つまらないボケはパルモさんにスルーされた。
にしてもいつの間にこんな変な体になってしまったのだろうか。
色々とやることがあるというのに、自分の体にまで変化が起き始めて、俺の思考回路はパンパンになっていた。
その結果、もう面倒くさいので考えるのを止めた。
後のことは頭のいいパルモが解決してくれるだろうと思い、俺は今日の夕飯について考えることにした。
「詳しいことはまた明日考えるか。今日はご飯食べに行こう」
旅館についている料亭が俺達を待っている。体のことなんて今日はどうでも良いのだ。
面倒ごとは後回し、それが俺の人生なのだ。
「起きてクルさん」
「んあっ…?」
頭の半分が眠っているような状態で彼女の声に耳を傾ける。
彼女の場所は香水の匂いがする方向から後ろから声をかけているのが分かった。
「ちょっと服めくってみてくれない?」
パルモのその一言ですぐに意識を覚醒し、腹筋に力を入れる。
いや、全く割れているとかはないのだが、見られてもいいようの体が誰しもあるはずなのだ。
「ど、どうした?」
背中を見られ、少し恥ずかしく思いながら彼女に聞いた。
「傷が…ない…」
背中を見ているパルモはそう言った。
騎士団にいた時にも大きな怪我はしなかったし、マナダストを集めていた時にも別に洞窟に転げ落ちるようなことも無かった。
これまで怪我無しの人生である。
「そりゃ怪我するような仕事はしてきませんでしたから」
「そうじゃないよ。デーモンモンキーと戦った時の傷。擦り傷なり打撲なりあっても良さそうな攻撃を受けていたでしょ?攻撃を受けた後も笑っていたから大した傷じゃないのかと思ったけど…」
パルモに言われてそう言えば、と腹を見る。殴られた衝撃で痣にでもなっているかと思ったが、特に赤くなっていたりもしなかった。
「おぉー特にどうにもなってないな。赤くなってないと変か?」
「それじゃあすまない攻撃だったから変なんだよ…謎に頑丈なんだね。あばら骨なんて浮いているぐらいガリガリなのに…」
(あ…アバラ!?どこ見ているんだ!?)
「み、見すぎ…」
「ちょっと!手邪魔!」
「はい…すいません」
変な見方をされていると思い隠そうとしたが、パルモの力が強く結局上半身の殆どを見せたが、傷はどこにもなかったそうだ。
「クルさん、ちょっとゴメンね」
「え?」
後ろから言われ、何をされるのかと思った瞬間、上腕部に痛みが走った。
(斬られた?)
腕から血がツーと流れ落ち、腰まで血が垂れた。
「えっ…!?どうしたパルモ!?」
前に逃げるように這うと、後ろにはナイフを持ったパルモが立っていた。
「おおおおちおちおち落ち着け!パルモ!早まるな!?」
「大丈夫。ちょっとチクッとしただけでしょ」
彼女はナイフを仕舞い、傷をつけた肩をジッと見つめている。
「血が出るわね」
「当たり前だぁ!」
この子は俺を実験用のペットか何かだと思っているのだろうか。
こんなバカなことでポーションを使う事になるとは思わず、リュックの中からポーションを探していると彼女がその手を止めた。
「なんだ?」
「包帯で我慢してみよ?ポーション高いし」
パルモは人の心をどこかに置き忘れてきたのだろうか。しかし彼女のいう通り、緊急時ではないため即効性のあるポーションを使うのは勿体ない。
言われた通りに包帯を巻くと、出血箇所の血がゆっくり止まっていくのが分かった。
「ふぅ…包帯使ったから血が止まったな」
人生で一度も怪我で包帯を巻いたことが無かったが、結構凄い効果があるらしい。
「なわけないでしょ。はい、包帯外して」
見てみると、数分と立たないうちに傷にカサブタが出来ていた。
「「なにこれ…」」
体に起きた異様な状態に二人の声が重なった。
自分でもびっくりする状況に、パルモに何が起こっているのか聞こうと彼女の顔を見るとサングラスの奥からでも彼女が動揺しているのが分かった。
「これ…いつから?」
何時から、と言われても騎士の時代にはそんなことはなかった。マナダストの回収業者だった時はそもそも病気をしても怪我はしたことはなかったので分からなかった。
「ここ数年じゃないかな」
「…そう。あとね、クルさん、ちょっとこの部屋涼しいなって感じない?」
パルモに言われると確かに涼しいと思った。さっきよりも五度ぐらい下がった気がした。
「確かに。春の夜だからか…結構涼しいな」
「違うよ。クルさんが熱くなっているの」
パルモに言われて自分の体を湯気が包んでいることに気づく。彼女は俺の額の温度を確かめるために手を当てたが、それも冷たかった。
「そうなのか?…手貸してくれ」
そういってどさくさに紛れてパルモの手を握ると、彼女の手は血の通っていない人形のように冷たかった。
「死んでる?」
「生きてるよ。私の手が元から冷たいって言うのもあると思うけど…多分クルさんの手が熱すぎるの」
「ふうん…まだ上がっているように感じるか?」
彼女に体温が上昇しているのか確認して貰う。決してやましい考えがあるわけではない。当然だ。当たり前だ。
…しかし体温が上昇しているかについて彼女は「たぶん今は変わってないと思う」と、首を振るだけだった。
「そっか…ならいいや。明日の朝にドロドロになっていたら型にはめて戻しておいてくれ」
「…うん分かった」
つまらないボケはパルモさんにスルーされた。
にしてもいつの間にこんな変な体になってしまったのだろうか。
色々とやることがあるというのに、自分の体にまで変化が起き始めて、俺の思考回路はパンパンになっていた。
その結果、もう面倒くさいので考えるのを止めた。
後のことは頭のいいパルモが解決してくれるだろうと思い、俺は今日の夕飯について考えることにした。
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